アズールレーン二次創作 ~ 今日もあの娘は元気です ~   作:ながやん

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 八八艦隊計画の一号艦として、1919年11月9日に進水。当時の列強各国の最強戦艦に並ぶ、41センチ砲と最高速度26.5ノットを誇り、二番艦陸奥と共に世界の七大戦艦「ビッグセブン」と呼ばれた。大和や武蔵が極秘だったため、戦時中の多くの国民は「聯合艦隊旗艦といえば長門」と思っていた。関東大震災の折には、軍事機密たる最高速度を晒しながらも東京に駆けつけたエピソードが有名である。

 戦後は、終戦時に唯一航行可能な戦艦としてアメリカ軍に接収される。翌年1946年7月のビキニ環礁核実験において、標的艦として使用された。各国の艦が沈む中、最後まで浮いていたとも言われており、監視員が目を離した僅か一瞬のうちに沈没したとされている。


SHOW THE FLAGSHIP

 夜の帳が母港を包む。

 母国別に立てられた寮舎へ、夢見の時間が訪れたのだ。

 当然、指揮官も昼間の激務でそろそろ眠く、宿舎に戻って寝るつもりだった。

 だが、その彼が何故か、重桜寮の一室に座らされている。

 眼の前には、市松人形もかくやという絶世の美少女が座っていた。身を正してシャンとしているが、既に寝支度を整えている。白い肌が透けて見えるネグリジェが、未成熟な青い果実に瑞々しさを添えている。

 少女は静かに、よく通る声を発した。

 

「余は、長門。重桜の長門」

 

 そう、目の前にいる少女が、重桜の聨合艦隊総旗艦、長門である。あのビッグセブンの一角であり、欧米の戦艦にも決して引けを取らぬ大戦艦である。それを、アジアの小国が生み出したところから、徐々に歴史は加速度を強めていったのだ。

 その長門が、真顔でじっと見詰めてくる。

 少し居心地が悪いが、しょうがない。

 そして、この状況を生み出した元凶にして当事者が、背後でドアを閉めた。

 

「長門姉! じゃあ、次はユニオン寮のみんなを連れてくるね! 急がなきゃー!」

 

 元気いっぱいに飛び出していったのは、長門の妹、陸奥である。

 騒がしい彼女の足音が遠ざかると、部屋に静寂が満ちた。

 長門の部屋は、和室である。そして、既に布団が敷いてある。枕は、二つ並んでいた。その状況を挟んで、指揮官は正座して長門の視線にさらされているのだった。

 陸奥に先程、強引に連れてこられたのだ。

 その説明を求めて視線を彷徨わせると、長門は小さく溜息を零した。

 

「……この度はすまぬ、指揮官。余の発言が軽率であった」

 

 そう言って、長門は「ふむ」と唸る。

 しばし黙考するように視線を外し、少しずつ状況を話し始める。

 重桜に所属するKAN-SENは、その多くが敵対勢力レッドアクシズに加わっている。暗躍する赤城と加賀、その背後に迫るセイレーンなる謎の敵……アズールレーンが平和を守る海域は広く、今も過去の戦争を再現するかのような戦いが続いている。

 そんな中、先日重桜本国から長門と陸奥の姉妹がやってきた。

 ビッグセブンの七隻全てが、このアズールレーンに参集したことになるのだ。

 

「そこで余は、陸奥に他国の者たちとの交流の場を設けるよう、頼んだのだ。陸奥は、その、なんといったか……そう、ぱじゃまぱーてぃ、なる集いを催すと言ってな」

 

 ――パジャマパーティ。

 それで既に、長門はネグリジェと布団でスタンバイしている訳である。

 だが、肝心の他国のKAN-SENはまだ来ていないし、そもそもパジャマパーティとは女の子同士の集いが主流だ。この場ではやはり、ユニオンやロイヤルといった、各国のKAN-SENと大いに語り合うのがいいだろう。

 じゃあ、そういうことで……と、指揮官が立とうとしたその時だった。

 

「……指揮官? フッ、脚が痺れたのか? どれ」

 

 長時間の正座は久しぶりで、気がつけば血の流れが滞っていた。ビリビリとしびれる足裏の感覚は、立ち上がることを許してはくれない。

 その場に尻もちをつく形で、失礼を詫つつ指揮官は脚を崩した。

 そんな彼を立って見下ろすと、長門は悠々と布団を超えてくる。

 

「指揮官たるもの、例え己に大きな変化があろうと……決してみだりに顔に出してはならぬ。それが、余が我が重桜の子らを預けるにたる、真の指揮官というものだ」

 

 口では手厳しいことを言いつつも、グイと長門は指揮官の足首を掴んできた。

 そのまま、片足を抱くようにして小さな両手で包んでくれる。

 突然のことで驚いた次の瞬間、背筋を電流が突き抜けた。

 長門の細く白い指が、力を込めた訳でもなく、足を揉んでゆく。その都度、筆舌し難い痛みが全身を貫いてゆく。

 

「情けない声を出すでない。……よし、足の痺れはこれでよかろう」

 

 天にも昇る気持ちで、地獄行きとはこのことだ。

 ようやく解放されたが、気がつけば先程の痺れは消え去っている。東洋の医学は西洋とはまるで違うというが、実際に体験してみると驚きだ。

 なにより、長門自身がこうして手を貸してくれるとは思わなかった。

 着任よりずっと、彼女からは張り詰めた緊張感が滲み出ている。重桜の誰もが姉と慕う、小さな小さな総旗艦……指揮官もまだ、長門の笑顔を見たことがなかった。

 

「それで、だ。うむ……指揮官」

 

 指揮官は許しを得て、あぐらで座り直す。

 膝と膝とが触れる距離に、ずずいと長門は迫ってきた。

 すぐ側で見上げてくる、精緻な小顔……そこに並んだ双眸は、まるで南海の黒真珠だ。潤んだその瞳の中に、情けない顔をした指揮官が写り込んでいた。

 長門は、僅かに頬を赤らめながらも呟く。

 

「余は、陸奥にぱじゃまぱーてぃを許した。過去に遺恨はあろうが、今はセイレーンなる者たちの跳梁を前に、各国が団結すべき時。余も以前より、我が重桜の子に良くしてくれた者たちに礼を言いたいのだ。だが……」

 

 もじもじと胸元の薄布を手でいらいながら、長門は目を伏せ俯いた。

 長い睫毛が、夜露に濡れたように艶めいていた。

 

「余は、陸奥以外に親しい者がおらぬ。そして、陸奥は……少し、落ち着きがなくて不安に思うのだ。陸奥が言う、ぱじゃまぱーてぃなるもの……余に皆をもてなすことはできるだろうか」

 

 指揮官は言葉に詰まった。

 ちなみに、この『布団は一つ、枕は二つ』は、陸奥がセッティングしたらしい。任せると言った手前、長門は口を挟まなかった。西洋には妙な風習があるのだな、くらいにしか思わなかったのだ。

 だが、陸奥が指揮官を連れてきたため、状況は一変したのだ。

 

「指揮官のことは、余も天城や阿武隈から聞いておる。我が重桜の精鋭たちを率いて、世界の驚異と戦っておると。指揮官の度量のおかげで、皆も他国の者たちと協力しておるとな。だ、だから――」

 

 ツイ、と長門の人差し指が、膝に触れてくる。

 ツツツと小さな円を描きながら、彼女はもじもじと言葉を続けた。

 

「余は……わたしは、指揮官とならば……その、ぱじゃまぱーてぃ、構わぬと思っている」

 

 思わず指揮官は言葉を失った。

 だが、長門は耳をピコピコと動かしながらも言葉を続ける。

 

「察するに、陸奥の言うぱじゃまぱーてぃなるもの、当初は寝室での夜会のようなものを想像してた、けど……その、わたし……嫌じゃ、ないよ? 重桜でも、同性同士で、そ、そのっ、絆を深め合う者たちは、いるし……わっ、わたしも、指揮官なら――」

 

 なにやら誤解があるようだが、長門は既に本気のようだ。

 据え膳食わぬはナントヤラ……これは確か、重桜のことわざだったように思う。それに、まさかこれは長門に試されているのかと思うと、どういう選択肢が正解なのか悩む。

 悩むが、気持ちが欲するところは一つしかないように思えた。

 だが、そんな時……けたたましくドアが再度開かれる!

 

「長門姉! みんなを連れてきたよ! ユニオンの人たちが、軽食を用意してくれたみたい! ロイヤルのみんなも、お茶を……あれえ? 長門姉?」

 

 長門は、ギギギギと音がしそうなぎこちなさで、ドアを振り返った。

 そこには、名だたる母港の面々がずらりと並んでいる。

 シュボン! と真っ赤になった長門は、その場で突然立ち上がった。

 

「わっ、わた……ゴホン! よっ、余が長門! 重桜の長門! 今宵は歓待を持って戦友を迎えようぞ! さ、さあ、ぱじゃまぱーてぃなる一夜を皆で!」

 

 そこから先は、指揮官と長門への質問攻めが始まった。ビッグセブンの一角とはいえ、まだ年端もゆかぬ少女……レキシントンを中心とする機動部隊の波状攻撃、そして潜水艦たちの鋭いツッコミとアシストが、彼女を年相応の少女へと変えていった。

 指揮官は、長門の素顔をその目に焼き付け、共に戦い抜くと誓う。

 だが、母港にはあっというまに、指揮官ロリコン疑惑が蔓延してしまうのだった。




 長門、ずっと欲しかった…史実でも凄く好きな艦ですね。アジアの小国に過ぎない日本が(経済が傾いてしまったとはいえ)欧米列強に並ぶ戦艦を建造していたこと、これは当時の国民にとってどれほど誇らしかったか。長らく国民に愛された、まさしく聯合艦隊の象徴たる艦だと思います。

 アズレンを始めた時期の関係で、長らく「欲しいけどイベント復刻待つしかない艦」でした。もー、長門赤城加賀に演習でコテンパンにされるのが、悔しくて悔しくて(笑)艦これの長門さんは強気な格好いいお姉さんですが、アズレンのこのロリ長門様も凄く好きですね。早く結婚して、結婚専用衣装を着せてあげたいです!
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