ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「何とか誤解は解け、無事修学旅行に戻った俺たち。それにしても結局九重が見たビルドのそっくりって何者なんだろ?」
龍誠「実はお前が寝ぼけてたんじゃね?」
戦兎「寝ぼけて人様襲うわけないでしょうが!」
龍誠「でもお前寝相悪くて一緒に寝てたとき何度か殴られたぜ?」
戦兎「それいったらお前だって俺をベットから蹴落としたりしてるからな!」
匙「えぇと……そう言うわけで謎がまだまだ多い65話スタート」


京都観光

「きゃー!何この子可愛いんだけどー!」

「はーなーすーのーじゃー!」

 

修学旅行三日目、予定通り天龍寺についた戦兎達は、そこで金髪巫女服の少女(名前は九重と言うらしい)に出会った。

 

と言うか、三日目に天龍寺に行った後は土産物を買うついでにブラブラすると、先日あったときに伝えたところ、先日の謝罪も込めて京都の案内をすると言ってくれたのだ。

 

なのでありがたくその申し出を受け、案内をお願いしたのだが、九重を見た藍華がきゃーきゃー言いながら九重を抱き締めて遊び始めた。

 

九重は嫌がって身を捩るが、藍華は気にせず頬擦りする。それを暫く見ていたが適当な所で藍華を止め、

 

「それじゃ九重。案内を頼むぞ」

「う、うむ……」

 

戦兎と九重との間に微妙場空気が流れた。誤解は解けたものの、やはりビルドが母を誘拐したと言うのを見ているためかどこか緊張されてしまう。

 

戦兎は頭を掻きながらも、特にそれに関しては指摘せず九重を促した。それを見た藍華は、

 

「ねぇ、アイツあの子に何かしたの?」

「いやアイツはなにもしてないんだけど……」

 

冷や汗をかきながら、龍誠はモゴモゴと口を動かしたのは、まぁ余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで天龍寺を回り、その後も誰かに教えてもらったと思われる知識を存分に発揮しながら、九重は天龍寺以外にも様々な場所に案内してくれた。

 

それにしても京都はなんとか遺産が多い。そして遺産になってなくても歴史的に重要だったりするのが多く、中には写真撮影が禁止なのもあった。

 

まぁそれはそれとして、現在戦兎達は九重の案内で某湯豆腐屋に来ている。

 

「和の味……これはたまらないな」

「ホント美味しいです」

「豆腐の味からして違うわね!」

 

とキャイキャイ言い合う教会トリオを見ながら戦兎と龍誠が九重から湯豆腐を分けて貰っていると、

 

「楽しんでるみたいだね」

「木場か」

 

後ろから声をかけられ振り替えるとそこには祐斗が居た。

 

「どこ回ってたの?」

「天龍寺とかその周辺だな。午後は嵐山方面に向かう。そっちは?」

 

こっちは午後が天龍寺方面だよ、と戦兎と祐斗は話し合う。九重の母の誘拐何てものがあったためか、お互いの居場所はある程度は把握しておきたい。いざって言うときがあるし。

 

そんな時、

 

「わらしらってねぇ!あんなもうろくジジイのあいてなんぞよりかっこいいかれしみつけていちゃいちゃしたかったんれすよぉ!」

『ん?』

 

またもやどこかで聞いた声だ。なんだ?とそっちの方を見ればアザゼルがロスヴァイセに徳利を取られてそれを急ピッチで飲まれていた。そしてアザゼルはこっちの視線に気づいたらしく、ヘルプの視線を送ってくる。だが、

 

『いやぁ、湯豆腐うまいなぁ』

「おいぃ!」

 

スッと視線を逸らして食事に戻った。酒乱らしいロスヴァイセの相手はアザゼルに任せよう。どうせ昼間っから飲んでて説教喰らいそうだから無理矢理飲ませたんだろう。

 

(それにしても平和だ)

 

のんびりとした時間。平和な時間ってホント素晴らしい……そう思ったとき、ヌルリとした空気が戦兎たちを包み……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ!?」

 

突然周りの景色が変わった事に戦兎達は驚愕する。それだけじゃない。周りにいた藍華や、他の客も姿を消していた。その場にいるのはグレモリー眷属の皆や、アザゼルに九重だけだ。

 

「お前ら!武装して外に出るぞ!」

 

そう叫んだのはアザゼル。それにより皆は正気に帰り、気を引き締めて外に出る。

 

一応攻撃を警戒はしていたが、特に問題はなさそうだ。と少し安心しながら外に出ると、

 

「ん?よう、久し振りだな」

「てめぇは……」

 

戦兎たちを出迎えたのは、見覚えのある顔。この見覚えは二重の意味だ。

 

「りゅうせい?」

 

九重は声を漏らす。だが戦兎達は知っていた。こいつは違うと、

 

「兵藤 一誠…」

「久し振りだなぁ。修学旅行は楽しんでるか?」

 

そう言いながら一誠はこちらに歩み寄ってくる。すると、

 

「あ、そこの狐ちゃん。お母さんは元気だから心配するなよ?」

「なっ!まさか貴様が母様を!」

 

うん、そうだけど?何か戦兎たちを疑ってたみたいだけど……と言いながら一誠は笑い、

 

「それにしても本当はここでは英雄派が出てくるとこなんだけどなぁ……本来のメンバーのうち神滅具(ロンギヌス)保有者はごくごく普通の人間になってる処か曹操に至っては死んでるし……他の主要メンバーも行方不明だったり誘っても乗ってくれないし。やっぱ曹操みたくカリスマ性だったり人材発掘の才能がねぇからなぁ。まぁ、洗脳系の神器(セイクリットギア)使ったり、力付くで言うこと聞かせても全然良いんだけど、別にまだそこまで必要なわけじゃないからな。当面は俺と……」

 

そう一誠がブツブツ言う中、更に一人姿を現す。

 

「初めまして悪魔一行。俺の名前はジークフリート……って言えば分かる人はいるかな?結構これでも有名人なんだけど?」

「ジークフリート……まさか魔帝(カオスエッジ)・ジークか!?」

 

ゼノヴィアが驚愕の声を漏らし、イリナもあの!?と言っている。

 

「知ってるのか?」

「あぁ、元々教会の人間だ。確か五本の魔剣を持つ剣士でその実力は教会でも上位クラス。だがある日突然姿を消したと聞いていたが……」

 

と戦兎の問いにゼノヴィアは答えつつジークフリートを見る。

 

「まさかテロリストに荷担していたのか?」

「あぁ、そこの兵藤一誠に誘われてね。強いやつと会えるって聞いたから乗ったんだ。中々色んなやつと出会えるから楽しいぞ?」

 

何処となくフリードを思い出す表情をしながら、ジークフリートは腰の剣を一本抜く。

 

「と言うわけで兵藤 一誠。少し暴れて良いんだよな?」

「あぁ、好きにしな」

 

よぉし、と言いながらジークフリートは剣を構えた。だがその剣から溢れる邪悪なオーラに、戦兎たちの体が震える。

 

「聖剣……ではねぇよな。何か禍々しいし」

「あれは聖剣じゃねぇよ」

 

そう言いながらアザゼルはジークフリートを見て、

 

「ヴァーリの所にアーサーってやつがいただろ?そいつが持ってるのが聖王剣・コールブランド。あれが最強の聖剣とするなら、あれは最凶の魔剣。魔帝剣・グラムだ」

「流石アザゼル総督。博識だな」

 

そう言いながら、ジークフリートは走りだし、アザゼルが素早く人工神器(セイクリットギア)禁手化(バランスブレイク)を発動。金色の鎧をまとった瞬間、

 

「おっと、あんたは俺が相手をするよ」

《WelshDoragon!BalanceBreaker!》

「なっ!」

 

横からの赤い鎧を纏った一誠がアザゼルを蹴り飛ばし、吹っ飛ばした方に自分も飛んでいく。

 

「先生!」

「俺はいい!お前らも前を見ろ!」

 

体勢を建て直しながら、アザゼルは一誠を睨み付けた。

 

「てめぇ邪魔しないんじゃねぇのかと」

「ジークフリートに暴れていいとは言ったが、俺が戦わないとはいってない。それにだ、戦兎と龍誠が頑張ってくれないと俺が困るんだよ」

 

どう言うことだ?とアザゼルが疑問符を浮かべるが、一誠はヘラヘラと笑いながらベルトを着ける。

 

「さてさて、中々あんたも油断できないからな。少し本気でいくぜ」

《コブラ!ライダーシステム!エボリューション!Are you ready?》

「変身」

《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

変身を完了し、一誠は首をコキリと鳴らすと、

 

「行くぜ?」

 

と言い襲いかかる。一方、

 

『変身!』

《シュワッと弾ける! ラビットタンクスパークリング!イエイ! イエーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

 

戦兎と龍誠も変身し、ジークフリートに襲いかかる。だが、

 

「はぁ!」

 

ジークフリートはグラムだけで戦兎と龍誠の連携を捌く。更にそこに、

 

「はぁあああああ!」

「それが噂の聖魔剣か……だけど!」

 

ガギン!とグラムと聖魔剣がぶつかると、聖魔剣は簡単に砕け散ってしまう。

 

「くっ!」

「木場!チェンジだ!」

 

そう言って割り込んできたのはゼノヴィア。彼女のデュランダルはグラムとぶつかっても砕けることはない。だがそのパワーを相手にしてもジークフリートは、ヒラリヒラリと軽く避けてしまい、カウンター気味に振り抜いたグラムをゼノヴィアが危なげに避けながら距離を取る。

 

「く……当たれば倒せると思うのだがまず当たらないな」

「そりゃそうだろうな。これでも俺は人間だ。そっちの攻撃を一発でもまともに喰らえばKOだろう」

 

そっちの兵藤 一誠は心臓ぶち抜かれようが死なないけどな。と言うジークフリートに、戦兎はそう言えばディオドラとの一件の時に心臓をぶち抜かれてたが死んでいなかった。

 

神器(セイクリットギア)神滅具(ロンギヌス)かは分からないが、心臓ぶち抜かれても死なないって言うのは厄介すぎるよな……と思いながら戦兎はカイゾクハッシャーを構え、

 

《各駅停車!急行電車!快速電車!海賊電車!》

「いっけぇ!」

 

マックスまでチャージして放出。それをジークフリートはグラムでそれを切り裂く。すると、

 

「ん?」

 

戦兎が間合いを詰めてきている。だがそれ以外の面々がいない。ジークフリートの目にはドリルクラッシャーを手に突っ込んでくる戦兎と、更に後ろの方で九重と一緒にいるアーシアだけ。

 

『はぁあああああ!』

「ん?」

 

それもそのはず、戦兎の攻撃で一瞬意識をそっちに奪われた隙に、他の皆はジークフリートの死角に回り込んだのだ。

 

龍誠はビートクローザーを、祐斗は聖魔剣にゼノヴィアはデュランダル。そしてイリナが光の輪を作り出しジークフリートに襲いかかる。

 

幾らジークフリートが強くても一人だ。複数人で同時に襲い掛かれば対処にも限界が出る筈だ。そう思ったのだが、

 

「よっと!」

『なっ!』

 

戦兎たちの同時攻撃を、ジークフリートは受け止める。ただ受け止めたんじゃない。グラムは戦兎のドリルクラッシャーを止めるのに使ったが、何とジークフリートの背中から四本の腕が生え、腰の剣を引き抜くと死角からの一撃をそれで抑える。

 

「それぞれバルムンク・ノートゥング・ディルヴィング・ダインスレイブって言う魔剣でね。グラムには劣るがどれも一級品だ。そしてこの手は俺の神器(セイクリットギア)龍の手(トゥワイス・クリティカル)の亜種禁手(バランスブレイカー)である阿修羅と魔龍の宴(カオスエッジ・アスラ・レヴィッジ)。元々身体能力を2倍にするって言う特に珍しくもない神器(セイクリットギア)何だが、文字通り手数を増やせるから重宝している」

 

そう言ってジークフリートは押し返すと、持っている魔剣を全て地面に叩きつける。それにより爆発と衝撃波が生じ、全員が吹っ飛ばされた。

 

「がは……」

 

地面を転がる龍誠……そこに、

 

「随分ボロボロだな」

「てめぇ……」

 

顔を覗き込んでくるのは一誠だ。見てみれば背後の方で鎧がボロボロになったアザゼルが、膝を付いている。

 

「クソ!」

 

と龍誠は立ち上がり拳を握ると、一誠を殴る。が、

 

「ふむ、ハザードレベル4.2か。まだまだだな」

「ぐぁ……」

 

パシッと龍誠の拳をキャッチし、そのままグっと力を込める。それにより龍誠は膝を付き、苦悶の声を漏らしながら強制的に正座をさせられたような体勢になった。そこに、

 

「おぉおお!」

《Ready Go!スパークリングフィニッシュ!》

 

戦兎が炭酸の泡と共に、一誠に蹴りを放つ。だが、

 

「はぁ!」

 

一誠が腕を振ると、それと同時に爆発が起き戦兎は地面に落下。

 

「くぅ!」

 

だが戦兎は転がって衝撃を逃がしながら一誠と間合いを詰める。それを見た一誠は龍誠から手を離した。

 

「はぁ!」

 

ガリィ!と戦兎の腕の棘で一誠を切る。何度も何度も切る。だが一誠は微動だにせずゆっくり拳を握ると、

 

《Penetrate!》

「っ!」

 

ヤバイとなにか予感めいたものを感じた戦兎は咄嗟に防御体勢を取る。その瞬間一誠の拳が炸裂。だが戦兎は防御したし、咄嗟に全身を泡で被って防御力を上げた。なのに、

 

「がはっ!」

 

火花と小さな爆発。それと共に戦兎の変身は解除され、地面に倒れながら血をベチャっと吐く。

 

「戦兎さん!」

「なんだ……今のは。まるで衝撃がそのまま来たみたいだ」

 

ヒューヒュー音をたてながら呼吸をする戦兎に、一誠はフフっと鼻を鳴らしながら口を開く。

 

「ご名答。今のは攻撃をそのまま透過させて衝撃をそのまま叩き込んだのさ」

 

と一誠は肩を竦めながら、

 

「こいつは中々使えてな。これを使うと相手のどんな魔法的な防御でも物理的な防御力でも関係なく相手に直接叩き込める。赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)の能力さ」

赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)の能力は倍加と譲渡じゃないのか?」

 

あぁ、普通はな?と一誠は戦兎に答え、

 

「だが赤龍帝の籠手(ブーステット・ギア)白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)はそれぞれ特定の生物を封じて作ってあるからそいつが生前使っていた力を引き出すことも可能なんだよ。それが今のPenetrate(透過)だ。因みに白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)のはまた別の機会にな」

 

そう言いながら一誠は戦兎を見て、

 

「しかしお前はハザードレベル4.3か。少し上がったみたいだがまだまだ足りないな。お前も龍誠ももっと強くなってもらわないと困るんだが……」

 

と言っていると、

 

「舐めんなよ……」

「ん?」

 

背後からの声に一誠が振り替えると、

 

《ハザードオン!》

「へぇ?」

 

立ち上がっていた龍誠の手には何とハザードトリガーが握られていた。恐らくさっきぶっとばされたときに、戦兎が持っていたものが落ちて飛んだんだろう。

 

それを龍誠が拾い使おうとしているのだ。

 

「やめろ!龍誠!」

 

戦兎もそれを見て声を上げる。この場で暴走なんてされたら手のつけようがないからだ。だが龍誠は、

 

「これ以上こいつの好きにさせてたまるか!」

 

そう言ってハザードトリガーをベルトにつけ、レバーを回す。だが、

 

《ガタガタゴット……》

「あがっ!」

 

バチバチと突然龍誠の体が放電。そのまま龍誠は後退り、レバーから手を離すと同時にベルトからハザードトリガーが弾けて外れる。

 

「な、なんで……」

「当然だ。お前と戦兎は違う。戦兎はハザードトリガーやスパークリングなどの強化アイテムを使った外的要因によるハザードレベルの上昇を得意とするタイプだ。それに対してお前は感情をトリガーとした謂わば内的要因によるハザードレベルの上昇を得意とする。つまりお前じゃハザードトリガーを起動する事すらできないのさ。まぁこれからハザードレベルが上がれば分からないがな?だがそうだな……せっかくだし少しお前に真実を教えてやるか」

 

なに?と龍誠が一誠を見る。それから一誠は、

 

「俺はな。お前を昔から見ていた。どうやったらお前をもっと強く出来るか……感情の強い爆発を起こさなければならない。だが生半可なものではダメだ。しかし戦兎を使うわけにはいかない。何せ戦兎も利用価値はあるからな。そんな時だ。お前が特定の異性と親しくするようになったのはな」

「っ!」

 

ドクン!と龍誠の心臓が跳ね、冷たい汗が頬を伝う。嫌な予感がする。やめろ、やめてくれと言いたいが口が乾いてうまく動かない。そんな中一誠が続ける。

 

「確か名前は……そうそう、小倉 香澄だ。凄いだろ?記憶力は良いんだ」

「なんでお前がその名前を」

 

くくく、と一誠は笑う。仮面の下で分からないが、その顔は歪んだ笑みを浮かべていることは容易に想像できた。

 

「ある日の事さ。幼少の頃から親に勉強を強要され、小学校から有名私立に通い、中学高校とエレベーター。そして有名な大学に進学した。だがそこは天才の巣窟でな。今まで努力してきたがその程度はその大学では余りにもチンケなものだった。そうして現実に打ちのめされ、勉強しかしてこなかったそいつが引きこもりに堕ちるのにそこまで時間は掛からなかった。そんなある日のことだ。自分の家の前を何気なく見た時に仲良さげな男女の姿が目に入ったのはな」

 

その姿を見ると不思議とイライラしたらしい。と一誠は続け、

 

「何故勉強を頑張った自分がこうなり、なにも考えてなさそうなあの二人は幸せそうなんだと……まぁ逆恨みさ。だからそれを見た俺が少し背中を押してやったのさ」

「っ!」

 

カァッと龍誠の腹の中が熱くなるような感覚。それを見ながら一誠は笑い、

 

「おっと言っておくが俺は洗脳系の神器(セイクリットギア)で背中を押しただけだぜ?あいつがお前と彼女を妬んでいたのは本当さ。妬んで恨んでいたから俺がちょっと背中を押してやったんだ」

「やめろ……」

 

龍誠は呟く。だが一誠は、

 

「別にいいだろ?モブキャラ……いや、物語に登場してないからそれ未満のキャラクターだぜ?」

「っ!」

 

グツグツと、腹の中がの煮えたぎるような感覚。ビキビキとコメカミが痙攣する。ギリィっと歯が軋むほど噛み締め、変身していなかったら爪が掌にくい込んで血が出ていただろう。

 

「あ、そうそう。彼女の父親にお前責められただろ?あれもな、お前をもっと追い詰めてハザードレベル上げようと思って父親のお前への心に秘めていた感情を増幅してやったんだ。そしたらお前のハザードレベル上がるどころか腑抜けちなったなぁ。流石にやり過ぎたと焦ったよ。それからは少し放置していく方針に変えたんだ」

「お前だけは……」

 

バキバキと腕や背中のアーマーが砕け、有機的なフォルムのアーマーが飛び出し、低く声を出す龍誠は腰を落として、一気に飛び出した。

 

「俺がぶっ殺す!」

 

ガズッ!っと龍誠の拳が一誠の顔面に刺さる。

 

「ハザードレベル4.4……良いぞそれでいい」

「黙りやがれぇえええええ!」

 

龍誠の殴る衝撃で地面にヒビが入る中、一誠は気にせずレバーを回し、

 

「まぁ、その調子で強くなってくれよ」

《Ready Go!》

「はぁ!」

《エボルテックフィニッシュ!》

 

エネルギーを込めた回し蹴りで龍誠の横っ面を蹴り飛ばし、

 

「ぐぁ!」

《チャオ!》

 

ガァン!と吹っ飛ばされた龍誠は地面を転がり、そのまま変身が解除された。

 

「アーシア。龍誠の治療を!」

「は、はい!」

 

粗方治療が済んだ戦兎がアーシアに指示を出すと、

 

「そうそう。俺達は今夜二条城にて実験を行う予定でな。折角だ遊びに来ないか?まぁ、そこの九重の母親を見捨ててもいいって言うなら良いけどな」

『っ!』

 

全員が息を呑みながら驚く。ようはコイツは助けに来いと言っているのだ。そして、

 

「それじゃ、チャオ~」

 

そう言い残し、一誠はジークフリートと共に霧の中に消えて行き、

 

「お前ら!結界が消える!武装解除しろ!」

と言うアザゼルの声で慌てて皆は武装を解除し、ギリギリで何とか解除を完了し、

 

「……」

「龍誠さん?」

 

思ったほど傷も深くなかった龍誠はアーシアの治療も程々に膝を付くと、

 

「っ!」

『龍誠(さん)(くん)!?』

 

ガツゥ!と突然地面に額を叩きつけ、ポタポタと血が滴る。そして、

 

「悪い、頭に血が上った」

「だからって物理的に血を抜くんじゃねぇよ……」

 

と言う戦兎の突っ込みに龍誠は苦笑いし、

 

「もう大丈夫だ、次はちゃんと戦える」

 

本当にか?そう戦兎が改めて聞くと、

 

「俺が仮面ライダーだからな。アイツは許せねぇしぶっ倒す。でもさっきみたいなどす黒い感情のまま戦ったらダメだ」

 

これでもちゃんと自分なりに決着をつけたしな。そう言う龍誠に戦兎はそうかと言いながら、

 

(ロキ相手にも優位に戦えた龍誠のあの状態でもダメージを与えられなかった……)

 

これは相当不味い状況だ。そう戦兎が思いながら足を少し動かすと何かに当たった。

 

「ん?」

 

何かと思い、足元を見るとそこには一本の赤いフルボトルが落ちており、

 

(これは!)

 

咄嗟に戦兎は素早く拾い上げると、それはラビットフルボトルだ。だがなぜこれが?と首をかしげる。一瞬自分の落とし物か?と自分のポケット漁ったがちゃんとあった。

 

これでラビットフルボトルが二本。何故ここにそれが落ちているのか?と戦兎は思いながら、一誠の顔を思い浮かべる。

 

しかし、アイツが使ってたボトルは少し形状が違った。なら何故ここに?

 

いや、今は良いだろう。と戦兎は思い、ラビットフルボトルをしまう。

 

(まだ分からないこともある……ってことか)

 

そうして修学旅行も平和には終われないな、と戦兎はため息を吐く中、

 

「いやぁ、まだまだアイツらも伸び代があってよかったよ」

「そうだな」

 

一誠にジークフリートは同意していると、帰ってきた基地から別の誰かが出てきて、

 

「丁度良いところに帰ってきたな。兵藤 一誠。早速で悪いんだが、ラビットフルボトルを作って貰いたい」

「別にいいけど。なに?無くしたのか?」

 

そう言いながら、一誠は手からラビットフルボトルを作り出し、基地から出てきた男に投げ渡す。渡された男はそんなところだ、と言いつつ背を向けて歩き出す。

 

その姿は……ニンニンコミックの姿となったビルドと瓜二つだった。


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