〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
次号は今回書ききれなかった部分と別箇所。
高塚達が群馬解放に向けて動き始めていた頃………ベトナムでは……
「政府が日本への派兵を決定したが、どうかね? 出来そうかね?」
ベトナム軍総参謀長の質問に主計科参謀が答えた。
「規模によりますが、可能です。先の深海棲艦との戦いと違い、海上輸送路は確保されておりますから、補給・補充は出来ます」
「ですが、台湾の様に大規模派兵は無理です。我々もマグマ軍と対峙しております。送れても、一個師団になるか、ならないかです」
主計科参謀に続き、作戦参謀の言葉にこの場に集っている面々は納得した様に頷く。
現在、東アジア方面はベトナム・支那人民共和国国境が最前線であり、ここでマグマ軍の進撃は停止・膠着していた。
シベリアから侵攻して来たマグマ軍は支那人民共和国の大半を制圧した後、休息・準備期間を挟んだ後に支那国境からベトナム領内に侵攻を開始した。
しかし……ベトナム侵攻は失敗し、現場はかつての中越戦争、或いはベトナム戦争の再現の場と化していた。
皮肉にも支那人民解放軍が再び侵攻すべく調査していたベトナムの資料がそっくりそのままマグマ軍に渡り、コレを頼りにマグマ軍はベトナムへ侵攻した…が、ベトナムの方が一枚上手であった。
支那人民共和国がマグマ軍に侵攻された直後から、ベトナムは直ちに戦時態勢へと移行し、約41万の正規軍はもちろん、約500万とも言われる予備役・民兵隊を召集、更に国境線から内側に対してはベトナム戦争時に活躍したトンネル陣地をはじめとした防御・防衛施設の設営・強化を開始し、マグマ軍の侵攻に際してはベトナム領内へと『わざと』奥深くへと侵攻させた。
そして、後は中越・ベトナム戦争の再現だった。
戦列と補給路が伸びきったところにベトナム軍が地の利を活かし、ゲリラ襲撃を敢行、戦列・並びに補給路を断ち切った。
更に昼夜を問わない複数箇所での襲撃は分散したマグマ軍を更に混乱させ、対応する兵士達を心身共に追い込んだ。
なにせ、アリの巣の様なトンネル陣地から神出鬼没に襲うベトナム軍は支那戦線とは違う戦いであり、しかも、頼みの装備や数がアテに出来ずに休息すら出来ないのだから当然である。
更にベトナムのジャングルと気候がマグマ軍を蝕んでいた。
冬には強いマグマ軍も熱帯であるベトナムの環境に身体が慣れておらず、更に休息出来ない事からの疲労もあり、たちまち非戦闘損耗(主に病気)が目立ち、次々と兵士達が戦闘不能となっていた。
また、頼みのヘリボーン・航空支援もベテランのベトナム空軍とジャングルに潜む携帯SAMを中心とした対空迎撃によって戦力を損耗しており、徐々にゲリラ襲撃迎撃の航空支援すら出来ないまでに追い詰められた。
結局、マグマ軍の損耗具合を見たベトナム軍の総反撃を受けたベトナム侵攻軍は散々な目に遭い全軍撤退し、侵攻当初の半数を消失、更にその残り半数も早期戦力復帰不能と判断され、ここにマグマ軍の侵攻は頓挫・一時中断し、ベトナム・支那国境で睨み合いが続いていた。
「となると…装備はどうするかね?」
「T-90やT-55を派遣しても問題はないでしょう。T-90はロシア海軍歩兵隊、第422連隊が保有しており、T-55は奪還軍戦車隊がT-62と共に運用中との事ですから、持ち込んでも大丈夫でしょう。なお、我が国の武器娘であるT-55、T-90も参加させるべきかと思います」
「T-55はわかるとして、T-90もかね?」
作戦参謀の返答に総参謀長が訊き返す。
「先の反攻に調整の都合で間に合わなかったT-90の実力を見てみるべきです。更に日本ならば支援している各国・各種武器娘の交流もありますから、無駄にはならないでしょう」
「うーむ……わかった。念のため、政府に上申しよう。他の事についても詰めていこうか。他には…」
こうして、ベトナム人民軍派遣が決定した。
同じ頃 タイ王国
「国王陛下の承諾もあり、我が国も日本への派兵が正式決定した。これに伴い派遣部隊の編成をどうするか…意見はあるかな?」
この場を仕切る陸軍大将の問いに参謀の1人が手を挙げた。
「T-84オプロートを一員に加えるべきです」
「オプロートをかね? だが、彼女は『仮軍籍』だが?」
T-84オプロートの話に件の大将は苦い顔をする。
T-84(戦車)は元々ウクライナ産の戦車であり、タイ陸軍次期戦車候補として売り込みがあった。
しかし、タイ側は支那製輸入戦車を購入した事によって次期戦車採用可能性は消えていた…が、マグマ軍侵攻により、ロシア同様に国外亡命となったウクライナの開発陣は売り込み元のタイにやって来てT-84オプロート(武器娘)の開発を継続し、タイ側は開発資金を出す事でこれを黙認していた。
タイ側の事情として、軍の近代化中であり、また、マグマ軍侵攻により武器娘の必要性が高まった為、『仮軍籍』として、『非採用』ながら、オプロートを在籍させていた。
「理由は2つ。1つは開発陣も我々も戦訓を得られる。もう一つは派遣される兵士達の士気です。日本側は武器娘が居るかどうかは気にしないでしょうが、現場の兵士達はそうもいかないでしょう」
「なるほど…開発陣に打診はしてみよう。他に意見はあるかな?」
そして、タイ陸軍も部隊派遣となった。
同じ頃 シンガポール
「海軍の協力もあり、我が国も日本への派遣が決まった」
会議室の中でシンガポール陸軍大将が集まった高級幹部達の前で言った。
「派遣は少数部隊となるが、我が国の武器娘を同行させる。各所は準備に入ってくれ。解散」
その言葉に幹部達は会議室を退出する。
「……やれやれ、やはり、マグマ軍とは遅かれ速かれ、砲火を交える事になったか。まあ、援軍なだけマシだな」
1人になった大将が呟いた。
確かにシンガポールは東南アジアの前線であるベトナムは遠く、タイ程に直接的な危機感は無い。
だが、ASEANの構成国として、また、直接的な理由より、間接的な経済の理由がシンガポール政府を動かしていた。
それはマレー半島の良港であるシンガポール港が未だに国内・国際経済的支点であるからだ。
ハブ港湾であるシンガポールに寄港する船舶関連税等々の財政収入に加え、ASEAN構成国として進出・発展している自国内の外国企業工場の生産地であるだけに、『貿易』が消滅する事はシンガポールの生死すら左右しかね無い問題だった。
そして、支那よりも長い年月の老舗顧客であり、安定的な経済中心国である日本が消える事はシンガポールとしては様々な意味で大問題だった。
「昔はイギリスの拠点として侵攻して来た日本を未来になって助けに行く事になるとは…皮肉だな」
苦笑を浮かべながら大将は呟いた。
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