風魔一族の野望を見た所為か、いつか岐阜にも行ってみたいと思っています。内容も面白いし、なによりカーチェイスシーンが面白い。声が違うのもまた物珍しさ感覚で見ることが出来ます。
こんなヨーロッパの異国の小さな国で、まさか日本のパトカーに出会うとは思わず。というわけでもないが、原作通りとっつぁんまでやって来た。しかも恐らく日本全国のどの警察よりもヤバい埼玉県警直属の部隊だ。全国での犯罪検挙率1位を誇る文字通りとっつぁんが直々に仕込んだ精鋭だ。つまりとっつぁんも本気という事だ。
しかしこれで日本の警察が入って乱れたカリオストロの衛士たちの警備網に乗じて侵入する事ができる。
警察隊を乗せてきたトラックの車体の裏に張りつき、城内に入れたおれは不二子から貰った鍵を使って城の小さな戸口を開けて城内に侵入する。
泥棒一家の面々から足音を立てない遣り方は色々と教わった。
足は音を立てないように足袋。暗闇に紛れられる様に黒インナーに黒スパッツ、黒のオープンフィンガーの手袋で肌の露出は最低限。不二子みたいなピッチリスーツは着る勇気はない。黒のホットパンツと黒いショート丈のジャケットで身を包む。そんな黒い格好の中で黄色いネクタイが揺れる。
赤外線暗視ゴーグルを着けて、赤外線レーザーの張り巡らされた廊下を避けながら不二子に貰った衛士の巡回ルートのタイミングを見計らって見つからないように先に進む。
しっかしレーザーの多いこと多いこと。まるでミッションインポッシブルな気分だ。何度もルパン絡みで盗みの仕事をやったが、こんなにも厳重な警備装置のオンパレードは初めてだ。連邦準備銀行が鼻で笑えるレベルだ。
比較的警備が薄い場所を不二子が教えてくれなかったら正面から中に入りたいとは思わない。それこそどうにかしてルパンと同じ方法で中に入ろうとしただろう。
「とはいえこちとらルパンのメカは色々と持ってますからねぇ。それを使えば、ちょちょいのちょい、よっと」
城の裏手。空中庭園に出てトイレ用のパッコンのアレ、ラバーカップを使ったアンカーガンを使って、モーターの巻き上げで上昇する。そして礼拝堂の扉の前に着地する。ゆっくりと戸を開けて素早く中に入る。
人気のない礼拝堂を駆け抜けて、十字架の台座に辿り着く。
「にひひ。まるで体験型のアトラクションみたい」
ただし命懸けのアトラクションだがな。
台座の裏の扉から下へ続く階段を降りていく。一本道だから誰かが上ってこない事を祈る。
「さーて、ゴート札の心臓部とご対面と行きますか?」
最後の扉を静かに開く。中から音はしていない。
中には偽札の印刷機がずらーりと並んでいた。
西ドイツの1000マルク札。ポンド、ドル、リーブル、ルピー、ペソ、フラン、ウォン、円。
まさに世界中のお札を網羅している。今の子供に西と東とか意味が通じるのかしら?
もちろんそこで使っている原盤。書類も一通り目星を着けて退散する。
礼拝堂に戻って扉を開け、外を見た。
「うわっ、とっつぁんだぁ…」
朝食中の伯爵に挨拶が終わったのだろう銭形のとっつぁんが中庭に出てきた所が見えた。今は動かない方が良さそうだ。
「流石昭和のデカ。仕事熱心だこと」
このカリオストロ城の過剰なまでの阻止装置にいけ好かんとタバコを吐き捨て、城の中に戻って行くとっつぁんを見送る。
「さぁて、ここからだな」
建物の影になる部分でまたアンカーガンを使ってラバーカップを壁に打ち込む。巻き上げて上に移動したら腰のワイヤーアンカーを打ち込んで一休み。そしてまたアンカーガンで上に登ってと繰り返して屋根の上にまでは取り敢えず登り終えた。
「うへぇ…。高いとはわかってるけど、生で見るとなお高いなぁ。鳥肌立つわあんなの」
聳え立つ反り返って見える高い屋根。おれは高所恐怖症だから高いところは本当は嫌なんだよなぁ。
「とか言ってちゃまだまだだって笑われるな」
それでも大泥棒一家の弟子の誇りはあるから頑張ってやることはやりますよ。ガンマンもサムライも休憩。今回は天下のカリスマ泥棒の出番というわけだ。
「わう? っ、マブい、なんだ…?」
屋根に登って、手を着いた屋根瓦に何か光がヒラヒラと動いて、振り向くと目を太陽の光が焼いた。直ぐに視線を外す。鏡での光の反射だ。
「えーっと? …な・に・や・っ・て・ん・だ…? いやバレても知らねぇぞルパン」
光信号を送ってきた相手の位置は大公家の屋敷跡からだ。そこに居てこちらにメッセージを送ってくるとしたらルパンくらいしか居ない。
ただ返事を返してバレたくはないから手の動きで一応返事をしておく。望遠鏡でこっちのことを見ているならわかるはずだ。
「下は豪華なお食事。とっつぁんはカップ麺。おれはエナジーバーか」
まだ昼だから夜までは時間が長い。このまま昼寝にでも洒落込みますか。
◇◇◇◇◇
「あのやろう。どーやって城ン中に忍び込みやがったんだ?」
「なんだルパン。何か見えたか?」
大公家の焼け跡でテントを張ってカリオストロ城を見張っていた。とっつぁんが城の中に引っ込んだから、他に何かないか望遠鏡で城を見ていたら、城の壁を登っている小さな影を見つけた。拡大してみたら、ノワールのやろうだった。
「ウチのワンちゃんが呑気にお城の屋根の上でピクニックしてんだよ」
「はぁ!? なんだってっ!?」
次元と代わってやりながら、鏡で挨拶してやる。
「ま・っ・て・る・よ、だと? ケッ。生意気言いやがって」
「あいつが入れたんだ。俺達に潜り込めないわけがねぇだろ?」
ただどうやって忍び込んだんだか。アイツの身なりならとっつぁんたちの車に張り付いて忍び込んだんだろうが、問題はその後だ。俺だって色々と準備した上でとっつぁんに化けて中で動くつもりだった。
未だに城に動きが無い様子から見れば、バレることなく城の中で行動しているという事だ。
「流石は子犬ちゃん。隠れんぼはお手のものだもんな」
俺たちが面白がって色々と教えている所為か、いろんなことをそれなりにやり始めてるが、四人の共通事項の隠遁スキルの伸びは既に一流に片足を突っ込み始めている。
「待ってろよ。直ぐに追いついてやるぜ」
普段はそんなでもないが、デカいヤマになると何かとアクティブになって途端に色々と動き回る不思議なやんちゃ坊主。今回はどんな立ち回りを見せてくれるのやら。
「あの……」
「ん? なにかな子猫ちゃん」
何故かこの場所を突き止めてやって来た子猫ちゃん。一応は人目につかない場所を選んだつもりだったんだがな。流石ノワールだ。俺の考えもお見通しってわけか。
「わたしも、その…」
「わりぃが自分の面倒を見れないやつを抱えていく程余裕はねぇんだ」
今は特になんともないから良いが、カリオストロ城は足手纏を連れていく余裕はない。子猫ちゃんもノワールとは歳が変わらないらしいが、アイツはもう出逢ったときから俺よりも先んじる部分もあった奴だし、次元直伝の早撃ちのガンマンだ。自分の身は自分で面倒を見るやつでもあった。
だが、子猫ちゃんは違う。
「わ、わたしも、たたかえ、ます…っ」
とはいっても、銃の撃ち方を知っているだけだ。火薬の匂いはしても、血の匂いはしない。あのノワールが手ずから面倒を見ている温室育ちのホワイトカラー。
なら何故彼女を連れてきたか。本当にアイツにとっては観光気分なんだろうな。
「やめときな」
子猫ちゃんを制したのは次元だった。
「こいつは子供の遊びじゃねぇんだぜ」
「あ、遊びなんて……」
「ハッキリ言うが。これは俺たちの側の仕事だ。邪魔はしねぇこったな」
次元の言う通りだ。そしておそらくこういう事を見せる為にアイツは子猫ちゃんを連れて来たんじゃないのかと思う。
「五エ門先生としての判断は?」
「サオリもまた修行中の身ゆえ。しかしながらその判断は彼女に委ねるのもまた修行だ」
とは言うが、自分で良く考えなさいという事だ。自分の望むことに、自分の能力が果たして見合っているかどうかだ。その辺りは、ノワールは多少足りない事もあったりするが、アイツは次元と個人的な契約がある。10万ドルを返すまではケツを持つ。毎年に一度、1万ドルを払う10年契約は今も続いている。それにアイツは確かに足りない事もあるが、その足りない部分を別のことで埋め合わせる
だが子猫ちゃんにはそれがない。
ノワールが面倒を見て、ノワールの延長で五エ門が少し面倒を見たり、不二子ちゃんが個人的になんかしてるみたいだが、今回の潜入には残念ながらそれじゃあ足りない上に、俺たちが面倒を見てやる義理は残念ながらないのが確かだ。
夜を待って潜入開始。湖から水道橋を通ってカリオストロ城内に潜入する。難しい行程じゃないが、途中の時計塔の機関部でひでーめにあったが、無事潜入に成功した。とっつぁんが落とし穴に落ちちまったが、とっつぁんのお陰で簡単に城への潜入に成功した。あのとっつぁんが簡単にくたばるわけがないから多分大丈夫だろう。そしていつものようにひょっこり現れるかもなぁ。
「さて。こっからどうする」
クラリスの居場所を探さないとならねーし。ノワールの事だから夜が来るまでの間に色々と調べてるはずだ。
アクティブになった時のアイツの情報は信じて良い。
だが最初からガキの集めた情報に頼ってたら天下のルパン三世様の名折れだぜ。
◇◇◇◇◇
暇に任せて拝借した書類を読んで過ごした。やはり西側を中心にヨーロッパ諸国はもとより、アメリカやアジア圏も、カリオストロに偽札を発注している。この書類があれば小さな国のひとつやふたつは引っくり返るし、アメリカや中国、ロシア(今の時代はまだソビエトだ)等の大国の財務省や大統領の首がすっ飛ぶだろう。
「流石に手広く遣り過ぎて質が落ちてるな。これならおれでも一目でわかる」
1枚失敬した一万円札を取り出して、本物と見比べる。注力しても素人にはわからないだろうが、やはり最新のものは少々印刷が粗い。ある意味これがゴート札の落日へのカウントダウンを物語っている様に思えた。
資料に関しては自分が持っていても一文の得にもならないため、とっつぁんに渡してしまうのが最も効果的だろう。
「不二子の狙いが偽札の原盤だけなら良いんだけど」
このカリオストロにはローマの遺跡以外にもうひとつ宝が存在する。その宝に関しての調査は殆ど手を出していない。
なにしろ、この情報は不確かなもなのだ。ゲームか何かで再びカリオストロにルパンが現れ、そのお宝を狙った。
そういう記憶しか持ってないのだ。
だから調べるとなるとそのお宝に関しては1から調べなければならない。
「調べてみますか」
夜までにはまだ時間がある。そのお宝が本当に存在するのならば狙ってみるのが怪盗ルパンだ。
しかしルパンはクラリスを助ける為に動いていて、他のお宝に手を出している暇はない。
だからルパンを助けるのに支障が出ない範囲で調べ、狙ってみる。目的はあくまでもルパンの支援だ。
to be continued…