戦兎「冥界にて仮面ライダービルドのほうそうが始まり、束の間の平穏の中楽しんでいた俺達。だが俺と同時に龍誠は姫島先輩とデートをする!」
龍誠「なぁ戦兎。取り敢えずいつも通りスカジャンとジーンズで良いよな?」
戦兎「アホか!お前デートなんだからもう少し小綺麗にしていきなさいよ!どうせあの青い龍の模様が入った趣味の悪いド派手なやつだろ!?」
龍誠「趣味が悪いってなんだよ!それいったらお前なんていつも同じTシャツにコートとジーンズじゃねぇか!」
戦兎「俺のは合理的な判断の元そうしてるだけだ!」
匙「つうわけで収拾がつかなさそうなので52話スタート!」
戦兎「俺の台詞がぁ!」
「ふむ……」
龍誠はスマホを弄りながら、朱乃と待ち合わせをしている、彼女の実家の神社の前にいた。
色々思うところはあるが、元々は戦兎の口からの出任せであっても、あれだけ自分とのデートを望んでくれるのなら答えたい、と割りと変なところで真面目な龍誠は思っていた。
しかし少し早く着きすぎてしまったかもしれない。アザゼル曰く、デートの約束に遅刻するような男は空き缶ほどの価値もない。とのことなので、それにならって早めに来たが、少し焦りすぎたか?とそこに、
「お待たせ、龍誠」
「あぁ、朱乃さ……ん?」
龍誠は声の方を振り向き、思わず声が止まった。それはそうだろう。朱乃の服装はいつも少し大人びた格好が多い。それが似合うのが朱乃なのだが、それが今回は年相応、いや……少し落とした位の服装だ。それが今までにはないギャップを生み、 思わず息を飲む。綺麗と言うよりは可愛いだ。
「へ、変かな?」
「い、いや凄く似合ってます」
何か口調も少し何時もと違うし、このままだと心臓が持ちそうにない。すると朱乃はスッと龍誠の腕に抱き付くと、
「行こっか」
「は、はひ……」
ムニュムニュと腕に当たる柔らかい物……それがなんなのかは想像にお任せするとして、こうしてデートは始まったのだった。因みに、
「あ、朱乃ったらあんなにくっついて!」
「ズルいです……」
「成程……ああいうのでいくのもありか」
と上から順にリアス・アーシア・ゼノヴィアを筆頭に、こんな感じでいつもグレモリー眷属も遠くから監視もとい、ストーキング……でもなく見守っているのはまあ余談。
まあデートとは言え特別なものじゃない。一緒にご飯を食べたり、服を見て「これ似合う?」なんて言われたり、ゲーセンでプリクラ撮ったり、おやつにクレープを食べさせあったりと極々ありふれたものだと思う。
正直周りの嫉妬が混じった視線は、感じの良いものではないが、それでも朱乃とのデートは順調で楽しいものだっった。
まぁ、背後で覗き見してるオカルト研究部の皆には少し気になるが……すると、
「ねえ龍誠」
「ん?」
ギュっと朱乃は龍誠の腕に抱きつく腕の力を少し強めながら、
「逃げちゃおっか」
「え?うぉ!」
グイッと朱乃は龍誠の腕を引き走り出す。腕力だけなら龍誠の方が上だが、突然のことにそのまま引きずられる。それを後ろでは、
「に、逃げたわ追うわよ!」
とまあ後ろからガヤガヤ聞こえたが、二人でしばらく走る。龍誠は元より悪魔である朱乃も、身体能力は非常に高い。とは言え後ろの面々も高いが、こっちは更に先に走りだし、スタートダッシュも決めている。加えて路地裏をグルグル回れば、案外あっさり振り切れる。
(こりゃ後で怒られそうだなぁ……)
少し息を整えながら、龍誠は頬を掻きつつ周りを見て思わず、
「げっ!」
と声を漏らす。それはそうだろう。なにせ目の前にあったいかにもな看板。所謂これはラブホ街と言われる場所で、流石に男女でいる場所ではない。そう判断し、
「あ、朱乃さん!すぐここを離れましょう!」
気まず過ぎる!そう思いながら朱乃の手を引く龍誠……だったが、朱乃が動かない。どうしたのかと朱乃を見ると、
「……良いよ」
「へ?」
朱乃は覚悟を決めたような表情で龍誠に言い、一瞬何が良いのかわからず龍誠は首を傾げると、
「龍誠が嫌じゃないなら……ここでも良いよ」
「っ!」
この場における、ここと言うのはラブホの事だと思う。そこまで鈍くない……正直勘違いじゃなければとは思うが、それでもこの雰囲気。良いのだろうか?そう思うと、思わずゴクリと生唾を飲んでしまう。
このまま遂に童貞を卒業するのだろうか?確かに学校でも、夏休み以降そう言った経験を済ませた男子が増えた。いや別に対抗心を燃やしてはいないが、朱乃からの誘いだ。とびっきりの美少女である朱乃からの据え膳……食わないのは男が廃る処か男失格なんじゃないか?なんて思ってしまう。
「じゃ……」
じゃあ、と口を開きかけたその時、
「なんじゃ、こんな真っ昼間からお盛んじゃのう。クローズ……いや、万丈 龍誠じゃったかの?」
『っ!』
突然掛けられた背後からの声に、龍誠と朱乃は慌てて見ると、
「あぁ!確かディオドラの時の変な爺さん!」
「こら!この方は一応これでも北欧の主神・オーディン様です!」
お前今一応これでもって言いよったな?とオーディンはジト眼で、隣に立っていた龍誠達とそこまで歳は変わらないと思われる、真面目そうなスーツを着た女性に言う。
だが朱乃はそっちではなく、もう一方の筋骨隆々とした、ガタイの良い男性を見て表情を強ばらせていた。
向こうの男性も、少し呆然としていたがすぐに正気に戻り、
「朱乃……何故お前がこんなところに!」
と言うやいなや朱乃の腕を取り、
「こんなところにいてはいけない!こっちに来なさい!」
「ちょ!離して!」
引っ張っていこうとする男性。だが同じく正気に戻った朱乃は慌てて抵抗する。
「やめて!」
「おい!嫌がってんだろ!」
そう言って龍誠は男の腕を掴み、ギリッと握って朱乃から引き剥がす。
「どけ!貴様には関係ない!」
「あんたこそ朱乃さんがどこにいようと関係ねぇだろ!」
いやまあ強ち無関係ではないがのう……とオーディンが呟き、龍誠は首を傾げる。そして、
「こやつの名前はバラキエル……と言えば分かるかの?」
最初龍誠は分からなかった。だがどこかで聞いたような……と普段の記憶力からは考えられないほど脳ミソを働かせ、記憶の底から引っ張り出した。そう、バラキエルは……
「もしかして朱乃さんのお父さん!?」
「貴様にお義父さん等と呼ばれる筋合いはないわぁあああああああ!」
「ほっほっほ。中々豪華な屋敷じゃのう」
「ありがとうございます」
そう言ってリアスは突然やって来たオーディンにお茶を出しながら、頭を下げる。何時もならお茶は朱乃の仕事だが、バラキエルとの出会い以降何時もの笑顔すら消え失せている。
「それで?何故北欧の主神であるオーディン殿が来てるのかしら?アザゼル先生」
「ん?おぉ、お前らにはまだいってなかったが、この度俺達三大勢力は北欧とも手を組むことになった。理由は言うまでもないと思うが、
「と言うわけでの、その辺の話し合いのためにこのロスヴァイセときたのじゃよ」
「よろしくお願いします」
そう言って礼儀正しく頭を下げるロスヴァイセを尻目にオーディンは、
「してアザゼルよ。アレの準備はできてるのかの?」
「おう、バッチリだぜ?」
アレ?と二人の会話を聞いて皆は首を傾げる。するとオーディンはニッコリ笑って、
「一度やってみたかったんじゃよ。芸者遊び」
「良いねぇ良いねぇ。他にも良い女がいる店知ってっからよ」
そいつは楽しみじゃのう!とアザゼルとオーディンは仲良く肩を組んで部屋を出ていき、
「ちょっとオーディン様!」
とロスヴァイセは追いかける。それを呆然と皆は見送り、
「取り敢えず、解散しましょうか」
はい……とリアスの言葉を皮切りに、その場は解散となったのだった。
(ん?)
「朱乃、少し話しがしたいのだが」
解散の後、龍誠は部屋に戻るべく階段に足を掛けた。すると階段の曲がり角の方から、バラキエルの声が聞こえた。
「気安く名前を呼ばないで」
話し相手は朱乃らしい。だが朱乃の声は今まで聞いたことがないほど低く、冷たい声だ。
「と、とにかくだ。その……お前と万丈 龍誠は付き合っているのか?」
「っ!」
確かにラブホ街に二人でいたらそう言う関係に見えるかもしれない。いやまあ全く意識してないわけではないが……だが朱乃は、
「貴方に関係ないでしょう?」
「だ、だがな?私は心配なんだよ。あれくらいの年の男なんて猿もビックリなものだ。お前が変なことをされてたりなんてしたら……む?何者だ!」
随分な言われようだな、なんて思っていたらギシっと階段が鳴り、バラキエルは目敏く気付く。と言っても別に疚しい事はないので、
「ど、どうも……」
「貴様、こそこそ覗き見とは良い度胸だ!やはり貴様に朱乃はやれん!」
そう言って、バチバチと朱乃の数十倍、いや下手すれば数百倍強力そうな雷光を発しながら憤慨するバラキエル。思わず身の危険を感じて後ずさる龍誠だが、そんなバラキエルの頬を朱乃が思いっきりひっぱたいた。
「やめて!彼は優しい人よ!それにどういう関係でも貴方には関係ないっていってるじゃない!」
「い、いや私は父親としてだな……」
朱乃の怒りに、バラキエルから今さっきの怒りは消え、明らかに狼狽している。まるでそれは娘に嫌われることを恐れる普通の父親のようだ。だが朱乃は、
「貴方の事なんか父親だなんて思ってない!お母様を見殺しにした貴方なんて父親じゃない!」
「っ!」
朱乃の言葉に、バラキエルは体を強張らせ、
「すまん……」
一言そう言い残し、その場を後にする。
「朱乃さ……」
「なにも言わないで」
朱乃に声をかけようと、龍誠が口を開くがそれを朱乃は抱きつきながら制した。
「お願い……なにも言わないで」
余りにもそんな弱々しい言葉に、龍誠はなにも言えず静かに抱き締めるのだった。
分かる人には分かると思いますが、序盤のデートに遅刻云々は、あの人の台詞です。はい。