奥多摩個人迷宮+   作:ぱちぱち

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誤字修正。244様、見習い様、アンヘル☆様、kuzuchi様ありがとうございます!


第百八十五話 外部役員鈴木一郎

「お前、本当に来るなよ?」

「行かねぇよ、というか俺が行くとどうなるのか逆に気になるんだけど」

「……割と有名な祟り神が出てくるかもしれん」

 

 ……前に大宰府に住んでたけどあれ危なかったのか? そう尋ねるも恭二は目を逸らすばかりである。おい、俺これから福岡にも行くんだぞ?

 

「あっちは、多分大丈夫だろ……前も何とかなってるんだし」

「俺の目を見ながら言ってくれませんかねぇ」

 

 恭二は本来の用事、というか依頼である宮内庁の方々と連日のように由緒ある神社仏閣を巡り、様々な物品を魔力的な目線で見ているらしい。一応守秘義務的な物で詳しくは語ってくれなかったが、魔力を込めればその瞬間に力を取り戻しそうな物がチラホラあったりするそうだ。

 

 恭二がこれまでに回った場所やこれから回る場所で得たデータは、全て宮内庁の方で纏められていて、それらは危険度や貴重度と言った物で仕分け、特に危険な物は厳重に封をして封印という形で処理されている。日本の歴史の古さが良く分かる数が封印処理されているとかなんとか。

 

 この話の最後に、皇居の宝物殿はスリリングだったと語る恭二の目は死んでいた。絶対に行かないようにしておこう。

 

 

 

 さて、テンション低く仕事へと旅立った恭二は置いておいて。発展している黒尾ダンジョンではヤマギシもあまり大きな仕事が無い為、今回俺の出番はもう終わっただろうと。後はシャーロットさんに何か頼まれた時に動いて、残りは可愛い妹と妹役を引き連れて京都観光でもするかなぁと思っていたのだが。

 

 どうにも事態は思わぬ方向に進んでいってしまっているらしい。

 

「どうでしょう、京都にヤマギシさんと水無瀬で共同のダンジョン経営会社を設立する、というのは」

「ええと、あの」

「その時は是非鈴木さんを社長という形で。ああ、勿論所属は奥多摩のままで構いません。実質の管理はうちの方で行いますし」

 

 あのシャーロットさんもタジタジになるような勢いで水無瀬氏がヤマギシと水無瀬との合同の会社設立を持ちかけて来たのだ。しかも俺を頭に据えて。シャーロットさんも俺の引き抜きではと最初は警戒をしていたが、基本は奥多摩に所属して貰えればいいし、何かしら式典がある時に出てもらう形で、とのこと。実務に関しても現在水無瀬が経営しているダンジョン運営会社……こちらは静流さんが現在は社長を務めている……がそのまま担当するという。

 

 実質黒尾ダンジョンがヤマギシの影響を受けるようになるだけで、こちらとしては本当に影響がない……それこそ俺の名前を使って何か変な事をされると迷惑かな、というくらいであちらには知名度による恩恵を得られる以外にメリットのない事だった。

 

 いくら何でもこの条件で受ける事は出来ないと驚くシャーロットさんに、水無瀬氏はゆっくりと頭を振ってこう答えた。

 

「水無瀬のダンジョン部門はまだ出来て日も浅い。それがこれだけ発展出来ているのはたまたま立地が良かったのと優れた先達のお陰です。その先達が自社の利益も顧みずに全体の為に動いてくれている。そんな中、己惚れる訳じゃありませんが水無瀬くらい影響力のある家が、自分達の利益だけを確保するために動くというのは流石に許される事じゃぁないでしょう。周囲から見てもね」

「はぁ……」

「それに何よりも。私は鈴木さんの男気というか、行動力にシビれてしまいましてな。孫よりも年下の人物に何をと思うかもしれませんが、頼み事をした次の日には協会の実力者を連れて来たのには度肝を抜かれました。しかも聞けば今協会内部で話し合われている案も元は鈴木さんが出した物を改良したとか」

 

 シャーロットさんの視線がこちらを見る。めったに見る事のない笑っていないその表情に「俺、何かやっちゃいました?」と返そうとするも言葉が出て来ず、俺はそっと目をそらした。

 

 その後も背中が痒くなる様なべた褒め責めとシャーロットさんの視線に晒され、生きた心地がしない話し合いは数時間ほど続き。終了間際にはほぼグロッキーになりながらも俺はなんとか自分の足で立ちあがり、シャーロットさんと共に水無瀬氏のオフィスを後にした。

 

 

「少し、予想外な展開です」

「社長になりたくないです」

「……イチロー社長……MS社長」

「ないです」

 

 ハッと何かに気付いたかのように、シャーロットさんは呟きながらこちらを凝視する。無いから。これ以上属性を上乗せしないでほしいんだよこっちは。ただでさえ本家さんから「俺達色々被ってるよね。あ、こないだ教えてもらったNYのタコスの店良かったよ、ありがとう」とメッセージ貰ったからなぁ。

 

 本家さんとは趣味嗜好に加え割と味覚まで近かったから、このままでは個性が被ってしまう、と互いに相違点を探そうと連絡取り合ってるんだ。今度お勧めのアニメを連絡してそちらに違いがあるかも確認する予定である。

 

「まずは社長に連絡を取……真一さんに連絡しましょう」

「そうだな。社長はGOしか言わない気がする」

 

 シャーロットさんと頷き合い、真一さんにまず確認を取る為に電話を入れる。社長に対する信頼は、勿論ある。でもこういう判断は真一さんの方が優れてるからそちらに判断を仰いだ方が良い。それにトップに伝える前にそのひとつ前に話を通すのは必要な事である。そう、必要な事だ。

 

『ウッソだろお前』

「俺も驚いてます」

 

 呆れを含んだ声音で驚いた真一さんに、現在の正直な気持ちを吐露する。誰かにコスプレの事で驚かれたり喜ばれたりってのは何回も体験してるけど、こういった会社の仕事でここまで真っ直ぐ評価されたことが初めてだってのもある。その結果がまさかの社長就任要請ってのもな。

 

 俺の話を聞いた真一さんは暫く悩んだ後、一度会議にかけると言って電話を切った。流石にこれは即答できる案件ではないとの事だ。まぁ、俺も一応ヤマギシで役職持ってる社員だしなぁ。

 

 

 そして、これは少し先の話になるが。流石に代表取締役として就任するのは難しいという事でお断りを入れたが、外部顧問というような形で俺は水無瀬とヤマギシの合弁会社に所属する事になった。

 

 水無瀬氏は少し残念そうだったが、これで縁も出来たとその報告を前向きに捉えてくれているようで、その後も西日本のダンジョンの発展を目標としてダンジョン間の連携を取っていく方針だそうだ。

 

「そこでどうです、鈴木さん。うちの孫はまだ相手もおらず」

「あ、すみませんちょっと次の四国ダンジョンの視察があってすぐ発ちますので失礼」

 

 ただ、何かある度に俺と水無瀬姉妹の縁談を口にしてくるのだけは勘弁してほしい。まだ20になったばかりでお見合いは……もっと自由恋愛したいというか。うん。二人とも美人だし嫌って訳じゃないんだけどさ。だから外堀埋めるのは勘弁してください……。




プロメア面白すぎる。
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