狂った黒い月と私   作:(´・ω・)

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始まりは終わりに


第39話 最高の相棒

黒い空

荒れ狂う風

下がり続ける空気

海底より這い出る巨大な黒い化け物

 

 

もう何度目だろうか。

途中から負け始めたけど悪い気はしなかった。

負けても勝ってももっとも楽しいのはこの瞬間だ。

 

戦争は素晴らしいものだ

下らない正義と正義を殴りあいをするだけの下らん遊戯だ。

数億の人が死ぬその瞬間は実によい

人の悪意が作るのはなんだ

人の悪意が産み出すものはなんだ

人の悪意が起こした悲劇と喜劇はなんだ。

 

なんでもいいか。

 

そうだなぁ、もうこの世界には人間なんて全くいないのか。

なぁ、何でそんなに成り変わりたい。

戦う理由が無くなれば俺が死ぬとでも?

愚かな

 

ただ、演じるだけの仮面に感情はない。

なにもわかっちゃあいない。

正義と悪を持ってる時点で俺は殺せんし止めれない。

 

さぁ、今回も失敗だ、お前の敗けだよ加賀

もう一回殺して、戻ろうか。

 

何度でも何度でも進め。

 

「なぁ、くーちゃん、隕石はちゃんとあるよな」

「どのループでも隕石はありますよ」

 

レールガンから放たれた十三発の弾は真っ直ぐ地球から飛び出し、ただ、隕石群の機動を変え、砕け散った。

 

「26発ですか・・・核で弾かれなければ」

「うっせえ、あいつが下の人類どもに気をとられているうちにけりつけるから急いで兵器を集めとけ」

「そうはいいますけどね、今回は研究中心でぜーんぜん、兵器なんて揃えてませんよ」

「それでも大型ロケットとかあるだろ」

「はいはい」

 

懐中時計を開いてちょうど十二時になったとき26個の隕石が真っ直ぐ落下していった。

それらはすべて直撃したが、装甲を弾き飛ばす程度だった。

実験は成功だ。

 

「やったぞ、効いた、流石に空からは無理か」

「まあ数万発の実弾よりは有意義とはいえ、次はきついでしょうね」

「それでもあれだけ当たれば良いさ、弾薬さえ残れば勝算はある」

 

あぁ、これがいいな、この絶望を越えてみたい。

あいつのあの無力を認め崩れ落ちるその一瞬が見たい。

もう、頑張らなくていいのにさ。

よほど俺が嫌いなんだろうな。

 

進んで転んで立ち上がって。

 

もう、こっちの精神もズタボロだってのに無茶しやがって、だから枠組みから抜けるのはやめろって言ったんだ。

もう少しでゴールなんだ、行くとこまで行ってしまえ

 

「・・・あーあ、艦娘弱いなぁ、もう全滅か」

 

立ち上る黒煙。

赤く染まる海

 

本物の化け物ってなんだと思う

・・・・

なんだろうな

 

「なにか面白いことでも?」

「なぁ、くーちゃん、俺はさ、こっちに来てから面白半分で生きてるけどよ、こーみえても根はあるんだ」

「怪物があんな純白のお姫様を汚すなんて実にダメな人」

「そのとってつけた笑いはやめろ、まぁね、原因はあれだけどさぁ、見てみたいじゃん、縛り付ける鎖がなくなった獣の姿」

「艦娘という枠組みから剥がせば・・・無責任ですね、その結果があれですか。実に結構」

「うーん、そうだな、うん。正直ね、もうそろそろ俺は降りる」

「おや、もうそろそろゴールですか?」

「あぁ、もう少しすれば俺は死ぬよもう、勝てる気がしねぇ、いやもう、勝つ意味も負ける理由もないってのが正解か」

「演じるだけの皇帝様もそんな嬉しそうな顔できるんですね」

 

痛いところ突かれるなぁ。

こんな奴に良くまぁ時間かけてくれたよ。

 

「・・・お前はもう帰って良いぞ」

 

見つけたな。

あぁ、あと少しだよ。

 

「帰れと言ってももう、帰る場所はありませんよ、ぜーんぶ。射程内ですから」

「それもそうか・・・」

 

はぁ、もう思い出せないか。

 

「・・・・良かったんですか本当に」

「なにがさ」

「記憶を代償にループなんて、一応残してはいるんですよ」

「・・・俺はずいぶんと弱いし下らない奴だよ。こうでもしなきゃ俺は俺でしかないんだよ」

「情けない奴」

 

チョップ痛い(´・ω・)

 

「ストレートな物言いだね」

「なーんで、貴方は世界単位なら完全なまでの悪役を出来るのに女や部下一人にはそんなに情けないんですか、ずっと組んでる相方の私からすれば恥ずかしい限りですよ」

「なぁ、結構きてんだろ、感情的だぞ」

「誰だってこうなりますよ、第三者からすればカリスマも能力もあるのに近くにいればただの情けないダメ上司ですから」

「酷いなぁ、これでも身内には優しいんだよ俺」

「えぇそうですねぇ、身内には無駄に甘くて敵対者には特になにも感じることも良心の呵責もなくぶっ殺すし核兵器を罪もない敵国の一般人に数十発ぶちこむんで、裏で戦争起こして本人は高場から酒のんで愉悦。えぇ、実に」

「・・・メンチ切らないで、こわいよ、なんか」

「それどころか正義や悪をめんどくさいの一言でポイ捨て、他人の価値観全否定を通り越してガン無視、やってること言ってることぜーんぶ屑のそれ」

「いやあの、今すっごい照準向けられてるんだが、そう襟を捕まれると」

「停滞嫌いの癖になーんにも教えずニヤニヤ眺めるだけ」

「痛い痛い、絞まってるよ」

「それでも、後ろをついてくる人いるんですよ。何故か分かります」

「・・・・」

 

やっべ、苦しい、意識飛ぶ

 

「・・・あっ」

「・・・・くるちぃ」

「はぁ・・・情けない人」

「・・・・泣くなよ、俺なんてこの程度なんだよ、俺は演じるだけの役者じゃ無いんだよ」

「これが最後かもしれないのに・・・なにバカな話してるんでしょうね、私」

 

悲しいかな。

いや、いいか。

 

もう、狂帝はいない。

いや、もうこの役はやめよう。

 

でも、誰かがこれをしないと、きっと。

また俺は戻ってしまうんだろうな。

この温かく冷たい仮面に

 

「・・・もう、最後か」

「・・え?」

 

難しいな、人に服を着せるなんて姉さんぐらいだからな。

あ、取れた。

 

「よし、これでいいんだ」

「あの・・・・これは」

「お前がやれ」

「ちょ・・・」

「お前がやれ」

「・・・・えぇ」

 

「お前が「もういいです」(´・ω・)」

「そんな顔しないでください、言いたいことは分かりますよ」

「悪いな、こんな押し付け・・・」

「捨てきるためにずいぶん遠回りしましたね」

 

なかなか様になってるなぁ。

 

「あぁ、そうだな、俺は弱いなぁほんと」

「戦場に立ってるときのあの強さはどこですか一体」

「その服に全部あるさ」

「うわっ、すっごい清々しい」

 

うわー、なんかとんできた。

 

「そんな目で見るなよ」

「はぁ、これがあの悪魔のような男の本来の姿なんて嫌なもんですねぇ」

「人間こんなもんさ、英雄なら別だろうがな」

 

さっきから砲撃が痛いな。

 

「・・・・もう、進まないのですね」

「もちろん」

「・・・はぁ、もう一緒に立てないのですね」

「悪いな」

「このループが終わればもう敵同士、お互い殺し合うなかですか」

「だな、面白いだろうな」

「・・・・」

 

「黙るなよ、こっちもこまるでしょーが」

「黙りますよ」

「(´・ω・)まぁ、うん、勝手にだもんな」

 

しょうがないよなぁ

もう、最後なんだし。

まぁ、いいか、その程度。

 

「人類なんてどうでもいいんだよ、ただ、こうやってのんびりしてる方が合ってるだけさ」

「・・・ずいぶんと遠回りでしたね」

 

だなぁ。

 

「じゃあな、相棒」

 

全兵装起動

目標数1

機能限界点突破

全海底兵装接続

照準固定

 

「・・・はじめは全く逆だった。お互い長い時間殺しあったよなぁ」

 

一発一発確実にロケットを叩き込む作業。

無数の光

無数の命

全て無価値だ。

 

この一瞬は本当に世界が止まったようだ。

泣きたくなってきた。

ただの人になにができる

いや、まだか。

 

まだ俺は俺か

 

最後の演劇だな

やってやるよ

それを望んだのだ。

 

「一斉掃射でけりをつけるか」

 

世界は綺麗だが人間は醜いな

その醜さが気に入ったのだがな。

 

あぁ、そうだなぁ、何を

 

あぁうん

そうだね

 

「さようなら、役者」

「・・・て・・・・い」

 

もう、忘れちまったな。

なにか大切な、大きなものを。

 

あぁそうだ

次はどうしようかうん。




次回 lastdance
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