ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「巨大化した部長(シャドウver)に苦戦を強いられる炎磨達。だがそこに巨大合体ロボをこっそり製作していたロボと炎磨達のセイレイメイオウが合体し、セイレイマオウになる!」
龍誠「物語もクライマックスだぜぇ!」
匙「俺も合体したかったなぁ……」
戦兎「ま、まぁそのうちチャンスあるって」
ヴァーリ「お前は良いじゃねぇか……俺なんか影も形もねぇぞ」
龍誠「ほらああいう奴もいるしな」
炎磨「そのてん俺は美味しかったな」
匙「ゲストの癖にぃいいいいいいい!」
戦兎「ってな感じでやっていく84話スタート」


善と悪

『完成!セイレイマオウ!』

「合体しちまったよ……」

 

ポカーンとしながらアザゼル達が驚愕してしまう。

 

「意外とできるものなんですね」

「俺も予想外だったよ」

 

ソーナにアザゼルが答えている間に、セイレイマオウはシャドウリアスに向かって高速で走り出し、飛び上がると雷を纏わせてシャドウリアスを蹴る。

 

更に素早く拳を青い炎で覆うと殴って怯ませ、離れたシャドウリアスに木の棘を撃って追い討ち。

 

『はぁ!』

 

そこに突風が吹き、シャドウリアスを風で持ち上げると、土が隆起し巨大な拳が形成され、その拳がシャドウリアスをぶん殴る。

 

「まだまだ!」

 

戦兎の声と共にセイレイマオウが疾走。吹っ飛んだシャドウリアスを先回りし、蒼い炎をまとわせた拳で殴って止め、今度は真っ赤な爆炎を脚に纏わせて回し蹴り。

 

それにシャドウリアスは後ろに後退りながら滅びの魔力を撃って反撃に出るが、高速移動で横に跳んで避けると、そのまま間合いを詰めて右手に風を、左手に土を纏わせて殴り、首に巻いたマフラーをムチのようにしならせて追撃。そこにまた走り込むとショルダータックルで吹っ飛ばし、

 

「今度はこれだ!」

「行くぜぇ!」

 

戦兎と龍誠の掛け声と共に、セイレイマオウの腕に巨大なドリルが現れ、青い炎を纏わせて回転させながらシャドウリアスに当てて攻撃。

 

「今度はこっちだ!」

 

と炎磨はセイレイジンの時にも出した剣を掛け声と共に出して空いてる方の手で持って、炎・雷・水・木の刺・風・土と次々纏わせる物を変えて切り裂く。

 

「そろそろ決めるか」

「あぁ」

 

炎磨と戦兎は少し前に出て並ぶと、

 

「折角だ。合体はそっちに合わせたんだし決め台詞はこっちに合わせてくれよ」

「なに?」

 

戦兎の突然の提案に炎磨は眉を寄せるが、

 

「まずはこうやってな……」

 

と戦兎は気にせず教えて、周りもそれを見た。そして戦兎がせーのと音頭を取り、

 

『勝利の法則は決まった!』

 

それと共にセイレイマオウは飛び上がり、周りにオーラで出来たサラマンダー達や、ウサギにドラゴンが現れ、クルリと回って急降下しながら次々とオーラは両足に取り込んでいく。名前は教えるついでに決めていて、

 

『セイレイマオウインパクト!』

 

そのドロップキックは、シャドウリアスに炸裂すると同時に後ろにガリガリと押していき、大爆発を起こしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『かんぱーい!』

 

シャドウ騒動の日の夜。旧校舎にて簡単なリアス救出成功祝い兼、まぁ炎磨達の歓迎祝い的なパーティーが行われた。とは言え、炎磨達は明日の朝には装置を使って帰るのだが。

 

「初めまして。麻比 雷華です。あ、高校2年で炎磨やこっちの流那とは同級生です」

「水嶋 流那です。先程はお世話になりました」

「木ノ本 琴葉……です。1年です」

「ふ、ふふふ吹上ぃ、風琥ぉ、ですぅ……さ、3年です」

「土田 早地。以後お見知りおきを。風琥と同じく3年ですわ」

 

とまぁそんな感じで向こうの自己紹介から始まり、こっちもして簡単な料理と飲み物でパーティーが始まる。

 

そんな中、

 

「よっ」

「……」

 

隅で一人飲み食いしていた炎磨の元に、戦兎がやって来た。それを見て炎磨はヘラっと笑うと、

 

「ようヒーロー。今日は大活躍だったな」

「そっちこそ態々仲間呼んでまで助けてくれただろ」

 

そんなんじゃねぇよ。と炎磨は首を横に振り、

 

「装置奪ってくれたし、最初会ったとき間違って襲っちまったからな」

「そういやそうだったな。てっきり忘れてると思ってたぜ」

「お前とあの塔城とかいうやつがシャドウってなんだとかお前は何者だとか言って質問攻めにされてタイミング逃さなきゃ謝る気ぐらいあったわ。お陰様で謝れない奴認定喰らったし!」

 

と、どこか虚空を見ながら炎磨が言うので、誰に言ってるんだ?と戦兎は突っ込みつついると炎磨は我に帰って、

 

「んで?何の用なんだ?」

「あぁいや、今回は助かった。礼を言うよ。お陰でうちの主も無事帰ってきたしな」

 

こっちも良い暇潰しにはなったよ。炎磨はそう言ってお菓子を口に放り込む。

 

「暇潰しね」

「あぁ、言っただろ?基本的に俺が戦うの暇潰しのためだぜ?まぁ、仲間のために位は命を賭けるけどな」

 

その仲間が彼女達ってことか?そう戦兎が問うと炎磨は頷き、

 

「この糞みたいな世界で信用できる唯一の存在だ。世界かアイツらかを並べられたら迷うことなくアイツらを選べる。寧ろ俺が世界を滅ぼしても良いくらいさ」

 

ヘラヘラと笑いながら、炎磨は言うので、戦兎はため息を吐くと、

 

「ホント、お前とは全く意見が合いそうにないよ」

「俺もアンタとは友達にはなれそうにないな」

 

そう言いながら炎磨は人差し指を立てて戦兎の胸に当てると縦に真っ直ぐ下ろしていく。

 

「ただアンタの本性は気になるね。愛と平和のために戦うんだっけ?仮面ライダーってさ。でも人間……って悪魔か?まぁ良いや。とにかくどんな綺麗事を言っても生き物てのはいざってときは自分にとって利益がある方に走るものだからなぁ。あんたはどんな掌返しを見せるのかな?それとも最後までそれ貫いて早死にかな?」

「悪いな。俺は子孫に囲まれて畳の上で大往生と決めてるんだ」

 

戦兎は炎磨の顔を覗き込みながら言う。

 

「俺はまだ未練があるんでね」

「未練があるならそっち優先した方がいいぜ?ヒーローなんてやめちまえよ」

 

炎磨はそう言って両手を広げて見せる。

 

「この範囲だ。俺もあんたも手を伸ばしたところでこの範囲しか届かない。走ればもう少し遠くまでいくかもだけどたかが知れてる。だったら最初から世界なんてだだっ広いのを守るのなんて無理だよ。だからせめて近くに仲間集めといてそこにいる方が効率的だし確実だろ?ヒーローなんてしてたらあっちこっち行かなきゃならんし一番大切なものが危ないとき側にいてやれないぜ?」

「そのための力だろ?俺もお前も力がある。頑張れば遠くにいる奴だって助けられる」

「見ず知らずの赤の他人のためにそんな無茶をするのか?理解できないよ俺には。信用もできない奴にさ」

 

信用できる奴かどうかは助けてから考えれば良いだろ?戦兎はそう言い返す。だが炎磨は、

 

「じゃあ信用できないと助けたあとにわかったら?そうだなぁ……そいつはどうしようもないクズ野郎でそいつを助けて生きてたがゆえにその後善良な人間が殺されでもしたら?あんたはそいつが起こす事件全て止めるのか?それとも助けた後に話し合いか?もしくは助けた後に殺すか?」

「正直わからない。まだそういう事態になったことがないからな。でも俺はそれでも助けると思う。それでも……変わってくれることを信じたいからな。危ない目に遭えば考えを変えてくれるって。生まれながらの悪人はいない。色んな事情があって変わって悪になるならまた悪から善に反転できるかもしれない。それでもダメなら……俺が責任をもって倒すよ」

 

性善説だねぇ。ケラケラと炎磨は笑い、

 

「俺は信じられないからなぁ。人間なんて生まれながら糞みたいな存在だと思ってるしだからそんなだから善人の仮面を被りたいから法を定めてると思ってる。そんなやつらのために命賭けるなんて馬鹿げてる。だから誰を助けるかは俺が自分で選ぶ。信用できて死んでほしくない奴。それ以外は知ったこっちゃない。わかりやすいだろ?」

「さながら性悪説だな。疲れないか?そんなに疑ってばかりいてよ」

「全然。寧ろ気楽だよ。それに特定のやつらは信じてるんだからな」

 

炎磨はまた口にお菓子を放り込みながらヘラヘラ笑い、

 

「だから俺はこれからも変わらない。信じたい奴だけ信じて、それ以外は捨てて暇潰しに戦う。あんた達の言う愛と平和なんていう胡散臭い理由何かじゃ断じてない。こんな正義もない世界でヒーローなんてバカなことやるくらいなら、自分の思うように戦うんだ」

 

そう言って炎磨は背を向けて別の隅に移動しようとするので、

 

「最後に一つ良いか?」

「うん?」

 

顔だけ戦兎に向け、炎磨は少し振り替えると、

 

「お前、口じゃ赤の他人なんてどうでも良いしどうなろうが知ったことじゃないと言うよな?」

「口じゃ?」

 

炎磨は戦兎の言い方に少し眉を寄せた。そしてそれを見ながら戦兎は、

 

「だけどよ、じゃあなんでお前は最初に会った時に塔城に会ったときに大丈夫か?って聞いたんだ?本当にどうでも良いなら、そんなこと聞かないはずだし、そもそも助けにも入らないはずだ。それとも帰る手がかりだったから?いや、あそこで助けにはいる必要性はない。お前が俺をハイシャドウ勘違いしてたなら、様子見を決め込むはずだ。そして、それだけ大事な仲間なら何で戦う?そんだけ大事なら暇潰しに巻き込むのか?」

「……」

 

ゾクリと戦兎の背中に冷たいものが走る。さっきまでヘラヘラと笑っていた炎磨の眼から笑みは消え、空虚でどこまでも深い闇が垣間見えた気がした。

 

「まぁまず戦う理由か?そうだな。どうせ俺が行かなくてもアイツらはお人好しだから行くんだよ。俺が何を言ってもな。だったら最初から俺も暇潰しついでに一緒に戦う方がいい。何事も楽しんだ方がいいからな。そして塔城?って子に言ったことだが……そんなこと言った覚えはない。聞き間違いじゃないか?後割り込んだ理由は単純に直接聞いた方が早いと思ったからだ」

 

と言い残し、炎磨は別の隅に移動してしまった。するとそれと入れ替わるように、

 

「あの……」

「ん?あぁ、確か水嶋だっけ?」

 

はい、と良いながら流那はやってくると、

 

「今回はありがとうございました」

「いや、こっちも助かったからお相子だよ」

 

どうも流那は腰が低いため、戦兎としてはかなり相手がしにくい。こっちまでヘコヘコしてしまう。

 

「それにしても炎磨また失礼なこと言いませんでした?」

「いや、俺の方から行ったし特に気にすることはなかったよ」

 

そうですか、と流那は少し安心したような表情を浮かべ、

 

「すいません。アイツホントに根性がネジ曲がってるので……」

「大変そうだな」

 

戦兎が同情してそう言うと、

 

「昔は炎磨もああじゃなかったんですよ。ぶっきらぼうなのは変わらないけどお母さんに似て優しいところもあって……」

「そうか。そいつは炎磨のお母さんって人は素敵な人だったんだな」

 

懐かしむように言う流那に、戦兎は頷くと、

 

「えぇ、でも今のアイツも全部悪気がある訳じゃないんです。特にその……愛と平和のために戦うって言うのをバカにしたのも」

「え?」

 

少し流那は迷いながら口を開き、

 

「炎磨のお母さんはお医者さんで海外で戦地の医療支援のリーダーをやってた人なんです。綺麗で優しい人で……当時は現代のナイチンゲールなんて呼ばれてたんですよ?今も言ってたのを覚えてます。そこに困ってる人がいるのなら手を伸ばすんだって。すぐには無理でも、いつか争いのない愛と平和が……ラブ&ピースが当たり前の世界になってほしいって。このラブ&ピースって炎磨のお母さんが活動していたチームの理念でもありましたから。そんなお母さんを炎磨や炎磨のお兄さんは大好きでした」

「凄いな」

 

まさか別の世界でもラブ&ピースを胸に活動している人達が居たことに、戦兎は少し驚いていた。

 

(つうかあいつ兄貴いたのか……って待てよ?)

 

だがふと気づく。さっきから流那の言い方が、何処か過ぎた過去の話をしていたことに。すると、

 

「でも炎磨と私が小6の時、炎磨のお母さんはある国の激戦地の支援にいってたんです。と言っても中心地じゃなくて離れてる場所ではあったんですが、戦争が激化する中炎磨のお母さん達がいたところに攻撃が来て、炎磨のお母さん達は……」

「そうだったのか」

 

流那の言葉で、どう言った結末なのかは想像できた。しかしまだ話は続き、

 

「そしたら世間の反応は一変しました。今まであれだけ持ち上げてたのに世間はあっという間に炎磨のお母さんを批判し始めて、避難せずに患者も団体のメンバーも全員死なせた役立たずって言い始めましてね。テレビなんか連日酷かったんですよ?現代のナイチンゲールの隠された素顔とか裏の顔とか銘打って、それはもうワイドショーで報道されたり、週刊紙で好き勝手書かれたり、SNSも大炎上。極めつけに報道関係者の連日突貫取材と来ましたからね」

「そっちの世界の人間ってのはロクなのいねぇな」

 

思わず戦兎が苦笑いを浮かべると、流那はそうですねと言い、

 

「まぁ炎磨のお父さんの家ってお金持ち何でメディアとかが食い付きやすかったって言うのもあるんですけどね」

「アイツボンボンだったのか……」

 

見た感じそう言う風には見えなかったが、意外な一面ではある。

 

「それからですね。炎磨が人に対して冷たくなったのは。きっと愛と平和なんてって言うのも、あの時あれだけ母親を持ち上げて、流行語になるほどだったのに、掌を返して嘲笑に変えた人達を思い出しちゃうからだと思います。アイツにとって愛と平和は……ラブ&ピースは、お母さんの代名詞でもあり、あの人を嘲笑する言葉の象徴なんです」

「……」

「まぁ、アイツの根性の悪さは事実なのでこれからも矯正してく予定ですけどね」

「優しいんだな」

 

そんなんじゃありません。と流那は言う。

 

「罪悪感、もしくは贖罪ですよ。私はアイツが辛かった時に一緒にいてあげれなかった。アイツに助けられたのに逃げて……結局掌を返した人達と同じことをしただけです。だから今度は絶対逃げたくない。それだけなんですよ」

 

力なく笑う流那に、戦兎はどう言うことか問おうとしたその時、

 

「さぁ皆さん!デザートですよ」

『げっ!』

 

ソーナがそれはもう巨大なケーキを持って部屋に入って来て、思わず戦兎達は悲鳴をあげてしまった。その反応にソーナは首をかしげ、皆は慌てて何でもないと答えつつも、

 

「どうすんだよ戦兎!俺たちならまだしもあっちは……」

「あぁ」

 

匙と戦兎が見る先にいるのは炎磨達。真っ先にケーキを貰ってフォークを手にケーキを口に運び、

 

『っ!』

 

ピキィ!と空気が固まった。と言うか空気だけじゃなくて表情まで固まり、炎磨は口を開くと、

 

「なんだこれ!不味「おっと炎磨!そんなにお気に召したのかなぁ!」むぐぉ!」

 

不味いと言おうとした炎磨の口に、雷華が素早く大きめに自分のケーキをフォークでカットし、炎磨の口に押し込んだ。まさにその早業は雷の如くである。

 

「あ、そんなに気に入ったなら私のもあげるね」

「先輩どうぞ……」

「あ、えと……あ、あげます!」

「まぁ仕方ないですわね」

 

と流那、琴葉に風琥と早地も矢継ぎ早に炎磨の口に押し込み、

 

「アイツ死んだんじゃねぇか?」

「あぁ……」

 

思わず合掌したくなるが、それをやるとダメージがあるため止めておく。だが、

 

「そんなにお気に召したんですか?それでしたらまだたっぷりありますからどうぞ!」

 

と追加をソーナが持ってきて、

 

『……』

 

多分雷華達の絶望に染まった顔は、この先も忘れられそうにない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……』

 

ブゥン!と道路をバイクが駆ける。それには前に戦兎、後ろには小猫が乗っていた。

 

さて炎磨達が装置によって自分の世界に帰ってから二日。先日借りた漫画を読み終えたので、また小猫の部屋に行って漫画の続きを持ってきている最中だった。すると、

 

「ん?」

 

道路の脇を歩く見覚えのあるシルエットに、戦兎はバイクを止めると、

 

「シェムハザさん?」

「む?」

 

間違いなかった。片手で数えるほどしか会ってないが、何度がアザゼルに会いに来ているのを見ていたため、多少は知っている。

 

現在はアザゼルがこっちに掛かりきりなため、実質堕天使を取り仕切っているシェムハザだ。

 

「あぁ、桐生 戦兎に塔城 小猫ですか。丁度いい、アザゼルのバカは知りませんか?」

「アザゼル先生?あの人なら傷心旅行にいくとか行って旅立っちゃいましたよ?」

 

戦兎が言うように、先日の巨大ロボ戦の後、強引な合体のせいかアザゼルが作ったウサギとドラゴンのロボは大破し、アザゼルは絶望した!とかいって何処かへ傷心旅行に行ってしまったのだが、シェムハザは静かに何やら書類を見せると、その紙に書かれた数字に戦兎と小猫は眼を見開く。

 

「こ、この金額は?」

「アザゼルがうち名義に請求書を送ってきましてね。何やら知らない間に巨大ロボを製作してたようですが、少しお話ししようかと」

 

フフフとシェムハザはコメカミをビクンビクンと躍動させながら不気味に笑い、そのまま何処かへ消えていく。

 

「こりゃ暫くアザゼル先生帰ってこれねぇな」

「ですね」

 

そんなやり取りをして、戦兎は改めてエンジンを吹かしつつバイクを走らせた。すると、

 

「そういえば先輩」

「ん?」

「火乃 炎磨さんとは意見は合わないにせよ、余り反発はしませんでしたよね?てっきりもっとラブ&ピースの事を笑われたときは怒るかと思いましたよ」

 

そう言えばそうかもな。と戦兎は言いながらバイクを走らせる。

 

「まぁ、なんだかんだ言おうとお前を助けてくれたしな。そいつを無下にはできないだろ」

「なんですか?それ」

 

そう言いながら小猫は戦兎の腰に回した腕に少しだけ力を込める。少し冷えてきて、バイクでの移動が少し大変になってきたものの、火照った頬には丁度いい。

 

「さ、飛ばすぞ!」

「はい!」

 

戦兎がそう言うと小猫は答え、バイクは速度を上げる。一方その頃、

 

「ふわぁ……」

 

先日に無事装置で元の世界に帰って来た炎磨は、大きな欠伸をした。帰ってきてから二日経ったが、どうも疲れが取れない。

 

【じゃあなんでお前は最初に会った時に塔城に会ったときに大丈夫か?って聞いたんだ?】

「……」

 

苛々する。口から思わずでた大丈夫かも、最初に桐生 戦兎をハイシャドウと勘違いしたときに感じた、ハイシャドウとシャドウが何故か戦ってて、そこに一般人(小猫と気絶した女性)がいて危ないと思ってしまい、何か話していたのも聞こえず突っ込む小猫が間合いを詰めきる前に思わず間に入ったのも、全部自分らしくない。

 

特にあの目だ。桐生 戦兎のあの目。記憶の奥に追いやった母と同じ目。そしてそれと共に一緒に思い起こされる裏切りの記憶。これだったら最初に桐生 戦兎が死んだと思ったとき、手ぐらい合わせるかと思い戻るべきじゃなかったかもしれない。嫌だがそうすると帰ってこれなかったし……

 

(気にくわねぇな)

 

そんな胸にどろどろとした感覚が渦巻いていると、

 

「なーに暗い顔してんだよ!」

「いっで!」

 

バチコーン!と背中を叩かれ、炎磨は悲鳴を上げ、後ろを振り替えると、

 

「よ、帰ろうぜ」

「雷華……皆」

 

私もいるわよ、と流那も含めた他の面子も居た。

 

「はぁ、それで?今日はどこ寄っていくんだ?」

『じゃあ!』

 

炎磨の提案に、皆はそれぞれ好き勝手に行きたいところを言っていく。女は三人寄れば姦しいので、それが五人も居れば簡単に決まるわけもなく、

 

「じゃあ炎磨!お前はどこが良いんだ!?」

 

と結局最後の決定権を委ねられるのだ。そしていつも決まってこう答える。

 

「何処でも良い」

『それが一番困(るんだよ)(るのよ)(ります)(りますわ)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いわね」

 

ある場所で、一誠に装置を受け取り、ポイメデは装置を起動させ、そのまま姿が消えてしまう。そこにジークフリートが来て、

 

「しかし何でアイツに手を貸したんだ?」

「あぁ、これだよ」

 

一誠は装置を見せ、

 

「これで面白そうな事を考えてな」

 

そう言って、一誠はニヤリと邪悪な笑みを浮かべるのだった。




多分皆さん閻魔のその後の言動や行動に目が行って気づいてないなぁ~と思いながら見ていたのですが、炎磨って他人の事をあれこれ言うわりに、最初の時にちゃんと小猫の事を心配してるんですよね。ホントにそう思ってたら、多分なにも言わないはずなんですよ。態々最初の巨大化戦後も戻ってきてましたしね。それにこれは少し分かりにくかったかもなのですが、最初の出会いの場面って炎磨視点で見ると、ハイシャドウとシャドウが喧嘩して、一見一般人の小猫と女性という場面にも見えるんですよね。先輩と呼ぶ場面を見ないで駆け付けたときにその場面だけ見て、炎磨は割って入ってるんですよね。本当なら様子見しても良かった筈なのにです。

まぁ炎磨は作中でも言われてるように根性が歪んでるので、一概にやっぱりいい人とも言えませんが、それでも心のどこかにはまだヒーローの心の種火が燻ってる奴ではあるんですよね。炎磨自身も自分の変化に戸惑いつつこれからその種火が大きくなっていく……と言うのがエレメンジャーの大まかなストーリーではあります。

まぁその辺は次回にキャラ説的なのを出して少し掘り下げて説明した後に漸く本編に戻ります。本編は原作11巻の辺りになりますので、よろしくお願いします。

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