ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

42 / 200
前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「突然のディオドラからのアーシアへの告白から次の日」
龍誠「だが俺達のところには新たな仲間が!」
戦兎「久々にあのキャラが再登場の41話スタート!」
匙「しかし何だって桐生と万丈って美人と縁があるんだ?」


第六章 体育館裏のホーリー
天使がやってきた


「はぁぁぁぁ……」

 

机に突っ伏し、青い顔をしている龍誠に、戦兎は自販機で買ってきたジュースを渡す。

 

龍誠は結局昨日から今日の学校に遅刻する直前まで寝ずに宿題を終わらせた。オカルト研究部総メンバーで教えたとは言え、よくもまあ一晩で終わらせたものだ。

 

何て思っていると、

 

「夏休み明け早々垢抜ける処か死んでるわねぇ」

「藍華?」

 

やって来た藍華に視線を向けると、ニヤニヤ笑っている。

 

「ほっとけよ。こっちは夏休みの間死にかけてたんだからな」

「初日から行方眩ますし、いったい何してたわけ?」

 

まさかドラゴンと追いかけっこしてたとは言えず、適当に言葉を濁す。すると、

 

「全く。夏休みの間に大人の階段上った奴もいるってのにね」

「はぁ?」

 

お前が?と戦兎が聞くと、んなわけないでしょ、と藍華は返す。

 

「彼処にいるでしょ?あの男子が先輩の女子とって話でね」

「平和だねぇ」

 

更に藍華が言うには、同じクラスの松田と元浜も海に行ってナンパしてきたらしいのだが、まぁ結果がご想像にお任せしよう。

 

「つうかどうした?珍しいじゃないか」

「あぁ、ちょっとアーシアのことでね」

 

アーシア?と、戦兎が首を傾げると藍華曰く、どこか魂が抜けたような感じらしく、アーシアらしくないとの事。

 

恐らくそれは、先日のディオドラのプロポーズ騒動だろう。皆で気にする事はないと言いつつも、色々思う事はあるんだろう。そう戦兎が思っていると、藍華は龍誠を見て、

 

「ちょっと。龍誠もアーシアについて知らないの?」

「んー……」

 

知っていてもなぁ……まさか話せない。龍誠もそう思い返答に困っていると、担任が入ってきて、

 

「お前ら一回座れ。この時期だが転校生を紹介する」

 

担任の言葉に、クラスの皆は色めき立つ。男か女か?クラスがそうざわめく中、入ってきたのは……

 

『イリナ!?』

「あ!やっほー!戦兎君!龍誠君!」

 

そう、聖剣騒動の時に会ってそれっきりだった、幼馴染のイリナだったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけで今日から駒王学園並びにオカルト研究部にお世話になる紫藤イリナです。改めてよろしくお願いします」

 

放課後、旧校舎にイリナはやって来ると改めて頭を下げる。

 

何でも話に聞くと、ここには悪魔と堕天使はいるのに、天界関係者が居ないのは、余りにもバランスが悪いと言う話になったらしく、その結果この町に縁があって、グレモリー眷属とも顔見知りのイリナが選ばれたらしい。

 

そして、勿論ここに派遣されると言う事は神の不在とか知ってのことらしいのだが、

 

「神の不在を知らされた時は七日七晩寝込んだわ……」

 

とはイリナ談。気持ちは分かるとゼノヴィアとアーシアが慰め、イリナがアーシアに魔女と言った事を謝るという光景を見ながら、

 

「つうかイリナ。お前エクスカリバーはどうしたんだ?見たところ丸腰だけど?」

 

そう戦兎が聞くと、イリナはフッフッフ……と笑ったかと思うと、

 

「大丈夫。私天使になったから!」

『……』

 

バーン!と胸を張りながら言うイリナに、部室は静まり返る。そして戦兎はソッとイリナの肩に手を置くと、

 

「お前、神の不在がそんなに精神を病ませてたんだな……」

「違うから!だからそのガチの優しい目やめて戦兎君!」

 

イリナは驚愕しつつ、慌てて少し下がると祈りのポーズを取った。すると、突如イリナの背中から天使の翼が生え、頭上には光の輪が現れる。

 

「ほぉ?天使化か。天界の技術もそこまで来てたんだな」

 

そう言って感心してるのは、椅子に深く座っているアザゼルだ。

 

「知ってるんですか?」

「前々から話しはされてたのさ。悪魔の悪魔の駒(イーヴィル・ピース)と似た理屈で人間を天使に転生させるってのはな」

 

そういうアザゼルにイリナは、こっちはチェスの駒ではなくトランプが元になってるけどねと続けた。

 

イリナ曰くトランプの種類や、特定の種類同士や決まった種類で組み合わせると高い力を発揮したりできるらしい。

 

因みにイリナはミカエルのAとのこと。その所為か今はミカエルを信仰し、どうにか持ち直したらしい。

 

(まあなんにせよ元気なのは良い事だ)

 

そう思いながら戦兎がいると、

 

「彼女が天界サイドの使者ですか」

 

そう言って入ってきたのはソーナだった。そんな彼女を見たリアスは、

 

「えぇ、転生天使の紫藤 イリナさんよ」

 

そう言ってリアスが紹介すると、ソーナはイリナと握手を交わす。

 

しかし、意外と二人の間に変な雰囲気はない。案外レーティングゲームはレーティングゲームと割りきれる程度には大人なのだろうか。

 

何て思っているうちに、イリナの歓迎会が始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「元気そうね」

「えぇ、お陰様で」

 

オカルト研究部と生徒会を交えたイリナの歓迎会の最中、ジュースを片手にリアスとソーナは話していた。最初はお互いぎこちなかったが、何だかんだでジュースのんでお菓子を食べてるうちに、和解できたらしく今はそれぞれ話している。

 

まあ正直言うと、これは天界からのお客様であるイリナの歓迎会というのも勿論だが、レーティングゲームのお疲れ様も込みで、リアスとソーナが企画したものだ。

 

「泣いたわ。もう人生で一番泣いて……涙も枯れたかも」

「そう」

 

リアスは頷くと、ジュースを一口。

 

「まあ次を頑張るわ」

「それで良いんじゃない」

 

勝った私が言うのもなんだけどと、リアスが言うとソーナは笑う。

 

「落ち込んでる暇はない。私の夢は一回躓いた位で終われないもの」

二人がそんなやり取りをする中戦兎は、

 

「よう、匙」

「ん?おぉ、桐生か」

 

匙に話し掛けた戦兎は、

 

「少し聞きたい事があってさ」

「あぁ、俺に答えられる事なら何でも良いぜ」

 

そう言って快く引き受けてくれたが、戦兎の脳裏には病院での一件が思い出される。すると、

 

「そう言えば病院に来たんだってな。後で看護師の人から聞いてな。その……すまん」

「何でお前が謝るんだよ」

 

いや折角来てくれたのにあれじゃな……と申し訳なさそうだ。そうされるとこっちが申し訳なく感じる。

 

「てっきり恨まれてるかと……」

「お前ら逆恨みするほどバカじゃねぇよ」

 

そりゃあの評論家連中はムカつくし、今でも思い出すと怒りが再燃するけどな、と匙は言う。だが、

 

「今度はもっと強くなる。強くなって誰にも負けなくなってみせる。絶対にだ。俺達には逆恨みとかしてる暇もない。それだけだ」

 

目標が大きいと大変だな。そう言う戦兎に、匙は苦笑いを浮かべる。それから、

 

「どうせ聞きたいのはスクラッシュドライバーについてだろ?」

「あぁ、何処で手に入れたんだ?」

 

戦兎がそう問うと、匙は頬を掻きながら、

 

「実は分からねぇ。力を得られるって言われてこのスクラッシュドライバーとゼリー。あとこのフルボトルをな」

 

そう言って見せられたのはタカフルボトルとロックフルボトルだ。それを見ながらヴァーリと同じか、と戦兎は息を吐く。だが、

 

「でも誰かに似てたって思った気がしたんだよな」

「誰かって?」

 

分からねぇよ、と匙は肩を竦めた。まあそうだよなと思いつつ戦兎はもう一つの本題を切り出す。

 

「じゃあ匙。スクラッシュドライバーを渡せ、それは使って良いもんじゃない」

「それはできない」

 

匙ははっきりと、言葉を口にした。更に、

 

「使ってみたから分かるさ。これは危険なものだって位はな。だがこれがあればもっと強くなれる。会長の夢の為にも……俺はこれを捨てるわけにいかない」

 

まっすぐそう口にする。それを聞いた戦兎は、

 

「あのな……それは使えば使うほど使用者を戦闘マシーンに変えていくんだぞ」

「それでもだ。俺がスクラッシュドライバー(こんなもん)に負けなきゃ良いだけだ」

 

匙の言葉に、戦兎は大きくため息を吐きつつ、

 

「未だに変身してる時スクラッシュドライバーの反動に苦しんでる癖によく言うぜ」

「うっ!」

 

匙は冷や汗を垂らしながらそっぽを向く。そんな光景を見て戦兎は、

 

「じゃあせめてスクラッシュドライバーのメンテナンスしてやるから、定期的に俺に貸せ。どうせろくに見てないんだろ?」

「メンテナンスっているのか?」

 

当然だろ……と戦兎は頭を抱える。別に意味で渡すのが心配だ。すると、戦兎は気づいた。

 

「匙、お前左腕どうした?包帯なんか巻いて」

「え?あぁ」

 

戦兎が言うように、匙は左腕に包帯をグルグル巻きにしている。すると匙は、

 

「それがこうでさ」

 

そう言って匙が包帯を取ると、腕にウネウネと黒い蛇のような模様が走っている。

 

「なんじゃこりゃ」

「わかんねぇ。ただやっぱり俺の神器(セイクリットギア)かなぁ」

 

邪龍と言われた、龍王ヴリトラの体をバラして作られたらしい匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)だが、余り良い噂の聞かない龍王らしい。

 

「そもそもなんでそんなになったんだよ」

「知るかよ。お前こそ分からないのか?未来の天才物理学者何だろ?」

物理学の範疇外だ、と戦兎は言う。何が理由かなんて分かるわけがない。すると、

 

「なーに話してんのさ!」

「いっで!」

 

バシーン!と突然背中を叩かれ、戦兎が悲鳴をあげながら振り替えると、そこにいたのはレーティングゲームで戦ったルークの、

 

「えぇと……」

「由良よ。戦ったんだし名前くらいは覚えてほしかったかな」

 

そういう彼女に戦兎は頭を掻いて、

 

「俺が知ってるのは匙と真羅副会長とソーナ会長位だぜ?」

「えぇ……」

 

と由良はジト眼でこっちを見てくる。

 

「思ってたより凄いやつじゃんって見直したところだったんだけどね」

「思ってたよりってなんだよ」

 

そう戦兎が言うと由良は、

 

「だって変な発明品爆発させたり、いつも万丈とイチャイチャしてるし、なんか暗闇の中で毎晩蛙解剖してそうだし」

「最初の爆発以外全く心当たりがないんだが?」

 

戦兎はコメカミをピクピクさせながら由良に文句を言う。それを見た由良がケラケラ笑っていると、

 

「……」

「塔城?」

 

いきなり由良と戦兎の間に、小猫が割り込んでくる。モキュモキュとお菓子食べてるので、表情は分からないが……不機嫌オーラが出ている。

 

「へぇ~」

 

その光景を見た由良が今度はニヤニヤ。何だよと戦兎がぼやいていると、

 

「そうそう。今日は私から差し入れも持ってきたの」

 

そう言ってソーナは一度部屋を出て、戻ってくるとその手にはケーキが……

 

「久々に腕を振るったわ」

「へぇ、会長お菓子作るんだ……って匙と由良、すげぇ顔色悪いけどどうした?」

 

見てみると二人だけじゃない。生徒会組やリアスも顔色が悪く、冷や汗をダラダラ流している。その間にもケーキは切り分けられて全員に配られると、

 

「へぇ、すげぇ美味そうじゃん」

 

匂いも見た目も変なところはない。 何を心配してるのか分からないが、

 

「いただきます」

 

そう言って戦兎は口に運んだ。

 

さて、その後の記憶は正直曖昧だ。ケーキを口に運び、その後の記憶が薄い。因みに正気に戻った後に匙に聞いたのだが、ソーナはお菓子作りが趣味で美味しそうな見た目に作るのにかけては天才。ただし味が壊滅的だそうな。

 

普段は匙が食べているそうで、アレを本気で美味しいと思ってるのは姉のセラフォルー位なものらしい。

 

後、匙曰くオカルト研究部の皆は死んだ魚みたいな眼で旨い旨いと連呼しながら食べてた為ソーナはご満悦とのこと。

 

記憶が無いが、それほどのケーキを普段から食べて間食している匙に、戦兎は初めて尊敬の気持ちを抱いたのは……まぁ余談。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。