ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「龍誠の暴走を止めたのも束の間。突如現れたのは何と兵藤一誠!」
ディオドラ「というか僕は!?出番もう無し!?」
龍誠「お疲れ様でした」
ディオドラ「い、いや!最近はスピンオフで再登場とか流行ってるからまた僕だってスポットがあるかもしれない!そして僕だって仮面ライダーに!」
龍誠「ないない」
戦兎「そんな感じに滅茶苦茶な49話スタート」


仮面ライダーエボル

少し時間を巻き戻し、戦兎達と通信を終えたアザゼルは、一誠たちの戦いの場所とは遠く離れた場にて、人工神器(セイクリットギア)についている宝玉の反応を頼りに、ある場所を目指していた。

 

その場所はすぐに着き、そこに探していたものはいた。随分可愛らしい幼女の姿をしているが、探していた奴だ。なので息を整え、アザゼルは何時でも行動できるように覚悟を決めて、声を掛ける。

 

「オーフィス」

「アザゼル……久しい」

 

オーフィス。無限を司るウロボロス・ドラゴン。世界最強の存在を上げろと言えば、間違いなくこいつが上げられるだろう。いや、一応もう一人いたが、それは今は良い。その少女が今自分の前にいた。とは言えオーフィスは自分の姿を自由に変えられるのでこの幼い少女の姿はあくまで仮の姿だ。昔は老人だったこともあるし、美女だったりむさ苦しいおっさんだったりと、姿に統一性がない。

 

「んで?今度は何しにここに来たんだ?」

 

それにしても禍の団(カオス・ブリゲード)にはオーフィスが付いていると言うのは、前に学園で襲撃されたときに聞いていたが、正直半信半疑だった。なにせこいつは、どこかの組織の後ろ楯に付くとか、そういうことをするタイプじゃない。どこまでも自由で気ままな存在だ。だからこそ余計に厄介でもあるのだが……

 

なにせこいつがその気になって本気で暴れれば、この世界は数日で消滅する。そういう存在なのだ。

 

「別にない。暇潰しに見学」

「暇潰しにか。禍の団(カオス・ブリゲード)で重要なポストにあるであろうお前が、こんなところにひょっこり現れるとはな。お前を倒せば世界は平和になるか?」

 

と、冗談混じりで言うとオーフィスにはそれをバッサリ否定される。

 

「無理、アザゼルは我に勝てない」

 

それはそうだ。とアザゼルは肩を竦める。さっきも言ったように、こいつ

本気はヤバい。いや、本気じゃなくてもヤバいのだが、あの聖書の神ですら相対しなかったしできなかった、最強のドラゴン。こいつとまとも戦えるのなんてそれこそもう一体のムゲンの龍くらいなものだろう。少なくともこいつの化け物度合いは世界トップだ。

 

「だがお前を何が動かさせる?お前は世界に興味を示さなかった筈だ。なのに何故禍の団(カオス・ブリゲード)に力を貸す?まさかとは思うが、暇潰しなんてやめてくれよ?お前のお陰で被害が各地に出てるんだからな」

 

アザゼルはそう聞くと、オーフィスは口を開く。

 

「静寂な世界」

「…………はぁ?」

「故郷である次元の狭間に帰り静寂を得たい」

「そういうことか」

 

次元の狭間とは虚無の世界。人間界と天界、冥界を繋ぐ壁のようなものだ。それにしてもそれが目的。確かにオーフィスは元々その次元の狭間に住んでいたのだが、色々あって今はこっちに居る。それを戻してやると言うのを条件に禍の団(カオス・ブリゲード)に力を与えたようだ。いや、実際戻すだけなら問題はない。アザゼルにだってできる。だがその次元の狭間に今いるのは……先程言ったもう一体のムゲン。

 

夢幻の赤龍神帝・グレートレッド。それがいる。もしオーフィスと出会えば、間違いなく戦いになる。そうなれば次元の狭間での出来事でも、世界に影響が出るし、恐らく両者無事ですまない。それをオーフィスは嫌っているのだろう。

 

となると禍の団(カオス・ブリゲード)に協力する条件と考えられるのは、そのグレートレッドをどうにかするも含まれている。倒すのは難しくても、オーフィス込みでなら次元の狭間から追い出すのは難しくない筈だ。

 

しかし全く面倒なことになってる。ホームシックになったのかと笑えたらどれだけ楽なことか。

 

なんて考えているとそこに、魔方陣が展開される。そこに現れたのは、一人の悪魔で、

 

「お前は……」

「お初にお目にかかる、堕天使の総督アザゼル。俺は真のアスモデウスの血を引く者、クルゼレイ・アスモデウス。禍の団(カオス・ブリゲード)の真なる魔王派として、貴殿に決闘を申し込む!」

 

突然現れて、いきなり決闘を申し込まれたアザゼルは、ポリポリと頭を掻きながらクルゼレイを見る。

 

「ったく、今度は旧魔王のアスモデウスが出てきたのか……」

 

そう言うと、ドン!っとクルゼレイのオーラがどす黒く、そして比べ物にならないほど強くなった。

 

「旧ではない!我らこそが真なのだ!それを証明してやろう、そしてカテレア・レヴィアタンの仇を討たせてもらう!」

 

あぁ、とアザゼルは納得する。もしかせずとも前に学園が襲撃されたさいに自分が殺したカテレアとは恋仲だったようだ。だが、そこにまた別の魔方陣。その中から出てきたのは、今度は知った顔でサーゼクスだ。

 

「よぅ。お前も出てきてたのか」

「あぁ」

 

サーゼクスを見ると、みるみるクルゼレイの顔が憤怒の歪む。

 

「サーゼクス。偽りの魔王!貴様さえいなければ我々は!」

 

かなり濃密な魔力。流石魔王の血筋だ。いやまぁ恐らくオーフィスの力を取り込んでいるのだろうが。

 

だがサーゼクスは顔色ひとつ変わらない。

 

「クルゼレイ。矛を納めてくれないか?今なら話し合いの道も用意できる。私は今でも前魔王の血筋を表舞台から下げ、辺境に移さしたことを他にも道はあったのではないかと思う。それに君には、今のアスモデウスであるファルビウムと話してほしいとも思っている」

 

サーゼクスの言葉は真摯だった。嘘偽りはなくそれ故に相手の神経を逆撫でする。

 

「ふざけるな!我に偽りの魔王と話せだと!?やはり貴様のような堕天使はおろか天使にすら媚を売るような男に魔王を名乗る資格はない!」

「良く言うぜ。お前ら禍の団(カオス・ブリゲード)だって色んなところの反乱分子が仲良く集まってるじゃねぇか」

 

クルゼレイの言葉に、アザゼルは突っ込みをいれた。だが、

 

「仲良く?それは違う!我らは利用しあっているのだ!忌まわしき天使も堕天使も我ら悪魔が利用する存在でしかない!悪魔が……いや我ら魔王こそが全ての頂点に立つべきなのだ!」

 

アザゼルは思わず嘆息する。ダメだこりゃ……と。悪魔はすでに種の存続の危機にあるのに、未だに悪魔だけでどうにかなると思っている。サーゼクス達も苦労するな、と思わず同情している間に、

 

「クルゼレイ。私は悪魔と言う種を守りたいだけだ。民を守らねば種は繁栄しない。甘いと言われようが構わない。私は未来ある子供達を導く。今の冥界に必要なのは戦争ではない」

「稚拙な理由だなサーゼクス。悪魔の本懐は人間を堕落させ地獄へ誘い、天使と神を滅ぼすことのみ!何よりルシファーとは……魔王とは全てを滅する存在であり、そうでなければならない!そして貴様にはそれを程の滅びの力があっても隣の堕天使に振るう様子もない!やはり貴様は魔王を名乗る資格はない!真なる魔王である私が滅ぼしてくれる!」

 

それを聞いてサーゼクスは一度目をつぶる。分かってはいた……今更対話で止まってくれる輩ではないことくらい百も承知。だがそれでも賭けたかった。どうしても聞きたかった。だが交渉は決裂……ならば仕方ない。

 

例え偽りと呼ばれようと今は魔王である。ならば今の冥界に仇なすこのものを滅ぼそう。

 

「クルゼレイ。私は魔王として貴殿を排除しよう」

 

そう言ったサーゼクスの手から、小さな滅びの魔力の球体が現れた。それを見ると、

 

「貴様が魔王を語るな!」

 

そう言ってクルゼレイが魔力の弾丸を噴射する。だが、

 

「え?」

 

次の瞬間サーゼクスの小さな滅びの魔力の球体が、彼の周りを高速で回ると魔力弾を全て消し去った。まるで意思を持つかのように縦横無尽に動き回ったそれは、今度はクルゼレイの口内に入る。そして次の瞬間今度はクルゼレイの魔力が消えていった。

 

滅殺の魔弾(ルイン・ザ・エクステインスト)……貴様の体内にあったオーフィスの蛇を消し去った。もう強化は使えまい」

「っ!」

 

それを聞いてクルゼレイは明らかに狼狽した表情を浮かべた。

 

だがこの精密機械のような魔力コントロール。それでいて圧倒的なまでの消滅。それをあんな小さな球体で行うのだ。しかもこれはまだ本気のサーゼクスではない。圧倒的な力と才覚、それを持った現魔王・ルシファー。〈超越者〉サーゼクス・ルシファーを前にクルゼレイは歯を噛みしめる。

 

「何故だ……何故貴様といい、ヴァーリといい、ルシファーはその力を!その恵まれた力を滅びに向けないのだ!」

 

クルゼレイは毒づきながら魔力を溜めた。しかし、

 

「ごぶ……」

 

クルゼレイの腹に穴が開く。腹部に侵入したサーゼクスの滅びの魔力が内側から突き抜けてきたのだ。

 

「なぜ……にせものに……ほんものが……負けねばならない……」

 

苦悶の表情を浮かべながらクルゼレイ呟く。

 

「……」

 

それをサーゼクスは少し悲しげな目で見ながら、腕を横になぐとクルゼレイは完全に肉片ひとつ残さず消え去った。

 

「さて、残りはお前だ」

 

と、アザゼルがいうとサーゼクスもオーフィスを見る。だがそこに感じる凄まじく、それでいて邪悪なオーラ。

 

なんだこのオーラは……とアザゼルはその方角を見る。明らかに普通ではない。するとオーフィスは、

 

「ドライグ?」

『っ!』

 

オーフィスの呟きに、アザゼルとサーゼクスは顔を見合わせ、オーラの発せられる方向を改めて見直す。

 

ドライグとは赤龍帝。つまり赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)のことだ。それをオーフィスは感じた。つまりそれの所有者のオーラと言うことか?

 

そして同時に思い出すのは、戦兎たちが言っていた、神滅具(ロンギヌス)を全て所有している存在。名前は……

 

「兵藤 一誠?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、時間を戻して一誠が現れた直後、

 

「ほんとに俺そっくりなんだな……」

 

と、龍誠は思わず呟く。だが戦兎は、ふらつく足に活を入れて立ち上がる。

 

「なにしに来やがった」

「いやなに、ちょっとこっちの用事でね。しっかし感動するねぇ~。やっと原作の主要キャラに会えたんだ」

 

原作?主要キャラ?と戦兎は困惑した。こいつは何をいっているんだ? だがそんな中ゼノヴィアは、

 

「成程、お前が禍の団(カオス・ブリゲード)のリーダーか。ならばここでお前を倒せば良いんだな!」

「やめろゼノヴィア!」

 

デュランダルを手に走り出すゼノヴィアに、戦兎は叫ぶがナイトの速度で瞬時に一誠との間合いを詰め、

 

「はぁ!」

 

ザン!と、デュランダルが一誠のうでを斬り飛ばす。

 

「ひゅ~。流石にいってぇな~」

「なに!?」

 

斬り飛ばされた腕をキャッチしながら、一誠は一瞬でゼノヴィアから距離を取り、腕をくっつける。

 

「腕をくっつけただと?」

「これくらいは当然」

 

と一誠は笑いながら、

 

「さて、神器(セイクリットギア)ってのは面白い能力のもある。例えば、こういう風に……」

 

そう言って手に現れたのは、デュランダル。それを見たゼノヴィアだけではなく、皆が驚愕した。

 

「デュランダルを!?」

「こいつが少し特殊でね。ダメージを与えてきた相手の武器をコピーするっていう神器(セイクリットギア)だ。ひでぇよな。普通の人間だったら喰らったら死ぬぜ?でも俺は……この程度じゃ死なない」

 

一誠はデュランダルを掲げ、

 

「上手く避けろよ?」

『っ!』

 

振り下ろすと同時に、衝撃波が降り注ぐ。それはゼノヴィアが放つものとは比べ物にならないもので、

 

「ちぃ!」

 

ヴァーリが咄嗟に戦兎を引っ張り、他の皆も龍誠を引っ張ったりゼノヴィアを救出したりしながら避けなければ、危なかった程だ。

 

「やべぇやべぇ、間違って万丈 龍誠や桐生 戦兎まで巻き込んだら危なかったぜ。あ、まあ他と同じく幽世の聖杯(セフィロト・グラール)で生き返らせれば良いか」

 

よく分からない事をブツブツ言っている一誠に、荒く息を吐きながら戦兎たちはいた。

 

あと一瞬遅かったら死んでいただろう。それくらいヤバい一撃だ。

 

「バカな……デュランダルをコピーした上に使えるだと!?コピーとは言え、デュランダルだ!誰でも使える代物じゃない!」

「あぁ、俺って無限の才能があるからね」

 

と一誠はいい、デュランダルを消す。

 

「さてさて、せっかく来たんだ。少し遊んでいくか。この時点でのグレモリーチームの強さを見ておくのも悪くないしな」

『っ!』

 

全員が身構える。正直、底が知れない強さを、皆は感じていた。だがここで逃げるには隙がない。すると、

 

「お前が兵藤 一誠か」

「あん?おぉ!お前は!!」

 

一誠は、後ろからの声に振り替えると、そこにいたのはアザゼルとサーゼクス。その二人が一誠を睨み付けていた。

 

「アザゼルにサーゼクス!いやぁ、今日はたくさんキャラに会えるなぁ」

「なに言ってやがんだ?」

 

アザゼルは怪訝な顔をしながら居るとサーゼクスが、

 

「先ほど凶悪なオーラを感じた。それはすぐに収まったが、異常事態だと判断して、オーフィスを無視して来てみたが正解だったみたいだね」

 

そう言い、サーゼクスは一誠に向けて殺気を放つ。

 

「ふむ、折角だ。原作最強クラスの実力を見ておくのも悪くない」

 

と、一誠は今度は槍を取り出し、サーゼクスに向けて、

 

黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)か……」

「そう、聖遺物にして、最強の神滅具(ロンギヌス)。とは言え、これ一つじゃあんたら相手にはちょっとおっかない。つうわけで」

 

一誠は言いながら、更に黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)と呼ばれた槍の周りに、十字架状の紫色の炎が現れ、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)の切っ先に纏わせる。

 

「今度は紫炎祭主の磔台(インシネレート・アンセム)か……神滅具(ロンギヌス)のバーゲンセールかよ」

 

そう言いながら、アザゼルは光の槍を作り、サーゼクスを見る。

 

「気を付けろよ。戦兎やタンニーンの情報が正しければ神滅具(ロンギヌス)だけじゃねぇ。神器(セイクリットギア)も多数もってんぞ」

「分かっている」

 

軽く情報を擦り合わせ、アザゼルとサーゼクスは同時に一誠に攻撃を放つ。

 

それを一誠はヒラリと空に飛び上がって回避しながら、避けていく。出してる翼は確か白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)とか言う奴だった筈だ。

 

「戦兎……彼を知ってるの?」

 

そんな中、リアスたちが来て説明を求められた戦兎は、

 

「冥界で修行してた時に一度だけ現れましてね。俺とタンニーンのオッサン二人掛かりでも勝負にすらなりませんでしたよ……」

「タンニーンもいて?」

 

リアスは信じられないといった表情になる。正直戦兎自身も、あれは夢だったと思いたいくらいだ。

 

「あいつの言葉が正しいなら、13の神滅具(ロンギヌス)と、名前と能力が分かっていればどんな神器(セイクリットギア)でも作れるらしいです」

「なんかの冗談……って訳じゃないよね?」

 

祐斗は表情をひきつらせるが、冗談ではない。つうか冗談ならどれだけ良いことか……

 

「ですがアザゼル先生とサーゼクス様の二人を一人で相手にしていると言うのに全く引いてないなんて……」

 

そう言う朱乃の言うとおりで、先程から空中では戦兎たちでは既に、眼にも写らぬ領域で戦いを繰り広げていた。

 

「お前……人間だよな?」

 

アザゼルはそう聞くアザゼルに、一誠は当たり前だと笑って答える。

 

確かに、人間の中にも英雄と呼ばれて伝説に残る者もおり、その子孫は悪魔に匹敵する身体能力を持っていることは珍しくない。

 

だが、こいつはそう言う感じではない。と思っていると、

 

「ただまぁ……自分の移動速度を上昇する系統の神器(セイクリットギア)や、腕力アップ、後は頑丈さを上げるって言うのは神器(セイクリットギア)としては珍しくないだろ?そう言う系統の神器(セイクリットギア)を100位作って置けば悪魔とか人外連中とほとんど変わらない肉体に出来るんだぜ?後は幽世の聖杯(セフィロト・グラール)の力の応用で年も取らないしな」

「なんでもありかよ……」

 

とアザゼルはため息くを吐くと、持っていた人工神器(セイクリットギア)禁手(バランスブレイカー)を発動し黄金の鎧を纏うと、

 

「っ!」

 

瞬時に一誠との間合いを詰め、胸を貫く。

 

「ごほっ!」

「幾ら力が強くても、すぐそうやって気を抜くんじゃ意味がねぇぜ」

 

とアザゼルは胸から槍を引き抜き蹴り飛ばす。だが、

 

「いてて、やべぇやべぇ。サーゼクスの滅びの魔力ばっか警戒してもやっぱダメだよなぁ」

 

そう言って一誠の胸はグチュグチュ音をたてながら治っていき、あっという間に元通りだ。

 

「成程……一撃で消し飛ばさなければならぬようだ」

 

そう言ってサーゼクスは滅びの魔力を溜める。それを見た一誠は、

 

「出来るかな?確かにあんたの滅びの魔力は強力だ。しかも細かい出力の調整もできる。ただ俺を消し飛ばすにはどれ程溜める?そして……周りに被害を出さずにできるかな?」

 

サーゼクスは答えない。だが沈黙は肯定だった。先程のクルゼレイと同じようにやることはできる。だがそれではあいつを倒しきれないだろう。この男の回復力はかなり早い。自分が滅ぼしきるほうが若干だろうが、心臓を貫かれても平気な男がその隙を大人しくしているとは思えない。だが余りに強力な一撃を放てば……

 

と視線の先にいるのは妹のリアスと眷属達。魔王として、身内を犠牲にしてでもテロリストの首領を討つのは責務かもしれない。だが同時に妹としてではなく、未来有望な悪魔を犠牲にするのは憚られた。

 

すると、

 

「とはいえだ。流石ラスボス系教師と原作最強クラス。ちぃっとこのままでは骨が折れる。と言うわけで……」

 

そう言って一誠は懐から色や装飾は所々違うものの、

 

「ビルドドライバー!?」

 

そう、ビルドドライバーだ。戦兎が驚愕するほどそっくりなそれを腰に装着。アザゼルやサーゼクスも驚く中、一誠は今度は赤い……だが戦兎のラビットボトルのよりも暗い赤色の、ヘビの顔が掘られて、口の部分が動くボトルと、真っ黒なボトルを取り出す。そしてそれをベルトに挿した。

 

《コブラ!ライダーシステム!エボリューション!》

 

次に一誠はレバーを回し、両腕を前に突き出すようなポーズを取ると、

 

《Are you ready?》

「変身」

《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

変身を完了した一誠は、星空そのような模様が散りばめられた、赤と青と金色の姿に変わった。

 

「無限に進化し、無限の強さを持つ。故にエボル。仮面ライダーエボルだ」

 

そう言って一誠は軽くグーパーして確認。

 

「しかしこの世界にも仮面ライダーって概念があるとはな。まあ俺が知ってるのはゴーストまでだったけど、まぁなんか次は変なずんぐりむっくりした変な格好の弱っちそうなライダーだったか」

 

まあ見れなかったけど、と言いながら一誠は、

 

「さて、軽く準備運動と行くか」

 

そう言った一誠は、瞬時に姿を消すと次の瞬間にはアザゼルの前に現れ、

 

「なにっ!?」

「ふん!」

 

ドス!とアザゼルの胸を殴る。その一撃が重く、アザゼルの鎧にヒビが入るほどだ。

 

「ごは!」

「アザゼル!」

 

強烈な拳に後ろに吹っ飛ばされたアザゼルを見て、サーゼクスは威力抑えつつ滅びの魔力を放つ。だが、

 

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Transfer!》

 

左手に赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)を出した一誠は、黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)に力を移して、オーラを増幅させると、なんとサーゼクスの滅びの魔力を叩き切ったのだ。

 

「すげぇだろ?変身すれば赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)の倍加を十秒待たなくても良い。実質禁手(バランスブレイカー)状態に持っていけるんだ。まぁ別に禁手(バランスブレイカー)して更に力を上乗せってのをしても良いんだけどな」

 

等と言って、笑う一誠にサーゼクスは眉を寄せる。今まで色んな者と戦ってきた。だが正直、ここまで読めない力は初めてだった。なんと言うか……直感的になのだが、中身がないのだ。強い。底無しに強い。だがサーゼクスの本能は、この力に中身がないことを見抜いた。まるで、おもちゃを与えられた子供なのだと。

 

「ほらほら今度はこっちからいくぞ!」

 

一誠は黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)に紫色の炎を纏わせ、突きを放った。それをサーゼクスは回避し、滅びの魔力を撃つが、どれも弾かれてしまう。そこに、

 

「おらぁ!」

「っ!」

 

吹っ飛ばされたアザゼルが、特大の光の槍をぶん投げ、それを一誠が避けた。しかし、

 

「隙ありだぜ!」

「なに!?」

 

いつの間にか光の槍を先回りしたアザゼルは、一誠に蹴りを叩き込み吹っ飛ばす。

 

「サーゼクス!」

「分かっている」

 

アザゼルは蹴っ飛ばした際に、きちんと戦兎達が居ない反対側に蹴っ飛ばしていた。それを見たサーゼクスは既に魔力を溜め、全力……には程遠いが、それでも並の悪魔が何百人集まろうが届かない魔力の一撃を放った。だが、

 

《Ready Go!》

 

一誠はレバーを回し、体勢を整えると右足を振り上げた。

 

《エボルテックフィニッシュ!》

「はぁ!」

 

その一撃は、そのままサーゼクスの滅びの魔力と激突。そして、その一撃によりなんと滅びの魔力は消し飛んでしまったのだ。とはいえ、

 

「いっつぅ……」

 

消し飛ばしたのは良いものの、足を痛そうに一誠は抑える。

 

「まぁ、流石にこれ以上はじり貧か」

 

一誠がそう言うと、周りに霧が出現し、

 

「つうわけで、また会おうぜ。チャオ」

 

それをサーゼクス達は敢えて素直に見送る。これ以上は本気になることを覚悟しなければいけない。それを悟っていた。

 

そして一誠は消える。

 

その場を静寂が支配し、今度こそ戦いが終わったことを認識した。

 

こうして、短くも濃厚な戦いは終わりを告げる。だが戦兎達も実感していた。まだ一誠との戦いは……始まったばかりなのだと、


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