〜りっく☆じあ〜す 『英雄』我道指揮官奮戦ス〜 作:休日ぐーたら暇人
登場人物 8
叢雲 海軍艦娘(出向員) 1等軍曹
元マルタ鎮守府の艦娘で現在は高塚の佐世保の水陸研に出向している吹雪型駆逐艦5番艦。(改二済み)
艤装が理由で日本への帰還後は槍術を本格的に習い始め、更に筋の良さから銃剣道・小太刀・戦闘用ナイフ等の戦闘術も指南された。
よって、水陸研では近接戦闘術の教官を務めている。
(故に階級が高い)
貴志部真幸 第14普通科連隊第4中隊 陸士長(兵長or伍長)
第14普通科連隊第4中隊所属の陸士長で小銃手。
父親は米軍とも取り引きのある商社の商社マンで幼い頃からハワイやグアムなどに行く事が多く、その為にガンオタクになった。
今回は臨時編成のデルタ・レコンの一員として配置していた。
暫くして 岐阜市内
「右、クリア」
「左、クリアです」
「よし、みんな、集まれ」
岐阜市内へ潜入した高塚達とデルタ・レコンの隊員は通りに出る路地から通りを叢雲と綾波に確認して貰い、一度全員を集めて軽くミーティングを行う。
「貴志部兵長を含む4人は私と叢雲、軍曹を含む4人は山本大佐、戦艦棲鬼、綾波に分かれて進む。いいな?」
高塚の言葉に警戒する叢雲、綾波を除いた全員が頷く。
「ここには味方は我々しかいない。だが、マグマ軍以外の何者かが居て、敵か味方かはこれまたわからない。接触には充分に注意する事。質問は?」
最後の問いに誰も何も言わない。
「じゃあ、散開して任務開始」
暫くして………
「はぁ…はぁ…老兵には少しキツイのじゃ…」
市街地戦には不向き過ぎる格好…と言うか白を基調とし、寒冷地に対応した防寒系着…を着て、回転弾倉式拳銃を持ち、古典的な言葉遣いな少女が壊れたビルの中の陰に隠れながら呟いた。
「ガバメントやステン達とも離れ離れな上に通信機の反応も鈍い…その上、なんじゃ、彼奴らは…鉄血の機械兵では無く、人間に近いときておるぞ」
様子を伺いながら今まで撃ち倒した『敵』を思い出しながら愚痴る。
その時、ハッと気付き振り向くと、いま、まさに手に持つAKを撃とうとするマグマ軍歩兵3人。
ダン! ダン! カチッ!
「し、しまった!!」
条件反射で咄嗟に得物の拳銃を撃つが最後の1人は弾切れで撃てない。
残ったマグマ軍歩兵が撃とうとした瞬間……
「愚か者は…沈め!」
「愚か者は…沈め!」
右手にベレッタM92拳銃、左手に戦闘用ナイフを持って前衛に就いていた叢雲は寸前のところでマグマ軍歩兵の首に戦闘用ナイフを深々と突き刺す。
マルタからの帰還後、水陸研への出向を機に(艤装の関係から)得意だった槍術を錬成し、筋の良さから棒術・小太刀・ナイフ戦闘術等も習い、いつの間にやら近接戦指導教官になっていたりする叢雲はここでもその腕前を披露した。
「周囲に散開後、警戒! 出来る限り発砲は控えるが、イザとなれば撃て! 叢雲、少し頼む」
率いていたタッグを周囲に展開させ、叢雲に場を任せると高塚は先程、叢雲が救った少女に話し掛ける。
「大丈夫ですか? 我々は日本陸軍です…その前に日本語わかりますか?」
流石の出で立ちに高塚も日本語が解るかを心配する。
「え、あ、と、当然じゃ! 世界の言語など多少の得意不得意はあるが、聞いて理解するなど造作も無い!」
「あっ、よかったです。いや〜、外国の方なら言語が通じないと色々と面倒で…あっ、お名前の方を聞いていませんでしたね。出来れば言って頂ければ助かるのですが?」
「儂か? 儂はM1895じゃ!」
「M1895!? なんで、帝政ロシアのリボルバー拳銃がここにいるんですか!?」
さすがガンオタの貴志部が興奮しながら言った。
「貴志部兵長、貴方は黙っておきなさい」
「あはは…ちょっと失礼」
叢雲が注意するのを横目で見ながら、高塚はヘッドセットの通話機能のスイッチを入れる。
「こちら、タンゴ・キング。ゲオルギー、応答せよ」
『ゲオルギーからタンゴ・キング、感度良好。ちょうど通信しようとしていたところだ、同志。なにか見つけかね?』
「こちらは少女…M1895を保護。帝政ロシア時代のリボルバー拳銃の名前だそうですが…お心当たりは?」
『大ありだ。実はこちらもM1911ガバメントとステンMarkIIと名乗る少女を保護した。彼女達曰く、そちらのM1895の他に2名と行動を共にしていたそうだが、転々バラバラになったそうだ…あと少し長居する必要があるな』
「そうですね……同志、3人の事、どう思います?」
『世界で有名な銃の名前と実物を持った少女がこの周辺に居る…色々と興味をそそられるね』
「それは同じく…とりあえず、残り2人を捜索・保護しましょう。通信アウト」
通信を終え、高塚は皆の近くに寄る。
「山本大佐と話したが、向こうも2人を保護した。しかし、あと2人、行方不明の為、捜索を継続する。多分、残る2人はMP-40とP-38だ。
貴志部兵長、君の耳が頼りだ」
「了解。建物の中でドンパチしていても聞き分けてみせます!」
「はいはい、元気はいいけど、ボリュームを下げなさい」
「あはは…さて、行こうか」
貴志部と叢雲のやり取りに苦笑いを浮かべながら、高塚は前進を命じた。
その頃 マグマ軍 岐阜分屯地包囲部隊司令部
高塚達の反撃により、いつの間にか前線防衛司令部にもなってしまった岐阜分屯地包囲部隊司令部の中は騒がしかった。
正体不明の小集団の侵入によって既に20を数える歩兵が倒されていた。
また、追撃する内にバラバラになった為に未だ1人として発見出来ず、司令部に詰める誰もがイライラしていた。
なにせ、目の前に『日本軍の大部隊』が自らの拠点を奪還せんと虎視眈々に狙っている中でのこの出来事を早く解決し、現状復帰を図りたいのに、それが出来ないのだから当然である。
そんな中、扉からコロンと音がした事に気付き、其方を見ると次の瞬間には強烈な閃光を解き放った。
これにより視野を奪われたマグマ兵はとにかく手近にあったAK-47に手を伸ばそうとするが、視界ゼロ状態では上手くいかない。
また閃光から少し間を置いて突入した2人が各々の得物であるMP-40とワルサーP-38で的確に司令部の人間を1人残さずに片付けた。
「ワルサー、そっちは?」
「制圧完了」
「ダンケ。無線をお願い。私はドアを見張る」
「了解」
MP-40がドアを見張り、ワルサーP-38がマグマ兵の死体を退けて無線を弄る。
暫くダイヤルを弄り、二、三言送信機に向かって話すが、諦めた。
「ダメだよ。グリフォン本部にはまったく繋がらないよ」
「いよいよ、私達が別世界に来た事を疑うしかないね…仕方ない、バラバラになった皆んなと合流して…」
その会話が中断したのは隣の小部屋から物音がしたからだ。
2人は慣れた動作で小部屋へのドアを警戒しながら開ける。
すると……中に居たのは後ろ手に縛り、ご丁寧に猿轡まで噛ませた眼鏡少女だった。
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