〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
暫くして 信濃川対岸
戦車隊が渡った仮設橋で渡河した奪還部隊司令部は先の多連装ロケットや長距離火砲砲撃で潰しきれなかったマグマ軍火砲が時たまに砲撃し、その砲弾が降ってくる対岸へ進出した。
「まあ、取りこぼしはあると…伏せろ!」
砲弾の飛来音に気付いた高塚が叫ぶと同時に伏せ、周りもそれに合わせる。
飛来した122㎜榴弾はかなり前方に着弾し、虚しく泥と土を巻き上げるのみにおわる。
「もう少し安全化が完了してから渡河した方が良かったのでは?」
「それまでに他の人間を的にするなんて意見は俺は却下だよ」
市ヶ谷の言葉に高塚はやんわりと断る。
その時、前方であきつ丸から出たOH-1がハイドラ・ロケット弾ポットで見つけた122㎜榴弾砲を吹き飛ばすのが見えた。
「敵の砲兵は頑張りますね」
「仕方ないさ。さっきの多連装ロケットの斉射とその後の制圧射撃を受けた中で被害も軽くて、前線から一歩引いた位置に居るんだ。戦列が混乱する中で敵を抑えれて、時間を稼ぐにしても、後退を支援するにしても、冷静に動けるのはアウトレンジ出来る砲兵だけさ」
筑波の感想に自身も砲兵であるが故にその心情がわかる高塚が言った。
「ですが、その割には精度が粗いですね」
「着弾観測修正が出来ていないんだろう。本来なら、信濃川で迎撃する筈だったからな…観測手も居ない中で撃ってる訳だから、精度も悪いだろう。まあ、当たったらヤバイがな」
細川の言葉に高塚は言った。
明野飛行隊とあきつ丸隊、更に台湾軍ヘリ部隊が上空を抑えた為、何の妨害も受けない施設科・工兵隊が次々に仮設橋を架け終え、それを奪還部隊・台湾軍が次々に渡って来ていた。
その頃 ロシア海軍歩兵隊&高田普通科隊
「……聞いてたけども凄いわね」
作戦参謀兼ロシア海軍歩兵隊の道案内役の高田は乗り込んだMi-17から進撃するロシア海軍歩兵隊を見ながら呟いた。
次第浜海水浴場から上陸したロシア海軍歩兵隊と案内を務める高田普通科隊は新発田市街中央部にある新発田城跡公園に併設している新発田駐屯地に向けて前進していた。
ロシア海軍歩兵隊はT-90戦車、PT-76水陸両用戦闘車を先頭にBMP・BTRシリーズが続く形で203号線を南進し、空には高田達のMi-17の他、海軍歩兵隊のKa-27の強襲輸送型のKa-29が兵員を乗せて飛んでいる。
この光景に最近、高塚との世間話(歴史好き同士の会話)を通しての近代戦=戦国合戦への変換による理解が進んでいるので高田は呟きながら内心悪寒を感じていた。
何故なら、(もし、村上水軍によって運ばれた騎馬隊を含む武田軍が新潟に強襲上陸し、主力不在の歩兵で防げって言われたら、君は出来るかい?)なんて事を冗談混じりで訊かれた時、高田は(謙信公が居ないと難しい)と答えてしまった。
そして、それを今の現状に組み替えると高塚の冗談が現実味を帯びてくるのだ…冷戦中、ソ連軍が計画していた『新潟上陸による東京奪取』と言う作戦にである。
『こちら、アムールスク。ケンシン、聞こえるかね?』
そんな時、海軍歩兵隊指揮官からロシア訛り混じりの日本語で通信がヘッドセットを通じて入ってきた。
「あ、こちら、ケンシン、感度良好。アムールスク、どうぞ」
『こちらも感度良好だ。ところで向かう先のシンハツダ・ベースの周囲は市街地だと昨日聞いたが、マグマ軍はベースのみを包囲しているのかね?』
「それについてはなんとも…どうやら、市街地内で駐屯地を包囲する部隊と郊外に展開し、第二包囲線を形成する部隊があるようですが…」
そこからハッキリしないのはマグマ軍に動きを悟られない為に新発田駐屯地への通信を行なっていない事が大きい。
実は副官の市ヶ谷は各種通信手段での接触を高塚に進言したが、高塚は苦い顔を浮かべたまま全て却下した。
市ヶ谷と高田もその事が気になったのだが、細川が代わりに答えてしまった。
曰く「行政文書で開示する上に、『鉄血』の件があるから慎重なんですよ」と。
『了解した。ならば、状況によってはこちらのやり方で対処する。無論、一般人の事を考慮するが…後は神に祈る事をお勧めする』
歴戦の佐官の言葉に高田は何も言えなかった。
何故なら、昨日あいさつに行った時、彼の経歴を聞き、彼女は高塚が見たであろう現実の一部を知ったからだった。
同じ頃 新発田駐屯地
「だから、味方が救援に来てるんだろう? だったら、員数外の俺らで見に行くだけだから」
「それが困ります! 味方でない可能性があるんですよ!」
駐屯する30普連の予備用の鉄帽と防弾チョッキを着込んだ一尉が同じくフル装備の30普連の一尉に言われながら歩いていた。
「ロシア海軍まで来てるのにか? マグマ軍とロシア軍が組んだなんて話は聞いた事がないよ」
「別部隊、北部方面隊の幹部に何かあったなんて事は許容できません」
普段はここまで硬くない30普連の一尉の言葉にマグマ軍兵から奪ったAK-47に手を伸ばしながら松塚壱勇(まつつかいちいさ)一尉は言った。
「新発田一尉、その言葉は散々聞いたが、もう我慢出来ない。だいたい、敵が上越方面に兵力を集中しているのを指咥えて見ていた挙句、ロシア軍が門前まで来るまで亀みたいに閉じ篭っておくつもりか? 帝国軍に居た祖父が聞いたら呆れて物も言えないよ」
駐屯地娘の新発田渚一尉との会話をそう言って打ち切った松塚はそのままズンズンと歩いて行く。
「ですが…鈴木一尉! 松塚一尉を止めて下さい!」
「あー、同期として言わせてもらえば、俺も我慢の限界なんだよね」
先輩であり、松塚と同期生である鈴木慎也(すずきしんや)一尉はニコニコしながらそう言った。
「金持ちイケメンが随分とアッサリ言ったな」
「敵にしろ、味方にしろ、このまま穴熊決め込むって言うのも癪に触るからね」
同期同士の会話に唖然とした新発田は最後の望みである彼らの同期にして松塚と同じ隊の同僚で同性の松平一尉を探して周囲を見回す。
だが、探していた松平弓子(まつだいらゆみこ)一尉もAK-47を持った完全装備で出て来てしまい、新発田の望みは絶たれた。
「遅いぞ、松塚…ん? 新発田一尉、どうしたの?」
最後の望みが絶たれたと知らない松平は愕然とする新発田へ呑気そうに訊くだけだった。
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