戦兎「兵藤 一誠との戦いに備え、新アイテムの開発に成功した俺は、塔城をデートに誘うことに」
匙「つうかお前らしくねぇなぁ。なに考えてんだ?まさか!お前は戦兎に化けた別人なんじゃ!」
戦兎「んなわけあるか!こっちも色々考えてるんだよ!ってなわけで95話始まるぞ!」
匙「怪しいんだよなぁ……」
「……」
駅前にある店のガラスの前に立ち、小猫は反射して写った姿を見て、少し可笑しいかなと髪型を直す。今日は戦兎とデートだ。勝手な思い込みではなく、戦兎がデートしようと明言したのだ。そのせいで先日から全く寝れてない。
とは言え昨日気絶から眼が覚めた後、慌ててファッション誌を見て服を選んで今日に挑んだ。
しかし急にどうしたのだろうか?ふと小猫は思う。いつもの戦兎らしくない。龍誠を奪われたショックで何か精神に異常を……
「おい。何つったんでんだよ」
「っ!」
突然後ろから声を掛けられ、小猫は飛び上がって後ずさりながら振り替えると、戦兎が眉を寄せながら立っていた。
「遠くにお前が見えたなぁって思ってたら、急に窓の前で髪の毛弄り出すし、こっちにも来ねぇしで驚いたぞ?何してたんだ?」
「いえ別に……」
モゴモゴと小猫は口ごもり、目をそらすが、
「まぁいいや。ほら、行こうぜ」
「あ……」
戦兎は小猫の手を取り、そのまま歩き出す。
(顔が熱い……)
耳まで真っ赤にし、小猫は戦兎に手を引かれるまま着いていった。
デートは平和なもので、
「おいしいですね」
「やっぱこれ蛙のいっで!」
最近人気が少し落ち着いた、キャッサバの根茎の粉から作られる黒い粒状の物体を沈めた、某ミルクティーを飲んだり、
「む……」
「はっはっは。俺に任せろ。この物理法則に基づいた完璧な計算を持ってすれば……」
とクレームゲームをして(結局戦兎も取れず、熱が入りすぎて諭吉を崩そうとして小猫に連行された)遊んだり、
「この服なんか良いんじゃないですか?」
「そうか?」
「何時も戦兎先輩同じコートとジーンズですし」
何時もの似たような服ばかり着ている戦兎に、小猫が服を選んであげたり、
「美味しいですね」
「だな」
二人で、一緒に夕飯を食べながら談笑し、一日を過ごした。
『……』
夕飯を済ませた二人は、すっかり暗くなった夜道を手を繋いだまま歩く。今更だが、今日はずっと手を繋いだままだ。と言うか、戦兎が手を繋いでくるからなのだが。
店に入る時や、食事中は離れる時もあるのだが、すぐに繋ぎ直してくる。
本当にどうしたのだろう。と小猫は少し不安に駆られた。最初は浮かれていたが、一緒にいると戦兎が何処か焦っているような、そんな雰囲気があった。
「先輩……?」
「ん?」
そろそろ戦兎の家と言うか、龍誠達の屋敷が見えて来そうな場所で、小猫は戦兎に声を掛ける。
「あの、兵藤 一誠に勝てるんでしょうか?」
「ん~……」
どうしたのか聞こうとした。だが怖くなった。だから小猫は、咄嗟に兵藤 一誠の話題に切り替えると、戦兎は懐から黒い箱のようなものを取り出す。
「それは?」
「名前は決めてない。別に無くても良いからな。これはフルボトルにオーフィスの力と、今までの戦闘から採取した様々なフルボトルのデータを組み込んだ最強アイテム。一時的にだけどハザードトリガー以上に、ハザードレベルを限界以上に引き出せる」
それは、凄く危険なんじゃないだろうか?小猫はそう訴えようとするが、戦兎は少し考え、黒い箱を懐に戻しながら、ソッと小猫の手から自分の手を離した。
「でも急にデートに誘ったから驚いただろ?」
「え?あ、まぁ」
突然戦兎からその話題を振られ、小猫は僅かに狼狽すると戦兎は、
「今日はさ、確認だったんだ」
「確認?」
そうそう、と戦兎が頷き、
「お前さ、俺のこと好きじゃん?」
「……え!?」
ボフン!と小猫は耳処か全身を一瞬赤くした後、ふと何故戦兎がそれを知っているのか?と言うのに思い至り、
「まぁ俺も馬鹿じゃねぇからさ。見てればわかる。最初は思い違いかと思うかもだけど、流石に彼処までされればな」
戦兎は頭を掻きながら、小猫に申し訳なさそうな顔をして、
「だから確認。改めて塔城の気持ち。そして……」
俺の気持ちをな。戦兎がそう言うと、小猫は怪訝な顔をする。
「先輩の気持ち?」
「あぁ、今日一日一緒にいて、改めて俺の気持ちを見つめ直してみた。それで分かった事がある。それはな」
戦兎は言葉を止め、呼吸を整えた。そして、
「やっぱり、俺はお前のことそういう風には見れないわ」
「っ!」
ドクン!と小猫は心臓が跳ねたような感覚を覚えた。
「お前のことは嫌いじゃないぜ?でもやっぱり後輩として何だよ。だからごめん。お前の気持ちは嬉しいけど、応えられそうにない」
「……」
息がしずらく、世界がグニャリと歪む。
「そ、そうですか……」
絞り出すような声だった。だめだ、これ以上は……小猫は何か色々な物が決壊しそうなのを必死に抑え、
「すいません。先に帰ります!」
戦兎に背を向けて小猫は走り出す。戦兎はそれを見送り、そのままブロック壁に体を預けるようにしながら、そのまま道端に座り込み、そのまま座り込む。
「ヤバイな……これ思った以上にしんどい」
一方、戦兎の元から走り出した小猫は屋敷に飛び込むと、
「あら小猫。お帰りなさい。デートは楽しかった……ってどうしたの?」
丁度リアスが通り掛かり、小猫を出迎えると、小猫の眼からポロポロと涙が溢れてきていた。
「全く、今度は戦兎に何をされたの?」
「違うんでず。今回は、先輩悪くなくて、でも、わだじ、ひぐっ!……うぁああああ……」
リアスはそっと小猫を抱き締め、背中を擦ると小猫は本格的に泣き出す。それは、そのまま小猫が泣きつかれて眠るまで続くのだが、それは別の話である。
戦兎……お前めんどくさいやつだな。