ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「様々な思惑がある中、遂にロキとの戦いが幕を開ける!」
龍誠「いやその前に朱乃さんな!?」
戦兎「でも俺出番無いしなぁ……どうせお前がうまくやるんだろ?」
龍誠「見も蓋もないこと言ってんじゃねぇよ……」
ヴァーリ「ん?可笑しいな。龍誠(バカ)の癖に難しい言葉を使ったぞ?」
匙「まさか偽物……?」
龍誠「んな訳あるか!」
戦兎「とまあそんな感じの55話スタートです」


逃げずに戦うこと

「お願い龍誠。私を抱いて」

「はい?」

 

突然のことだった。部屋に戻った龍誠は、突如ベットに押し倒され、何事かと思いながら改めて見ると、龍誠を押し倒して上に乗っかっているのは朱乃だ。

 

そして彼女は、スルスルと着ていた白装束を脱ぎ捨て、

 

「私を滅茶苦茶にして」

「……」

 

思わずクラクラしてそのまま理性なんてポイしたくなるほどの魅力的な提案だった。だが龍誠は気づく。

 

今の朱乃は虚ろで、自暴自棄になっているような、そんな目をしていた。

 

「え?」

 

だからか、そんな朱乃に龍誠はソッと白装束を掛け直す。そんな龍誠の行動に朱乃は、

 

「私じゃ、魅力がない?」

「まさか……これでも結構ギリギリです。でもね朱乃さん、流石にそんな泣きそうな状態じゃ俺は出来ない」

 

え?そう言う朱乃に、龍誠は言葉を続ける。

 

「朱乃さんはいつも俺に抱きついてくるとき楽しそうでした。でも、今はなんか悲しそうで、辛そうで……」

「えぇそうよ、私は忘れたいの。母もあの人の事も……貴方に全部委ねて全部貴方で埋め尽くしてしまいたいの。それがイケないの?」

 

朱乃は半ば懇願するように言う。すると龍誠は、

 

「忘れて良いわけないじゃないですか。貴方にはちゃんと居た。いや、今も居るんですから。愛してくれて、自分を思ってくれる……そんな素敵な家族が」

「あっ……」

 

それは親を知らず、親の愛情を知らず、家族を知らない。それは龍誠の朱乃への嫉妬があったのかもしれない。

 

誰も悪くないことが分かってるんだろ?なら逃げたらダメだろ。そんな龍誠の無言の言葉だった。

 

「だから俺は貴女を抱かない。でも……」

 

そう言って龍誠は朱乃を優しく抱き締める。それから、

 

「ちゃんとまたいつもみたく笑えるようになるまでこうして抱き締めますから。だからちゃんと、また何時もの朱乃さんに戻ってください」

「龍誠」

 

ギュッと少しだけ力を込めて朱乃を抱き締める龍誠。そんな龍誠に負けないように朱乃も龍誠を抱き締めかえす。

 

自分の判断が正しいのかわからない。でも、また朱乃が何時ものように笑えるようになれば、父と向き合う勇気が生まれるんじゃないか……なら向き合ってほしい。母親は死んだのかもしれない。でも父親はいる。家族がいて、家族の記憶があって……それって凄く幸せなことのはずなんだ。

 

龍誠はそんなことを思いながら、朱乃をずっと抱き締める。

 

『……』

 

一方、そんな様子を廊下で窺っていたのはリアスと戦兎で、

 

「そろそろ行きましょうか」

「ですね」

 

リアスの言葉に戦兎は頷き、二人はその場を離れる。

 

「姫島先輩も中々な過去がありますね」

「貴方の父親が失踪していないって言うのも大概だけどね」

 

そう考えるとグレモリーチームで両親健在なのは自分くらいなものだ。なんてリアス自身で思いながら、

 

「ま、今夜は朱乃に龍誠は貸してあげましょう。戦兎、ちょっとお茶に付き合いなさい」

「はいはい畏まりましたよ、マイマスター」

 

そんな軽口を言い合う。

 

ロキとの決戦も遠くない中、それぞれの夜はフケていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱乃と龍誠の一件から一週間。オーディンは日本にてこれからの同盟について話すべく、夜も遅いと言うのにとある建物の一角で会談に臨んでいる。アザゼルはそれに付き合い、この場にはいない。

 

そんな建物の屋上には、グレモリーチームとソーナチーム、更にヴァーリチームにバラキエルとロスヴァイセが既に戦闘体勢だ。因みに、地上から見えない位の高度にはタンニーンが控えている。

 

「おい匙、体の調子はどうなんだ?」

「ん?あぁ~。何ともないんだよな……」

 

そう言って匙はグルグル腕を回した。先日まで堕天使の拠点にて改造……もとい、特訓を行っていた匙だが、現在アザゼルの指示により四つあるヴリトラ系神器(セイクリットギア)の全てを体に埋め込まれている。だが、これと言って大きな変化はないらしい。

 

少し体に馴染むような感覚はあるらしいのだが、アザゼルが期待するほど大きな変化はなかったとのこと。それどころか、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)以外のヴリトラ系神器(セイクリットギア)は、発動すらしなくなったと言う改造され損っぷりを見せていた。

 

その為か、プライドが大いに傷ついたアザゼルにより、この戦いが終わったあとは今までにない匙専用トレーニングメニューを組まれているとかいないとか……

 

しかし戦いが終わったあと、それはつまりアザゼルは無事こちらが勝つことを信じてくれてると言うことだ。それは普通の嬉しい。その期待には絶対応えねばなるまい。

 

それにしても今までロキからはなにもアクションがなかった。もしやこのまま何もないのでは?何て甘い考えが過る中、

 

「来たようだぞ」

 

ヴァーリが呟きながら空を見ると、空間がバチバチと火花を出して歪み始めた。

 

「いきます!」

 

その空間の歪みからロキが出てくるのを確認したソーナを筆頭に、匙以外のソーナチームが魔力を流し、魔方陣を展開。

 

何故ならこんなところでロキと戦えるわけがない。なので、ロキと自分達をこの場から離れた場所に転移させて、戦う方がいい。

 

そう指示を受けていたソーナチームは、自分達以外を転移させる。

 

そして匙以外のソーナチームを除き、皆は古い採石場である開けた場所に出た。ここが決戦の場だ。それにしても……

 

「逃げないんだな」

「逃げる必要はない。お前達を殺してから向かっても然程変わらないのだからな」

 

戦兎の問いに、姿を現したロキは言う。随分自信満々じゃないか。ならこっちだって色々準備はしてたんだ。と戦兎はビルドドライバーを着け、それに合わせて龍誠やヴァーリに匙もベルトを装着。そして、

 

《ラビット!タンク!ベストマッチ!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

《ロボットゼリー!》

《ドラゴンゼリー!》

《Are you ready?》

 

四人はそれぞれのアイテムをベルトに挿し、意識を集中。そして!

 

『変身!』

《鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

 

それぞれが変身を終え、ロキをを見た。だがロキは特別気負うことなく、指を鳴らし、フェンリルを呼び出す。

 

「ふふん。成程これは強そうだ。だが、こいつには勝てまい!」

 

そう言ってロキが出したGOサインと共にフェンリルが疾走。

 

「くっ!」

 

バチィ!と体に走り電流に、思わず歯を噛み締める匙だったが、強引に黒い龍脈(アブソブーション・ライン)からラインを放ち、フェンリルを狙う。しかし、

 

「ふははは!その程度ではフェンリルの動きは捉えられんぞ!」

 

ロキはそう笑いながら叫ぶ。だが、

 

「にゃん!」

「む?」

 

そこに気配を潜めていた黒歌が、魔方陣の中から巨大な鎖を出して、フェンリルの動きを封じた。

 

「グレイプニルか!?」

 

ロキが驚く中、フェンリルは動きを封じられてしまう。

 

「いよっしゃ!後はロキだけだぜ!」

 

龍誠はそう言い、ロキに狙いを定める。所がロキは意外と余裕そうで、

 

「ククク。成程、グレイプニルか。まぁ確かにフェンリルを相手にするにはそれしかないな。だが……」

 

それは想定内だ。ロキはそう呟くと同時に、フェンリルは鎖を引き千切り突進。

 

『っ!』

 

咄嗟に戦兎達は横に跳んで避けたが、唯一ラインを出していた匙だけが反応に遅れてしまい、

 

「匙!」

「がはっ!」

 

フェンリルの爪をモロに喰らって、血を吹き出しながら後方に吹っ飛ばされてしまう。

 

「ちぃ!」

 

それを見たタンニーンがブレスでフェンリルを狙うが、フェンリルは軽々と避けた。

 

「アーシア!すぐに治療を!」

「は、はい!」

 

一方、地面を何度も跳ねながら転がった匙の元に、リアスの指示の元、アーシアは駆け寄る。

 

「その男の神器(セイクリットギア)を囮に、グレイプニルか……中々の連携だ。普通ならフェンリルを使い物にならなくされてたよ。だが、この程度は想定内だ。全く、そんな浅知恵に引っ掛かる私だと思われていたのであれば、心外だな」

 

早々に、こちらの対フェンリル対策を封じられ、戦兎達は互いに顔を見合わせた。そこにロキは、

 

「どれ折角だ。少しスペックは劣るが、少し追加してやろう」

 

そう言って空間から現れたのは、フェンリルよりは一回り以上小さな狼。更に何匹ものミドガルズオルムのサイズダウンverドラゴンが……

 

「スコルとハティ。ヤルンヴィドに住む巨人族の女を狼に変えてフェンリルと交わらせて生ませた子供だ。フェンリル程ではないが、今のお前達には十分すぎる相手だろう。それの加えてミドガルズオルムの量産型もお披露目しよう。さぁ、存分に楽しんでくれたまえ」

 

ロキはそう言い終えると、スコルとハティと呼ばれた狼と量産型ミドガルズオルムもこちらにフェンリルと共に走ってくる。

 

「来るわよ!」

 

リアスの言葉と共に迎撃体勢に入る皆。

 

「はぁ!」

「あらよっと!」

 

アーサーと美猴がそれぞれの獲物を振るい、量産型ミドガルズオルムを倒す。どうやら量産型だけあって強さは大したことはないらしい。しかし如何せん数が多い。息を合わせてはいないが、タンニーンのブレスも撃ってきてくれている。それでも数が一向に減る気配がないのだがスコルとハティよりはマシかもしれない。

 

「くっ!」

 

祐斗は聖魔剣を振るうが、スコルとハティはそれを軽々と避けてしまう。フェンリル程ではないが、スコルとハティの速さも十分驚異だ。しかも攻撃を一発でも喰らえば戦闘不能になる牙の一撃。

 

「はぁ!」

「えい!」

 

そんな速さの相手にゼノヴィアのデュランダルや、小猫の攻撃が当たるわけもない。

 

「クソ!速すぎる!」

「追い付けません」

「しかも当たったら危ないしね!」

 

と、背中合わせに言うイリナに、ゼノヴィアと小猫は同意する。

 

《分身の術!》

「おぉおおおおお!」

 

そんな中戦兎も姿を変え、ニンニンコミックになると分身してフェンリルを追うが、フェンリルにはものともせず蹴散らされる。

 

「どおおりゃあああああああ!」

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

 

だがその隙を突いて、龍誠はビートクローザーを振り下ろす。それをフェンリルは、

 

「がぅ!」

「嘘だろ!?」

 

なんと首だけ動かして噛んで止めてしまう。そしてそのまま首を振ってぶん投げると、

 

「がはっ!」

 

地面に叩きつけられる。しかしそれだけではなく、フェンリルはそのまま龍誠を踏み潰そうとした。そこに、

 

『させない!』

 

まずギャスパーの停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)がフェンリルを止め、リアスと朱乃の滅びの魔力と雷光がバリバリとフェンリルの横っ面を襲う。ダメージはあまり無さそうだが、それでも戦兎が咄嗟に龍誠を連れてその場から走り去るには十分だ。

 

「おぉ!」

 

そして更に気をとられたフェンリルの顔面に向け、

 

《ツインフィニッシュ!》

「らぁああ!」

 

ヴァーリのツインブレイカーの一撃が入る。流石にそれには少し苦しそうな顔をしたものの、これでも決定打にはなりそうにない。

 

すると、

 

「ぬん!」

 

朱乃を更に上回る強烈な雷光がフェンリルの体を痛め付け、

 

「フル……バーストォ!」

 

ロスヴァイセの何重にも重ねた魔方陣から発射された光線がフェンリルの体勢を崩した。オーディンの御付きに任命される位なのだから、優秀だとは思っていたが想像以上に頼もしい。

 

そんな様子を匙は薄ボンヤリとした意識の中見て思う。

 

(俺って……いっつも肝心な時に役に立たねぇな)

 

何で皆強いんだ。同じ時期悪魔になったのに、何で戦兎と龍誠まで戦えてるんだ?そう匙は何度も考えた。

 

何が違う?同じく変身できるようになった。主の格だって変わらない。仲間だって変わらないくらい強い。じゃあ何が足りない?

 

匙は自問自答する。努力量だって負けてない。神器(セイクリットギア)の特性ならこっちの方が戦闘向きな位のはずだ。なのに勝てない。レーティングゲームの時だってそう。何で勝てないのか……どうすれば勝てる?どうすれ

越えられる?そして、どうすればもう()()()が泣かないで済む? どうしたらアイツらみたくなれる?

 

「はは……」

 

すると匙は突然笑う。危ない危ない、大事な事を忘れる所だったと。

 

「そうだった。全く、すーぐ俺ってば悪い方に考えちまうからな」

「あ!まだ怪我は」

 

アーシアに大丈夫だと言いつつ、匙は真っ直ぐ前を見る。

 

「会長と約束したんだ。俺は俺として強くなるって。俺は桐生戦兎でもなく、万丈龍誠でもない!俺は……匙 元士郎だぁああああ!」

 

バチバチ体に電流が走る。だが匙は両手を合わせると、

 

「うっとぉしいんだよぉおおおおお!」

 

ドン!と胸を殴った。すると体に走っていた電流は消え去り、それと同時に全身に黒いラインが刻印され、仮面についている青いゼリー状の物が黒ずむ。

 

「体が軽い?」

 

それだけじゃない。今までに感じたことの無い力を、匙は自分の体から感じていた。

 

「これならイケる!」

 

オォオオ!と言う咆哮と共に、匙は走り出す。

 

「え?おい!匙!」

 

戦兎は咄嗟に呼び止めるが、それを無視して匙はフェンリルに飛び掛かる。

 

「がぅ!」

「おぉ!」

 

牙を剥き、匙を迎え撃つフェンリル。だが、匙は突然右手から黒炎を出すと、そのままフェンリルの口に叩き込んだ。

 

「ぎゃん!」

 

すると、フェンリルも流石に口の中に黒炎を叩き込まれたのが嫌だったのか、苦しみながらひっくり返る。だがそれだけじゃない。先程まで口の中にあった筈の火は、口から燃え広がりそのままフェンリルの体自体を焼き出した。

 

しかしフェンリルはその炎もだが、それ以上に左手に黒炎を纏わせた匙がゆっくり近づいてくる事の方が危険だと判断する。

 

《シングル!》

 

まずタカフルボトルをツインブレイカーに挿し、また一歩進む。

 

「キャイン!」

 

フェンリルが感じたのは恐怖だった。ロキに作られ、生まれてこの方恐怖を知らずに生きてきた。なにせ殆どの生物が自分の一噛みで殺せるor戦闘不能に出来た。だが、こいつはなにかが違う。ヤバい逃げろと人生(と言うか狼生?)で初めて父の行けと言う命令を無視して逃げ出そうとした。だが、その前にフェンリルの周囲を黒い檻が出現し、取り囲む。

 

《ツイン!》

 

その間にロックフルボトルも挿して、更に左手の黒炎でツインブレイカーを覆って準備完了とばかりにフェンリルを見る。

 

「さっきやられた分。こいつで返させて貰うぜ!」

《ツインブレイク!》

 

檻を解除し、匙は飛び上がるとそのままフェンリルの眉間に渾身の一撃を叩き込む。

 

「ぎゃん!」

 

そのまま今度はフェンリルの方が後方に吹っ飛び地面を転がると、そのまま岩壁にめり込んで動かなくなってしまった。ピクピクしているので、死んではいなさそうだが……

 

「へぇ、やるじゃねぇか」

 

そんな姿を見たヴァーリが、そう誉めると匙は、

 

「アンタが不甲斐ないお陰でな」

「あぁ?」

 

何て言うもんだからヴァーリはプッツン。そんなヴァーリにスコルとハティが両サイドから爪で襲い掛かるが、それをなんとヴァーリは片手で一体ずつ掴んで止めた。

 

「誰が不甲斐ないだゴラ!俺がとっとと倒したら折角の他のやつらの出番がなくなっちまうから遠慮してやってただけだ!」

 

そう言ったヴァーリはそのまま力付くでスコルとハティを弾き返すと、

 

「取っておき見せてやるよ!」

《スクラップフィニッシュ!》

 

レバーを下ろしたヴァーリは、素早くロボットゼリーを抜き取ると、そのままツインブレイカーに挿す。

 

《シングル!》

 

更にロボットフルボトも挿して、

 

《ツイン!ツインフィニッシュ!》

 

ヴァーリはそのまま、まずはスコルに向かってジャンプ。すると、足元からゼリーが噴出し、波乗りの要領でスコルを追う。それからツインブレイカーのビームでスコルを攻撃して牽制し、そのままハティの方にも向かって同じく牽制。

 

そして二匹は気づく。いつの間にか、互いが一ヶ所に集められていることに……そして、

 

「覚悟決めろやごらぁあああああ!」

 

大きく飛び上がったヴァーリの渾身の蹴りが、スコルとハティを二匹纏めて吹き飛ばす。そして、

 

「ふん!ざっとこんなもんだ」

 

と、大きなクレーターを作りながら、二匹纏めて戦闘不能にしたヴァーリは一息。

 

「おいおい、これじゃ俺らの出番ねぇじゃん」

「んなこといってる場合か!」

 

そんな匙とヴァーリの活躍に戦兎が呟き、龍誠は突っ込む。こっちはこっちで今度は量産型ミドガルズオルムの相手に移っているので、全然暇はない。だが、

 

《ラビットタンクスパークリング!》

「何いってんの。アイツらばっかりに良いとこ持ってかれるわけにいかないだろ?主役は俺だ!最近出番無かったけどな!」

「お前って本当にそう言うとこ尊敬するよ……ったく、プロモーション!」

 

二人は意識を集中し、気合いを込めて、

 

「ビルドアップ!」

「クイーン!」

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

 

姿と駒をそれぞれ変えて、戦兎と龍誠は更にレバーを回す。

 

《Ready Go!》

 

二人は腰を落とし、空を覆い尽くす気かと言うほどの数がいる量産型ミドガルズオルムを見据えた。

 

「皆!伏せてろ!」

『え?』

 

戦兎の言葉に皆が、はい?と首を傾げる中、

 

《スパークリングフィニッシュ!》

《ドラゴニックフィニッシュ!》

『いっけぇ!』

 

同時に二人の放った蹴りは、それぞれが膨大なエネルギーを秘めた衝撃波を産み出し、その二つが組合わさることで更に強大なエネルギーの衝撃波を引き起こす。

 

その衝撃波は次々と量産型ミドガルズオルムを蹴散らしていき、

 

「計算通り」

「計算通りじゃないわよ」

 

ペシン!と決めポーズをした戦兎にリアスが背後からひっぱたく。危なく巻き込まれるところだった、他の面々もリアスの言葉にうんうんと頷いた。だが、

 

「これで残るのはアンタ一人だな」

「……くく」

 

戦兎がそう言うと、ロキは少しうつむいたかと思うと、

 

「クハハハハハハハ。これはすごい。まさかフェンリルだけではなくスコルやハティに量産型ミドガルズオルムまでやられるとはな。これは予想外だった。非礼を詫びよう。お前達を我が手を煩わせずとも倒せると思っていた私の見通しの甘さをな!」

『っ!』

 

ズンッ!と突然戦兎達は自分達の体が重くなったような気がした。いやあくまで気分なだけだ。

 

ただ、それだけロキの体から発せられるプレッシャーが大きくなっただけ……

 

するとロキは地面まで降りてきて、

 

「空中よりもこっちの方が得意だろう?」

「舐めやがって!」

 

匙は右手に黒炎を集めながら、ロキに殴りかかる。だが、

 

「ふん!」

「なにっ!?」

 

匙の拳を片手で止めたロキは、黒炎を睨み付けただけで消してしまう。

 

「この程度なら造作もない。私は神だからな!」

「ちぃ!」

 

そこのヴァーリもツインブレイカーで襲いかかる。だがそれももう一方の手で止め、

 

「さっきとは逆になったな」

「っ!」

 

ロキはそうヴァーリに嫌みを言ってから、二人を掌から衝撃波を発して吹き飛ばす。だがそこに入れ替わるように、

 

「そこです!」

「おらぁ!」

「にゃにゃん!」

 

アーサー、美猴、黒歌の三人が同時攻撃。しかし、

 

「甘い!」

 

片手で雷を放ち、三人纏めて撃破。

 

「やぁああああ!」

『はぁああああ!』

 

イリナにゼノヴィアと祐斗と小猫の四人で背後から襲いかかるが、ロキは不可視の壁を作り出し同時攻撃を弾き返した。

 

「いい一撃だ。だが神である私にはまだ届かない」

「ならこれならどうかしら!」

《Ready Go!》

 

そうリアスが言うと、彼女とロスヴァイセに戦兎と空中からはタンニーンがそれぞれ構えて、

 

《ボルテックブレイク!》

 

タンクフルボトルを入れたドリルクラッシャー・ガンモードのボルテックブレイクと、リアスとロスヴァイセの魔力の砲撃にタンニーンのブレスが組合わさりロキに襲い掛かる。

 

「それがどうした!」

 

それを、再度不可視の壁作り出して防ぐロキだが、

 

「まだまだだぜぇ!」

《メガスラッシュ!》

「なにっ!?」

 

ロックフルボトルを挿してクリップエンドを三回引いておいた龍誠は疾走。そのまま金色のオーラを纏ったビートクローザーを掲げると、

 

「加えてこれですわ!」

 

バリバリ音を立て、朱乃の雷光がビートクローザーに降り、そのまま雷光を纏わせた一撃を不可視の壁に叩き込む。

 

「ぬう!」

 

ピキ!と亀裂が入る音。不可視の壁のため見えないが、間違いなく聞こえた。これなら行ける……だがまだ壁を破るには足りないのか?そう思ったとき、

 

「はぁ!」

 

朱乃以上の雷光がビートクローザーに更に纏わりつく。見なくても龍誠はわかった。これはバラキエルの雷光だと。

 

朱乃は苦い顔をしているが、今はそんなときでないことは彼女だってわかっている。なのでなにも言わずにロキの方を見た。それと同時に、

 

「オラァ!」

 

龍誠のビートクローザーが遂にロキの不可視の壁を破壊し、ロキの体を深々と斬り裂く。

 

「ぐぅ!」

 

大きく後退りし、龍誠を睨み付けるロキ。その眼光を受けても龍誠は怯まずロキを見返す。

 

「どうだ!全員で力を合わせればお前にだって負けねぇ!」

 

だがロキは龍誠の言葉を聞くと、

 

「成程成程……お前達は実に面白いな。全く、こちらの予想を大きく上回ってくれる。実に面白い」

 

そう言いながらロキは、血がベットリと付いた服を脱ぎ捨て力を込める。すると胸の傷が塞がり、

 

「もっとギアをあげねばならんな」

『っ!』

 

ドン!と地面を蹴ったロキは、そのまま姿を消し、気がつくと龍誠の前にいた。

 

「なっ!?」

「ふん!」

 

ロキは龍誠の体を大きく後方に吹き飛ばし、次の瞬間には戦兎達の前に現れると、1・2・3と連続で拳を叩き込み、今度は祐斗達を蹴りで沈め、ギャスパーを裏拳で吹っ飛ばし、最後にヴァーリと匙を片手で投げて地面に叩きつけると、

 

「お前達の雷光は中々痛かったぞ」

 

と言いながらロキはまずバラキエルと比べて弱そうな朱乃の前に現れる。そして指をパキっと鳴らし、

 

「取り敢えず一人ずつ殺してやる」

 

そう言って貫手の要領で朱乃の胸に手を突き出した。だが、

 

「朱乃!」

「え?」

 

ビシャリと、朱乃の顔に赤い鮮血が飛び掛かる。一瞬何が起きたのかわからなかった。戦兎たちも、気付いたら吹き飛ばされており、事態を把握するのに戸惑っている間に起きた。

 

「ほほぅ?感動的じゃないか」

 

ズルッと腕を引き抜いたロキは、一瞬で最初に走り出したスタート位置に戻る。

 

「ふははははは!これは感動的だ!まさか最初に弱そうな方から狙ったら態々喰らってくれるとはな。愉快だ愉快!」

「ごふっ!」

 

胸に大穴が空いたバラキエルは、そのまま地面に倒れる。その様子を、朱乃は焦点の会わない目で見ていた。

 

「……」

「おいおい小娘。お前を守るために犠牲になったのだぞ?ありがとうくらい言ったらどうだ?」

 

ロキは楽しそうに笑いながら、朱乃に話しかける。そんな状況でも朱乃はブツブツ何かを言っている。

 

「わたしのせい……?ちがう……ちがう……」

 

朱乃の脳裏に浮かび上がったのは、幼き日に見た母が殺される瞬間の光景。自分を庇い母死んだ。そして今度は父が……

 

「そうだな!刺した私が言うのもなんだが……お前がいなければもっと別の結末だったかもな。全く、可愛そうな男だ」

「っ!」

 

ビキィ!と朱乃の中で何かがひび割れていく感覚。そうだ、あの時もそうだった。母も父も自分さえ……そう思った瞬間!

 

「やめなさい……朱乃」

「え?」

 

ゴフっと血を吐き、急いで飛ばしたアーシアの回復の光を受けながらも未だ重症のバラキエルが、ゆっくりと立ち上がる。

 

「いいか朱乃。どこぞの馬の骨とも知れん男とデートするのはまだいい。私を心底嫌い、恨んでも良い。だがな……」

 

バチバチ体から放電させ、バラキエルは朱乃に対して初めて怒りを見せる。

 

「間違っても……自分がいたのが間違いだと思ったり、ましてや口にするのだけは絶対に許さん!!!」

「っ!」

 

バラキエルの一喝は心底恐ろしくも、どこか暖かいそんな不思議な声音だった。

 

「悪神・ロキよ……貴公も神とはいえ知らぬことがあるようだ」

「なに?」

 

ロキは眉を寄せる。それを見ながらバラキエルは、ロキを見据えた。

 

「私を可愛そうだと言ったな。だが一つ言っておこう。私は可愛そうではない。何故だか分かるか?それはな、親にとって子供の命ほど重く、尊いものなど無い。もし、私の命で朱乃が助かるのなら、私は喜んでこの命を捧げよう。そして朱乃が生きてくれるなら……私がどれ程嫌われようと良い、生きてくれるなら……それ以上何も望まん」

 

バラキエルは再度咳き込み、だがそれでも眼光は消えることなく、

 

「貴公は知らない。神であろうとも……親の想いは貴様程度の男には一生理解できまい」

「ふふ、だがそれほどの傷を負って幾ら吠えたところで無意味だ。違うか?」

 

そう言ってロキは、ゆっくりとバラキエルに掌を向ける。

 

「ダメ!」

 

それを見た朱乃は無意識に前に飛び出し、バラキエルを庇う。

 

「朱乃!」

 

バラキエルもまた、咄嗟に朱乃を庇うべく体を前に出した。その時、

 

「なにっ!?」

 

二人の前に、巨大なドラゴンの翼が広がり、ロキの光弾を防ぐ。

 

「やらせねぇ……」

 

そう言ってドラゴンの力を解放した龍誠は、ロキに殴りかかる。

 

「ちぃ!」

 

だがロキも龍誠の拳の威力は知っている。なので先程の高速駆動を使って逃げるが、

 

「逃がすかぁ!」

 

匙の黒い龍脈(アブソブーション・ライン)がロキを追う。ただ追うのではない。普通であれば、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)は真っ直ぐにしか伸びないだが、匙のは今までのとは違い、最初に延びた数本から枝分かれするように何本も生え、更に枝分かれした先で、更に枝分かれしてロキを追い続ける。

 

そのためか段々逃げ場を塞がれていくのに焦りが出てきたのか、

 

「なら本体だ!」

 

と、ロキは匙に向けて飛ぶ。そこに、

 

《シングル!シングルフィニッシュ!》

 

ヴァーリの一撃がロキの脇腹に炸裂。ホンの一瞬、ロキはそれに気をとられた。それがロキの運命を分けた!

 

「捕らえた!」

「っ!」

 

何本にも枝分かれした黒い龍脈(アブソブーション・ライン)が、一斉にロキに巻き付く。更に、

 

「うぉおおりゃああああ!」

 

ドラゴンの翼で飛んだ龍誠は、そのままロキの顔面をぶん殴る。メキメキと音を立て、そのまま地面に叩きつけられるロキ。血を吐き、指一本動かせなくなっている状況に戦兎は、

 

「やっと、完全にもうどうしようもない程の隙を見せたな。ロキ!」

「しまっ!」

 

地面に叩きつけられたロキは、戦兎がドリルクラッシャーをソードモードにしてこちらに来るのを見て何かを感じ取ったらしい。だがもう遅い。

 

「お前はずっと警戒していた!なにせ自分を完全に倒すとしたらミョルニルしかないってことに気づいてたんだ!だからずっと気を抜かなかった、ずっと探してたんだろ?ミョルニルは誰が持ってるのかって!魔力に秀でたやつが異空間に隠してあるのか、それとも別の方法かって。だから中々隙が出来なくて困ったぜ……だがやっと、勝利の法則が決まった!」

 

戦兎はそう叫びながら金色のハンマーの模様が彫られた今まで見たこと無いボトルを取り出すと、それをドリルクラッシャーに挿す。そして、

 

《Ready Go!》

「ミョルニルってすげぇ重たくてよ。誰も持てねぇからどうすっかってなった。そして考えたのがこいつさ!ミョルニル自体がダメなら、ミョルニルの力だけを引き出せば良いってな!」

《ボルテックブレイク!》

 

ドリルクラッシャーの先に現れた、巨大な雷のオーラで形成されたハンマー。そう、このボトルに入っていたのはミョルニルだ。戦兎はミョルニルをなんとエンプティボトルに入れてフルボトル擬きにすることで使えるようにしたのだ。それがロキに振り下ろされる。だが、ロキはそれを受け止めて押し返すべく力を込めた。

 

「成程……確かにそれなら重くはないようだ。だが残念ながらミョルニルの力を100%引き出すのは無理なようだな。精々六割弱と言ったところか!」

「あぁそうだな。だがロキ……龍誠がいったはずだぜ?全員で力を合わせればお前にだって負けねぇってなぁ!」

 

そう戦兎がいった次の瞬間、ドリルクラッシャーのハンマーの部分に、魔力や仙術、更にはドラゴンのブレスや光が降り注ぎ更に押し込む。

 

見なくてもわかった。それはリアス達の援護だと。

 

「ぬぅ」

 

それを見たバラキエルは、自分も少しでも力になるべく力を集めるが、胸の傷が残った状態では難しそうだ。そうしていると、

 

「なっ」

 

そこに朱乃がソッと寄り添い、自分も堕天使の翼を広げてロキを見る。

 

「力を……貸してもらえますか?」

 

朱乃の絞り出すような声……それに対してバラキエルは優しく頷き、

 

「当然だ」

 

そう言って、親子二人の雷光は二倍……いや、累乗しても足りぬほど共鳴しあって高まると、それが一つとなりハンマーの部分に落ちる。

 

そうして更に押し込めるが、まだ足りない。ならばと今度は近接武器を持つ面子が、一気に自身の武器を手にハンマーの部分を叩く。

 

『はぁ!』

「くぅ!」

 

火花と爆音を散らし、どんどん押し込む。だがロキも負けじと押し返そうとしている。

 

《スクラップフィニッシュ!》

《スクラップブレイク!》

《ドラゴニックフィニッシュ!》

『オラァアアアアアア!』

 

そこにダメ押しとばかりにヴァーリ・匙・龍誠のトリプルキックが更にハンマーを押し込む。あと一歩だ。あと一歩押し込めれば勝てる。そう皆は確信した。

 

だが、その一歩が押しきれない。それはロキも気づいていた。なんだかんだ言いつつ全員疲労の色がある。このまま耐えしのげば必ず押し返す隙が出来る筈だ。

 

しかし、それを見逃す戦兎ではない。

 

「やっぱり最後は主役が締めねぇとな」

《ハザードオン!》

 

戦兎はそう言いながら、ハザードトリガーを起動する。そしてドリルクラッシャーから手を離し、ボトルを入れ換えながらジャンプ。

 

《ラビット!タンク!スーパーベストマッチ!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Are you ready?》

「ビルドアップ!」

《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!ヤベーイ!》

 

瞬時にハザードフォームに姿を変えた戦兎は、そのままレバーをまた回す。

 

《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!Ready Go!》

「これで終わりだ!ロキ!」

《ハザードアタック!》

 

高所から一気に落下し、渾身の蹴りをハンマーに叩き込む。その衝撃は、今までの均衡を崩すのには十分で、ロキは遂に耐えきれなくなり徐々にハンマーに押し潰されていく。

 

「ぐぁああああ!」

 

体が崩壊していく。指先から全身に走る雷と共に崩れ去っていく。

 

「ばか……なぁ……」

「お前は強かったぜ?ただまぁ、俺たち全員を相手にしたのがそもそも失敗だったな!」

 

戦兎はそう言い更に力を込め、最後の力を絞り出す。

 

「ハァアアアアアアアアア!」

 

爆発と閃光……そして稲光。それはロキを消し飛ばすほどの破壊力となり、

 

『プハァ!』

 

全員でその場に座り込む。だがそれでも、

 

「勝ち……だな」

 

と戦兎の言葉に皆は心の底から安堵しつつ頷くのだった。




朗報・戦兎。数話振りに出番があった上にロキにトドメを指すと言う快挙をあげる。

そう言えばVシネのグリスの情報も来てますね。今から楽しみですわ
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