〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
31 東へ
3日後 夜 富山・新潟県境(富山側)
「対馬隊、神通隊、那珂隊、川内隊、敵哨戒ライン並びに哨戒陣地突破、との報告入りました」
通信機に聞き耳を立てていた筑波の報告に高塚は頷くと命令を下した。
「とりあえず、越境に関しての問題は排除されたな…全部隊前進! 第一目標は高田駐屯地! 先ずは橋頭堡の確保だ!」
その指示の下、全部隊がエンジンの轟音を上げ前進を開始した。
この時点で高田駐屯地包囲部隊並びに県境哨戒ラインのマグマ軍は油断していた。
何故なら、偵察機・ヘリが時たま飛びにくるぐらいであり、東京の本部や12旅団管区担当司令部も『攻勢は10師団管区から直接東京を狙う』と信じきっていたからだ。
故に後々までに後手に回る事になるのだが、まだまだそれは先の話だった。
焼山付近
「…あー、これはマズイわね」
武器娘の87式偵察警戒車は県境〜高田駐屯地との間にある焼山へ高塚達主力より先行し、偵察に来ていた。
何故なら、この焼山は日本における最初の『マグマ軍発生地』であり、先の白山の例から見ても相当の戦力が居るのは間違いなかった。
また、白山と違い、焼山が高田駐屯地への直線ルート上にあり、ここが高田駐屯地包囲部隊の司令塔兼主力侵攻への障壁になるのは間違いなかった。
この為、事前の航空偵察の他に、戦闘前の直前偵察を行う必要があり、87はこうして偵察に来ていたのであるが…。
「クロシュタント移動要塞にT-72重戦車の団体様…これが正面に立ちはだかるなんて、無理無茶もいいとこね」
明石達の改修により車内に暗視装置付き偵察機材を使いながら87は呟いた。
87は改修により、89式歩兵戦闘車の35ミリ機関砲を搭載した大型化した砲塔に偵察機材、それらに直結したデータリンクシステムを搭載されている。
つまり、87が見ているものは高塚達も『リアルタイムで観れる』のである。
『こちら、タンゴ,キング。87、ご苦労様。そのまま潜伏待機してくれ。なお、ヤバくなったら離脱せよ。以上、終わり』
「87、了解…気軽に言ってるけど、大丈夫なのかしら?」
そんな呟きを呟きながら、監視対象を継続する87だった。
その頃
『クロシュタントですか。早々に厄介なのが出ましたね』
ヘッドセットで先程まで見ていた87からの映像に細川は正直な感想を言った。
『前の…白山の様にはいきませんな。どちらにしろ、焼山を通らなければ高田駐屯地へは近付く事も出来ません』
大桐准尉が両腕を組みながら言った。
『と言って正面から喧嘩は売れないです。まあ、当然ですけど』
筑波はさも当然の事を言う…まあ、これは筑波は高塚が何か考えていると読んでいるからだが。
『それで、司令。オープンチャンネルで余裕ありありそうですけど、どうするの?』
鯖江の言葉に高塚はニヤリと笑うと無線を入れる。
「桃屋、早速砲兵の出番だ。新時代の砲兵を見せてやれ」
暫くして
『砲班から戦砲隊、展開・射撃準備良し!』
『こちら、豊川。武器娘隊展開完了。現在、システム同調点検中』
「了解した。砲班はシステム準備。武器娘隊は点検完了次第、報告待機せよ」
松堂二曹が答える横で桃屋は砲兵隊指揮者用73APC内でパソコンを弄る鳥海の作業を見ていた。
「高塚先輩から聞いてはいましたが…やはり、前大戦で航空観測射撃をしていただけあって、この類のシステムを作るのは得意ですよね、海軍サンは」
「ですが、欧米は既にデータリンクシステムによる砲兵射撃システムを完成させていますし、私達の場合は海自やこの類が得意な夕張さんが居ましたから…はい、終わりました」
鳥海の言葉に桃屋がパソコン画面を覗くと87からの暗視補正入り映像と上空からの暗視補正入り映像がリアルタイムで流れていた。
「よし。松堂二曹、各砲班のタブレットにシステムが同調しているか確認して下さい。武器娘隊の方にもお願いします」
「わかりました。戦砲隊から各砲班、並びに武器娘隊へ。司令部システムの構築完了。同調を確認せよ。にしても、いよいよ現代戦らしくなりましたな」
「えぇ、まあ、これから色んなトラブルに遭うでしょうが、これも未来と将兵の為ですからね」
そう、漸く我々はスタート地点に立ったに過ぎないのだ、と桃屋は自らに言い聞かせた。
暫くして マグマ軍焼山展開部隊
それは突然であった。
クロシュタント移動要塞、T-72戦車部隊と共に此方へ侵攻してくる日本軍部隊と対峙していた。
日本軍部隊はクロシュタント移動要塞の火砲の射程ギリギリで停止すると左右に部隊を展開した。
しかし、それ以上なにもせずにジッとしている事を訝しんでいた時……それはおきた。
敵部隊後方から火砲の発砲光が連続で瞬いた。
そして、数秒後には次々と着弾する…最初から、試射も無しに全力射撃を夜間に撃ち込んでくるのである。
特に火砲と共に撃ち込まれた多連装ロケットが厄介であった。
『面制圧』を得意とする多連装ロケットは密集下にあるマグマ軍戦列に鉄の嵐の洗礼を浴びせる。
だが、クロシュタントにすれば散弾の破片など痛くも痒くも無い為、依然その堂々たる姿を見せ付けていた。
だが、その堂々たる姿も忍び寄るかの様に飛来した2発の大型ロケット弾と2発の大口径弾が命中するまでであった。
暫くして
『こちら87! 敵クロシュタント移動要塞撃破確認!』
「了解! こちら、タンゴ・キング! 砲兵隊、撃ち方止め!」
87からの報告に高塚は素早く砲撃中止を命じる。
「やれやれ、まさか、R30だけでなく、オカ自走迫撃砲とコンデンサトール自走砲を対移動要塞戦の切り札に運用するとは思いませんでした」
筑波の言葉に細川が言った。
「ですが、40㎝クラスの火砲をただ単に対地砲撃に使うのは無駄使いですからね。何せ、セバストポリを落としたのは60㎝自走臼砲カールや80㎝列車砲だった訳ですし」
「うむ…砲弾の命中率も誘導砲弾でカバー出来る。ソ連は核の小型弾頭化の限界故に40㎝クラスを採用したが、大口径故に誘導砲弾化工作が可能だからな。塞翁が馬、何が幸いするかわからんよ」
皮肉そうに高塚が言った。
「ところで高塚司令、敵戦列は崩壊、無事な奴らは潰走していますが、どうしますかな?」
大桐准尉の問いに高塚は素直に答えた。
「負傷者の収容後、前進します」
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