泥棒一家の器用貧乏   作:星乃 望夢

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一気に最後まで書き上げましたが、途中無理矢理な感じが否めませんがご容赦ください。私にはこれが限界だった。

活動に次のお話しまでのワンクッションのアンケートをしたいので、よろしければそちらもお願い致します。


子犬と隠された財宝

 

「大変な事になりました! ルパンです、ルパンが出ました!」

 

 マイクを手に実況をする不二子さん。わたしはキャスター見習いとして不二子さんとカリオストロ城に入った。

 

 物々しい警備に、兵隊さんも大勢居て、お城の形もあって物語の世界に迷い混んだみたいだった。

 

「放送を中止しろっ」

 

「きゃっ」

 

「なにすんのよ!?」

 

 黒ずくめの衣装に身を包んだ人が現れて腕を掴み上げられた。

 

 ルパンさんの花火で気を取られた隙を突いて不二子さんに助けてもらった。

 

「皆さま、お待たせ致しました。放送を再開します! 今や式場は大混乱です!」

 

 下ではパッパさんに五エ門さん、ノワールが背中合わせで大立ち回りをしている。そしてルパンさんが花嫁さんを腕に抱えながらワイヤーを天井に伸ばして登っていく。そして破れた窓からルパンさんは姿を消した。

 

 警官隊の突入と兵隊さんの激突。その混乱を使ってノワールの姿は見えなくなってしまった。

 

 これがノワールがいつもしている仕事なの?

 

 なんでこんな危ない事をしてまで泥棒をしているのかわからない。顔は痛みを堪えていたのに、口許にはずっと笑みを浮かべていた。愉しいんだ。何が愉しいのかはわからない。でもノワールは愉しんでいた。

 

「階段です。地下へ通じる穴があります。あの穴にルパンが居るのでしょうか? カメラもそこへ行ってみましょう!」

 

「あ、不二子さん!?」

 

 小さなカメラを肩に抱えて下へ飛び降りて行ってしまう不二子さん。下を見ると少し高い。不二子さんを追い掛けようか悩んでいたらまた黒ずくめの人がやって来た。

 

「その放送をすぐにやめろっ」

 

「ご、ごめんなさいっ」

 

 さっきみたいに捕まったら不二子さんにも迷惑を掛けるかもしれないと考えて、あとは自然に身体が動いた。

 

 右手で後ろ腰のホルスターから抜いた.357マグナム。グリップの底に左手を添えて両手で構えながら右手の親指でハンマーを起こす。あとは驚くほど早くて軽く引き金を引けた。

 

 弾丸を受けてよろめいた所にもう一発撃ち込む。

 

 パッパさんの対戦車ライフルでも貫けない鎧。でも撃たれたあとはぐったりしていた。つまり貫けなくても倒せるなら、倒れるまで撃つ。

 

 もう一発撃ち、仰向けに倒れた黒ずくめの人。多分死んではないと思う。身体を撃っていたし、血も出ていない。でも倒すのに3発は弾が足りるかな。

 

「うわっ! 離せっ」

 

「放送を止めろ! ぐあっ」

 

 カメラマンさんに組つく黒ずくめの人の頭を撃つ。撃てる場所がそこだけだったから。口許じゃなければ、頭も鎧を着けているから大丈夫だと思う。それに頭は脳震盪も起こす弱点だから、銃が使えないときの狙い目なのはノワールから教わっている。

 

 二発残っているけれどリロードする。

 

 残った二発の弾は少し熱かったけど拾ってポケットに入れておく。

 

 初めて人を撃った。でも特にその事に対して思うことはなかったのは、わたしにとって銃は身近にあるものだからかもしれない。

 

 この放送を最後まで続ける事がノワールの望みなら、わたしが頑張ってカメラを守る。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 CM明けのイメージの強い礼拝堂の屋根の上から水道から水を汲み上げる風車の塔にワイヤーを伝って降りる。

 

 城の上の通路の方から滅多打ちに銃撃される。ヘタに頭を出したら撃たれそうだ。

 

「一先ず城外へ脱出だ。頼むぜ? 次元、五エ門、ノワール」

 

「任せとけ。ここで食い止めるわ!」

 

 しかしルパンに答えながら銃撃の合間を縫って顔を出して対戦車ライフルを撃つ次元。加勢しようかと身を乗り出そうとした顔の先に刀の鞘が差し込まれた。

 

「ノワール。お主はルパンと共に行け」

 

「だな。ルパンも病み上がりだ。俺たちの代わりに面倒見てやってくれ」

 

「わかった」

 

 トリモチランチャーは置いて、次元のマグナムに弾を込め直して返す。

 

 ルパンのもとに向かうとクラリスと擦れ違った。次元と五エ門に声を掛けに行ったのだろう。

 

 ワイヤーを使って先に水道橋に降りて周囲をクリアリング。まだ追っ手は城内の中。この水道橋に来るには次元と五エ門を越えてこないとならない。或いは船で別ルートから追い掛けてくるか

 

「良いのかノワール?」

 

「ケガ人は足手纏いだとさ」

 

 ジョドーとの斬り結びやワイヤーにぶら下がっての移動もあって、背中の傷が開いているのがわかる。クラリスが居る手前痩せ我慢で耐えているものの、痛いのは痛いし、我慢してるのはあのふたりにはお見通しだった。

 

 ルパンに返しながらマグナムの弾をリロードする。この先は鎧は着ていない水兵が相手だからマグナムで済むし、刀もあるからどうにでもなるだろう。

 

「という事です。姫様のエスコートを仰せつかりました。よろしくお願いいたします」

 

「は、はい。あなたもご無事だったのですね。よかった」

 

 そうわざわざ言ってくれるクラリスは本当に優しい娘だと改めて思う。崖の下で一言二言交わしただけの、北の塔から逃げた自分を心配して声を掛けてくれるのだから。

 

「よし。いくぞふたりとも」

 

「はいっ」

 

「おう」

 

 ルパンが先頭。手を引かれながらクラリスが走る。そのあとを自分も続く。城の水門の方に目を向ける。まだ船は見えないが時間の問題だろう。

 

 水道橋を渡りきった所で、時計塔に刻まれた塔を中心に向かい合う二匹の山羊を見て二つの指環を合わせるルパン。そういう発想にノーヒントで至れるから相変わらず頭の良さはスゴいと思う。

 

「繋ぎ目にゴート文字が彫ってある。…光と…影……磨り減ってて良く読めないなぁ……」

 

「光と影を結び、時告ぐる、高き山羊の陽に向かいし眼に、我を納めよ。……昔からわたしの家に伝わっている言葉です。お役に立ちますか?」

 

 そのクラリスのヒントを聞きながら単眼鏡で時計の文字盤を見る。

 

「姫様。他に何か伝え聞いている事などはありませんか?」

 

「他に?」

 

「ええ。それが伯爵の真の狙いなのです」

 

 文字盤の山羊を見つけ、ルパンの肩を叩いて指差しながらクラリスに問う。

 

 伯爵家には伝わらず、大公家に伝えられている言葉は他にもあり、そこに賢者の石に至るヒントがあるのではないかと読んでいる。

 

「っ!?」

 

「伯爵だ。追いつかれたっ」

 

 ライトで照らされ、響く銃声。クラリスの前に出て刀を抜いて銃弾を弾く。クラリスに当たるのもお構いなしに撃ってきた。

 

「姫様を連れて早く行け!」

 

「すまねぇ、任せる!」

 

 左手に握っていた刀を口に咥えて、両手に握ったマグナムで船の上から此方を撃ってくる水兵のマシンガンを撃ち貫く。

 

「ちっ、キリがねぇっ」

 

しかしすぐに代わりの水兵が現れて此方を撃ちながら時計塔に接岸する。

 

 伯爵と数人は時計塔の中に入っていった。船の上から此方を狙うのはマシンガンの銃声からしてふたりだろう。

 

 銀色の二挺拳銃(シルヴァリオ・トゥーハンド)相手にたったふたりだけとは甘く見積もられたものだ。

 

 水道橋に横になって下からの銃撃を遣り過ごしながら、弾をリロード。

 

「さて。おっぱじめるか」

 

 横になった体勢から勢いをつけて起き上がり、そのまま橋の下の船に向かってダイブする。

 

 マシンガンを持っているのはふたりだが、先程武器を撃ち落としたふたりも残っていて、四人の敵が居る。

 

Guten(グーテン) abend(アーベント)、水兵さん」

 

「なっ、う、撃てっ。ぐあっ」

 

「ぐはっ」

 

 膝を突いて着地の衝撃を最小限に止め、素早く武器を持つふたりの水兵を撃つ。武器を撃つのではなく肩を撃って、撃たれた衝撃によろめいて水の中に落ちる水兵。

 

「このォっ」

 

「おりゃああっ」

 

 残る銃を持たない水兵だが、斧と工業用の大きなレンチを持ち出して振りかぶってくる。

 

 脇に転げて斧を避け、振り下ろされるレンチをマグナムを撃って弾き飛ばす。マグナムをホルスターに戻して、口に咥えていた刀を掴み、逆手で構えた刃を振るう。

 

「安心しろ。峰打ちだ」

 

 野太刀の鞘を左手で掴み後ろ腰から引き抜き、刃を鞘に納めれば峰打ちで斬られた水兵も倒れた。

 

 カゲの様に鎧を着ていないのならざっとこんなものだ。

 

 腰からワイヤーを打ち出して水道橋に戻ると、そこから時計塔の外壁を直接登っていく。

 

 結婚式にカチコミを掛けてからそんなに経っていないように思えて、もう2時間と45分がすぎようとしていた。

 

「あ、姫様」

 

「あなたは! よくご無事で…!」

 

 時計塔の針まで登ってきた所でクラリスと鉢合わせた。

 

「フハハハハ」

 

「っ、伯爵ッ。姫様失礼!」

 

「きゃっ」

 

「なっ、キサマっ」

 

 クラリスを抱いてそのままさらに上に向かって跳びながら登っていく。そして降り立つのは文字盤の山羊へ登るための長い足場の上だ。

 

 下を見れば伯爵が登って来ようとしている。

 

「しつこいなまったく。姫様を殺したら賢者の石の秘密だってわからなくなるってわからねえのかねぇ」

 

「なにっ。あの本の謎を解いたのか!?」

 

「大体はな」

 

 というウソっぱちを並べて時間を稼ぐ。

 

「あれ? お、ノワールちゃんさすが!」

 

 伯爵を追って外に出てきたルパン。しかし足場になる針の上に誰も居ないから不思議がってすぐに上に居る此方を見て伯爵からクラリスを守るために動いたおれを褒めてくれた。だからルパンの先回りは止められないんだよなぁ。

 

「待ってたぜルパン。今伯爵とカリオストロの宝について話してた所さ」

 

「なるほど。そいつは楽しみだな」

 

 役者も揃った所でクラリスに向き直る。

 

「そういう事ですので、少しご辛抱ください」

 

「わ、わかりました。ですがわたしも心当たりは…」

 

「大丈夫。泥棒の力を信じてくださいな」

 

「はい…!」

 

 こういう役はルパンがやるべきなのだが、クラリスを伯爵から守るために成り行きで連れてきてしまった手前、ルパンが相手でない事を申し訳なく思いながら、足場に登ってきた伯爵に顔を向けて口を開く。

 

「カリオストロの宝。それはこの時計塔にある」

 

「いいだろう。続けたまえ」

 

 伯爵の指が此方に向いていないのを見ながら言葉を続ける。

 

「宝は指環を、この時計塔の日の出の向きの文字盤にある山羊の両目に納めて姿を現す」

 

 だが右目に金、左目に銀の指環を嵌め込めば原作通りに時計塔は崩れる。ならば逆に指環を嵌め込めばどうなるのか。おそらくそれが賢者の石に繋がる答えのはずだ。

 

「そうか、素晴らしい推理だよ。ならばルパン、クラリスとこの子ネズミの命と交換だ。指環を此方に貰おう」

 

「まだ続きはありますよ伯爵」

 

「なに?」

 

「指環を嵌め込む場所を違えれば、おそらく死ぬでしょうね」

 

「ふん。その様な脅しなど」

 

「ならおれたちを殺して指環を奪い、共に地獄へ参りますか?」

 

「正しい嵌め込む場所を知っているというのか」

 

「勿論」

 

「そうか。では」

 

 伯爵がその手を此方に向けてきた。狙っているのはクラリスの方だ。

 

「ノワールと言ったかな? クラリスの命が惜しければ、その秘密も語って貰おうか?」

 

「っ、この外道っ!!」

 

「っ、きゃあああっ」

 

 クラリスを抱いて今度は下に急降下。頭上を鎧の指のロケット弾が過ぎる。指ミサイルなんて近未来的な仕掛けをしやがってと悪態を吐く暇もなく、ワイヤーが切られ、咄嗟に野太刀を抜いて壁に突き立てる事で落下を防ぐ。だが足場と針の間で宙吊りの状態。片手は刀の柄を握っているし、片手はクラリスを抱えるために使っている。

 

「っ、ぐぅっ」

 

 ふたり分の体重を支える為に柄を掴む右腕。身体が引き伸ばされて背中の傷口が開いた。それでも痛みを堪えるのを幸いに、柄を掴む力を増す。

 

「クラリス! ノワールっ」

 

「ハハハハハッ。ルパン、指環を私に寄越せ。そうすればそこのふたりの命は助けよう」

 

「くっ。伯爵めぇ…っ」

 

 そうルパンに告げる伯爵だが、そうは言っても生かす気はなさそうだと思うのは同じ様なシチュエーションに覚えがあるし、最後もルパンを殺して指環を手に入れようとしたからだろう。

 

「姫様。おれに命を預けてくださいますか?」

 

 このままで無事に助かる様な気がしない。だから打って出る事にした。

 

「お願いします。伯爵はきっと指環を渡してもわたしたちもおじさまも殺してすべてを奪うつもりです。それならばいっそ…っ」

 

「……今のおれはあなたの銃になりましょう」

 

「え?」

 

「弾を弾倉に込め、撃鉄を起こし、狙いを定め、引き金を引きましょう。でも、その殺意はあなたのものです。姫様」

 

 銃を撃ち、伯爵を倒すことの是非を彼女に委ねる。ズルいやり方だし、ルパンに恨まれるだろう。

 

 だがこれは部外者のおれたちが決着を着けて終わらせても良い事ではないだろう。

 

 カリオストロの闇を公女自らが正す。その筋書きの方が後に良い方向に結びつくはずだ。

 

 伯爵を倒して国を背負う覚悟はあるか。その秘めた思いに気づかない様な鈍い娘ではないだろう。

 

「お願いします。ノワール」

 

「かしこまりました。姫様」

 

 クラリスを抱く腕の力を強くして、刀から手を離す。

 

「なっ!?」

 

「ノワール!?」

 

 伯爵とルパンの驚く声が聞こえる。その中で右手にマグナムを手にして伯爵に向ける。

 

「このっ」

 

 伯爵が指ミサイルを撃って来る。マグナムでそのすべてを撃ち落とす。指は5本。ミサイルも5発。そしてマグナムの装填数は6。

 

「がはっっ」

 

 最後の1発は伯爵の眉間を撃ち抜いた。

 

 右腕の袖口からワイヤーを打ち出して、時計の針に括り付ける。時計塔の外壁を走り、勢いをつけて針の上に舞い戻る。

 

 眉間を撃たれた伯爵は下の湖へと落ちて行った。

 

「ノワール……お前…」

 

「花嫁様いっちょお待ちってね」

 

 クラリスを降ろし、ルパンに向き直る。

 

「次元には内緒だぜ?」

 

「クラリスを守って貰ったからな。差し引きゼロでタダで黙っててやるよ」

 

「そりゃありがてぇ」

 

 まだ次元には金を返し切れていないから不殺の約束を反故にした事になる。

 

 女との誓いの為に契約を破ったと知られたらあきれられるかねぇ。

 

「ありがとうございます。おじさま、そしてノワール。あなたがたのお陰でわたしは無事です」

 

「ま、これからが大変ですけどね」

 

 伯爵を失い、カリオストロを支えていた偽札作りも失った。そんな国を彼女はこれから背負わなければならないのだから。

 

「それよりノワール。伯爵の狙っていた宝は」 

 

「正しく指環を嵌めれば姿を現すはずさ。向かって左目に金の、右に銀の指環を嵌めれば良いはずだ」

 

「オーケー。ならいっちょ嵌めてくるぜ」

 

「おう。チョイと寿命が縮んだから休んでるわ」

 

「おじさま、気をつけて」

 

「おう。んじゃ、ちょっくらいってくらあ」

 

 時計塔の中に入る扉の縁に座る。撃ちきったマグナムをリロードしていると、隣にクラリスが腰を降ろした。

 

「ありがとう、ノワール。でもわたしは子供であるあなたに」

 

「おれはあなたの銃になると言いました。命を預けてもらうのなら、それくらいはする義理がありますよ」

 

 お陰で身を預けてくれたからすべて上手く切り抜けられたのだ。これで少しでも疑念があって身を預けてもらえなかったら何処かでミスが生まれたかもしれなかった。

 

 時計塔の仕掛けが動き、本当の宝へ続く道が現れる。だが扉の山羊の彫刻の額にはなにかを嵌め込む窪みがある。

 

「なんだ。ここまで来てまだ鍵が要るのか?」

 

「それくらいのお宝だってこったろ?」

 

 開かない扉の前で呟くルパンに言葉を並べる。ここまで来て開かないとなると諦めるのは惜しいが、諦めはつく。……とおもう限りまだおれはルパンには程遠いんだろうな。

 

「あの、おじさま。もしかしたらですが…」

 

 そう言ってクラリスが首から服の中に手を入れて引っ張り出したのは、雫の形をした水晶の様な宝石だった。

 

「わたしが指環と共に祖母から受け継いだものです。もしかしたらきっと…」

 

「ありがとうよクラリス。ホレ、お前がやりなノワール」

 

「良いのか?」

 

 クラリスからルパンを通して宝石を受け取った。取り敢えず飛行石じゃ無さそうだ。

 

「お前が狙ってたお宝だ。お前が開けるのがスジってもんさ」

 

「なら、ありがたく開けさせてもらうよ」

 

 宝石を山羊の彫刻の額に嵌め込む。すると扉は開いて階段が現れる。

 

 その階段を登ると、そこは小さな部屋だった。位置的に時計塔の屋根裏だろうか。

 

 その中心に置かれている如何にもな形の箱。

 

 その箱の中に納められていたのは、青い石だった。だがその石は透けていて中に炎の様なものが揺らめいていた。

 

「これがカリオストロに伝わる宝なのですか?」

 

「そのひとつですが、あの伯爵が求めていたものです」

 

 クラリスに答えながら箱を閉じる。こういうのは箱ごと持っていくのがお約束だ。

 

「なんなんだそりゃ?」

 

「賢者の石さ」

 

「賢者の石って。お前、そいつは」

 

「ま、永遠の命に興味はないさ」

 

 永遠の命なんてものは、それこそ身体を機械にでもしないと実現しないだろう。生身の人間はそれほど時間の経過に弱いものなのだ。身体にしろ心にしろ。それはあのとっちゃんぼうやがわかりやすい例だった。

 

「さて。次は表向きのお宝とご対面といきますか?」

 

「まだ他にあるのですか?」

 

「ええ。こんな石よりこの国に役立つ人類のお宝がね」

 

 寄り道をさせてもらった分。本来の道筋もちゃんとしましょうか。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 爆薬で時計塔を爆破解体して水門を開け、大公家側の湖の水を抜く頃にはちょうど朝だった。

 

「湖の下に、ローマの町が眠っていたなんて」

 

「これがカリオストロに伝わるお宝か。ローマ人がこの地を逐われる時、水門を築いて沈めたのをクラリスのご先祖様が密かに受け継いだんだな」

 

「ま、ドロボーの風呂敷には包めないお宝さ」

 

「だな」

 

 水が抜けて現れたローマの町を見届けて、おれは立ち上がった。

 

「おい。どこ行くんだ?」

 

「車取ってくるんだよ」

 

 元々は別口で入国しているのだから、出ていくのも別々だ。それにやっぱり最後はふたりきりにさせるのが花だ。空気の読めるおれはクールに去るぜ。

 

「ノワール…!」

 

 クラリスに呼び止められる。

 

「ありがとう、ノワール」

 

「別になにもしちゃいませんよ。お宝はいただきますけどね」

 

「はい。そしてこれはわたしからの感謝の気持ちです」

 

 そう言ってクラリスはおれの首に、扉を開けたあの雫の形をした水晶の様な宝石を紐で首から下げてくれた。

 

「ならありがたくいただきますよ」

 

「あらためて。ありがとうございます」 

 

 クラリスの礼を背に、おれは車を停めている村まで歩き出した。

 

 どうなるかと思ったが、結果は上々だろう。カリオストロだからこそ好き勝手に出来た。マモー相手の時は良いところがなにもなかった鬱憤も充分に晴らせた。

 

「盗まれたのは心、か…」

 

 ひとりの女の子の為に国を相手に大立ち回り。

 

 心を盗まれたのはクラリスだととっつぁんは言ったが、むしろ逆だって話だ。

 

「ハァイ、ノワール」

 

「不二子?」

 

 おれのスバルに乗って現れたのは不二子だった。後部座席には疲れた顔をして寝ているサオリも居た。

 

 助手席に座った不二子に代わって運転席に座る。

 

「それで? お宝は手に入れたの?」

 

「もちろんさ」

 

 そう言いながら賢者の石の入った箱を不二子に渡して車を発進させる。

 

「さっすがノワールね。あとでご褒美あげちゃう♪」

 

「それは楽しみだよ」

 

 バックミラーで寝ているサオリを見てみる。かなりお疲れの爆睡の上に、マグナムを撃ったとわかる火薬の香りがした。 

 

「なんでサオリを連れてたのさ」

 

「あら。観光案内をしてあげただけよ?」

 

「さいですか」

 

「あああああっ!!!!」

 

「な、なんだよ!?」

 

 突然悲鳴を上げた不二子にびっくりして急ブレーキを踏む。

 

「お宝がっ、ノワール!」

 

 見れば賢者の石がどんどん砂になってしまっていく。

 

「あーらら」

 

「ああんっ!! お宝が、お宝がなんでぇぇ!?」

 

「……太陽の光じゃないかな? さっきは平気だったし」

 

 時計塔で開けた時は平気だった。その時との違いは太陽の光くらいしか思い当たらない。

 

「もう! そういうのは早く言いなさいよぉっ。せっかくの永遠の若さがぁ…!」

 

「まだ言ってたの? いくつになっても不二子はキレイなのに」

 

「それでも永遠に美しくいたいのよ女の子は!」

 

 わからなくはないけど、賢者の石は砂になってしまったのだから諦めるしかない。

 

「限りある命だから思い出が残る、か…」

 

「なにか言った?」

 

「いんえ、なにも」

 

 永遠の命に対するひとつの答え。劇場版999はカリオストロ並みに見返してた作品だ。

 

「まぁ、偽札の原盤手に入れたんでしょ? ならまだ良いじゃない」

 

「それとこれとは別なのよ!」

 

「さいですか」

 

 賢者の石がダメになって収穫ゼロのおれよりマシだと思う。

 

 いや、収穫はあったか。

 

「なぁに? その顔は。なにか隠してるのかしら?」

 

「まさか。収穫は思い出だけだったなぁって話よ」

 

 胸の中に収まる雫の宝石を感じながら、丘の上に居るクラリスへクラクションを鳴らして去っていく。

 

「ノワールもお姫様に心を盗まれちゃったのかしら?」

 

「さぁ、どうだろうね」

 

 バックミラーから見えなくなるまでクラリスを見つめて、その未来に幸福があることを祈りながら前を向く。

 

 鼻唄で前奏を歌い、歌うのはもちろん炎のたからもの。

 

 今回のヤマもなんだかんだ楽しめた。炎の様に激しい思い出が、あるいは今回のたからものなのかもしれないな。

 

 

 

 

to be continued… 

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