旧編:湖の騎士の力を何故か得ていた転生者の話   作:何処でも行方不明

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もう六月やん……うそやろ……


第51話 《真名解放》

ゼノヴィアは現在デュランダルとジュワユーズの二刀流。

ようは両手が塞がっている状態だ。

追加で騎士の誉(ナイト・オブ・オーナー)から武器を取り出そうにも浮遊する武器を強奪していない以上、握ることは出来ない。

そして握られていない武器は当たり前だが重力により落下する。

リヴィが操作できるのはあくまで輝剣をカスタマイズしたものに限られる。

しかも出された瞬間、衛宮が握るエクスカリバーによりすぐさま砕かれてしまう。

かと言って龍神の力を振るおうにも本調子になるには片目を潰さなくてはならない。

片目でも戦えるリヴィならまだしも、この場でゼノヴィアが片目を失うのは距離感を失うことに等しい。

そして、距離感を失うことは間合いを読めなくなると同義。

ある程度は今まで養った勘やリヴィの仙術による気配察知で補えるとはいえ、それでも完璧とは言い難い。

当たれば即死といえる聖剣を持つ相手に片目を失うのはありえない。

直ぐにその体に刃が届いてしまうだろう。

禁手(バランスブレイカー)の《彼方より繋がる幻想の物語(ファンタズマ・フィックスト・ミソロジー)》もリヴィが表に出ていなければ扱うことが出来ない。

 

(かと言って時間をかければ赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)で能力は倍加し続ける一方か)

 

単純火力の二倍やたかが四倍でも元の数が多ければ実力差は一気に開く。

言い方は悪いが、イッセーが特に何かに優れているわけではないからこそリヴィは同格と判断した。

だが……

衛宮の力量はおそらく木場と同格クラス。

そんな強さの使い手がエクスカリバーなどという最強の幻想を持ち、尚且つ力が倍加するようであれば

幾ら二人分の力を持っていても相手にするのは難しい。

いや、本来ならば相手にしない方がいい。

 

「なあ、衛宮。知ってるか?」

「なんだ?」

「恋する乙女はな……無敵らしいぞ?」

(突進するつもりか?やめろ!自殺行為だぞ!?」

 

ゼノヴィアは二本の聖剣を持ち突進する。

そんなゼノヴィアに対して衛宮は迷うことなくエクスカリバーを振るった。

光の波動はゼノヴィアに襲いかかり……

研ぎ澄まされたもっと大きな光に飲み込まれた。

 

「なに!?」

 

衛宮はその光を飛ぶことでかわす。

本来なら、倍加されたエクスカリバーの波動はゼノヴィアは浮き消せない。

だが、ゼノヴィアの左手にはジュワユーズとさらに新しい聖剣が握られていた。

 

「その剣……アスカロンか!」

「ご明察。竜殺しの剣、(セント)ジョージのアスカロンだ」

 

ゼノヴィアが行ったことは一見物凄く単純であり簡単なこと。

デュランダルとジュワユーズの波動を共鳴させ大きな波動を作り、イッセーから預かっていたアスカロンも交えさらに増幅させ放っただけのこと。

アスカロンという新たな聖剣をつくという発想に至ったゼノヴィアは迷うことなくそれを実行に移した。

そして……

 

『Reset』

 

衛宮の倍加が終了する。

そう、倍加には時間制限がある。

 

「さて、次はためらわないぞ?」

「そうか……なら、こちらも次で勝たせてもらおう!」

 

三本の聖剣とエクスカリバーがぶつかり合う。

刃が打ち合う度に聖なる波動と衝撃が辺りに走る。

その衝撃により衛宮の体に炎で焼かれたような傷が現れ始める。

どうやら自分が振るっているエクスカリバーにより腕が焼けているようだ。

 

「……ほう?」

 

それもそのはず。

衛宮はどうあがいても神の加護を得られない転生者であり悪魔。

そして手に持つのは星の聖剣。

デュランダルをも凌ぐ聖なる波動はじわじわとその体を焼いていた。」

 

「気づかれたか」

「ああ、気づいたさ。どうやらその聖剣を使うのは……いや、聖剣を握ることすら本来なら叶わないようだな」

「その通りだ。だが、俺が燃え尽きる前にアンタを倒せばいいだけだ」

 

衛宮はそういうとその手に握る聖剣を垂直に構える。

 

「【永久に遥か(エクスカリバー)……」

 

聖剣に今までとは比較にならないほど夥しい量の聖なる波動が収束していく。

 

『Boost!Boost!Boost!』

 

キュインという音とともに左手の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の宝玉が緑の光を灯す。

 

「どうやらあちらは全力のようだな」

(宴もたけなわ……こちらも全力で答えるとするか?)

「ああ、そうしよう……《単眼解放》!!」

 

ゼノヴィアを中心に水飛沫が上がる。

左目がはじけ飛びその体を龍が放つ独特なオーラで包む。

そしてその背後には銀色の鱗を煌めかせる蛇龍がいた。

 

「輝け……」

 

ゼノヴィアはリヴィの力により三本の聖剣を統合した大剣を構える。

その形はかつて彼女が手にしていた【破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)】と酷似していた。

辺りに発生する激流と暴風がゼノヴィアに集まっていく。

腰まで伸びた髪が暴風によりはためき、その目には神威が宿っていた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

嵐と共に神威の光が振り抜かれる。

 

『Transfer!!』

黄金の剣(イマージュ)】!!」

 

機械音声とともに何倍にも膨れ上がった聖なる波動がそれを浮き消さんと放たれる。

 

破壊の嵐と聖なる極光は撃ち合い拮抗する。

 

どちらからともなく叫ぶ。

この絶対なる一撃を相手に届かせるため。

いや、違った。

愛する人の力を得た自分こそが最強だと証明するため。

この手に握る2つの主人公のチカラは最強であると。

しかし、拮抗してしまった。

これが本来のエクスカリバーと複合デュランダルの戦いなら問題はなかった。

だが……

衛宮が握るのは己の幻想を核とした模造品。

最強の幻想が他の力に並んでしまった。

最強であるという盲信

盲信からくる自負

それが覆された。

 

パキン!

金属が割れるような音ともに衛宮の持つ二つの幻想が砕け散る。

衛宮を守っていた幻想がたった三振りの聖剣を束ねたものに砕かれた。

 

「……!」

 

泡が新たな幻想を投影する。

巨人と見紛うほどの巨躯を持った、巌のような男性が映し出される。

だが……デュランダルの波動が衛宮を焼いた。

 

※※※

 

光の本流に飲まれた.

俺の手にあったエクスカリバーとブーステッド・ギアは砕け消えた。

次の一手にはステイナイトのバーサーカーを選んだ。

一度死のうが勝手に発動する自動再生の宝具【十二の試練(ゴッド・ハンド)

それを俺の体に投影させることで

俺の体が地面に倒れることはなくなる。

焼けつくような痛みとともに再び目の前にいる剣士を見据える。

この世界でいうところの主人公ハーレムの一員のゼノヴィア。

どうやら俺が知っているモノとは違い、数々の相違点がある。

大きなモノといえばその背後に見える銀色の龍……

おそらくは元々いなかったハルトマンだろう。

そいつが今口を開け俺に向かって吐き出そうとしている。

ああ、恐らくは俺は負ける。

拾ってくれた恩のあるアミティエの顔に泥を塗ることになる。

なにせ本来の実力を出し切れば容易に勝てる相手だからだ。

でも……

ハルトマン。お前のその姿は

お前にとって切り札(とっておき)なのだろう?

 

※※※

 

体のあちこちが焼け付き衣服は原型を残さないほど損傷している。

だがそれでも衛宮はまだ立っている。

それはブエルの名を背負うものとしての責務を果たすためだろうか。

 

「……恐れ入った。まさか俺が考える最強が拮抗するなんてな」

 

そういう口からは一筋の血が。

そしてまた新しい泡が……

いや。

衛宮が保有する最後の特典が姿を現した。

鉛色の石球。

それは衛宮の背後に浮遊し形を変える。

 

(あれは……剣か?)

 

リヴィはいぶかしげな声を上げる。

さきのエクスカリバーの方が圧倒的に危険なのだ。

ゼノヴィアが持つ聖剣がその格を赤龍帝の籠手に引き上げられていようとも凌駕したため

次に来るのはエクスカリバーを上回る正真正銘の奥の手だとばかり思っていた。

だが、衛宮の最後の武器にはせいぜい分断され七つに分かれていたエクスカリバー程度の脅威度しか感じられない。

 

「だが、用心に越したことはない。フェニックスの涙か他の何かか。それともこの空間が有する特性かどうかは定かではないが、そう何度も私たちの一撃を耐えれるはずがない」

「ああ、たしかに。さっきの威力はそう何度も耐えられない。今回もルールに引っかからないか不安だったよ。でも楽しい試合は終わりだ」

 

バチバチと衛宮の体に直線で構成された文様が走る。

それらすべてから電流のようなものが解き放たれ石球が変化した剣にまとわりついていく。

 

「さあ、最後の大見せ場だ。付き合ってもらえるか?」

「……いいだろう。その勝負のった!」

 

ゼノヴィアは衛宮の誘いにのり自分の持てる力を存分に引き出す。

たかが騎士が番外の駒を倒せるのならまたとない機会だろう。

実質的に駒価値に制限がない番外の駒をたった三枠の騎士が倒す。

例え実質的に疑似の駒による駒価値の引き上げが行われていようとも

このチャンスは逃すにはあまりにも惜しい。

 

そしてその思考こそ衛宮の思惑通りだった。

 

ゼノヴィアの聖剣が振るわれた瞬間、衛宮の剣がその腕を焼き放たれる。

 

その一撃は寸分の狂いもなくゼノヴィアの心臓に向かっていく。

それを認知したゼノヴィアの行動は早かった。

 

解放(リリース)!」

「な!?」

 

リヴィとの融合を解除することでこのまま二人とも撃破される展開を防いだ。

そしてゼノヴィアの心臓は……

衛宮の剣により穿たれた。

 

「最強の後出しじゃんけん……斬り抉る戦神の剣(フラガ・ラック)だ。因果を形成しお前たちの切り札が放たれたという事実を上塗りさせてもらった」

 

右腕が真っ黒に焼かれた衛宮がそういう。

その体はすでに撃破された時に現れる光に包まれていた。

 

「今回の勝負は俺の負けだ……だけど、俺ごときが消えてもブエルの勝利は揺るがない。あがいて見せろよ、グレモリー」

 

それだけ言うと衛宮は消え失せた。

それに伴い、上書きされていた世界が元の世界に戻る。

一つの闘争が終わった今、立っていたのは無傷のリヴィだけだった。

 

『アミティエ・ブエル様の「剣士(セイバー)」一名、リアス・グレモリー様の「騎士(ナイト)」一名、リタイヤ』




槍と竜が激突を続ける
猫は鬼と
聖魔は剣殺しと戦いを繰り広げる。
そして……
総裁家の本陣から女王(クイーン)が解き放たれる

次回
第52話 《モンテクリスト伯》

別世界からの転生者
その力がまた一つ示される。

リメイクとかした方がよき?

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