〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
昨年は読者のお世話になりました。
今年もよろしくお願いいたします。
16時半頃 騎甲隊(解放部隊戦車隊)
「お疲れ様です、松塚大尉」
「おう、細川。急かしてすまなかった。あれ、高塚司令は?」
給油隊に同行して来た細川は松塚に声を掛け、松塚は礼を言いながら訊いた。
「高塚司令は北の弾薬庫がある吉井分屯地に向かわれました。弾薬の確認と補給集積所の開設の為です」
「あぁ、なるほどね。そう言えば、藤岡市はどうだ?」
「市街地の解放は完了です。ただ、もぬけの殻でしたが」
「やっぱりか」
細川からの報告に松塚は苦い顔を浮かべる。
「お気付き…いや、予想なされていたようですね?」
「なにせ、市内に入ってロクに抵抗も妨害もなかったからな。ごっそりと逃げられたんだろう?」
「はい。逃げ遅れたマグマ兵に尋問したところ、藤岡市内に居たのは東京などからの転出部隊で、群馬県内に分散配備される為に移動状態で待機中だったとの事です。大半が川向こうの埼玉へ撤退したようですね」
「なるほど、逃げ準備が要らなかったから、早く逃げれた訳か……まあ、逃げられはしたが、県外に出たんなら、こうして攻め込んだ意味合いはあったな」
「確かに…話は変わりますが、此方の現状は?」
「おっと、そうだな。とりあえず、燃料が大丈夫なところまで翔ばしてきたんだが……あの先、見えるか?」
松塚が指差す方に細川は目を細めて見る。
「新幹線の高架、その先に高速道路ですか…なるほど、ネックはあの高速道路ですね」
「あぁ、あの高速道路は盛り土して、人工的な丘になってる。多分…いや、間違いなく、高速道路の下を抜けるトンネルを潜った先に待ち伏せてるよ。こんな絶好な場所を防衛線に使わない訳がないしな」
「故にここで待機と…迂回は?」
「そう思ってGoogleマップとか見てみたが、こっから烏川までこの17号線が壁みたいに存在している。東側神流川と烏川が合流するから、ちょうど島みたいになってる。厄介な場所さ」
「確かに、ちょっとした要害ですね。となると…新町駐屯地と連絡をとり、背後を突くと言うのが常套手段ですが…」
「無理だな。多分、新町駐屯地は包囲部隊が付いてるし、あの先にいるのが群馬県の担当部隊なら逃げる訳がない。母数は向こうが多いし、なんと言っても、マグマ軍がそんな常套手段の対策を取らない訳もない」
「どうやら、頭の運動の時間ですね」
「そう言う事だ」
その頃 新町駐屯地
「うぅ…どうしましょうか…」
「どうしましょうか、なんて状況だと思う?」
新町駐屯地の駐屯地娘である新町かんな1尉に対し、同期生である萩原万智子2尉が呆れながら言う。
「ほら、普段から『目立ちたい!』って言ってたでしょう? 今がその目立ち時でしょう!」
「た、確かにそうだけど……うぅ…」
新町の態度に萩原は内心溜め息を吐く。
確かに地味で積極的ではないにしろ、物事をコツコツと真面目にこなすのが新町だと知っているし、更に普段から新町に『目立ちたい』と願望があるのも知っている。
故に今回がその『目立ちどころ』であるのだが……突然の出番に積極的でない性格により、すっかり普段の願望に二の足を踏んでいる。
「はいよー、失礼するよ~」
そんな中に入って来たのは同じく同期で新町駐屯地唯一の戦闘職種である第12対戦車中隊の杉柳大輔2尉。
「大輔、対戦車中隊の方は?」
「いやー、それがさ、中隊長が抑えてるけど、中隊長自身もね」
「なるほど…まあ、この現状だとね」
「あぁ、それで、我らが同期の駐屯地娘は二の足を踏みまくってると」
「で、貴方は何か作戦はない?」
「対戦車作戦なら思い浮かばないが、戦場のど真ん中で同期を目立たせる事なんて思い付かないよ」
互いにお手上げな案件に溜め息を吐く2人だった。
17時半頃 騎甲隊待機場所
「佐山くん、ちょっといいか?」
「はい、なんですか、細川さん?」
待機中の佐山に細川が声を掛けた。
「君の率いる小隊の中で最精鋭と思う一個分隊を貸してほしい。いいかな?」
「それは構いませんが…現状打破の方策でも?」
「その為の将校斥候だ。すまないが頼む」
「わかりました。少々お待ち下さい」
そう言って駆けていく佐山の背中を見つめる細川に高塚が声を掛ける。
「上官としてはプランを聞きたいんだが、いいかな?」
「敵陣を見て、弱点を見つけ、叩く。その為の将校斥候です」
「なるほど、単純明快で解りやすい」
そう言って、高塚は顎に手をあてる。
「……無茶はするなよ。色んな意味でな」
「それについては大丈夫です。高塚司令に出会えましたので、今度は高塚司令の下に…水陸研付き士官として永久就職するつもりですので」
「おいおい、エリート街道から、左遷街道に自ら足を向けるのかね?」
「おや、『左遷街道』とは皮肉ですか? まあ、高塚司令の思惑は解りますよ。こうして、『現場』を経験した人間が中央や各隊にいれば、滞留している『旧陸自の空気』を払拭出来る…そうでしょう?」
「ほぼ、一言一句間違いないな」
「なら、物好きな1人くらいは受け入れてくれますよね?」
「……未来の話だから、じっくり検討するよ」
やれやれ、と言いたげに高塚は言った。
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