〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
鳥海 海軍艦娘 中佐(二等海佐)
高雄型重巡洋艦四番艦鳥海の艦娘。
マルタ戦後、霧島や姉の摩耶と共に水陸研に出向、主に火砲射撃観測・指揮システム構築要員として勤務している。
今回は陸軍火砲の射撃観測・指揮システム構築の為に霧島と共に同行している。
少し前 高田駐屯地内
「はあ……眠れない」
事務所の自分の事務机でそう呟くのはこの高田駐屯地の駐屯地娘である高田沙織一尉(大尉)である。
と言っても、眠れ無いのは高田だけでなく、この駐屯地の人間全員と言ってもいい。
長い包囲下に何とか慣れて(我慢して)いるが、故に睡眠時間が短くなり、誰もが眠れ無い夜を過ごしていた。
「逆効果になるかもしれませんが、どうぞ」
和かな声と共にコーヒーを机に置いた女性はスプリングフィールド…先日、分隊を率いて偵察中に『彼女』と『連れ』を高田は保護し、こうして共に生活を送っている。
「ありがとうございます……それにしても、フィールドさん、慣れてますね」
「日常茶飯事でしたから」
和かな笑顔に対する返答の内容に高田は内心で乾いた笑みを浮かべる。
実際、夜遅くに寝れないと思い、ふと彼女を見るとソファーで毛布に包まりながら寝ている(そして、起きるのは早い)からだ。
「それにしても…何も動きがありませんね」
「えぇ…まあ、此方では動きは余り無いかと」
それは当然だ、と高田は思っていた。
駐屯地娘であり、幹部である彼女は上級幹部向けの情報を知る権利と義務があり、既に沖縄にいる陸幕は東京奪還に動いている事を知っている。
つまり、この日本海側で行動をおこす事はほぼ無く、あっても奪還部隊が牽制・陽動目的のフェイント攻撃をするのがせいぜいだ…と高田以下大半の人間が思っていた。
だが、その考えは今や聞き慣れた足音と共に覆された。
「サオ!! 大変、大変!!」
そう行って周りを気にする事も無く声をあげて入って来たのはスプリングフィールドの『連れ』ことFF FNCだった。
「ちょっと、FNC、みんな寝ようとして…」
「そんな事より! 西向き、南西方面から砲撃音が聞こえるよ!」
「……え?」
この時、高田はほぼフリーズしている頭の中で色々と思考していた。
高田駐屯地から南西方面と言えば妙高市、その更に西側にはマグマ軍が出没し、自分達が対処に向かい、そして、撤退した焼山がある。
その焼山から更に西に行けば県境兼管区境を越えれば富山に入る。
つまり、砲撃はマグマ軍か富山方面から来た『誰か』が交戦している事を意味する。
「…ちょっと待って、本当に砲撃音? それが本当なら第10師団管区から部隊が…でも、彼処には移動要塞が居るし…」
第10師団管区から部隊が来たとしてもそれは威力偵察か牽制の少数部隊。
ならばその『砲撃音』はマグマ軍の移動要塞が侵入部隊に対して砲撃している事になる。
つまり、此方は何も出来はしない。
「…果たして、ホントにそうでしょうか?」
スプリングフィールドの声にFNCと高田、そして、先程の騒ぎで寝床から体を起こした幹部達が目を向ける。
「もし、FNCの報告が事実なら、哨戒線を突破して来た事になります。なら、別に砲撃を行わなくても、指揮下の部隊を動かせばいいだけでは?」
「…まあ、はい、そうですが…」
この穏やかな女性が戦場では旧式ライフル片手にマグマ軍歩兵の眉間を眉一つ動かさずにブチ抜くを見ている高田はスプリングフィールドのその真剣そうな表情に明確な反論は出来なかった。
そして、そのスプリングフィールドの論を証明するかの様に誰にも聞こえる爆発音が響いた。
そう、こんな爆発音は多量の弾薬を抱え込んだ物にしか出来ない…つまり……。
「総員緊急呼集! 偵察を出す!」
そう言って高田は駐屯地司令の所へ走り出した。
数時間後 高田駐屯地
「さてさて、案外アッサリと高田駐屯地に来れた訳だが…駐屯地人員の疲労度がヤバイな」
高田駐屯地の人員に迎えられながら表門から入った高塚は密かに呟いた。
戦闘終了後、本隊は後処理をしつつ、87と金沢に分隊を率いての先行偵察を頼んだところ、妙高市郊外で高田達の高田駐屯地の偵察と接触、その後、後処理が終了した為、こうして高田駐屯地へとやって来た。
「マグマ軍出没後から対応していましたからね」
「まったくだ…高田駐屯地の人員は先ず休みだ。必要なら交代人員を回せる様に準備してくれ。それと駐屯地並びに管区状況の掌握も頼む」
「わかりました」
市ヶ谷に一通りを命じると待っていた高田の所に向かった。
「お初にお目に掛かります。高田駐屯地の駐屯地娘、高田沙織一尉です」
「高塚だ。まあ、紹介は余り要らんだろうがな。駐屯地司令は?」
「駐屯地司令は…その、今までの疲れから、面会は明日に、と」
「あぁ、なるほど…高田一尉も引き継ぎを終えたら、休んでいいよ。細かい事は明日からだ」
「あ、はい。わかりました」
「うん。引き継ぎは…市ヶ谷やあきつ丸を付けるから、そちらにな。部隊については別の人間を回しているから心配しなくていい」
「……ありがとうございます」
「何を言う。疲労困憊な兵を無理矢理働かせても支障しかおきないからな。ほら、市ヶ谷、頼む」
「あ、わかりました。では、高田さん、引き継ぎ事項を」
「あ、はいはい」
……この後、引き継ぎを終えた高田はホントに久々に自室のベッドに飛び込む事になった。
次号へ
ご意見ご感想をお待ちしております。