戦兎「イリナの転入から暫く経ち、束の間の平穏を味わっていた俺たち」
龍誠「しかぁし!そんな俺たちの元に突然の来訪者。しかもそいつはディオドラ・アスタロト!?」
匙「それにしてもホントモテんなぁ万丈は」
龍誠「いやこれが結構大変なんだぞ?」
匙「あぁん?未だに会長と上手くいかない俺への当て付けですかこのヤロー!」
龍誠「いやそう言うわけじゃ……」
戦兎「とまあそんな感じの44話スタートだ!」
「やぁ、アーシア・アルジェント。会いに来たよ」
「え、えぇと……」
突然やって来たディオドラは、こっちに目もくれずアーシアの元に近づくと、手を握ろうとしてくる。すると、
「おいやめろ!」
咄嗟に龍誠は割って入り、それを止める。それをされたディオドラは、糸目を少し開き、
「何故かな?折角の再会を祝いたいんだけど?」
「何いってんだ!どこをどう見たってアーシアが困ってるじゃねぇか!」
ガルル!と怒る龍誠に、ディオドラはやれやれと肩を竦める。
「それで?いきなりやって来てここの主に挨拶もしないのかしら?ディオドラ」
「あぁ、すまないリアス・グレモリー。ちょっと興奮してしまってね」
そう言ったディオドラは、笑みを崩さずにそのままリアスの元に向かうと、
「早速で悪いけど、ビジョップのトレードをお願いしたい」
『っ!』
トレード……確か同じ駒もしくはそれを使った眷属を交換できるシステムで、この場合のビジョップと言えば……
「僕……?」
「ないない」
ギャスパーの呟きに戦兎は思わず突っ込みつつ、ディオドラを見た。この流れ的にアーシアだろう。だが仮にもプロポーズをした相手を手にいれるためにトレードとは……余り褒められたやり方とは思えない。それはリアスも同じだったようで、
「希望はアーシアかしら?でも悪いわね。トレードには応じれないわ」
「何故かな?」
ディオドラはそう言いながら、手にカタログを取り出す。
「確かに回復能力という点でも彼女は貴重だ。だが僕のビジョップも中々……」
「ダメね」
ディオドラがペラペラと話す中、リアスは少し語気を強めて言葉を発し、ディオドラは喋るのを止めた。
「アーシアはね、能力が良いだとかそう言うので計れる存在じゃないのよ。例え貴方がどんな眷属を用意しても、どんな高価なものを持ってきても、アーシアのトレードには応じない。私はね、
「部長さん……」
アーシアは見つめる中、ユラリ……とリアスの体から滅びの魔力が溢れる。それは彼女の意思だった。例えどんな条件をつけたとしてもトレードに応じるつもりはないという強い意思だ。
それは周りにいるこっちですら背筋が冷たくなるもの……なのだが、ディオドラは顔色を変えることはなく、
「ふむ、それは仕方ない。今回は諦めるよ」
そう言ってディオドラは背を向けると、アーシアを見た。
「アーシア、今日は帰るよ。でも大丈夫。僕達は運命で結ばれているからね。きっと君をものにして見せる」
するとディオドラはアーシアの手を取り、そのまま口を近づけてキスを……としたところで、
「やめろよ」
ガシッとディオドラの胸ぐらをつかんで止めたのは龍誠だ。龍誠はそのまま強引にディオドラを引き剥がすと、ディオドラは、
「邪魔しないで貰えるかな?これは僕とアーシアの問題なんだ。それとも君はアーシアとは特別な関係なのかい?」
「そ、それはぁ……」
さっきまでの威勢はどこへやら……龍誠は途端に弱腰になった。アーシアの気持ちには気づいてる。だが、リアスや朱乃の気持ちだって知ってるし、現時点で誰か一人を選べる状況じゃない。だからアーシアの好意も、とぼけ続けてきた。なので特別な関係じゃない。でもじゃあただの仲間かというと……それは違う。
なにせ毎朝起こされたり、夜寝るときは腕にしっかり抱きついてくる(リアスたちに対抗してるらしい)のだ。これを特別と言わなかったら何というのだろうか?しかし、
「い、妹みたいなもんだ!」
(にげ《たな》《たわね》《ましたわね》《たね》《ましたね》)
周りがジト目で龍誠を見るが、龍誠は遠い目をして逃げる。だがそれを見たディオドラは、初めて糸目を少し大きく開き、
「成程、ならばこうしよう。次のレーティングゲームで僕と戦おうじゃないか。そして勝った方がアーシアを貰う」
「上等だ!」
指と鼻を鳴らして、意気込む龍誠とは対照的に、ディオドラは笑みを浮かべたままアーシアを見て、
「じゃあアーシア。また今度会いに来るよ」
そう言い残し、ディオドラはまた魔方陣に消えていく。それを見送りながら、
「なあ龍誠」
「なんだよ」
戦兎はため息を吐きつつ、龍誠に口を開くと、
「お前らアーシアの意思ガン無視かよ」
「あ……」
しまったぁ!忘れてたぁ!と、龍誠は膝をつき、アホだろお前と戦兎に散々弄られるのは……まあ余談だろう。
さて、ディオドラがやって来た次の日、龍誠とアーシアは校庭で二人三脚の練習をしていた。
『イッチ、ニッ!』
龍誠は言うまでもないが、アーシアも基本的にはサポートタイプとは言え、悪魔なので身体能力は高い。とはいえ二人三脚は正直二人の身体能力よりも、どれだけ息を合わせられるかが大事だ。そのため練習しているのだが、これが中々照れもあって上手くいかない。
この調子で体育祭は大丈夫なのか……そう思っていると、そろそろ時間らしい。これ以上はスタートとゴール代わりに使ってたカラーコーンを倉庫に片付けないと、部活に遅れそうだ。
そう思い龍誠はカラーコーンやらその他諸々を持つ。それに従うようにアーシアも軽いものを持つと、倉庫に向かった。
とは言え駒王学園の倉庫は色々しまってある。一応どれも体育関係なのだが、これに限らず駒王学園はものや施設が大きい傾向があった。その時、
「龍誠さん……」
「ん?」
アーシアに声をかけられ振り替えると、不安げな表情でこちらを見るアーシアがいた。すると、
「昨日はすいませんでした!」
「はい?」
突然頭を下げられ、龍誠は度肝を抜かれる。それを尻目に、
「私のせいで龍誠さんがディオドラさんと戦うことになるなんて……」
「いやそれは気にしなくて良いって」
龍誠は頭を掻きながらそう言う。自分が勝手に受けただけなのだし、アーシアは気にしなくても良いと思う。まあそれで納得する彼女ではないのだが。
「私のせいで龍誠さんが怪我なんてしたら……」
「その時はアーシアが治してくれるんだろ?」
アーシアの回復能力が強大だ。だからもし怪我してもアーシアがいるし大丈夫だと言う。それを聞いたアーシアはブンブン首を縦に振り、
「だ、大丈夫です!どんな怪我でも治してみせます!で、でも出来るなら怪我をせずに……」
「分かってるよ」
龍誠だって態々自分から怪我したい訳じゃない。しないならしない方がいいい決まっている。そう言って笑うと、アーシアも笑った。互いに笑って、ふと正気に戻ると、何となく気まずい。
「そ、そろそろ戻るか!」
龍誠は急いで倉庫を出ようとした。だが、アーシアは咄嗟に龍誠の腕を掴む。突然の行動に、龍誠が驚いて振り替えると、耳まで真っ赤にしたアーシアがいた。
「りゅ、龍誠さんは言いました。妹みたいなものだって」
「え?あ、うん」
ディオドラに言った苦し紛れの言い訳のことだろう。いきなり言われたので驚いてしまった。するとアーシアは更に言葉を続けて、
「わ、私は妹は嫌です!」
「う……」
アーシアのまっすぐとした視線に、龍誠は思わず後ずさる。彼女のまっすぐとした視線は今の龍誠の罪悪感をガンガン突いてくる。
アーシアの気持ちをスルーしていることに何も感じていない訳じゃない。こっちだって悪いと思っているのだ。
でも誰を選んでも修羅場になる予感しかしない。じゃあ全員?いや相手だって皆一緒より自分だけの方がいいだろう。自身に置き換えてみた場合、やはり複数の一人よりは自分一人の方がいいと思った。
だからアーシアの気持ちは嬉しいけど、じゃあ応えられるかと言うと二の足を踏んでしまう。
どうすれば……そう思っていると、
「ふむ、アーシアも積極的になったじゃないか」
ひょこっと突然倉庫の跳び箱から顔を出したのはゼノヴィアで、突然の登場に龍誠とアーシアの二人は慌てて離れた。
「お前なんつうとこに隠れてんだよ!」
「細かいところは気にするな龍誠」
細かくねぇだろ!と龍誠が突っ込む中ゼノヴィアは、よっこいせと跳び箱から出ると、アーシアの元に寄り、
「と言う訳でアーシア。せっかくだしこのままもう少し積極的に行こうか」
「何かお前エロビデオのカメラマンみたいだぞ」
ジト目で龍誠が言うが、ゼノヴィアは聞こえないと言わんばかりに話を進め、
「藍華から聞いたんだがな、何でも年頃の男女は乳繰りあうものらしいぞ」
「ちちくり?」
龍誠は……凄く嫌な予感がした。それはもうビンビンに感じている。と言うか、藍華が関わるとろくな目に遭わないのだ。そう思って、こっそり脱出しようと後ろを向いたが、
「まあ待て龍誠」
ガシッと、背中に眼でもあるのかゼノヴィアは龍誠の肩を掴むと、
「うぉ!」
そのまま龍誠を転ばした。普通の力比べなら、龍誠の方が上だ。だがゼノヴィアは、変なところで器用さを発揮するので、何と合気道の要領で龍誠を転がした。そしてそのまま龍誠に馬乗りになると、
「たしかこうやって……」
とゼノヴィアは何と、恥ずかしげもなく上半身に来ていた服を脱ぎ捨て、ブルンと大きさではリアスや朱乃に劣るものの、形の良い美乳を晒した。しかもそれだけに飽きたらず、龍誠の手を取ると、自分の胸に触れさせてくる。
「これでよしと」
「いやこれはおかしいだろ!」
乳繰り合うってこう言うものではない。絶対にだ。だが、
「こ、これが……」
とアーシアはジッと見た後、少し迷ってから服の裾を掴むと、そのまま脱ぎ捨てる。
「あ、アーシア!?」
勿論龍誠は仰天した。しかしアーシアは出会った当初こそ細かった体も、最近はすっかり質素だった教会での食事から変わったためか、出るところは出ているタイプになった。それどころか胸は現在成長中……ってそんなことを考えている場合ではなく、アーシアまで反対側の手を取ると、そのまま自分の胸に押し付けたのだ。
「あわ!あわわわわわ!」
流石の龍誠も、何かが崩れ去っていくのを感じた。正直いってもう理性とか色々限界である。
「何だろうね、続々してきた」
ペロリと蠱惑的な目を向けてくるゼノヴィアに、
「りゅ、龍誠さん……」
照れと羞恥で真っ赤になりながらも、懸命に自分の胸に当てるアーシア。余りにも真逆の二人だが、だからこそ逆に興奮する。
(もう……無理)
もうあとがどうなっても良い……そう思い龍誠は欲望に忠実になろうとしたその時!
「何してるのあなたたち!」
『え?』
そこに乱入してきたのは何とイリナ。全身を真っ赤にして乱入してきた彼女は、こちらに向かって不潔よ!っと叫びそうだ。なんて思ってたら、
「ここは埃っぽいわ!不潔よ!」
何かちょっと違うような……と、三人は思ったのだった。因みに戦兎はと言うと、
「おい桐生!今倉庫の方から紫藤さん声が聞こえたし、何か万丈たちの声もするぞ!?なに隠してやがる!」
「なにも隠してねぇけどちょっと待てって!」
匙と倉庫から少しだけ離れた場所で押し問答をやってたそうな。
最近更新が遅れてすみません。理由としては、嫁ちゃんが風邪をひいてはその看病に追われ、治ったかと思えば今度は俺が嫁ちゃんの風邪を移されてダウンしてました。取り敢えず完治したのでボチボチ書いていきます。