〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜   作:休日ぐーたら暇人

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少し長くなりました。
(約2900字)


56 敵将と相語りる

2日後 諏訪大社

 

 

「いやー、まさか、武田勝頼と縁がある諏訪大社に行けるとは思いませんでした!」

 

 

「高田、一応これは命令だぞ。あと、解らん話はするな」

 

諏訪湖北側にある諏訪大社の前で梯団休止中に高田が諏訪大社を見ながら言うと、相馬原は若干呆れ気味に言った。

相馬原旅団長補を筆頭に駐屯地娘を基軸にした梯団は上田市以南、八ヶ岳以北のマグマ軍と飯田のマグマ軍を分断すべく諏訪方面に進出していた。

そして、今のところマグマ軍は出てきてはいない。

 

 

「にしても、あの指揮官はどう言う思考回路してるんや? まあ、アヒル野郎共とはまったく違うから何も言えんが」

 

 

「仕方ありませんよ。高塚司令はどちらかと言うと私と同類ですから」

 

 

高塚と付き合いが浅い相馬原と同類ゆえにウマが合う高田。

この時点でズレの差が激しい…仕方ないが。

 

 

「まあ、今の旅団長補に言えるのは高塚司令を『自衛隊基準』で見ない事をお勧めするくらいですね」

 

横から鈴木が入ってきた。

 

 

「鈴木、お前もあの指揮官に対しては好評だな」

 

 

「理屈・理論だけで語るのは自衛隊にも幾らでも居ます。ですが、本物の戦場で、しかも死にかけた人間は指揮官レベルだと高塚陸将補しかおりません。マルタで世界からお墨付きを得ていれば尚更です」

 

 

「直球に言うな、鈴木…はぁ、帰って旅団長にどう報告すべきかな…」

 

 

休止中にそんな事を呟く相馬原だった。

 

 

 

その頃 松本市警察署

 

 

一時的に摂取した松本市警察署に高塚は来ていた。

そして、取り調べ室で待っていると連行されたライサがやって来た。

 

 

「最高現場指揮官自ラトハ…尋問カ? 或イハ取リ引キデモシニ来タカ? ドチラニシロ、我々ノ内情ヤ、不利ニナル様ナ事ハ話サナイシ、シナイゾ」

 

 

「いや、流石に貴女みたいな中堅幹部がしない事はわかってますよ。ただ、私は貴女と話したいだけだ。それで、マグマ軍を少しでも多く理解したいのでね」

 

 

「ハッハッハ、話ヲシタイカ…マア、自ラ私ヲ襲撃シニ来ルナラ、普通ダナ」

 

 

「あはは…普通化していいものかね?」

 

ライサの言葉に高塚は苦笑いを浮かべながら呟く。

 

 

「最低限、人事資料ニアッタ事ニ関シテハ間違イ無イトワカッタ」

 

 

「…どんな人事資料か知らないが、あてにしない方がいいぞ。多分、見たのは市ヶ谷に有る資料だろうけど」

 

 

「ソウダ。ソシテ、ソノ中身ノ大半ハオ前ニ対スル否定的ナ内容ダッタ。マッタク、実ニツマラナイ物デ、資料デ無ケレバ、ゴミ箱ニ行ク物ダッタ」

 

 

「だろうね。まあ、自分自身を過大評価する気は無いが、少しはマシだと思うがね」

 

 

「フッ、謙遜ヲ述ベル気カ? アノ時…首都陥落ニ対シテ堂々ト我々ニ言イ返シテキタノニカ? アレデ一番ノ脅威ト司令部ハ見テイルガナ」

 

 

「他の人間は脅威では無いと?」

 

 

「陸ニ限ッタ話ナラナ。特ニ方面管区指揮官クラスナラ、他ノ連中ハ実戦経験ガ無サ過ギル。優秀デモ、実戦ノ場数ノ有ル無シノアドバンテージハデカイカラナ」

 

 

「ふむ、確かにそれには同意する」

 

今までの会話で高塚はマグマ軍の態勢を読んでいた。

つまり、ライサらを含めた上級将校達は油断はしていないし、また、遺された資料から出来る限りの調査はしている、と言う事だ。

 

 

「ソレヨリ…長野市ハ手コズッテイル様ダナ…イヤ、『ワザト』ソウシテイルノカ?」

 

会話のキャッチボールを得たライサが長野市の話をはじめた。

なお、長野市はまだ『奪還されていない』。

 

 

「実際、手こずってるよ。貴女を捕らえ、しかも、後方とも断絶されたのに『ライサ司令自身か、上級司令部からの命令が無い限り、我々は降伏も投降も武装解除もしない』と軍使に伝えてきたからね、守備隊指揮官直々に」

 

上田市での戦闘後、高塚は桃屋に対し、長野市守備隊に降伏を勧告する様に指示し、その桃屋自身が軍使の1人として勧告したのだが、マグマ軍からの返答は上記の通りだった。

しかし、その代わり、避難しきれなかった一般人、並びに長野市守備隊が収容した本隊の重傷者の受け入れを懇願された為、桃屋は敬意を評してそれを受け入れていた。

 

 

「フッ、生真面目ニ教エヲ守ル馬鹿野郎共ダ」

 

 

「あぁ、そうだな。だが、貴女が慕われていて、かつ、尊敬すべき馬鹿野郎だと思うがね」

 

 

「ソンナ馬鹿野郎相手ニ攻勢ヲ仕掛ケルノハ、リスクガ大キイト言イタイノダロウ? 更ニ市街戦トモナレバ各種インフラノ破壊ト、ソノ復旧ノ面倒モアルカラナ」

 

 

「そうだよ。案外、私は面倒事は避けたい不真面目な人間だからね」

 

 

そもそもな話、無理に突入し、ブービートラップまみれの市街戦をやるなど、地雷原とわかっているのに足を踏み入れる様なものだ。

守備隊が投降してくれれば済む事なので、高塚は攻勢は掛けず、包囲するなりだけにとどめる予定だ。

 

 

「イヤ、指揮官ナラ当然ノ判断ダ。シカモ、時間的・政治的リスクヲ無視シテダ。ソコマデ出来ル将官ハソウソウイナイ。特ニ自衛隊時代カラ居ル将官ノ頭ノママナラ尚更ダナ。オ前ハ、アノ『9条』ヲ絶対視シナイカラ当然カ」

 

 

「…ちょっと待った。なぜ、『9条リスク』を知っているんだ?」

 

高塚の質問にライサは一瞬驚いた表情を浮かべながらも、直ぐに普段の表情に戻し、脚を組んで話始めた。

 

 

「東京陥落後、我々ハ残留・残置シタ人間達ニ協力ヲ要請シタ。主ニライフライン維持ヤ、行政支援、日本語翻訳等ダ。ダガ、ソンナ人間達ノ一部ヤ、投降者、『積極的協力者』カラ『自衛隊ハ9条ニ縛ラレタ不潔デ不正義・非道徳ナ連中ダ』ト言ワレ、憲法9条ノ説明ヲシテクレタ」

 

 

 

「……ちなみに、そいつらは自分達をなんて言ってた? 団体名とか?」

 

 

「多分、オ前ノ予想通リカモシレン。色々ト言ッテイタガ、『労働組合』トカ、『日教組』、『共産党』…マア、色々トアリソウナ団体名ダッタナ」

 

額に手を置いて訊いた高塚にライサは同情するかの様に言った。

 

 

「あはは……って、内情を話してないかな?」

 

 

「協力者ノ事ハ話ハ別ダ。ソレニ私ハ受ケトル側ノ人間デ、ソレ以上ノ事ハ知ラナイカラナ」

 

 

「なるほど…やれやれ、仕事が出来てしまった。すまないが、退出させてもらうよ。また、こうして話したい時はアポイントを取るが…次は茶菓子でも持ってくるとするよ」

 

そう言って出ようとした高塚にライサは声を掛けた。

 

 

「ナラ、オ前達ニ不利ナ事ヲ話ソウ。オ前達ガ心配シテイル上皇夫妻ハ我ガ軍ノ保護・監視下ニアルガ元気デイルゾ。特ニ拘束モサレテイナイ」

 

それを聞いた高塚はドアノブに触れ掛けた手を戻し、ライサの方を向き直す。

 

 

「軍上層部モ当初ハ早ク処断スベキダト言ッテイタノダガナ…ナカナカ、ドウシタ事カ、アテガ外レタノサ」

 

 

「アテが外れた? どうしてだ?」

 

 

「アノ上皇夫妻ガ都内ヲ周リタイト言ッタノデナ、晒シ者ノ意味合イモ含メテ、上層部ハ許可ヲ出シタ。モチロン、『護衛』ヲ付ケテナ。ダガ、会ウ者達ハ恨ミ言1ツ言ワズ、反対ニ上皇夫妻ヲ心配シテイタ。ソレドコロカ、集団ナラバ『万歳』ト叫ビ始メタノダゾ? 私モソノ場ニ偶然立チ会ッタガ…フッ、王者ノ品格ヲ感ジタト共ニ、背中ガ異様ニ寒クナッタナ」

 

そう言って自虐気味に苦笑いを浮かべるライサ。

 

 

「…ありがとう、ライサ」

 

 

「サッキモ言ッタ筈ダ。オ前達ニ不利ナ話ナンダカラナ」

 

 

「あぁ、そうだったね」

 

そう言うと高塚は退出した。

 

 

 

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