なおルパンと一緒に地下牢に落ちなかったのは、落ちたらルパンを庇って撃たれるくらいしか話が膨らまなかったから地下牢はカットしました。
城下町からスバルを回収して、ルパンのフィアットの中にある道具を使って、ルパンの顔を模したスピーカーとオーディオプレーヤーを用意する。
身体は爆発して破裂する様にしておく。中身のゴート札は城の中で手に入れる事にする。
その他にも対カゲ用の武器も用意する。
「おいおい。そいつは人間に向けて撃つもんじゃねぇぞ」
「対戦車ライフル引っ張り出しておいて良く言うよ」
ルパンの服から着替えてようやくいつもの自分らしくなれた。やっぱり黒のジャケットに黒い帽子は落ち着く。背中の痛みも和らぐってもんだ。
「いてっ。でもやっぱり痛ぇ」
整備して組み立てたのはM79グレネードランチャーだ。シュワちゃん御用達の地獄に落ちろベイビーでわかるとは思う。
次元の対戦車ライフルと同じく普通は人間に向けて撃つ代物じゃないが、弾頭は特別製の粘着弾だ。
マグナムを撃ってもダメ、刀でも斬れないのなら身動きを封じる武器を用意すれば良い。
粘着弾とは言っても発射する火薬の量は対人榴弾と同じ量を使っているから当たれば人の身体なんてのはかなり吹き飛ぶだろう。装甲は厚くても中身の人体に衝撃を伝えて打倒するのは稀によくロボット物で目にする手だ。そういう意味では次元の対戦車ライフルも同じ理屈で通用する。
「んで? 女も連れてく気か」
「いや。流石にそんな余裕はないから留守番だ」
大司教一行に化けて城内に忍び込むと言っても、ルパン、次元、五エ門、そして自分で精一杯だろう。
出来るだけの準備をして3日目の夜。ようやくルパンも意識を取り戻した。少し記憶に混乱があったが、クラリスの名前を聞いて次元に何日自分が寝ていたか問い詰めたり、血が足りないから食い物じゃんじゃん持ってこいとか大人しく寝ていた分を取り戻すかの様に随分と忙しい。取り敢えず原作知識で食い物持ってこいと言うだろうと予想は出来ていたから、日中に買い物をして買ってきた食材で作っておいたビーフシチューを出す。腹に穴の空いた人間にビーフシチューはどうなのかと思ったが、肉とかソーセージやチーズにパンをそのままかっ食らっていたよりは幾分か身に優しい上に量も作れるし何より栄養バランスも良い。肉が普段の3倍増しのビーフシチューは食べごたえ抜群だ。
「バカやろう! そんな慌てて食うなよ。身が受け付けねぇぞ?」
「っ、ぶはっ、るしぇ!! あと12時間もないんじゃ食わにゃ治らあっ!!」
ビーフシチューにしたのに暴飲暴食は変わらず、洗面器みたいに大きな器に並々によそったシチューとパンをばくばくと食べ尽くす勢いだ。10人前用意したビーフシチューがルパンひとりで食いきりそうってどんだけ食べてるんだって話だ。そりゃ次元もゆっくり食えって言うわ。
というより食って治すといってもそんな便利に人間の身体は出来ていないと思う。
案の定急に食べ過ぎて身体がびっくりして青い顔になったルパンは食ったから寝るということでようやく此方も晩飯だ。
食べ終わって落ち着いた頃に、庭師のおじいさんに事情を説明できた。この3日間仕込みだ用意だで忙しかったからだ。
目が覚めたとき、ルパンは犬のカールの名前を言った事に疑問を持つおじいさんの言葉から、ルパン本人がカールの名前を知っていたワケ、クラリスとの出逢いを語った。
「じゃあ、ルパンさんがお姫様を盗むっていうのは」
「世界一の大泥棒の恩返しって所さ」
何故クラリスを拐うことに拘るのか。その答えにサオリも辿り着いたらしい。
あとは若い頃の自分が逃した獲物のリベンジってところもあっただろう。
ともかく、これでようやく身が入る理由が明確になったことだろう。
誇りある悪党ってのは、受けた恩はちゃんと返すもんだ。
「取り敢えず落ち着いたんならコレを見てもらえる? 伯爵に借りを返す計画書だ」
「どれどれ? ……ほー、よく出来てんじゃん」
「あったり前田のクラッカーってな。事前準備も終わってる。あとは決行あるのみだ」
「さっすが子犬ちゃん。よーしよしよしよしよし」
「やめいっ。帽子が潰れるだろうが」
ムツゴロウさんに撫でられる動物みたいにルパンに頭をわしわしされそうになったが、流石に帽子がヨレるから手を退けた。
「それで? どーすんだルパン」
「もちのロンよ。ここまでお膳立てされててケツを捲るルパンさまじゃねぇっての」
「では?」
「ああ。ノワールのプランで明日決行だ」
次元と五エ門の問いに決行を告げるルパン。
詳細に覚えているカリ城の内容から作戦を書き起こしただけあって1発OKを貰えた。細かいところはアドリブになるだろうが、大まかな流れは原作のカリ城とそう変わらない推移になるだろう。
「にしてもえっぐいこと考えつくねぇ」
「そうでもしないとインターポールも動かないし、でなきゃお姫様に安心して国を明け渡せないでしょ?」
伯爵が原作通りに時計塔の針に挟まれて死ぬにしろ。カリオストロの闇を白日の下にしておかないとルパンも心配でクラリスをカリオストロに置いて去れないだろう。もしクラリスを連れていけば、本人の意思であっても国連加盟国の皇室ご令嬢誘拐犯として世界中からお尋ね者だ。いやそれは今でもあまり変わらないか。
「ま、そういう事なんだけどもな。でーもお前さんクラリスにそんな義理があるわけじゃねーっぺ?」
「まぁね。良いじゃんか。おれのポリシーなんだから」
ていうことで誤魔化したが、内心はルパンを置いてケツ捲って逃げた事に対する自分なりのケジメだ。
1度退散して地下の幽閉壕かゴート札の工房で合流しようと考えていたが、結局逃げ切れずに傷を負ってルパンを援護する事は叶わなかった。そしてルパンは原作通りに撃たれて重傷を負った。すべて円満に済ませたいなんて傲慢な考えをしているわけじゃないが、手が届く範囲でどうにかしたいって思うことを悪い事だとは思いたくはない。でなかったら自分はなんでルパンを助けるとか思うのもバカのしているただの妄想になってしまう。
理屈は要らない。ただ一緒に居て楽しいから組んで仕事をする。
ただそれだけだ。
◇◇◇◇◇
またわたしは置いてけぼり。夜明けと一緒に行ってしまったノワールとルパンさんたち。わたしはおじいさんの家で待っているように言われた。
手持ち沙汰になった手にマグナムを握って暇を弄ぶ。夜になったらテレビを観ると良いと、いたずらっ子みたいなかわいい笑みを浮かべて行ってしまったノワール。
銃を撃てても役に立てない。それがもどかしい。
家の戸がノックされる。
「ハァイ、子猫ちゃん」
「不二子さん!?」
戸を開けた所に居たのは不二子さんだった。
「そんな物騒な物向けちゃやーよ」
「ご、ごめんなさい。用心しろって、ノワールが」
マグナムをホルスターに納めて、不二子さんを部屋に向かい入れる。
「でもどうして。お仕事があるんじゃ」
「そのお仕事。生で見たくない?」
「え……?」
一瞬不二子さんの言うことが理解できなかった。
「で、でも。危ないって……」
「あの子に婚約者が出来るって話。知ってる?」
「え………?」
不二子さんのとんでもない言葉の連続に頭の理解がまったく追いつかない。
あの子って誰? 不二子さんがそんな呼び方をわたしの前でする対象はひとりだけだ。
「まぁ、あの子は私の虜だから、どんなひよこちゃんが来ても問題はないんだけど、ヘタに楔を打たれてあの子の自由が束縛されると私としても面白くないのよねぇ」
「不二子さん、も、ノワールのこと…」
「そうね。あの子は私を裏切らないし。筋金入りのチェリーだからルパンよりも女の子のことを考えてくれる良い子だし。内も外もかわいいし。好きか嫌いかで言えば好きな部類に入る子よ。あと2、3年くらいが食べ頃かしら?」
「たっ、食べ頃って……!」
いくらわたしでもその表現がどういう意味なのかわかる。
やっぱりノワールも不二子さんみたいな綺麗な人が良いのかなぁ。
「ひゃうんっ!?」
「あなたの悪いところは自信がないことね。まぁ、他にもあるけど」
「ひゃ、ひゃめ、へ…っ」
「またおっぱい大きくなったわね? この前はあの子の邪魔が入ったからわからなかったけど、ブラの大きさが合ってないわ」
「んゃぅんっっ、ふ、ふひ、ほ、ひゃん…っっ」
胸をぐにぐにまさぐられながら、不二子さんにそんなことを言われた。
会う度にこんな風に胸をまさぐられなかったら話しやすいお姉さんなのに。
「あら。ちゃんとあの子好みの黒なんて。顔は清楚に見えてエッチな下着ね」
それは不二子さんからノワールの好きな色を聞いたから何となく選んでいる色だからってだけで。
「あっ、んんっ、ひぅっ、も、もう、やめ、てっっ」
「フフ。肌もスベスベだからいくらでも触っていられるけど、流石に時間も少ないからまた今度にするわ」
「ハァ、ハァ、ハァ、もっ、やぁ、で、す……」
不二子さんにまさぐられて荒くなった息を整える。
服の乱れを直して、不二子さんに向き直る。
「わたしが行っても、良いんですか…?」
「メインはルパンたちだもの。私はその間に一仕事はするけど、殆ど見物客よ。ルパンやあの子の仕事を間近で見られる機会も中々ないわよ?」
不二子さんのお誘いに、腰のマグナムのグリップをひと触りして、口を開く。
「行きます。行かせてください」
「フフ。決まりね」
おじいさんにお礼の手紙を書いて置き。わたしは不二子さんのあとに着いていった。
◇◇◇◇◇
カリオストロ城に続く幹線道路。初日にカーチェイスをした道の崖を爆薬で吹き飛ばして崖崩れを起こして大司教の車を足止めする渋滞を作る。
他には旧道の峠道を通ってくるしかない。
マグナムの整備をしていると、大司教を乗せたリムジンがやって来る。ガスで眠らせた運転手の代わりにパッパが運転していた。
「ご苦労さん、次元」
「早いとこ着替えて行こうぜ」
「まて。女人も剥くのか?」
車には運転手と大司教と世話係だろう女性が乗っていた。変装するとなると女の人の服も必要になるが。
「ま。だったらノワールと一緒にトランクにでも入ってるか?」
「そうさせて貰おう」
「え、や、ムリだって狭いって」
トランクから荷物を引っ張り出して中身を武器や仕掛けに入れ換えていると、ルパンの言葉に了承した五エ門がやって来た。
子供の体格とはいえ、人間がひとり増えるとこう言った弊害が出る。
「く、くるひぃ…っ」
「これも修行だ」
荷物と五エ門の胸板に挟まれて圧迫死するかと思いながら峠道を越えてカリオストロ城に入った。ちなみに五エ門の胸板は逞しかったです。さらに耳元で井上さんの声を堪能できるある意味特等席だったけど峠道の所為で車酔いで死ねた。自分で運転するか助手席じゃないと酔うんだよ。
陽が落ちて行動開始。斬鉄剣で地下牢への道を作って貰う。そこからゴート札の地下工房に入って、ルパンのダミー人形にゴート札を詰め込む。
「ほー。良く出来てるじゃねぇか」
「まぁね。あとは時間まで待つだけだよ」
流石に結婚式当日で工房の警備も出払っているらしい。
「しかし良く作るなぁ。コレがゴート札の心臓部か」
「円、マルク、ポンド、ドル、ルピー、ペソ、フラン、ウォン。世界中のお札の見本市が開けるよ」
「そんだけありゃ換金の手間が掛からなくて良いな」
「ぜーんぶ偽札だけどね」
ルパンのダミー人形に火薬を詰め。作った頭を嵌める。
「ミイラ男のルパン完成ってか?」
「地下牢の怨念が籠らねば良いが」
「まぁ、怨み晴らさんって感じな目付きだな」
パッパと五エ門センセからルパン人形の感想を頂けて満足する。包帯ぐるぐる巻きの顔で唯一見えている目でどう感情を見せるか拘ったからだ。
とはいえ深夜の零時までまだ9時間もある。朝早起き過ぎて眠くてしょうがない。
「眠いなら寝とけよ。先は長いぜ?」
「そうさせてもらうわ」
隅っこの影に偽札を広げて敷布団にして、さらに身体の上にも偽札を被る。お札の布団なんてどんなセレブでも出来ない贅沢な寝具だ。
◇◇◇◇◇
「……寝たか?」
「車酔いで難儀していたからな。寝不足なのもあったのだろう」
ルパンの面倒を見ていたのもあるが、小柄だからこっそり動くのに向いているノワールにこの3日間飯の調達も任せっきりの上にメカ作りまでしてたからな。
動かすのは出来てもルパンのメカを作れるのは他にはノワールしか居ねぇ。
しかし今回はいつにも増してアクティブに動いてやがったなコイツも。
不二子とグルだったらしいが、城に不二子が潜ってるなんて何処から仕入れてきたのやら。相変わらず謎が多いガキだが、不二子みたいに裏切らないからなコイツは。
「それで。最近のコイツのヤッパはどんな案配なんだ?」
暇になったんで暇潰しに五エ門に日本でのノワールについて訊いてみる。
「未だ鉄を断つまでには至らぬが、この斬鉄剣を直す迄にはなった」
そう言って斬鉄剣を抜く五エ門。この前合金チョッキを斬って刃毀れした上に先っちょも折れちまったからな。
ゴート札を掴まされたモナコのカジノで久し振りに五エ門と仕事をしたが、斬鉄剣の切れ味は相変わらずだった。
「ノワールの申していた事は正しかった。斬鉄剣が折れる。その時の為に製法を会得する。なんたる先を見る慧眼か」
「いっくら斬鉄剣つったって折れるときは折れるだろうよ」
とはいえ何をしても開かないクラム・オブ・ヘルメスを開けられる唯一の鍵だ。その頑丈さはこれまで見てきて知っているつもりだ。それでも細っこい刀だから折れるときは折れるってアイツもわかってたんだろうな。
サムライだからって斬鉄剣の頑丈さを五エ門はチョイと過信してる時もあるからなぁ。
ただアイツの考えている事はルパンみたいにワケがわからねぇ事も多いが、答えが出たときのドンピシャ加減は予知能力でも持ってるんじゃないかというくらいの的中率だ。
それにルパン相手に遊びを吹っ掛けられる数少ないヤツでもあるから、ルパンも面白がってアイツに構うんだろう。ただ不二子とつるむ悪ぐせまで覚えちまったのはいただけねぇがな。
「ああして寝ている姿は普通の子供なのだがな」
札の山に埋もれながら寝返りをして帽子のずれた寝顔は呑気に寝てるガキそのものだ。
「普通のガキならとっくの昔にくたばってるがな」
それくらいには危ない橋を渡ってきた。それでもアイツは俺たちの後ろを着いてきてたからな。
「背中の傷の具合は?」
「動く分には問題ないだろうが、それで済むかどうかだ。ま、本人もわかっちゃいるだろうから無茶はしねぇだろうよ」
「心得た。気には留めておく」
「わりぃな」
今回のパーティは相手が色々と身硬い連中ばっかりで使い慣れた武器が使えないからな。そうでなけりゃ多少のケガでも心配なくほっぽっておけるんだがなぁ。
◇◇◇◇◇
交代で番をして仮眠を取り、いよいよ時間になった。
「始まったか…」
オルガンの音色が聞こえてきて、次元が呟く。
対戦車ライフルの銃身を肩に担ぐ次元と五エ門。その銃身の上にルパンの人形を座らせる。
階段を登って、礼拝堂の祭壇の真下にやって来る。
大司教に化けているルパンの声を聞きながら、ノートPCを開いてヘッドフォンを着ける。ボイスチェンジャーソフトを起動する。声はあらかじめルパンの物をサンプリングしてあるから、これでインカムに喋ればルパンの声をスピーカーへ出力出来る。ワイヤレスに対応させる時間がなくて、人形にコードが繋がっているのが難点だが、アドリブを想定するなら録音よりもこちらの方が対応しやすい。
『異議あり!』
逆転裁判みたいに、静まりかえった礼拝堂にルパンの声が響く。ボイスチェンジャーの調子も良好だ。
『この婚礼は欲望の穢れに満ちているぞ!』
その言葉と共に五エ門が祭壇を斬り裂いた。
倒れた祭壇の、地下への入り口から次元と五エ門が、偽札をぎっしり詰めたルパンの人形と共に出ていく。
『地下牢の亡者を代表して参上した…。花嫁をいただきたい』
タイミングはバッチリだ。なにしろ内容が頭に浮かぶ程にカリオストロは見てきた。台詞もあらかじめ書き起こしたが、一字一句違える事はないだろう。
『クラリス。迎えに来たよ…』
祭壇の外がざわつく。不気味なルパンを演出するのに提灯まで作ったんだからそうでないと困る。
「大変な事になりました! ルパンです、ルパンが出ました!」
「きゃっ」
「なにすんのよ!?」
今不二子に混ざって留守番させてるはずのサオリの声が聞こえたんだが、なんでだ?
おそらく銭形のとっつぁんも今隠れていた林から飛び出している頃だろう。
サオリの声に疑問が出るが、今は構っていられない。
『クラリス? クラリス…! …かわいそうに。クスリを飲まされたね? 伯爵め、口を利けないようにしたな…!』
そこまではボイスチェンジャーの実演。人形のルパンが串刺しになる瞬間に乗じて祭壇から飛び出す。
クラリスの悲鳴が聞こえたのを合図に手元のスイッチを押すと、あとは録音と仕掛け任せだ。
でもクスリで黙らせられてるとはいえ、ショック療法は気が引ける。ガチで木綿を割くような悲鳴に良心が痛む。
人形が弾け飛び、偽札が礼拝堂に舞う。
「おのれルパン。ふざけたマネをしおって!!」
結婚式をめちゃくちゃにされた上に偽札製造疑惑まで吹っ掛けられたらそらキレるわな。なおプログラムの作成と進行にルパンは一切関わっていない件について。
美少女の花嫁を連れての愛の逃避行だ。それくらいの厄は我慢しておくんなまし。
「妬かない妬かない。ロリコン伯爵、やーけどすっぞ?」
マントを開いた内側に大量のロケット花火を忍ばせていたルパン。ここから先はルパンのアドリブに合わせるが、あんなおっかないマント良く着ていられたと思う。
ロケット花火が打ち上がるが、礼拝堂の密室内でするもんじゃない。あちこち飛び回って爆発するから危ないとかそういう問題じゃない。
「それっ」
対戦車ライフルを撃つ次元。やはり鎧は撃ち抜けないが、撃たれたカゲは数人を巻き込み吹き飛んで倒れた。
五エ門がカゲたちの合間を走り抜ける。
服や儀礼用だろう剣は斬れるのだが、鎧はやはり斬れていない。
「地獄に落ちろ、ベイビー!」
グレネードランチャーを集団で固まっているカゲたちのひとりに撃ち込む。
直撃した勢いで吹き飛ぶカゲと、炸裂した白い粘着質の物質に絡め取られて数人が身動きを封じられた。
弾の再装填の暇はマグナムを撃って無理矢理稼ぐ。効かないとはいえ撃たれた衝撃でよろけはするからまったく効果がないワケじゃない。
「なんだよそりゃ?」
「トリモチランチャーさ。触ったら取れないから気をつけな」
「まったく。ルパンみたいな武器を思いつきやがってっ」
トリモチだから伸びるけど取れない上に瞬時に固まるから暴徒鎮圧に売れそうだなこりゃ。
背中合わせになった次元の腰からマグナムを拝借する。
「あ、おめっ」
「リロードするヒマないから貸して!」
「そんな単発式の武器で来るからだ! 俺の嫁なんだから大事に扱えよ!」
「わかってるってば!」
グレネードランチャーの弾を捨てながらマグナムを撃って牽制する。
「よう! 斬り応え抜群だろ五エ門!」
「くっ。何故斬れん!?」
斬鉄剣を構える五エ門とも背中合わせになる。
「カリオストロだからな。錬金術繋がりで普通の鎧じゃないんじゃないの?」
「だったら斬鉄剣で斬れないワケねぇな。東洋の神秘見せてやれよっ」
それぞれの武器を撃ちながら五エ門に言葉を次元と共に送る。
「うむ。斬鉄剣と拙者の腕であれば斬れぬ物はない!」
「でもこんにゃく斬れないじゃん」
「あぁ。確かに斬鉄剣はこんにゃくが斬れなかったな」
「き、斬れぬものなどあんまりないっっ。でやあああああああっっ」
気合い一発の一振りで、今度は鎧も断ち切った五エ門。
「どうだ。斬ってやったぞ!」
斬鉄剣を納めながら胸を張る五エ門。流石原作ルパン一家末っ子。オチャメなんだから。
「うわっ!? い゛づ!!」
リロードの隙を突かれて、カゲに肉薄された。
次元のマグナムを後ろ腰に無理やり突っ込みながら、後ろ腰に横になるように括り付けた野太刀を逆手で左手に握って引き抜く。
一撃を受け流すが、傷に衝撃が響いて長く相手に出来ない。
「生きていた様だね。子ネズミ君」
「アンタっ。ぐあっ」
「歳の割りに良く動く」
「それはお互い様っ」
溢れる波平声は伯爵付きの老執事にしてカゲの長のジョドーだ。
「君は賢者の石の秘密を知っている様だね」
「だからっ、くぅっっ、なんだっ」
ジョドーの腕のブレードや鋭い爪の突きを受け流して堪える。
「殿下の命により。君には死んで貰おう」
「冗談っ! てか助けて五エもーんっ」
もうのび太がドラえもんに泣きつくみたいに五エ門を呼ぶ。なんでケガ人のおれが五エ門と戦って互角そうなスーパーじいちゃんと斬り結んでるんですかね? 一発受け流す度に背中が痛くて涙が出そうだ。
「ええいっ。世話が焼ける!」
「あっ、待て!」
五エ門と相手をスイッチしてようやく一息吐けた。
「ルパンが逃げた。ずらかるぞ!」
「あっ、ちょっと待ってよ!」
一息吐く暇もなく。駆け抜ける次元のあとを追い掛けた。
「うわっ。とっつぁんだ!」
「知るか逃げるぞ。五エ門!」
「先にゆけっ」
とっつぁんを先頭に警官隊が礼拝堂に突撃してきた。さらに遅れて衛士隊まで現れてどったんばったん大騒ぎだ。
ジョドーと斬りあう五エ門に声を掛ける次元。とにかくこの混乱に乗じて礼拝堂から抜け出す。
ここで最後のCMだっけなぁ。
to be continued…