〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
74の紹介は次号で。
演習場
T-72サイド
まったくもって不愉快だ…そうT-72は思っていた。
最低限、同志(山本大佐)の戦友である指揮官(高塚)は旧ソ連兵器にも理解がある為か、信を置いてくれている。
しかし……一度も実戦を経験していない、自称『第三世代戦車』の言葉を許すつもりはまったく無い。
「よいか、同志ウラル。同志高塚はコテンパンにしていい、と許可は貰っている。存分にやりたまえ」
ニヤニヤと笑いながらそう言った同志ゲオルギー(山本大佐)に実は高塚司令と2人で工作したな、と察したものの、別にどうでもよかった。
一部の人間以外わかっていない、偉大なる祖国が生んだ私の劣化版についてしか知らない者に教育は必要だ。
模擬戦開始の合図と共に日本の、特に74式戦車からの得意技で走行装置の変換機能を活かした待ち伏せを警戒しながら慎重に進む。
いた! 向こうは105ミリライフル砲であるから、有効射程の更に踏み込むまで待つつもりらしい。
残念だが元自衛官の同志に散々聞いた為に全ては予測されてるとは考えていないらしい。
遂に発砲したライフル砲弾を前面の複合装甲が弾く。当然だ、幾ら砲弾を改良しているからといって、戦車は自身の砲弾を防ぐのが主力戦車の意義だ。
「引っかかったわね! アゴーイ!!」
125ミリ滑空砲を素早く指向し、撃ち放った。
74サイド
「なっ! 嘘!?」
撃破距離で発射した105ミリライフル砲弾は見事に弾かれる。
理論上であれば貫通撃破…悪くても損傷していてもおかしくない筈だった。
「くっ! バック!」
向こうが主砲を指向するのを見てフルスピードでバックする。
たかが知れているとは言え、125㎜なんてモノを向けられ、更に当てられてはこちらもタダで済む訳が無い。
発砲と共に走行装置の負担を無視し、思いっきり曲がる。
すると、砲弾は掠める様に飛ぶと後ろで着弾する。
「いきがるんじゃあないわよ!!」
お返しに再びもう一発撃ち込む。
今度は砲塔に命中…する前に砲塔に設置された箱が爆発しただけだった。
「爆発反応装甲…ちっ!」
思いっきり舌打ちし、態勢を立て直す為に全速で下がる。
こちらは牽制、向こうは当てる気で撃ち合ったが、どちらも有効打出なかった。
見学者サイド
「ロシアご自慢の爆発反応装甲ですか」
「おいおい、イスラエルもしているよ」
「先鞭をつけたのはロシアですから」
青葉が操作するドローンから送られてくる映像を見ながら桃屋と高塚が話していた。
「にしても、T-72の発射速度遅くないですか?」
ジーと見ていた筑波が質問してきた。
「ロシア戦車は125㎜砲弾を分離装薬式で発射しているから、装填が遅いんだ。無論、自動装填だが、弾数が少なく、下手にバカスカ撃つとあっという間になくなる。故にウラルも慎重に撃っているんだろう」
「…さすが、ロシアの数的主力ですね」
「実戦経験は折り紙付きだ。腑抜けの陸自と比べるのも烏滸がましい」
「ホントだったら、G型を量産するか、既存車をG型に改装するべきでしたがね」
「まあ、改修点は数多あげられていたが、予算がな…まあ、自衛隊の場合、いちいち装着装備を外さないといけないのも問題なんだがな」
桃屋の言葉に高塚は溜め息を吐きながら言った。
「さてと…こうなると、どうなるかは…2人次第だな」
45分後 74サイド
「ハア…ハア…くそ!!」
念のために持って来ていたミネラルウォーターをガブガブと飲んでから吐き棄てる。
あの後、74は考えれる限りの手段を用いてT-72を襲撃したが、結果は空振りに終わった。
こちらの射撃は当たるが撃破出来ない。対して、T-72は此方が避けるから命中しない…と言う膠着状態だった。
だが、故に74は焦っていた。
「不味いわね。動き過ぎて燃料は怪しいし、弾薬も結構浪費した…なら、最後の手段ね」
暫くして……
「……何も知らないで来てるわね」
稜線越しに走行装置を変化させ稜線射撃の態勢で待ち構える74。
僅かに見えるT-72が何も知らずに…とは言え、周囲は警戒している…近づく。
(得意の稜線射撃で一発撃って足を止める。その後は接近して側面が後方に撃ち込むしか無いわね)
流石に真正面から近付くのはマズイのでこの方針でいく。
だが…T-72は行き足を止めると発砲した。
「はぁ? 車体隠蔽していて当たる訳…!?」
砲塔が少し見えるだけの状況での発砲に訝しんだ74はその砲弾が『ミサイル』だと気付いた瞬間、思考停止した。
その一瞬の思考停止がまずかった。慌てて煙幕弾発射器から煙幕弾を撃とうとした時、既に先に使い切っていた事を思い出す。
「しまっ…ミサイルって…ミサイルって!!」
そう叫びながら走行装置を通常走行態勢に移行させ、T-72に迫る…が、最初の思考停止と煙幕弾の一件でのタイムロスは大きかった。
砲弾より遅いとは言え、下手な自動車よりは早い対戦車ミサイルは漸く加速した74の砲塔に命中、なんの対戦車ミサイル対策もされてない74の砲塔はノイマン効果を直に浴び、残弾の砲弾に引火した。
『状況終了! T-72の勝利です!!』
青葉の放送に民兵隊からは賞賛が、大半の自衛隊員からは驚きと落胆の声が流れた。
「……大丈夫か?」
民兵隊と共に悠々と去って行くT-72を尻目に高塚はそう言って大破して寝転がる74に声を掛けた。
「…これで大丈夫な、訳ないでしょう」
「そうだな…で、どうだ、ガチの第3世代戦車との対決は?」
「…主砲発射式ミサイルなんて卑怯」
無事な左腕で両目もとを隠している74が静かに言った。
「これでわかっただろう? イラクの一件はモンキーモデルだったって」
「…えぇ、わかったわよ」
認めたくないが、認めるしかない、と言いたげに74が言った。
「それとだな」
「なによ」
まだあるの、と未だにトゲトゲしい74の言葉に内心溜め息を吐きながら言った。
「泣きたいなら、遠慮せずに、声を出して泣けばいい。その悔しさを我慢する必要は無い。問題はその悔しさをバネに出来るかだが…今はそんな時じゃない。泣いても、誰も問題にしない」
「…うるさいわよ」
「はいはい」
その返事に高塚はT-72達の方へと足を向ける。
そして、10歩ほど進んだところで、74は声を挙げて泣き始めた。
そこから更にだいぶ歩いたところで回収部隊とすれ違った。
次号へ
ご意見ご感想をお待ちしております。