奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。244様、ぼんじん様ありがとうございます!


第百四十七話 モーションキャプチャー

「ご足労をおかけして申し訳ありません」

「あ、いえいえ」

 

 カプコムの担当の人に頭を下げられるもこちらとしては特に思う所はない。何せ今まで長い事ロックマンをお借りして活動していたわけだしな。こちらが寧ろ頭を下げておくべきだろう。

 

「いや……ここ数年の海外での売上げは本当に鈴木さん様様なので頭を下げられたら私の首が」

「あ、はい。結構売れたんですね」

「お陰様で」

 

 互いに頭を上げ下げして苦笑する。今日はモーションキャプチャーという物をお願いされているからだ。内容はTVとかでも見た事があるし大体分かる。色々と体に機材をつけて色んな動きをすればいいんだ。ただ、今回一つだけ問題があるとすれば。

 

「あの、次の動きはこの動画の……」

「あ、はい」

「それが終わりましたらこちらを……」

 

 かれこれ1時間ほど色々な動作を取っているのだが、その指示のやり方が何というか……殆どの動作が俺の動画を元に動いてくれという要望だった。何でもこれが一番皆が思い浮かべるマジック・スパイディらしい。まぁ依頼主からの要望だし可能な限り叶えるとしよう。

 

 今回、差別化を図る上で通常のスパイダーマンとマジック・スパイダーの顕著な違いは、まず基本的に硬い。これが一番顕著な違いらしい。コミックの方でもバリアを使っているから打撃や斬撃といった攻撃には基本あんまりダメージを受ける事はないので、その点を強調する事になったそうだ。

 そして次に、本家よりも攻撃能力、というか全体的に攻撃力は低めに設定されているらしい。本家と違って魔力で底上げをしている設定のため、ハルクと殴り合えるれっきとした超人であるスパイダーマンよりも力はない、というのがスタッフの言葉だ、実際にどんなに頑張っても魔力なしの人の5倍くらいしか底上げ出来ないからそこは間違っていない。

 

 だが、代わりに元々テクニカルな動きをする本家よりも更に色々なギミックがこのMSには盛り込まれている。まず、相手を拘束するウェブシューターが画面内に留まり任意で爆発する地雷になったり、右方向にだけだがウェブグラインドを数回行えたり、本家よりも発動が遅い代わりにスーパーアーマー付の超必殺技があったりと結構な部分が本家のスパイダーマンと違っているらしい。

 あと、蜘蛛の遺伝子を持っている訳じゃないから、動きが蜘蛛というよりはそれを真似ようとした人間という印象をプレイした人間に持ってもらうようにしているらしい。空中の動作はかなりスパイダーマンよりの動きを求められたが、地上では空手とかその辺りをイメージした動作をしてほしいそうだ。

 

「本家と同じくテクニックのいるキャラクターですが、魔法を用いているという事から本家よりも更にテクニカルなイメージを付けたいと考えています」

「成程。楽しみにしてます」

 

 休憩を取りながらプロデューサーさんと意識合わせに小話をして、ふと気づけば半日近くモーション取りに時間を費やすことになった。正拳突きとか本当に使うのか分からないモーションまで取られたのだが……ま、まぁ出来上がりを楽しみにしておこう。

 

 

 

 ネズ吉さんヤバい。

 

 思わず唖然とするその報告の内容にぽかん、とヤマギシチームが呆けた表情を浮かべた。何とネズ吉さん、単身で15層まで行って戻って来たらしい。ボス以外とは戦わずに、である。

 どうやったのかというと、基本的に隠れてモンスターをやり過ごすそうなのだが、その隠れ方が凄い。まるで意味が分からないのだ。

 

「か、簡単な事なんですが……自分は壁だって、お、思ってれば……その、誤魔化せるんです、はい」

「いやー、キツいっすよ」

「それだけ聞いても意味わからないんだよねぇ」

 

 実際にネズ吉さんがダンジョン内部を潜っている最中のヘルメットカメラの映像を見たら余計に混乱が広がった。敵を察知したらしいネズ吉さんがすすっと壁際に歩いて行ったかと思うと、目の前をモンスターの群れが気付きもしないで歩いていくのだから。

 

「……これも特性、なのかな?」

「もしかしたら超探知の派生なのかもしれないな。ジャマー的な奴なのかも」

 

 この新発見に昨年から不祥事の続く日本冒険者協会は大喜びである。人間には効果がないらしくダンジョン内で実際にやってもらっても壁際に立っているようにしか見えない為、どういった内容の能力なのかは今一つかめないが、効果は確かだ。

 恭二も興味津々で目を赤くして見ているし、もしかしたらオリジナル魔法の使い手がまた一人増えるかもしれない。

 

 また、このネズ吉さんの成果は他の研修生たちの奮起にもつながった。

 

『ネヅが結果を見せた以上、我々も負けてはいられないな』

「ああ。特に俺は同じ立場だからな」

 

 やる気満々で自分が率いる研修生に語るオリバーさん。そしてネズ吉さんの躍進に、同じ前回からの参加者である足立さんは静かに闘志を燃やしている。どうやらこの1週間ほどで互いの間にあった蟠りが大分無くなったらしい。そういう意味でもネズ吉さんのこの功績は良いタイミングだな。

 

「一度、二種以上ノ冒険者を対象にシテ、特性調べた方ガいいカモ」

『わかりやすいものは兎も角、分かりにくいものは埋もれたままかもしれないからね……もしかしたら僕たちも』

 

 ケイティとウィルがそう言って互いに視線を向ける。ネズ吉さんの魔力量で特性が発現しているのなら、この二人が発現していない訳がないからな。俺や一花みたいに特別わかりやすい物は兎も角として、確かにヤマギシチームのメンバーや一線級の冒険者は何かしら目覚めている可能性が高い。

 これだけ実力のある冒険者がそろっているのだし、一度きっちり確認した方が良いのかもしれないな。




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@patipati321

後Twitter企画で短編を書きました。
パッパラ隊知ってる人が割といて嬉しかったです。

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