旧編:湖の騎士の力を何故か得ていた転生者の話   作:何処でも行方不明

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優希@頑張らないさん星8評価
たけぽんさん星6評価
だむだむさん星4評価
ありがとうございます!

アンケート、どうやらロスヴァイセさんが独走状態ですね。


第10話 《特訓終了 もげかける手足》

あっという間に1週間が過ぎた。

ゲームで予想される連携や攻防の練習。

朝から晩までずっと特訓だった。

今は深夜。全員が寝静まった中、当方は森を駆け抜けていた。

いわゆる自主練だ。

《騎士の誉》の新しい段階に至ったのはいいが、いかんせん体がついて行っていない。

というか、反応速度が足りてない。攻撃のタイミンクが合わないのは致命的だ。

なので、巨木のひとつに傷をつけ森を疾走。

傷をつけた巨木に攻撃を当てる。というものをしている。

もっとも母がいたらこんなことをせずに済んだかも知れないが。

目に写る木を速度を落とさずに避ける。

当方の特訓の完成のイメージは《戦車》は《戦車》でも《戦車(チャリオット)》だ。本来の《戦車(ルーク)》との役割からは大きく外れるが強襲や侵略に長けるようになりたい。

そのため、高速機動の練習をしている。

暗い闇の中、木々が前から後ろへどんどん通り過ぎていく。

その中、傷を付けた巨木が目に入った。

その瞬間、手に武器を出現させ斬撃を行う。

ズガァァァン!

と音がする。

音の方を向くと巨木がメキメキと音を立てて折れるところが見える。

 

「おしっ!」

 

試行6回目にしてやっと成功した。

やっと反応速度が追いついた。身体能力を向上させるのだから反応速度も向上させてくれればいいのに……とか思ったのは内緒だ。

けれどもまだ1回。

1/6ではまだ低すぎる。

せめて1/2だ。

というわけで特訓続行。

 

試行回数15回を超えたあたりで腕と脚が負荷に耐え切れず曲がれない方向に曲がった。

 

※※※

 

「あだだだだだ!?」

 

芋虫のように這い蹲ってなんとか別荘にたどり着いた当方。

とりあえず、アーシアに会って治療してもらわないとこのままだと死ぬ可能性がある。

ヤバイヤバイ

本格的に生命の危機とついでに小猫ちゃんに見られたら大さじ一杯分ほどしか残っていない先輩の威厳が消失しそうという危機も感じる。

 

扉を開けるのに一苦労し、階段の麓までなんとかたどり着く。

玄関の段差ですら超えるのに時間がかかったのに階段なんて1日かかっても無理かもしれない。

 

「……一階の方で朝が来るのを待つか?」

 

最終手段はそれだ。

痛みでろくに動かない手足を引きづっているうちに4時間ほど時間が経ってしまっている。

現在時刻は恐らく朝4時ぐらい。

2時間ほどで起床時間である6時だ。

あと2時間をこの激痛と過ごすと思うと辛い……

 

「……全部声に出てますよ。リヴィ先輩」

 

「……へ?」

 

声がした方を振り向いたら小猫ちゃんがいた。

やー、威厳がなくなりそうだ。

 

※※※

 

「……で、何でこんなことに?」

 

小猫ちゃんの怪力で近くの椅子まで運ばれた当方は事の顛末を話した。

 

「……馬鹿ですか?」

 

まあ、呆れ顔にもなるだろう。当方も傍から見たらアホなことしてるなと思う。

 

「たはは……申し訳ない……」

 

「ここで大人しくしておいて下さい」

 

そう言いながら小猫ちゃんは2階に上がっていった。

ズキズキなんて比じゃない痛みが全身を襲う。

さっきから目を逸らしているが肘が前に、膝が後になりかけている。

時間が経てば経つほど手足が変な方向に向いていってる気がする。

気のせいだと願いたい。

そして、数分後。

バタバタと階段を駆け下りる音が聞こえる。

 

「だ、大丈夫ですか!リヴィさん!」

 

どうやら小猫ちゃんがアーシアを呼んだみたいだ。

 

「まあ、大丈夫ではないかな」

 

「治療します!」

 

「……その前に手足を元の向きに戻します」

 

と、小猫ちゃんが当方の腕に手をかける。

ま、まさか……

 

「あの……もしかして……」

 

「はい、リヴィ先輩の考えているとおりです」

 

ゴキ

と音ともに腕が元の向きに戻った……って

 

「イテェェェェェェェェッッ!?!?」

 

「うるさいですよ」

 

※※※

 

そして、日が昇り朝になった。

アーシアの神器《聖母の微笑み(トワイライト・ヒーリング)》により痛みは引いたが寝れなかったので当方は少しポケーとしていた。

 

「リヴィ、少しいいかしら?」

 

そんな中、部長が声をかけてきた。

多分、さっきのことだろう。

 

「わかりました」

 

というわけで今は誰もいない部屋の一室で部長と向き合っている。

 

「あなた今朝、神器(セイクリッド・ギア)のせいで怪我をしたそうね」

 

「はい。アーシアさんに治して貰ったので今は痛みはありません」

 

「そう……それにしても……《戦車(ルーク)》の手足がもげかける程の出力が出るのね……」

 

部長は考え込む。恐らくはあの解放段階の使用禁止を検討しているのだろう。この特訓でできるようになったことは部長に報告している。

だから、当方の今の成長の度合いがわかっているのは当方自身と部長だけだ。

 

「……一度検証してみる必要があるわね」

 

「検証とは?」

 

「このあと、イッセーと戦いなさい」

 

「へ?」

 

「もちろん、騎士の誉(ナイト・オブ・オーナー)は第二解放でね」

 

……?何が狙いだ?

 

※※※

 

「ブーステッド・ギアを使いなさい。イッセー」

 

イッセーはこの山に入ってから神器の使用は一切禁止されていた。

その使用禁止が今は許された。その事にイッセーは困惑している。

 

「リヴィ、相手を頼むわ」

 

「わかりました」

 

部長に促され、当方は前に出る。

 

「二人とも、模擬戦が開始する前に神器(セイクリッド・ギア)を発動させなさい。そうね……発動から2分後、戦闘開始よ」

 

「は、はい」

 

「はい」

 

当方たちは部長の言われるままに神器を起動させる。

 

「《騎士の誉(ナイト・オブ・オーナー)》第二解放!」

 

「ブースト!」

 

『Boost!』

 

そして十秒毎にイッセーの神器から『Boost!』という音声が流れる。

確か、この音声がする度にイッセーの力が倍増するらしい。

いやはや、とんでもない神器だ。

そして2分が経過した。

 

「いくぞ、ブーステッド・ギア!」

 

『Explosion!』

 

イッセーは力の増加を止め、ソレを解き放った。

その力は気配でわかるほど増大している。

2分ということは2の12乗分力が増大していることになっている。

つまりは4096倍か?

数字だけ見るととてつもないな。

 

「その状態でイッセーはリヴィと手合わせしてみてちょうだい。リヴィ、相手を頼むわ」

 

「わかりました」

 

部長の指示に従い当方は木刀に魔力を流し込んだ。

朱乃さんから学んだ物質を強化させる方法だ。

 

「イッセー、剣を使う?それとも、素手でいく?」

 

「素手で行きます!」

 

使いこなせない剣よりも素手を取ったわけか。

まあ、手合わせと言って負けるつもりは一切ないけどな。

初速からギアを上げていく。

流石に一瞬で消えるほどの《騎士》のような敏捷性はまだ無い。

だが、一手一手の重さはユートを既に上回っているぞ!

たかが4096倍で……

いや、無理だろ

 

ガンッ!

 

と音がする。

イッセーが咄嗟に腕を交差させ当方の攻撃を防いだのだ。

まあ、流石4096倍ってところかな。

当方もかなり本気で攻撃したのだがな……

木刀からミシリと音がする。

 

「ッ!」

 

まさかここまでとは……

どうにかしないと勝ちは薄そうだ。

だが、騎士の誉で貯蔵している武器の使用も騎士の誉で木刀を強化するのはこの手合わせでは禁じられている。

そこにイッセーの拳が見える。

拳の速さが4096倍じゃなくて助かった。

速度まで4096倍になられると軽く音速は超えるだろうな。

軽く避けることに成功したが、有効打がないままじゃ部長の言う通りにはならない。

予想打にしない場所……上か下か……

下は地面だから無理だな。

上から行くか。

 

ゴッ!

 

と鈍い音がした。

イッセーは間髪入れずに蹴りを放つが、昨夜の特訓で動体視力も反応速度も上昇して当方には避けやすいことこの上ない。

 

「イッセー!魔力の一撃を撃ってみなさい!魔力の塊を出す時、自分が一番イメージしやすい形で撃つの!」

 

当方は耳を疑った。当たることはないだろうけど……

いやいや、4096倍ですよ?

死ぬって。

当たらないけど。

イッセーは部長の言われるままに魔力の塊を投げた。

それはイッセーの手から離れると巨岩ほどの大きさになった。

これ、よけれなかったら……と思っているところで当方は軽く躱すが……

当方を通り過ぎた魔力の塊はその後ろにあった山を抉りとった。

 

「………」

 

は?

 

『Reset』

 

「そこまでよ」

 

イッセーの力の増加が終了し手合わせも終わる。

4096倍は伊達じゃないってことかな。

 

「お疲れ様、二人とも。さて、感想を聞こうかしら。リヴィどうだった?」

 

「正直驚きました。始めの一撃で終わらせようとしましたが予想外でした」

 

当方はそう言いながら木刀を見せる。

柄と刃の部分はほとんど繋がっていない。

 

「魔力で木刀を覆い強化したのですが、イッセーの体が固すぎるのとこちらが力を込めすぎたので、このザマですよ。基礎を高めたイッセーがこんなにも強いなんて……」

 

「ありがとう、リヴィ。そういうことらしいわ、イッセー」

 

どうやら部長は……まあ、呼ばれた時の会話で知っていたけど、イッセーに自信を持たすために手合わせを行ったようだ。

その目論みは成功したようだ。

当方もまだまだということも痛感した。

 

「相手がフェニックスだろうと関係ないわ。リアス・グレモリーとその眷属悪魔がどれだけ強いか、彼らに知らせてやるのよ!」

 

『『はい!』』

 

全員が力強く返事をした。

その後は山篭り修行を続けた。

何回か手足がもげかけたがその他は順調に進んだと言っておこう。




「もげなくてよかったよ」

「いやいや!もげかけるのも問題だからな!」

「そう言えば、リヴィって下級悪魔の強さじゃないよね」

「そうなのか?」

「そうだよ。読者さんもきっと思ってるよ?」
次回
第11話 《決戦開始 初のレーティングゲーム》

「ま、まあオリ主最強らしいから……」

「『(はてな)』ついてるけど?」

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