〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
そして、少し長め。
2日後 松井田町内 日本解放軍司令部
「先程、『鞍馬』から連絡がありました。ベトナム陸軍とタイ陸軍の先遣隊が数日後にやってくるそうです」
朝食を持って司令部に来た高塚達に当直に就いていた細川が報告した。
「先遣隊か。また、司令部要員と武器娘か現状把握で一足先に来るんだろうな。はい、細川の分」
「ありがとうございます。どうやら、タイ海軍がチャクリ・ナルエヴェトに両国先遣隊を載せてくる様です」
「チャクリ・ナルエヴェトか…随分久々に聞くな。確か皮肉効かせで『王室専用艦』なんて言われていたな」
「タイ王国海軍旗艦ですからね…まあ、色々ありますし」
事情を知る高塚と細川の会話に市ヶ谷や筑波らは横で『ふーん』程度に聞くしかない。
「さて…うちらもそろそろ、ニューフェイスが要るな~」
「ニューフェイス…ですか?」
漸く会話の流れが変わった為、市ヶ谷が訊いた。
「あぁ…出来れば、第四世代戦車だ」
「90(キューマル)式戦車ですか? ですが…」
「もちろん、わかってるよ。戦車にしろ、武器娘にしろ、今の現状では高望みなのはね…さて、それより、タイとベトナムの受け入れ準備を優先しよう」
暫くして………
「こ、困ります。一般住民なら、わからなくもないですが…」
「別にいきなり逢わせろ、とは言わないわ。取り次ぎだけでもしてほしい、とお願いしてるの」
指揮下の砲兵隊に一通りの指示を終えた桃屋は司令部テントに向かう途中、入り口で訪問者の対応をしている陸曹と困惑顔の立哨に遭遇した。
「どうした? 民間人から抗議でも来たのか?」
「あっ、桃屋3佐! じ、実は…此方の方々が高塚司令にお会いしたい、と…」
陸曹に近寄り声を掛ける桃屋。
声を掛ける前にもじっくりと相手を観察していたが、改めて桃屋は訪問者に目を向ける。
3人の男女(女性2人と男性1人)、歳も近く、何より3人の身なりはピシリとしている。
更に3人共に同じ組織の人間らしく、同じマーク(ロゴ?)のワッペンと名札を着けている。
また、桃屋は気付いていたが、前の女性と後ろに居る男性は同類、つまり、軍人である事を動きから感じとっていた。
「司令部幕僚の方かしら? はじめまして、PMC…日本語だと民間軍事警備会社『The Japanese Spirits』の社長、ケイシー・クロックフォードです。よろしく」
金髪美女の慣れた日本語と共に差し出された名刺を桃屋は素直に受け取る。
「お預かり致します。自分は奪還軍司令部砲兵隊隊長の桃屋少佐です。高塚司令にお会いしたいとの事ですが、自分がお取り次ぎしますので、どうぞ、中でお待ち下さい。すまないが、お三方を中へ…司令部テントの方にご案内してくれ」
「わ、わかりました」
軍曹にそう指示し、桃屋は一足先に高塚の居る司令部テントに向かった。
暫くして 司令部テント
「はじめまして、と言わなくても名前は御存知でしょう。日本奪還軍司令の高塚です。噂は深海棲艦出現前に少し聞いておりましたよ」
ケイシーらを招き入れた高塚はそう言った。
なお、この場には先の3人と高塚以外に桃屋に市ヶ谷、山本大佐が居る。
「あら、我が社が有名になる前から御存知でしたか?」
「噂程度ですがね。『東南アジアでの対支那の為に民間軍事警備会社を設立した』と。それが貴社の本来の設立目的だった」
「その通りです。さすが、高塚閣下ですね」
「あの、何時もの事ながら、私には事情が…」
「深海棲艦登場前の情勢は覚えていますよね? 対支那対策の一つとして、『民間軍事警備会社を活用した東南アジア諸国への軍事教導』を実施する予定でした。特に海軍力の梃入れを主眼に共産党からの抗議を無視出来る形を取るために設立された会社、と言う事ですよ」
「まあ、その支那共産党が深海棲艦で弱体化、マグマ軍侵攻でトドメを刺されて、今はマグマ軍相手にドンパチ中、と言ったところかさしらね」
桃屋のフォローにケイシーが現状を簡単に言った。
「さて、話を戻そうかな。まあ、事情はわかったから、言いたい事は解るが…残念ながら、本官と契約しても、支払う能力は皆無なんだがね」
「その点は御心配なく。既にアメリカ政府の仲介で日本政府への契約を進行中です。申し遅れました、TJSの副社長のフェリシア・リッツです」
「故に今回は重要な現場の総指揮官へのご挨拶に、と。TJS海軍部隊副司令の後藤武蔵です。今後ともよろしくお願いします」
高塚の言葉にケイシーに同行していた男女、フェリシアと後藤が続く。
「なるほど、それなら此方は支払いを気にしなくていいわけだ」
苦笑いを浮かべる高塚だった。
3人が帰った後……
「ふむ、名前からして解っていたが、あの後藤副司令は元海自幹部か」
会合が終わった後、人物紹介を掛けた結果が送られてきたので、その後内の1枚を見た山本大佐が言った。
「えぇ、ケイシー社長も日本駐在歴ありの元アメリカ海軍士官。お父さんが海軍将官、親戚筋も国防族。フェリシアさんはスイスの実業家一家の生まれですね」
「3人共、我々と近い歳なのに…それにしても、後藤副司令の経歴、丁度深海棲艦で海自がピリピリしていた時の一件で懲戒免職ですか。まあ、陸自も注意勧告があったので憶えていますが」
高塚も2人の資料を見ながら言うと、山本大佐の後ろから後藤副司令の経歴を見た桃屋が言った。
「『横須賀総監部侵入者射殺事件』だな。『表門から歩哨を突破した数名の内、1名を『結果的に』射殺した』が大まかな内容だったな」
「だが、それは『内容の一部』。実際は当日、深海棲艦と判明する前の『海洋害獣保護』を叫ぶ団体の抗議デモが表門で行われていて、閉めきっていた門を乗り越えた数名が歩哨や警衛所を襲ったのが発端だがね」
思い出した様に言う高塚と眼鏡を拭きながら『実際の内容』を話す山本大佐。
「実際、ネットで事実が拡散された瞬間、抗議団体と海自の双方に批判がおきましたからね」
「え、どう言う事ですか? 抗議団体は解りますが、海自への批判は…射殺したからですか?」
桃屋の物言いに市ヶ谷が疑問を口にする。
「いや、先も言った通り、深海棲艦への対処に明確な結果が出ていない時でのこの一件で海自は世論批判を恐れて早期の火消しに舵を切った。つまり、当日の警衛司令兼発砲した幹部をまだ捜査段階で懲戒免職にしてしまったんだ」
「まあ、海自に心理的余裕がなかった時ですから仕方ない部分が有りますが…下手に急進的に事を進めた結果、先の事実がわかった時にネットを先頭にした大衆の意見は『対処は妥当だった。逆に火消しを急ぐあまりの急進的な懲戒免職を行った海自の方針が問題』だった」
「更に、その後の深海棲艦の跋扈もあって、海自への批判は逆に強くなった。まあ、マスコミが深海棲艦を重視したから、この一件は薄らいだ訳だが……しかし、それもマスコミの作為的な誘導だったね」
「え? え??」
高塚、桃屋の解説に山本大佐の意味ありげな言葉に市ヶ谷は混乱する。
「実はこの一件、『サン・ロイヤル号事件』の事もあって一回再検証したんですよ。すると、乗り越えた数名は『ナイフ等で武装していた』、更にこの抗議団体の本当の目的は『横須賀総監部の占拠』、理由は『海自の作戦行動能力を奪い、深海棲艦の跳梁と北朝鮮への密輸ルートを確保する』意図があった、と。もちろん、抗議団体の実態は北朝鮮から資金提供を受けた工作集団…ね、マスコミが黙りするでしょう?」
最後の高塚の解説に市ヶ谷は何度目かも数えるのも嫌になる真っ青な顔になった。
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