〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
翌日
「うん、なんとなく予想出来てた」
苦笑いたっぷりで呟く佐山。
本日は佐山の下に配置された隊員に室内戦訓練を実施していた。
そして、右手にはズラリと並んだ訓練参加者の名簿とその横に書かれた時間らしき数字と『戦死・重傷・負傷』の文字。
そして、視線の先には着ている迷彩服のあちこちにペイント弾がついている隊員の集団…皆、その表情はドヨーンとしていて暗い。
「一個小隊40名を投入し、戦死・重傷判定が28名。しかも、相手は僅か5人で1人も倒されていない…私には予想外でしたな」
自身も参加し、軽傷判定を受けたご意見番役の曹長が名簿を見ながら言った。
「負傷を入れたら38名、損耗率は9割。つまり、この小隊は戦闘不能ですね。5人の敵に8倍の戦力を投入してこれなら、指揮官が無能か、罠や策に嵌まったと言われますね、確実に」
曹長の言葉に佐山が言う。
『攻勢時には最低でも敵戦力の3倍を用意する』と言う常識から言えば、普通ならば敵の制圧は可能な筈だった。
「いくら余りやらなかった訓練とは言え、流石にこの数字は…再度訓練を徹底的にやりますか?」
「うーん……多分、それを求めて高塚司令はこの訓練をしてない…と思います」
まだ軍人としても、更に士官としても成熟していない佐山も僅か一回の実戦を踏んだ『体験』から違う、と感じていた。
「ハッキリ言いますと、此方の装備が『室内戦では不適合』だと思います」
その言葉に佐山と曹長が振り向くと私物のゴーグルを鉄帽に掛けた士長が居た。
「第14普通科第4中隊の貴志部士長です。高塚司令より此方を支援するように指示を受けました」
「あぁ、高塚司令から聞いているよ。ガンオタクな士長を補佐に送るから、とね」
「あー、はい、そうです」
佐山の言葉に気恥ずかしいそうに答える貴志部。
「それで、装備が不適合とは?」
「あっ、そちらの話についてですが…曹長、何発『撃てました』?」
含みのある貴志部の問いに佐山は黙って曹長からの答えを待つ。
「…弾倉一個も撃っていないな」
思い出す様に少し考えてから曹長が答えた。
「ありがとうございます。小隊長、実は攻勢側の此方の発砲者数と発砲数は母数に比べ極端に少ないんです。何故かわかりますか?」
「死傷者数が多いから…と言うのは核心を突いていないな。いや、死傷者と発砲数が少ない原因がイコールと言う事……なるほど、だから、『装備の不適合』か」
「はい。実際、室内戦の分隊編成から見ると、前衛と2番手の被害具合に比べ、大半の人間が発砲前に死傷して撃てていません。理由はアサルトライフルは発砲するには両手を使うために遮蔽物から身を出さなければならず、暴露面積が大きく、これが死傷者数を増やしています。よって、前衛や2番手が索敵を行えず、余計に被害を増やす原因になっています」
「なるほど…今回、仮想敵は経験豊富なドールズ達。編成も拳銃、機関拳銃2人、アサルトライフル、ライフルの5人だった……曹長、編成小隊人員の拳銃、機関拳銃の履修者は?」
「ほぼ居なかった筈です。陸曹でも拳銃止まりかと」
「うん、わかった。午後からは拳銃と機関拳銃の取り扱いと分解結合にしよう。格好はラフな物でよし。今からは各人着替えと洗濯時間とする。曹長も着替えてきてくれ」
「わかりました。伝えて来ます」
そう言って曹長が2人から離れてから佐山から口を開いた。
「ちなみに、そんな事をいつの間に調べていたんですか?」
「いやー、高塚司令が『私の指示、と言う事で調べておいて』と…どうも、高塚司令もこの結果を読めてたみたいです」
「なるほど…報告書に纏めて提出したら、予想通り過ぎて苦笑いしそうですね。さて、こんな出来たばかりの混成部隊ですが、よろしくお願いいたします」
「『星の数より、釜の数』とは言え、どうも濾そばい気がしますが…こちらこそ、よろしくお願いします」
その頃 司令部テント
「10式戦車です! 派遣命令を受け、この第4世代戦車、参上致しました!!」
「「……えっ!?」」
執務の最中に着任申請に来た10式戦車(武器娘)に驚く高塚と市ヶ谷。
「えーと…高塚司令、配属申請しました?」
此方も困惑気味な細川の問いに高塚は首を横に振りながら答えた。
「いや…司令任命の時に90か10の配属要請はしたが…まあ、そんな様子がなかったから、諦めて何も言ってない」
その答えに3人と筑波の沈黙、10式の動揺に10式と一緒に来た武器娘がオズオズと手を挙げながら言った。
「えーと、申請いいで……いえ、よろしいでしょうか?」
「あっ、いや、すまない。いいよ」
「では…機甲教導連隊所属の74式戦車で…ございます。10式と共に陸幕の命令により派遣されました。よろしく…お願いいたします」
「わかった。着任を確認、歓迎しよう。それと74、格好もだが、言葉遣いも無理する必要はないからな」
何せ、74(教導)の格好はヤンキーにメイド服を着せただけ、と言う非常に解りやすい格好である。
「あー、ありがとうございます。それで、司令達の困惑に答えるならですが…どうも、ウチラ…私達の派遣は陸幕より上の方が関わっている様です」
「……なるほどね。ありがとう、74。市ヶ谷さん、すみませんが、彼女達の寝床の用意と戦車隊へ案内をお願いします」
「わかりました。では、10さん、74さん、こちらに」
そう市ヶ谷が言って出た後に高塚と筑波、細川が顔を寄せる。
「陸幕の上…政府からの圧力が加わった、と?」
「先に言うが、政府には何も言ってないからな。身内もいないし」
「なら、松島宮殿下ら海軍か、外国から圧力が来て政府が陸幕に圧力を加えた、となりますが?」
「うーん、どうかな…どうも、少し違う気もするが…まあ、いい。戦力の増強は大歓迎だ」
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