ハイスクールD×D Be The One   作:ユウジン

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前回までのハイスクールD×D Be The Oneは……

戦兎「試験勉強等々と戦いながら日々を過ごす俺たち……だがそんな中」
匙「ってなに普通に始めようとしてんだ!お前なんで塔城さんの気持ちスルーしてたんだよ!」
戦兎「……えぇとどこまで話したっけかな」
ヴァーリ「無視すんな!口を割らせるぞ!」
サイラオーグ「おう!」
戦兎「やーめーてー!」
龍誠「そんな感じで90話始まるよー」


真実

「お邪魔します~ってあれ?皆集まってどうしたんだ?」

 

ガチャリと匙がドアを開けて部屋に入ると、何故かリアスと戦兎がおらず、葬式みたいな雰囲気になっていた。

 

「なんだ?全員揃って神妙な顔しやがって」

「ふむ、何かあったのか?」

 

と言って続いて入ってきたのは、ヴァーリとサイラオーグ、更にフウとライである。

 

ここ最近は匙とヴァーリ、そしてサイラオーグはよくトレーニングに3人で繰り出している。と言うのも、3人が使うスクラッシュドライバーは戦えば戦うほど、ハザードレベルが上がると言う仕様上3人で戦うのは都合が良いのだ。そんな中、

 

『え?』

 

ん?とサイラオーグが自分に集まった視線に首を傾げると、

 

「サイラオーグさん。その服どうしたんですか?」

「これか?」

 

そう言って見せてくるサイラオーグの服装は、革ジャンにジーンズである。ここ数日見ていたが、ビニール生地の変なピンク色の服装だったり、どこぞの民族衣装みたいな服だったりと、本当にどこで売ってるのかと聞きたかった。因みにライに聞いたところ、

 

「俺達だって思うところはある。でもサイラオーグ様は基本的に質素倹約に勤めている。だがたまに自分の服を馴染みの店で格安でオーダーメイドと言うのが数少ないサイラオーグ様の趣味なんだ。それを言えると思うのか!?」

 

とのこと。フウも含めた他の眷属もそうらしい。だが何故か今日は割りと普通だ。どう言うことだ?と思っていると、

 

「クィーシャがな。何時もの服も良いがそれではいざというとき動きにくいでしょうって言い出してな。オーフィスの事は話していないが、それでも今少し事件に巻き込まれていることは伝えている。その心配を無下にはできないだろう。まぁ余り俺の趣味ではないんだが……」

「そ、そうですか~」

 

龍誠は頷き、皆も苦笑いを浮かべる。

 

「そっちのクイーン大変だな」

「まぁクィーシャの姉御はなぁ」

 

匙がボソボソ話し、ライは苦笑いを浮かべる。それから、

 

「それで結局戦兎はどうしたんだ?」

 

と、最近美空にフルネームで呼ぶのは変じゃないかと言われて名前呼びに直したヴァーリが聞くと、

 

「それが……」

 

祐斗が今来た三人に話すと、

 

『はぁ?』

「はい?」

 

聞いた皆はポカーンとしながらそう呟き、

 

「んで今リアス先輩と面談って訳か?」

「まあね」

 

匙に祐斗は返しつついるとサイラオーグは、

 

「だが桐生戦兎はそう言った事に対して無視をするようなやつには思えないんだが……」

「えぇ、そこは僕たちもちょっと気になってたんですよ。だから一回部長とだけって話になりました」

 

そんなやり取りを見ていた黒歌は龍誠を見て、

 

「てゆーかさー。あんたは理由知らないわけ?」

「お、俺?いや俺も理由までは……」

 

流石に分からない。そう龍誠は言う。そこに、

 

「皆さん集まってどうしたんですか?」

『っ!』

 

入ってきた小猫に、皆は飛び上がりそうになりながらも、

 

『な、何にも?』

「?」

 

首を横に振ってにっこり笑顔。そんな光景に小猫は訝しげな表情を浮かべる中、

 

「それで戦兎。いつまで黙ってるつもりかしら?」

「黙秘権」

 

戦兎はそう短く言うとリアスは、

 

「貴方に黙秘権はないわ。序でに人権と尊厳もないわ」

「人権と尊厳まで!?日本の法律で認められてますよね!?」

「悪魔に人間の法律は関係ないもの」

 

というのは冗談だけどね?そう言いながらリアスは戦兎を見て、

 

「私だけじゃない。皆も今回の戦兎の件には驚いてる。だって皆分かってるもの。戦兎が意味もなくこう言うことはしないって。だからもし話したくない。話せないって言うならそう言って欲しいの。それなら私の方からも上手く誤魔化すわ。でもそうじゃないなら教えて欲しいの。何で小猫の気持ちに気づかない振りをしてたのかをね」

「別に言えないと言う訳じゃないですけど……」

 

バリバリと戦兎は頭を掻いてから、

 

「はぁ。これ、龍誠にだけは言わないでくださいよ」

「え?えぇ」

 

戦兎に突然言われ、リアスは少し驚きながら頷く。そして、

 

「俺……」

 

始めた次の瞬間。戦兎達はヌルリとした空気に包まれ気がつくと、

 

『え?』

 

戦兎達は知らない建物のロビーに集められていた。そこに、

 

「アーシア!イリナ!」

 

龍誠が叫ぶ中、2人に飛んでいったのは火炎弾。それを弾いたのは、

 

「オーフィス?」

 

龍誠の視線の先には、最近今の二人とトランプやお茶をしている(と言うかイリナが引っ張って行く)オーフィスが弾いたところで、

 

「ふむ。流石に効かないか」

 

そう言って笑っているのは一誠。つまりこの状況もこいつが原因と言う所だろう。

 

「てめぇ、なにしに来やがった!」

「ん?あぁ、オーフィスがここにいるのは分かってたからな。だから皆をご招待したんだよ。とは言え、本来居ないやつがいたり居るやつがいなかったりしてるが……」

 

と一誠はロビーに降り立ちながら、

 

「さて、一応話し合いと行こう。オーフィスを渡してもらおうか」

『断る!』

 

そう宣言し、戦兎達はベルトを装着。

 

《マックスハザードオン!ラビット!ラビット&ラビット!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》

《ウェイクアップ!クローズドラゴン!》

《ロボットゼリー!》

《ドラゴンゼリー!》

《デンジャー!クロコダイル!》

《ギアエンジン!ギアリモコン!ファンキーマッチ!》

『変身!』

『潤動!』

《紅のスピーディージャンパー!ラビットラビット!ヤベーイ!ハエーイ!》

《Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!ブラァ!》

《潰れる!流れる!溢れ出る!ドラゴンインクローズチャージ!ブラァ!》

《割れる!食われる!砕け散る!クロコダイルインローグ!オラァ!キャー!》

《フィーバー!パーフェクト!》

 

全員変身を終え、一誠を見る。その視線を浴びながら一誠もベルトを装着し、

 

「ま、そうなるか。いいさ、それも望むところだ」

《コブラ!ライダーシステム!エボリューション!Are you ready?》

「変身!」

《コブラ!コブラ!エボルコブラ!フッハッハッハッハッハッハ!》

 

一誠も変身を終え、ゆっくりと片手を上げる。すると彼の周りに魔獣が現れる。

 

「行け!」

「来るぞ!」

 

一誠の号令で一気に襲いかかってくる魔獣に皆はすぐさま反撃に出る。

 

「ちっ!一体一体は大したことはないが数が多いな」

「匙!これ使え!」

 

文句を言う匙に、戦兎は忍者フルボトルを投げ渡す。

 

「成程ね」

《チャージボトル!ツブレナーイ!》

 

スクラッシュドライバーにボトルを挿し、レバーを下ろすと、

 

《チャージクラッシュ!》

 

匙は分身し、黒い龍脈(アブソブーション・ライン)をそれぞれ発射すると魔獣を纏めて捉え、

 

「ヴァーリ!」

「おう!」

 

とヴァーリに戦兎はキリンフルボトルを投げ渡して、

 

《シングル!シングルフィニッシュ!》

《ライオン!トラ!キリン!クマ!アルティメットマッチデース!アルティメットマッチブレイク!》

 

ヴァーリと戦兎は同時に二人で黄色いオーラの弾丸を発射し、匙が捉えた魔獣達を蹴散らす。

 

「俺達も!」

『あぁ!』

 

龍誠とフウとライは武器を構え、龍誠はクリップエンドを引き、フウとライは巨大な歯車を形成。そして、

 

《ヒッパレー!ヒッパレー!ヒッパレー!メガヒット!》

『はぁ!』

 

二人と一人の攻撃が残る魔獣を撃破。

 

「成程。もうこの程度の魔獣じゃ勝負にもならないか……ん?」

「おぉ!」

 

ローグへと変身したサイラオーグの拳が一誠に炸裂……だがそれをキャッチして止めると、一誠は蹴りを放って反撃。

 

「ぐっ!」

 

防御力が自慢のサイラオーグのローグをもってしても、一誠の仮面ライダーエボルの一撃は脅威で、簡単に後ずさってしまう。だがそこに入れ替わるように、

 

「やぁ!」

「はぁ!」

 

祐斗とゼノヴィアが剣を振り上げて襲い掛かる。だが、

 

「ふん!」

『っ!』

 

一誠はデュランダルを作り出し、そのまま横凪ぎ。その際の生じた光の衝撃波は、ゼノヴィアが咄嗟に同じく光の衝撃波を撃って打ち消しあったが、その際に生じた衝撃だけでも二人を壁に叩きつけ、

 

「この!」

「いきます!」

 

黒歌とルフェイの仙術と魔術の連携には、

 

「んじゃ半減っと」

《Half Dimension!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!Divide!》

 

一誠の元に届く頃には米粒みたいな攻撃に変えられた上に、

 

「半減して取り込んだ力を倍加」

《Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!》

 

肩に赤い砲身みたいなものを出し、光線を発射。

 

(やば!)

 

黒歌は咄嗟にルフェイを引っ張って横に飛ぶと、さっきまで居たところが爆発し、二人は地面を転がる。

 

『はぁあああああ!』

「やぁ!」

 

しかし、その隙をついてリアスと朱乃レイヴェルのそれぞれが放った、滅びの魔力と雷に炎がバリバリと一誠を襲い、

 

「いきます!」

 

猫耳と尻尾を出して、仙術をフルに使えるようになった小猫は、一誠の横っ面一発叩き込み、距離を取った。だが、

 

「いてて、流石にモロに喰らうと結構痛いな」

「嘘……今仙術で氣を乱した筈なのに」

 

小猫が驚愕する中、一誠は首をコキコキと回し、

 

「俺は仙術も使えるぜ?例えお前は俺の氣を乱そうとしても余裕で無効化できるくらいにはな」

 

そう言って間合いを詰めようとする一誠に、

 

「させるか!」

《ヤベーイ!ツエーイ!》

 

と戦兎がタンクタンクフォームになりながら、フルボトルバスターを一誠に叩きつける。

 

「オラオラァ!」

「む!?」

 

一誠は少し驚きながら押し込んでくる戦兎を誉める。

 

「成程、これは驚いた。もうフェーズ1だけでは俺に迫るか」

「迫るだけじゃねぇ!」

「くっ!」

 

戦兎はそう言いながら肩の砲身を前に向け、一誠に向かって発射。それをモロに喰らって一誠は後ろに吹っ飛び、

 

《フルフルマッチデース!フルフルマッチブレイク!》

「いっけぇ!」

 

追撃を入れて爆発。どうだ?と皆が見守る中、

 

「くくく……アッハッハッハ!こいつは驚きだ。まさかバグキャラ風情がここまでやるとはな」

「なに?」

 

バグキャラ?と戦兎達は首を傾げると、

 

「そうかそうか。まだ話してなかったもんなぁ。良いだろう。話してやるよ。俺が何者なのかも含めてな」

 

一誠はそう言って煙の中から無傷の姿で現れると、

 

「この世界はな、小説の世界なんだよ」

『は?』

 

突然の一誠の言葉に、皆はポカンとしてしまう。

 

「名前は【ハイスクールD×D】。主人公は赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を宿したおっぱいが大好きなこと以外普通の高校生。兵藤 一誠が悪魔になってリアス・グレモリーを主として様々な出来事を乗り越えていきながら女の子にモテモテになってハーレムを作るって言う内容でな。俺はこれが好きだったんだよ。そしてそんなある日さ。居眠り運転したトラックが俺に突っ込んでよぉ。お陰で即死。でもそしたら神様を名乗るやつが好きな世界に生まれ変わらせてくれるっていってくれてな?だからこの世界に転生してきた。序でに色々特典も付けて貰ったんだよ。無限の才能とか神器創造(セイクリットクリエイター)とか諸々。神滅具(ロンギヌス)独り占めもそうさ。ホントなら神滅具(ロンギヌス)はそれぞれ持ち主が違う。白龍皇の光翼(ディバインディバイディング)はヴァーリが持ってたし、獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)はサイラオーグが持っていたが、まぁそれは良い。そして俺は兵藤 一誠になった……はずだった」

 

ビリっと戦兎達の体を包むのは、一誠の体から漏れだす殺気だ。それに思わず身構えていると、

 

「俺は特典の一つで兵藤 一誠に転生した。主人公の親から生まれ、俺は一誠と名付けられた。だが可笑しな事が起きてな。何故か弟が生まれた。本来兵藤 一誠に弟はいない。そんなキャラクターはいない。そんなのはダメだ。俺はちゃんとストーリーをやりたかった。だから俺はそいつを消した。オリキャラだの要らないからな。親や医者達からも関係者全員の記憶も書類も、全部抹消した。とは言え当時俺も子供でな。特典あったとは言え中々大変だったよ。でもこれで万全を期して俺はストーリーに参加できるはずだったんだよ。でも可笑しいことに気付いた。例えば小学校に進学してもイリナに会わない。それだけじゃない。他のキャラクターが住んでいる場所に行こうとしても何故か迷う。もしくは会えない。どうしてかと思ったら、ある日俺を転生させた神様が来てよ、何でも能力を付けると何かしらの反動があるらしい。最初に説明されてたんだが、特に大きなもんじゃねぇだろうとたかを括ってたら、何と俺の反動はストーリーに関われないだってよ。いやマジふざけんなって思ったね。何でもこんだけてんこ盛りにしちまうとストーリーに関わらせられない。厳密に言うと主人公サイドに関われない。唯一最初から関われるのは、バグキャラの戦兎と、あとはまぁ龍誠くらいだ」

「何で俺は良いんだよ!」

 

そう問う龍誠に一誠は、

 

「お前は俺と同じだからさ」

「同じ?」

 

そうだと一誠は頷き、

 

「お前は俺なんだよ龍誠。いや、こう呼ぶべきかな?本当なら兵藤 一誠になるはずだった何か君?つまりな、俺は兵藤一誠を構成する物……遺伝子構造や指紋。後は顔なんかだ。だがこの世界はあえて名付けるならそうだな……このハイスクールD×Dは、兵藤 一誠の物語じゃなく、赤龍帝でもなんでもない、兵藤 一誠の立ち位置になるはずだった男の物語なんだよ。それはダメだろ?だってこれはハイスクールD×Dなんだから。バグキャラだの立場を奪われた何かが活躍しちゃダメなんだから」

「成程……そう言うことか」

 

戦兎が静かに呟くと、皆は戦兎を見て、

 

「何故お前のDNA構造が龍誠と同じなのか……そして何より俺をバグキャラと呼んだのか理解できた。つまりお前の言う通り、この世界がハイスクールD×Dと言う小説だとするなら、恐らく俺がいないんだろ?」

『え?』

「簡単な推理だ。龍誠に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を筆頭に皆には神滅具(ロンギヌス)がある。と言う話しはしたが、お前は仮面ライダーについて話していない。つまり恐らく皆は仮面ライダーじゃない。そして俺をバグキャラと呼ぶ。それなら簡単だ。俺は本来ハイスクールD×Dと言う物語には存在しない。違うか?」

 

戦兎はそう言うと、一誠はパチパチと手を叩きながら笑う。

 

「流石未来の天才物理学者。良い読みだ。その通り、本来ハイスクールD×Dに桐生 戦兎は存在しない。そもそも仮面ライダーがいない。まぁ俺の生きてた方の現実世界ではあったけど、ビルドなんて仮面ライダーはいなかったしな。確か最後に見たのは……あのずんぐりむっくりしたのをチラッとだし、それもビルドじゃない。確か……エグゼクティブ?とか言ってたような気がするがまぁいい」

「だが貴様は俺達に……いや、物語に関われないんだろう?ならば何故ここにいる。それともこれはハイスクールD×Dの物語にはない流れなのか?」

 

サイラオーグの問いに、一誠は首を横に振りながら答えた。

 

「さっき言っただろ?俺は厳密に言えば主人公サイドに関われないんだって。だったら簡単だ。敵サイドにいれば良い。だから俺は禍の団(カオス・ブリゲード)に入ったんだ。それに実を言うと、物語が進めばその分少しずつルールの縛りも緩まっていく。物語もかなり進んだからな。お陰で俺も大分積極的に出てこれる。と言ってもある程度原作にあった流れを利用しないといけないんだけどな。例えば今回だって原作にある流れだぜ?オーフィスをヴァーリが連れ出して、それを禍の団(カオス・ブリゲード)の奴が奪い返しに来て戦いになるって言うのはな」

「そうか、通りでオーフィスを連れ出すとき妙にすんなりいったと思ったが……利用しやがったな?俺達を」

 

ヴァーリが憎々しげな声で一誠を見る中、

 

「でも何でだ!こんなことしたところでお前が別にハイスクールD×Dと言う物語の主人公になれるわけじゃない筈だ!」

「あぁ、ならやり直せば良い。おっと世界を作り直すとかじゃないぞnめんどくさいからな。だから全員屈服させて支配して、原作の流れを改めて再現する。配役もちゃーんと原作通りで台詞も決めてる。死んだやつは俺の幽世の聖杯(セフィロト・グラール)で作り直せばいい。勿論その時はオリキャラなんていない、正しい世界だ。主人公は勿論、兵藤 一誠。つまり俺。その為にも俺は今より隔絶した強さが必要なのさ。この世界はヤバイ強さを持っているやつもいるんでね。今の俺なら勝てるだろうがそれじゃダメだ。圧倒的かつ、もう反抗する気を失うほどの強さだ。あ、間違って殺しても幽世の聖杯(セフィロト・グラール)で作り直してやるからな」

「なんだよそれ……」

 

戦兎はギリッと歯を噛み締め、フルボトルバスターを握りしめる。

 

「ふざけんなよ。それってようはお前、ハイスクールD×Dごっこを世界レベルでやるためにやってたってのか!?」

「ごっことは失礼だな。仕方無いだろ?俺が主人公になる……いや、戻るっていった方が正しいか?」

 

ブツッと戦兎の中で何かがキレた。

 

「ふざけんな……」

 

戦兎はそう呟いて走り出す。

 

「戦兎!」

 

リアスの制止を振り切り、

 

「ふざけんな!そんなことのために九重を泣かせ、八坂さんを苦しめてるのか!それだけじゃない。テロでどれだけの人が涙を流したと思ってやがる!」

「別に良いじゃないか。どうせこの世界は物語。いっちまえば妄想さ。ならどうしようが問題ない。法律でだって決まってるぜ?どんな残酷なことでも考えるだけなら問題ない。実際それを起こさなければな?表現の自由だよ」

 

そんなわけあるか!戦兎はそう叫びながらフルボトルバスターを振り回す。それを一誠は受け止めながら、

 

「無駄よ。確かに今のお前は仮面ライダーの力だけなら俺に迫る。だが俺には神滅具(ロンギヌス)神器(セイクリットギア)もある。それが合わされば簡単にお前じゃ追い付けない領域になれるんだよ!」

「がはっ!」

 

フルボトルバスターを弾かれ、素早く蹴りを入れられた戦兎は後方に吹っ飛ばされるが、素早く立ち上がりまた突進。

 

「はっきりしたよ。お前はいちゃならない存在だ。お前はこの世界にいたら取り返しのつかないことになる!」

「それをお前が言うのか?」

 

なに?と戦兎は一誠の言葉に目を見張る。

 

「俺は確かに転生者だが、今はこの世界の人間だ。だがお前はどうだ?お前はこの世界の存在じゃない。バグキャラだ。そんなお前がいたらどうなると思う?本当なら起こらないイベントが起きるぜ?いや、もう既に何度か起きている。エレメンジャーだってその一つだ。それがどんな事態を引き起こすと思う?本来なら死なないキャラが死ぬ事もあるだろう。一応いっておくが本来グレモリー眷属は皆死ぬことはない。困難は待ってるがな?だけどお前がいたらどうなるかわからない。それこそ取り返しのつかない事態を引き起こすだろうな。俺はその点物語を正しくしたいだけだ。分かるか?お前と言う存在事態が皆を危険に晒している。正義のヒーロー?愛と平和?お前が一番それを乱すんだよ!お前は本当なら居ない方が良いんだよぉ!」

「っ!だまれぇええええええ!」

 

戦兎は叫びながら一誠を切りつけるが、効果はない。そして一誠は戦兎の耳元で囁く。

 

「お前は誰も……そして何も救えやしない」

「っ!」

 

戦兎は一度一誠から離れ、にらみ合いに入ると、

 

「何言ってんのかわからねぇが、とにかくテメェがムカつくことだけははっきりしたぜ!」

 

そう叫びながら龍誠は戦兎の前に立ち、クローズマグマナックルとドラゴンマグマフルボトルを取り出し、

 

「強化アイテムお披露目だぜ!」

 

と言いながら、龍誠はクローズマグマナックルにドラゴンマグマフルボトルを挿す。それと同時に龍誠の体を電流が走り、強い衝撃と共に吹っ飛ばされた。

 

「ぐぁ!」

 

なんだこれ、そう龍誠は驚きながら体を起こすが、変身が強制解除されてしまう。

 

「おい戦兎!これ使えないぞ!」

「そんな……調整は完璧な筈なのに」

 

戦兎も困惑する中、一誠は頭を掻きながらゆっくり歩を進めた。

 

「何をしようとしたのか知らないが、まぁいいさ。さぁ戦兎。行くぞ?」

「っ!」

 

戦兎が身構えた次の瞬間。

 

「させない」

「オーフィス!?」

 

一誠に横から殴りかかったのは、オーフィスだ。グォン!と唸りを上げその強力過ぎる一撃は一誠に向かう。だが、

 

『なっ!』

 

突如オーフィスの周りに黒い壁が現れ、そのまま彼女を囲って隠してしまった。

 

「まぁこんな壁オーフィスならコンマ一瞬しか足止めできやしない。でもその一瞬で十分さ」

 

そう一誠が呟くと地面が揺れ、戦兎の体に悪寒が走る。それは龍誠と匙も同じらしい。

 

「あれは!」

 

祐斗がロビーの上の方にあるシャンデリアの上にたっていた影に気づき、声を出した。

 

「ふふ、さぁて行きますか」

 

黒いローブと大鎌を手にした骸骨が声を発しながら腕を振ると、

 

地面から真っ黒……と言うかどす黒い色の蛇?が出てきた。だがその体は何重にも拘束具が巻かれており、顔に拘束がされていた。

 

「な、なんだよあれ……」

 

その姿を見た瞬間全身の震えが止まらない龍誠に、同じく悪寒が止まらない戦兎と匙も頷く。

 

「まさか龍 喰 者(ドラゴン・イーター)か!?くそ!ハーデスの奴!」

 

ヴァーリは何かに気付いたらしく、何やら叫ぶと一誠は頷く。

 

「博識だな。流石アザゼルに育てられただけはある。こいつは神の悪意。もしくは神の毒。蛇に化けてアダムとイブに知恵の実を食べさせて聖書の神の怒りに触れた為呪いを受けた影響で最強の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の力を手に入れた。とは言え強力過ぎて、ドラゴンを絶滅させちまうって理由でコキュートスに封印されていてな。まぁハーデスの奴は同盟に北欧の神とかが参加したのがムカついたらしくてね、そこの最上級死神のプルートが使うのを条件に借りたのさ。一応他にも色々条件はあるが」

「ハーデス……サイラオーグとのレーティングゲーム前に見掛けた時も不気味だと思ったけど……まさかテロリストと繋がっていたなんて」

 

ヴァーリ達と仲良くしているお前達とどっこいどっこいだろう?一誠がそう言うと、

 

「ほらプルート。さっさと済ませてくれ」

「えぇ、さぁサマエル。喰らいなさい!」

 

プルートがサマエルに指示をし、サマエルはオーフィスを閉じ込める黒い箱ごと飲み込んだ。

 

「ちっ!あのサマエルを止めるぞ!」

《フルフルマッチデース!フルフルマッチブレイク!》

 

戦兎は嫌な予感がすると言ってフルボトルバスターを構えると、

 

《シングル!ツイン!ツインフィニッシュ!》

《クロコダイル!ファンキーブレイク!》

 

サイラオーグはフウとライに銃を一丁借りてクロコダイルクラックフルボトルを挿し、それぞれ武器を構える。

 

『はぁ!』

 

フウとライは巨大な歯車を作り出し、他の仲間達もそれぞれ一斉射撃。凄まじい爆発と閃光が起こるが、

 

「無傷かよ……」

 

戦兎が思わず呟くほど、全くサマエルは堪えない。ならばと、

 

「サマエルを操っている術者を狙うわよ!」

「おやおや」

 

皆は攻撃対象を、リアスの指示でサマエルからプルートに向けるが、プルートは気にも止めず、

 

「一誠殿。頼みますよ」

「はいはい」

 

それだけ言って、一誠も皆の前に立つ。

 

「邪魔はさせないぜ?」

「くそ!」

 

戦兎は一誠との間合いを詰めて、フルボトルバスターを振るが、それを避けられ、

 

「はぁ!」

「ん?」

 

そこに小猫が襲い掛かった。だが、

 

「甘いな」

 

一誠は小猫の腕を掴んで止め、壁に向かって投げて、叩きつけると、

 

「終わりにしてやる」

《Ready Go!》

 

一誠はレバーを回し、小猫に向かって飛び上がると、

 

《エボルテックフィニッシュ!チャオ!》

「小猫!」

 

皆が驚愕の悲鳴をあげた次の瞬間!

 

「白音!」

「え?」

 

黒歌は咄嗟に小猫を抱き締めて自分の体を盾にするようにしてかばう。

 

「はは!流石妹想いだなぁ!良いぜ?姉妹仲良く吹き飛ばしてやるよ、なぁに、ちゃんと今度作り直してやるから安心しな!」

「そんなことさせるかよ!」

 

だがその小猫と黒歌の2人の間に戦兎は飛び込むと、一誠のエボルテックフィニッシュを正面から受け止めつつ、レバーを回す。

 

《Ready Go!ハザードフィニッシュ!》

「成程……これは良い方法を思い付いたぜぇ!」

《タンクタンクフィニッシュ!》

《Venom!》

 

そこには爆発が起き、戦兎は地面を転がりながら吹っ飛ばされる。しかし、

 

「あ、が……」

「先輩!?」

「戦兎!」

 

戦兎は変身が強制解除され、それどころか体が少しずつ崩壊し始めていた。

 

「白龍皇の猛毒だ。無機物以外の血・肉・骨・臓器・魂を少しずつ減少させていくって言うものでな」

「なら!」

 

小猫は戦兎の懐からエンプティボトルをだして挿すが、何も変化は起こらない。

 

「な、なんで……」

「当然だ。それは毒と言っても厳密には呪いみたいなもの。それを解除するには、まぁ俺を倒す以外にはない」

 

そんな、と小猫が呆然とする中、

 

「一誠殿。終わりましたよ」

 

そう言うと同時にサマエルは消え、オーフィスだけが残される。

 

「オーフィスの力の4分の3と言ったところですかね」

「充分だろう」

 

一誠はプルートから容器みたいなものを受け取り、

 

「さて、ゲームを始めよう」

「ゲームだと?」

 

苦しむ戦兎の元に集まり、アーシアが回復の光を当て続ける中、一誠の言葉に龍誠が聞き返す。

 

「あぁ、このまま戦兎を見捨てるようなことはしないだろう?なら俺はこの建物の最上階の屋上で待つ。そこのこの空間の出口も用意しよう。皆はそこに赴き、俺を倒す。もしくは返り討ちにあってバットエンド。簡単だろう?」

「ふざけやがって……」

 

ミシッと拳が軋み、血が出るほど強く握った龍誠は一誠を睨み付ける。

 

「それじゃまた後で。あぁ、戦兎はそのままほっておけば半日持たないから気を付けろよ?それじゃ……チャオ」

「それでは失礼します」

一誠とプルートは相違って姿を消すが、

 

「うぐ……!あがっ」

「戦兎!」

 

リアスが戦兎に声を掛けるが、戦兎の様子は明らかに危険だ。すると、

 

「どいて!」

 

黒歌がリアスを押し退け、戦兎の体に手を当てると、

 

「白音!手伝って!」

「は、はい!」

 

黒歌の剣幕に、小猫は素直の頷いて隣に座ると、

 

「あんたはそのまま回復当て続けて」

「ま、任せてください!」

 

アーシアは黒歌の指示に、力強く頷きながら回復し続け、

 

(毒と言うより呪いに近い……か)

 

そう内心呟きながら、黒歌は氣を練り上げると、戦兎に流し込む。

 

「白音。貴女も氣を練ったらそのまま私に流し込んで。今の貴女じゃ緻密に氣をコントロールして少しずつ戦兎の体に流し込むなんて芸当は出来ないでしょ」

「……はい」

 

悔しいが、黒歌の言うとおりだった。未だに自分は、黒歌のように緻密なコントロールはできない。そう思っていると、

 

「今度教えて上げるわ。だから今は氣を練ることに集中して。雑念が入ると濁るわよ」

「っ!」

 

小猫は頭を振って意識を集中。氣を練り上げ、黒歌に流す。それを黒歌は自分の氣と同調させ、戦兎の体に負担をかけないように少しずつ流していく。

 

「凄いわね……」

 

リアスは思わず呟いた。仙術の専門家ではない彼女だが、黒歌のやっていることが高等技術なことは用意に分かり、実際相当な技術がいる。例えるなら、複雑な別の絵を左右の手でそれぞれ同時に且つ、完璧書き上げている状態なのだ。

 

「っ!」

 

ガン!とそこに音が響き、治療に集中している黒歌や小猫以外がその方を見ると、

 

「俺が強化アイテムを使えてれば……」

 

と呟く龍誠がいた。

 

「龍誠様」

 

レイヴェルがソッと龍誠の手を取り、

 

「落ち着いてください。今苛立ってもなにもなりませんわ」

「こんな時に落ち着いていられるかよ!」

 

思わず出た強い口調に、龍誠はハッとなってレイヴェルに謝る。すると、

 

「あぐっ!うぅ……」

「不味いわね」

 

黒歌は冷や汗を足らしながら明らかに苦しみが強くなった戦兎を見て、

 

「こうなったらやるしかないか」

「え?」

 

小猫が唖然とする中、黒歌は戦兎に顔を近づけると、

 

「ん……」

『……』

 

皆は呆然とするが黒歌は気にも止めず、何と戦兎にキスをしていた。そして、

 

「ぷはっ!」

 

黒歌は唇を戦兎から離すと、

 

「ごほっ!」

 

そう咳き込みながら明らかに顔色が悪くなっていた。

 

「おい黒歌!お前何をした!?」

「何ってちょっとだけ呪いを私に移したのよ。呪いが強すぎてね。このままじゃ抑え込めなかったから少しだけ私に移してそれぞれ別に抑えるようにした方が効率的だっただけよ」

 

ヴァーリに黒歌はそう答えつつ、戦兎に改めて何か施し、

 

「これでよし……でも飽くまでその場しのぎだから。まぁ流石白龍皇の力だわ。この抑えも持って1日半ってところね。私のはもうちょっと長いけどそれでも長くはないわ」

「お姉様……」

 

小猫はなぜそこまでと言う目で見るが、

 

「助けられちゃったからね。借りはさっさと返しとくものよ?」

 

そう苦しみを歯を噛んで紛らわしながら、黒歌はそう言うのだった。




一誠「キリュウセントォ!《アイガッタビリー》なぜ君が主人公なのにたまに出番がなかったのか!《ヤメロー》なぜ君の影が微妙の薄いのか!それは……きみはこの世界の人間ではなく!それどころか世界の存在してはならないバグキャラだったからだぁ!」

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