〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
翌日 1000頃 海岸線沿い
「……ここはダンケルクかな?」
「状態だけなら日本版と言う限り、ダンケルクですね。但し、立場も結果も反対ですがね」
視線を先の日本海では無く、手前側のマグマ軍の捕虜達に向けながら呟いた高塚の言葉に同行している細川が答えた。
そして、その捕虜達はここだけで無く、複数箇所で規模こそ違えど同じ光景が見れると言う事なのである。
「それにしても、さすが憲兵殿だよな〜。ここまで敵を誘い込むなんてな!」
「いや、先人の知恵を拝借したまでだ。それを使っただけだよ」
同行している天龍の言葉に高塚は控え目に言った。
高塚がマグマ軍に対して使った策と言うのは、阿賀野川沿いを中心にら展開したアメリカ・台湾海兵隊の防衛ラインの幾つかを『わざと』薄くし、そこから徐々にマグマ軍を海岸線へと誘い込む、と言った策だった。
実際、後ろを高塚達本隊が迫り、前の薄い箇所を必死に突破し続けたマグマ軍は途中で追撃が止まった事を不思議がりつつ朝を迎えたところ、自分達が海岸線沿いにいて、しかも、陸はもちろんの事、海からも日本・台湾・ロシア・アメリカ艦艇、艦娘、深海棲艦から砲門を向けられていおり、ようやく自分達が包囲されている事に気付いた程、その意図を見破る事は出来なかった。
そして、この時点でマグマ軍の抵抗能力は無に等しかった。武器弾薬は後退時に遺棄し、燃料も枯渇、更に疲労と負傷者が多かった事と包囲された事により心理的に折れた事がマグマ軍が降伏を選ぶ最大の理由になってしまったのであった。
「ちなみに、その先人とは?」
「四国の覇者、長宗我部元親が豊臣秀吉の四国征伐の際に用いた策だ。大元は川魚の追い込み漁や木材の河川運搬法なんだが…まあ、史実的には見破られて、失敗に終わったんだけど」
「高田大尉が聞けば楽しい談話のネタになりますね。ですが、それを成功させていますから…」
「それとこれとは話が別だ。それで、今のところ変わりは無いか? 特に新発田駐屯地から何が言ってきてないか?」
「今のところは何も…新発田駐屯地が『ウラー祭り』をしてる以外は何もありませんら」
「なんだよ、『ウラー祭り』って…まあ、それぐらいなら、問題はないな。とりあえずな」
問題が無いなら、これから着手すべき長野解放の手段を考えるべく、高塚は2人を引き連れて歩きはじめた。
その頃 新潟空港(仮司令部)
「はぁ……どうしろって言うんですか、これ!!?」
「どうしたのかね、市ヶ谷大尉?」
仮設司令部の置かれたテントの中で市ヶ谷が周りも気にせずに叫ぶ様を偶々来ていた山本大佐が見ていたので訊いてみた。
「あー、実は陸幕から『東京攻略に掛からずに何やってんだ!?』的な問い合わせが来まして…」
代りに筑波が答えた。
「あぁ…馬鹿め、と言ってやれ、馬鹿め! と」
「某ヤマト艦長のネタを出しますか」
山本大佐の言葉に筑波は笑いながら返した。
「そんな答えは求めてません! 説明を求められているんですかね!」
額の皺を伸ばしながら市ヶ谷が言った。
「ならば、『これは東京奪還の為の牽制を兼ねた攻勢だ』と返せばいいんじゃないかね? どうせ、この後、我々は長野解放に掛かる事だし」
「そうですが…一応、台湾軍を含めた各国参加部隊には軽く今後の予定は伝えてありますし…」
「あぁ、陸幕との発表に差異が出る心配なんて必要ない。どうせ、陸幕の公式発表なんて主要国政府や軍部からすれば『ふーん』程度の物だろうからね」
「あれですか? 『公式発表の裏を読む』から、そんなに聞かない、とか?」
筑波の言葉に山本大佐は首を振った。
「いやいや、それもあるが、どちらかと言うと陸幕の発表なんて気にしちゃあいないのさ。戦略も無い上に『東京奪還』しか主張しない陸幕より、マルタでその手腕を見せた同志の方が個々の内容でもしっかりしている。更に各国の部隊派遣は同志が保証手形みたいな物だしな」
「何時もの『ネームバリュー』の件ですね」
「うむ、マルタからの講和だけでなく、艦娘・深海棲艦の日本企業就職の斡旋など、伝手やら何やらがあったとは言え、よくやった物だよ。特に深海棲艦の就職斡旋など、一瞬思考停止になる程だったがね」
「あー、やっぱり」
「ですから、マルタ組だけで納得出来る話をしないで下さい」
山本大佐と筑波の会話に市ヶ谷が額に手を宛てながら言った。
「兎にも角にも、そう返信してしまえばいいさ。どうせ、同志も似た様な事を言うに決まってる」
「わかりました…何かあったら、山本大佐が原因ですからね」
「はっはっは、その時は陸幕に殴り込みに行くよ」
「いやー、それはダメかと」
山本大佐の言葉に筑波は苦笑いを浮かべてツッコミを入れた。
暫くして 高塚達
「さて…長野解放をどーすっかな」
仮司令部に戻る道柄に次の作戦の話になった。
「そこは今回みたいに…」
「無理でしょう。平野と山岳に分かれ、更に松本駐屯地は山地内にある上に移動要塞が付近に居る。回り込もうにも、道がありませんし」
天龍の言葉に細川が答えた。
「後は…まあ、プランが無い事は無いが…どうも決定打に欠けるんだよな」
「とりあえず、移動要塞は一旦横に置いて、グリフォンの彼女達を中心とした狙撃隊での事前討伐で山岳は何とか出来ますが…問題は平野部です。砲兵隊を対移動要塞に使うので有ればある程度弾を残しておきたいですし、ロシア海軍歩兵隊やアメリカ・台湾海兵隊をここの守備に残すので有れば、何かしら策が要りますね」
「そうなんだよな…それを含めると……ん?」
ふと、ヘリのローター音が聞こえたので足を止め、顔を上げる。
すると、一機の迷彩ブラックホークがヘリ型の武器娘を従えてやって来た。
そして、高塚達の近くでホバリングしながら高度を下げ、着陸した。
「ふう…やれやれです。高塚司令達の移動速度が速過ぎて、一苦労しました」
ブラックホークから降りてきたのはかつてマルタ島鎮守府に警備隊員の一員として来ていた大宮氷乃だった。
「大宮!? しかし、大宮駐屯地は…」
「お久しぶりです、高塚司令。確かに大宮駐屯地は包囲下にありますが…ふっふっふ、このマッドサイエンティスト大宮を舐めてはいけません。技研に出向していたので難を逃れましたよ。まあ、青葉新聞のお陰ですがね」
「大宮、青葉新聞読んでたのかよ」
「当たり前です。マルタでの司令の発言を聞いていれば、論理性ぐらい私ぐらいの知能指数が有ればわかります。そんな私から…まあ、私以外にも居るんですが、提案があります。聞きますか?」
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