転スラに転生したら『最強』だった件 作:村田雄介先生の女の子絵好き野郎
しかし、目的はしっかりとあった。
「《魔人》と会った?」
「はい。サイタマ様にお会いになる前に。既に我らは仮面をつけた魔人と会っていました」
いきなり襲いかかってきた
進むサイタマに追い付くように、隣には族長の息子とは対となるような青い肌と一本の角を生やした青年も付け加えるように言う。
「奴はゲルミュッドと名乗っておりました」
「ゲル……なんだって?」
「ゲルミュッドと」
「……呼びづれぇな、ゲロで良い。あとは吐瀉物」
「サイタマ様が申されるのであれば」
しかし本当に当てもなく歩いていると不安になるサイタマは、族長の息子に何処に向かうか聞いてみると、
「我らはサイタマ様に付いていきます」
「なるほど、行き先決まってねぇんだな」
それとなくサイタマが何かありそうだな~、と直感で進んでいくことに決めると、何か近寄ってきてることに気づく。
「何か来てるな」
「……分かるのですか!?」
「ん~なんか、微妙に分かる」
直感は当たり、サイタマたちに近寄ってきていたのは狼に乗った緑の肌をした亜人たちであった。
「止まるっす! 何か用があって来たんすか!?」
そう勢いよく突っ込んできたのは、この大鬼乗ったシュウダンノ代表格みたいな奴がそう言ってきた。
「ゴブリンたちです」
族長の娘たる巫女さんが耳打ちしてくれたことが嬉しく感じていたが、サイタマの最強のポーカーフェイスのまま頷く。
正にファンタジーに必要な奴らが出てきた訳なのだが、敵対心が強い。
もしかしたら縄張りに入ってしまったのかもしれない。
サイタマはやれやれ、といった感じに大人な交渉にへと持ち込もうとしたが、族長の息子はそうはいかなかった。
「どうした、ゴブ太!」
「
この一瞬のやり取りだけで、何故か臨戦態勢に入る大鬼族の一行。サイタマだけ取り残されている。
「ど、どうしたお前ら」
「お下がりをサイタマ様! コイツら名前持ち! きっと魔人の手下たちです!」
「はい。普通のゴブリンたちより魔力もあります! サイタマ様、こちらに!」
そう言って紫色の鬼娘と鬼巫女さんに引き寄せられるサイタマ。
「なんだか分からないっすけど、敵っすか!? なら容赦しないっすよー!」
「ガルルル!!」
狼に乗ったゴブリンたちも、こちらが臨戦態勢に入ったことを確かめた後に構える。
「流石は
「そうですぞ。命の
この鬼の一行の中、老境に入っているであろう白髪のお爺さんも、泰然自若の剣士然としたその姿は、正に剣鬼の姿。油断も容赦もなくなったそれは、老人と呼ぶには危険過ぎた。
そして、それはその鬼の翁だけではなく、他の鬼の男たちも殺気立っていた。
それもその筈。
故郷を焼き野原にされたのだ。怒りが湧き出ない方がおかしいだろう。
サイタマは一人でゴブリンたちを戦闘不能に出来るのだが、ここは後ろに下がって様子を見ることにした。
戦闘はその後すぐに起こり、敵側には高速に移動ができる狼に乗っている為に、敏捷性には負けていたが、それ以外では大鬼族が有利だった。技の冴え、判断の切り替え、力の入れ方。何よりも、
「うわぁぁあああ!!」
族長の息子の特殊な炎と、その妹の魔法。接近戦において白髪の鬼お爺さんの抜刀術と剣術は恐ろしいもので、一度その剣術を見たゴブリンたちも無理に近寄ろうとしないでいた。
このまま勝てるか、と思っていたのだが、
しかし、それでも大鬼族は強かった。
相手を殺すこともなく、徐々に無力化させていく。
「確かに俺が出ることもなかった……って、うん?」
しかし、それでもまだ食い下がってくる二人のゴブリンと一匹の魔狼の元に、何者が近寄ってくるのをサイタマは感じる。
「状況を説明してくれ、リグル」
着いてすぐに、負傷者に何か回復薬のようなものをぶちまけてやってきたのは、子供ぐらいの慎重の人間だった。
こんな子供が魔物たちを使役していたのか?
サイタマがそう思っていると、族長の息子から怒気が膨れ上がったことを感じる。
「その……仮面は……!」
族長の息子はふと呟いて、その子供に睨みつけていると、
「おい、お前ら! 事情は知らんがウチの奴らが失礼したな。話し合いに応じる気はあるか? ……ってうん? なんかお坊さんも混じってね? いや、それにしても何かヒーローっぽい格好だけど」
おぉ! ヒーロー分かるか! と空気読まずに言うところだったサイタマ。
あの子供がつけている仮面に反応してみせるのは、鬼の一行。
「正体を現せ! 邪悪な魔人め!」
「はぁ?」
「見た目を偽り、
「お、おいおいちょっと待て、俺がなんだって!?」
「魔物を使役するなど普通の人間ができる芸当ではあるまい」
確かに出来ない。『普通』なら。
しかし、ここは異世界。自分も含めて『普通』からかけ離れた存在が居る以上、族長の息子だけの材料判断だけじゃ不安に感じたサイタマだったが、口を出さずに見守る。
「な、なぁ。あのぉ~」
「ふん! 貴様の言葉など聞く耳を持たん。全て、その仮面が物語っている!」
「な、仮面? 待ってくれ。何か勘違いを……」
「同胞の無念。その億分の一でも貴様の首でも
父の仇を見付けられたことによる憤怒に矛先を見出し、族長の息子はその父より授かった愛刀を鞘から抜き払い。
サイタマは話を置いておかれていたが、これだけは分かった。
「お前らまさか、その子供と戦うんじゃねぇだろうな」
サイタマのその言葉が発すると、周囲のオーガたちは体を強張せる。サイタマが意思がこれでは無いのだと分かるが、代表として赤髪の息子は重く呟く。
「お許し、サイタマ様。たとえ貴方様でも、この怨讐は止めることが出来ません。同胞の仇を……親父の仇を!」
サイタマはきっと《最強》である。しかし、強さは感情を無視することが出来ない。
サイタマはそれから口を閉ざした。
「さぁ……正体をみせろ」
ここに、邂逅の幕が上がった。
※
結果的にいえば、大鬼族の一行は簡単に蹴散らされていった。
異世界転生でもしたら、色々な能力を目覚めて、無双していく感じだったら、きっとああいうことを言うんだろうな、と思うくらい。清々しく倒されていく。
殺されてはいない。簡単に無力化させられていく。
「エビルムカデの《麻痺吐息》、ブラックスパイダーの《粘糸・鋼糸》、
白髪の鬼お爺さんの言う通り。今上げた業で族長の息子と剣士の爺さん以外倒された。
サイタマはただ何もしないで居るのは流石にまずいから、巨大な狼、ランガと呼ばれたやつから巫女姫を守りながら、それを眺める。片手間に。
「確かに貴様は強い。だからこそ確信に至った。やはり貴様は奴らの仲間だ。……たかが
「オーク?……おい、さっきから何を……」
「黙れ! 全ては貴様ら魔人の仕業なのだろうが!!」
「待てよ。それは誤解───」
サイタマには視えていた。
まるで仙人が使うかのような、地を縮めるような移動方《縮地》で仮面の子供の後ろに立った鬼の老剣士は、必殺の剣閃が横一閃に
「…………!?…………」
「……ふむ。……ワシも耄碌したものよ。頭を刎ねたと思ったのじゃが」
しかし、老いても剣鬼である白刃の
しかしサイタマにはそれが違和感が一番に襲う。
(人間じゃねぇのかやっぱ)
切断された腕から大量の血が出ると構えていたサイタマだったが、一切の液体らしきものが噴出することもなく、ボトリと腕が生々しく落ちるだけだった。
サイタマの視力にも見えていたが、切断面には何やらプルプルとした青い液がジェルみたいに固まっている。
「どうやら蛮勇の方だったらしいな。真勇とは程遠い慢心で簡単に腕を切り落とされたな魔人。右腕を失い発狂しない胆力は褒めてやる」
族長の息子も、老鬼程では無いにしろ移動速度が早く、仮面の子供の前まで移動し、
「一人で俺たちを相手取ろうとしたその傲慢さが貴様の敗因だ。冥府で悔やみ続けるがいい!」
そして、その若さからくる老鬼より重きに置いた重剣の一刀で両断する。
子供はそれを避け、重剣は大地を抉る。
そして子供は避けながらも切り落とされた腕を拾って距離を置く。
なんで拾ったと思っていると、その腕を吸収した。
「スキル《超速再生》だ」
「なに!?」
「……!?……」
見事に切り落とされた腕を吸収したあとすぐに再生させ、元の無傷のままに戻る子供に、鬼たちは狼狽える。
こんなもの見せられたら鬼たちでさえ驚くもの。
そしてサイタマには既に、この世界はファンタジーで出来ているんだと順応するよう、深く考えないで見ていた。
「まぁでも、片手を切り落とした程度で俺に勝ったつもりでいたのか?」
「化け物め!」
これには危機感を覚えた族長の息子は、己の自慢の炎を生み出す。
「《
周囲を包み込むように、仮面の子供を巻き込みながら鬼の業火で滅却しようとする。
「やった……のか」
フラグが立ちっぱなしの言い方の族長の息子だったが、まさしくそれを回収するべく、主人公みたいな仮面の子供はやはり何故か炎がまったく効いてないようで、平然と歩いてくる。
「残念だった。俺には炎が効かないんだ」
(やっぱりかい)
サイタマは巫女姫を背に隠して、戦いを見守りながら、やはり主人公っぽい仮面の子供は堂々と言い放つ。
「だが、確かに俺はお前たちを甘く見ていたようだ。少し……」
本気を見せてやろう。
そう言い放って、仮面を取った子供の顔を見たサイタマは、衝撃を受けた。
それは正しく脳髄の深くまで雷が落ちたように、深く深く、深淵にまで落ちる。
今、サイタマは、恋に落ちた。
※
正しく、衝撃が走った。
その後、何が起きたのか忘れてしまったかのように。
あんな美少女はみたことが無い。
本来のサイタマに、恋愛感情があったのか疑問だが、こちらのサイタマには十分にその感情が昂っていた。
サイタマは動き出す。
二度と無い。この
しかし、今の展開はサイタマにとってよろしくない。
オーガたちのことを託されたこともある。
己の感情を唇を噛み締めてそれを耐える。
「本当の炎をみせてやろう」
そう言って、美少女(美少年?)は堂々として、魔力を込めて、一気に膨れ上げていく。
「エクストラスキル《黒炎》」
掌を翳して、上方に巻き上げたのは、大鬼族の族長の息子が練り上げた《
それを見ていたのは、サイタマの後ろに控えていたオーガの巫女姫。
「ああ……。あれは……あの
凄い主人公っぽい。しかし最早サイタマの頭には既にあの美少女に抱きついていたい衝動で止まらなかった。
「どうする? まだやるか?」
歯軋りをする族長の息子。
復讐する機会だというのに、いざ戦えば実力は歴然の差。
仲間も捕らわれ、歯牙にもかけない相手の物言いに、何もかも歯痒くて仕方がない族長の息子。
「若! 姫を連れてお逃げください! ここはワシが」
「黙れ爺」
分かっている。
老鬼が言いたいことや、情況的にも。
しかし、それでもこの激情は止まらない。
「無惨に散った同胞の無念を背負ったこの俺が……ようやく見つけた仇を前に逃げろだと? 冗談ではない。俺に時期族長……いや、頭領として育てられた誇りがある! 生き恥をさらすくらいなら命果てようとも一矢報いてくれるわ」
「……若……それではワシもお供致しましょうぞ」
その言葉に反応したのは巫女姫だった。
「お待ちくださいお兄様!」
「そこをどけ!」
「いいえ! この方は敵ではないかもしれません」
「なぜだ!? 里を襲った奴と同じく仮面をつけた魔人ではないか! お前もそう言っただろう!?」
「はい……ですが……、昏睡の魔法に
その狼、ランガは野生の本能で、サイタマには一切手を出さなかったが、今は既にあの美少女の近くまで移動し、何か伝えていた。
「それに、オーク共を率いていた魔人の有り様とは、あまりに違うように思うのです」
兄より冷静であった妹の巫女姫は、必死に説得している中、ようやく出番が回ってきたサイタマ。
「大人しくしていたが、ここまで見せつけられたら黙ってるだけじゃダメだろうなぁ」
サイタマが動き出すと、鬼の若は喜色を浮かべ、妹は不安に戻る。
「サイタマ様! これ以上の戦闘は」
「あぁ、大丈夫だよ。俺だって無理に戦おうとしてるんじゃない。分相応にしようとしてるだけだ」
そして、俺は青い長髪が似合う魔物たちを率いる美少女の前まで悠然と歩いていく。
「まさか、……
「そうだよ」
そして、
「必殺マジシリーズ《マジ
バチィィン!!
その場を支配した爆音と共に、出現させていた強大な《黒炎》を、
これには今度は青髪美少女が呆然とする場面だった。
「これで分相応だな。話し合いをしようぜ」
ここまで格好よく決めていたサイタマだったが、間近で見る美少女に、最早興奮を抑えるのに必死だった。
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コミックも『転生したらスライムだった件 11巻』でましたね!
アニメではグングン先に進んでいたし、二期も決定してるし、楽しみですな。
『小説家になろう』作品大好きなので、今では『盾の勇者の成り上がり』にハマってます。
そして、盾勇の二次小説も書きたくなってきてるこの頃ww