「おはようございます、D級退魔師、赤塚無明様」
「おはようございまーす。なんか皮肉られてる感じが凄いですが」
「いえ、私は貴方様を尊敬していますよ?ささ、こちらに」
「ん~~~~!?!?んぐ~~~ッ!?」
「さぁ、行こうか...如月君...!?」
「ふぁ~...」
黒のリムジンで迎えに来たのは、退魔学園の理事長の秘書『
そして、俺はリムジンに縛り付けて口にガムテープ貼った如月を先に突っ込んでから入った。その後に続いて欠伸しながら白夜が乗り込む。
全員が乗ると、ゆっくりとリムジンが動き出す。
「んん~~~!!!んんん~~~!?」
「うっせぇなぁ、ほれ」
何か喋りたいことがあるようだったので口のガムテープを剥がしてやると、如月はすごい勢いでまくし立ててくる。
「ぷはぁッ!?あ、あんたねぇ!?流石にこの仕打ちはないんじゃないの!?」
「あ?なんか文句あんの?」
「いえ...すみません」
ガムテープをちらつかせると即刻大人しくなる如月。素直なのか反抗的なのか分からねぇな。
「赤塚様、今回の臨時講師の件について詳細をお伝えしてもよろしいでしょうか?」
「あ、どうぞどうぞ」
俺が促すと、南沢が仕事の内容について話し始める。
「今日については講師としての仕事、というのはございません。今日は生徒の皆様に紹介をさせていただいて、解散となっています。その後は学食なり図書室なり、学園の施設をご利用いただいても結構です。宿泊するホテルもご用意させていただいています」
「学食使ってもいいんだ...今日ぐらい金使うか...」
「あ...」
「どうした?」
「いや?なんでも?」
如月がなんか気づいた顔してたけど、なんかあるんだろうか。やってしまった...どうしようみたいな絶望感が表れている。借金の期日が迫ってきてる感じか。まぁ、俺にはどうでもいいが。
「貴方に行ってもらいたい仕事は明日の午前10時からとなっています。そこから2時間、そして1時間の休憩を挟んだ後の2時間ほど講義をしてもらいます」
「それって、大体の内容は既に設定されてるんですかね」
「いえ、貴方と今回はもう一人講師がいらっしゃりますので、その方と相談して好きに決めていただければと思います」
「...そっすか」
つまり、俺の他に凄腕退魔師がもう一人いるってことだ。なんとなくだが、南沢の声音が俺を試しているような感じがする。
如月もそれを感じ取ったのだろう。露骨に嫌そうな顔をしている、縛られているが。
だが、南沢も俺の実力は知っているはずだ。言うのは恥ずかしいが、俺は退魔連合の中では結構有名なのだ。良くも悪くも、だが。
だから今更何をしようとしているのか、今の俺にはどうも分からなかった。
数時間ほどリムジンの中は静寂が続き、白夜はもう普通に熟睡。如月も平然と涎たらしながら寝ている。縛られているが。
俺もうたた寝しようとしていた頃、窓から外を見ればいつの間にか見えるまで近づいていた。
退魔学園の象徴、『結界校舎』。都会から少し離れた森の奥にひっそりと建つ、その建物が。
校舎のデザイン自体は普通の学校と大差ない。あくまでも退魔師は歴史の裏で暗躍する組織だかららしい。だが、外見に反してその耐久度が頭おかしい。俺の必殺、ダンベル時速500km飛ばしで傷一つつかないのだ。それが『結界校舎』と呼ばれる所以である。理事長の怪奇によって、その耐久度は維持されているらしいが、詳しい能力は誰も知らない。
ここで俺は何を話すのか。それはこの生徒にどんな影響を及ぼすのか。
D級退魔師の話を聞いてくれる物好きはどれぐらいいるのか。そんなことを考えてると、いつの間にか駐車する直前になっていた。
***
「ふぁ~...」
「まだ眠そうだな?」
「うん...まだ眠たい」
全校生徒が集まっている体育館に急ぎ足で向かってる途中も構わず欠伸している白夜。
最近、白夜が俺の中で単純な癒しに変わってきている気がする。これがロリコンへの目覚めなのか?だったら俺、ロリコンのこと否定できなくなるかも。
「可愛いお嬢様ですね」
「まぁ...はい」
そんな俺達を見て南沢が口を挟んでくる。
微笑ましそうに見ているが、その眼はただ見ていて癒されているのか、獲物を狙うような冷たい眼なのか判別できない。それほどまでに曖昧な眼だ。いや、隠すのが上手いというのか。
ちょっとしたやり取りでも、嫌悪感を抱いている相手の動作を戦い以外の時でも注意深く観察するのは俺の悪い癖なのかもしれない。まぁ、戦いのときにそんなこと言ってたら死ぬが。
「白霧白夜様...特殊な方だと聞いていましたが、実際に見てみると確かに...色がないなど、見てみるまで俄かに信じられなかったものですから」
「まぁ確かに」
俺の横で如月がぶつぶつと何か言っている、縛られながらだが。聞き取れないが、今の言葉が信用されていない風に聞こえたんだろう。
だが、それも仕方ない。そんなこと言ったって何言ってんだこいつ、で終わってしまうだろう。奇人変人、特殊体質ぞろいの退魔師でもこんな人間はいない。
俺の知り合いでそんなことを無条件で信じる奴なんて―――
「ん?あ?もう集まる時間でしたっけ?」
―――クーラーが効いた会議室からアイスを頬張った男が現れた。
「えぇ、もう生徒の皆さんは体育館に集まっています。貴方も早く」
「了解了解...あ?もしかしてもう一人の講師......か?」
「......」
夏場っぽい紺色の短パン。同じ紺色と白の横じまシャツ。半袖から見える腕、足は結構筋肉質だが、俺よりも身長は低い。色素が抜けかかったような曖昧な黒のショートヘアー。そして間抜けそうでありながらも鋭い眼、青と白と自分で縫い付けました感満載のボロボロの剣のマークが入ったキャップを被った姿。
「お前...?」
「よぉ...なんつーか、久しぶり」
見間違えるはずはない。それにさっき無条件で信じそうだな、と考えていたのだ。
それでも、それは突然過ぎて、ろくな言葉が出てこない。
例えは悪いが、茂みからいきなり蛇が出てきてもすぐに退治しようなどと思えないように。
それは、目の前の奴も同じようだった。頬張ったアイスをすぐさま飲み込むが、頭が痛くなってしまっているようだ。
「...知り合い?」
「あぁ、俺の...」
「...?」
「俺の、『友達』だ」
白夜に聞かれ、俺は頭が働かないながら、迷いなくそう答えていた。
初めて退魔師になった時から―――今、住んでいる町に引っ越すまで本部で一緒に戦っていた、正真正銘、最初の『友達』。
S級退魔師、『