〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
0430 長野県北部 飯山市
「敵さん、今のところ仕掛けてきませんね」
「ブラッドレーさんの偵察でも、南の中野市に繋がる414号線に敵は配置されていなかったそうです…このボトルネックな場所は防衛線を敷くには絶好ですし、左右と前方の高台に射撃陣地を置けば少数でも大軍を阻むと思っていたんですがね」
主力を率いて県境から292号線を南下し、飯山市に到達した桃屋達はM3ブラッドレーを出して進路偵察を行い、その結果を桃屋と松塚が話していた。
「……桃屋少佐、ひょっとしたらマグマ軍は長野市で我々を迎え討つつもりでは?」
「中野市でも無く、その先にある須坂市でも無く、県庁所在地の長野市で…根拠は?」
「私の祖父は騎兵から機甲に転換した身でした。いま、規模の関係から我々とは別に台湾軍が18号線を信濃市経由で南下中です。マグマ軍も先の上越で台湾軍が参加している事は知っていますから、別ルートから来る事は想定済みでしょう。もし、我々が414号線で苦戦していれば台湾軍は一部部隊を分割し、96号線を使って救援に向かえます。しかも、敵防衛線の背後を取る形でです」
広げられた地図を指差しながら松塚は自分の根拠を説明する。
「なるほど、騎兵の様に迂回機動による後方浸透を恐れた、と」
「無論、隠れて防衛線を敷いている可能性はあります。しかし、今は地形上、我々が敵後方に迂回出来るルートがあります。ですが、長野市から先は敵が我らの後方に迂回出来るルートがあり、また、奥の手の移動要塞も来れるので敵に有利。だからこそ…」
「長野市で台湾軍と纏めて我々を迎え討つか。更に下手に分散防衛するより、兵力の集中を狙ったか…よし、ならば、警戒しつつ、須坂市まで進もう。そして、台湾軍と合流する」
そう方針を決め、桃屋達は進み事にした。
暫くして 信濃市付近 台湾軍隊列
「…との事です」
「なるほど、そう言われれば、敵が出てこない理由もスッキリしてわかりますね」
通信参謀から桃屋達からの通信内容の報告を受けた劉大佐はそう言って長野県内の地図に目を向ける。
妙高市からそれぞれ南下する道路網に分かれて進軍していた台湾軍も余りに敵が出て来ない事に罠の可能性もあるとして、休止がてらに斥候を出し、警戒している最中だった。
「分散している我々を地形的有利点まで誘い、一ヶ所に纏めたところを追加戦力を投入して叩く、ですか。確かに今までのマグマ軍と違い、戦力や地形を巧妙に使ってきますね」
呉中佐が自己分析した結果を呟く。
今までのマグマ軍ならば圧倒的数量と局地的地形有利を使って戦う場合が多く、全体地形や弱点を突く戦術を駆使すれば打開出来ていた。
しかし…今回の指揮官は視点が『大きい』のである。
「うむ…敵指揮官が高塚司令を狙うなら、これはそれを狙って作った可能性があるな」
「我々と日本軍が1箇所に纏まり、且つ、主力に随伴している司令部、特に高塚司令を狙撃なり何なりで戦死させてしまえば…なるほど、これは確かに罠ですね」
「さて、そうなると高塚司令が別働隊に同行したのは…偶然なんでしょうか?」
呉中佐の言葉に劉大佐は笑って答えた。
「狐と狸の騙し合いの結果だ。それに私もこの結果の先に興味がある」
「と、言いますと?」
「智将同士の対決なんて中々見れるものではないよ。無論、高塚司令が勝つ事を望んでいるがね」
同時刻 別働隊(司令部隊)
「主力隊は台湾隊と須坂市で合流する、との事です」
こちらも受信した内容を細川が報告した。
「須坂市ですか? 長野市まで順調に行ける、と言う事ですかね?」
「多分、長野市に敵の防衛線があると予想しているんでしょう。まあ、そうなると市街戦は…うん、無理だな」
細川の報告を聞いた市ヶ谷の呟きに筑波は地図を見ながら肯定しつつ、顎に手をあて難しい顔をする。
「どうしますか? 高塚司令は居られませんし」
「多分、高塚司令からすればこんなの予想内でしょうし、大丈夫でしょう。まあ、桃屋少佐に松塚大尉、台湾軍も居ますし、主力隊は下手に追撃はしないと思います」
市ヶ谷の問いに細川が答える。
「まさか、『敵が防衛線敷いてます。戻って来て下さい』なんて子供みたいな事をやる訳にはいかないな。それなら我々司令部の意味がありませんからね。いや、ホントに」
「なら、任せられた以上、任せられた期間まで持ち堪えるのが我々の仕事ですね。まあ、今回は問題無いと思いますけど」
自虐気味に言う筑波に対し、細川は纏めつつ自信有り気に言った。
「えっ、何故ですか?」
「臨時とは言え、桃屋少佐や松塚大尉と言う癖の有る方々です。敵を侮る事なんてしません。逆に敵の一挙動にさえ注意を払う事を知る士官方ですから」
市ヶ谷の問いに細川は和かに答えた。
同じ頃 高塚達
「…目標2、距離・風速変わらず」
「射界よし…Free or weapon」
その言葉が口から出た次の瞬間、銃口に減音器がつけられたオートマチックライフルの排出口から薬莢が飛び出す。
そして、射線の先にいた歩哨中の2名のマグマ兵がヘッドショットを受け、物言わぬ骸となって転がった。
「……着弾地点周辺に変化なし。排除完了」
「周辺も異常が無いな…よし、撤収・前進」
高塚の指示にスポッター役を務めていたスプリングフィールドとスナイパー役のWA2000はそれぞれの得物を持って撤収する。
そして、周辺の警戒とフォロー役の他の者達もそれに合わせて動き始める。
「それにしても、なんで私を選んだの?」
暫く足を進めたところでらWA2000が訊いてきた。
「1番の理由は君が減音器を装着したオートマチックライフルだからだ。歩哨2人を素早く撃つには槓桿式ライフルでは一拍空いてしまうし、出来る限り潜入されている事を悟られたく無い」
なお、そもそもWA 2000は原音器を装着していないが、明石・夕張が専用に作ってくれていたりする。
「その内バレる事なのによくやるわね」
「軍事作戦で意図がバレるのは遅ければ遅い程いいだろう? 時と場合によるがね」
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