泥棒一家の器用貧乏   作:望夢

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なんかちょいとアンチ気味になってるけど、ただの煽りだから勘弁して。

そして複製人間篇は不二子がヒロインだから不二子とエッチな雰囲気になっても構わないよね?

しかしノワールがルパン一家の緩衝材として便利な存在になるなぁ。そういうキャラが本編にも居ないもんかね?


子犬ととっちゃん坊や

 

 一発の銃声が戦いの幕を上げる。

 

 こともなく、マグナムをシリンダーごと掴まれた事で引き金が止まる。ダブルアクションの時、シリンダーを掴まれるとリボルバーは撃てなくなる欠点がある。

 

「っ!!」

 

「くぅっ」

 

 イスに座って横を向いて、さらに半身を向けて銃を突きつけていた体勢から足を上げて回し蹴りを放つ。ダメージを狙うものではなく、マグナムから手を離させる為の一手。

 

 頭を下げて避けられたが構わない。

 

 回し蹴りの勢いを利用してイスから跳んで立ち上がる。イスに突きつけられていた銃口が此方を向く。

 

 着地した勢いのまま曲げた足で地面を蹴って背面跳び。2発の銃声が響くが被弾は無し。

 

 背面跳びから着地体勢に入りつつ、着地を狙われないために牽制で2発撃ち込むが、イスごと横に倒れて此方の攻撃を遣り過ごした。

 

 咄嗟の反応は恐らく五分。射撃の腕も恐らく五分。得物の調子も五分と考えて、武器になるのは自分の頭脳と積み上げた経験だろう。

 

「大人しく不二子を渡して貰おうか?」

 

「嫌だ…。と言ったら?」

 

「お前の頭が潰れたトマトみたいに弾けるぞ」

 

「面白ぇ。やってもらおうか?」

 

 左手にもマグナムを握り、本気の二挺拳銃で相手をする。だが、向こうも二挺のマグナムを構えていた。

 

「ちぃっ」

 

「ぐっっ」

 

 互いに撃ち合った弾丸。互いに得物はマグナムだ。その銃口から射角を計算して弾丸を撃ち落としたが、左手のマグナムが撃ち落とされてしまった。代わりにアイツの右手のマグナムを撃ち落としてやった。

 

 利き腕にダメージを与えたのは行幸だった。だがこちらもリロードするための左手を痛めた。

 

「クソっ」

 

「なっ!?」

 

 向こうも弾切れだったのか、左手のマグナムをこちらに投げて、後ろに転がっていたおれが撃ち落としたマグナムを拾いに向かった。

 

 銃を投げつけるなんていう意表を突かれるとは思わなかった。

 

 ガンマンの命を粗末に扱いやがって。

 

 リロードを終えた時と、アイツがマグナムを拾い上げて構えるのは同時だった。

 

 やっぱり腕は互角か。だが選択肢に違いが出た。利き手を痛めたからか、どちらにしろもうちょいやりあわねぇと糸口が掴めない。

 

「っても潮時か」

 

 さっきもルパンたち相手に機銃掃射した所為でフランス警察も近くをウロウロしてるからな。今もバカスカ撃っちまったから、その銃声で通報されたか、パトカーの音が近付いてくる。

 

「んげ!? とっつぁん!?」

 

「げぇはははははっ。ルパンたちは逃したが、先ずは貴様から逮捕してやるぞノワール!」

 

 なんかボロボロのパトカーに乗って現れたとっつぁんと、続々と集まってくるパトカー。いつの間にか不二子は居なくなっていた。

 

「まったく。せっかくのガンマンの一騎討ちを邪魔するなよなぁ」

 

「じゃかましい! 西部劇なんぞとっくの昔に終わっとるわ。素直にお縄につけ!」

 

「お縄についてムショ暮らしなんてつまらない人生送りたくないっての!」

 

 懐から幾つか缶を落として転がす。

 

 凄まじい音を放ち、閃光が視界を焼く。手製のスタングレネードだ。

 

「のわああああ!?!? な、なな、なんだぁっ、み、耳が聞こえんっ」

 

 スタングレネードを受けて引っくり返るとっつぁんと警察の面々。目は瞑ることで焼くのを回避したらしい。……おかしいな。腕で庇ったりしないで目蓋だけでガード出来る光じゃないのに。でも耳がやられてちゃ幾ら指示を出しても聞こえないだろう。

 

「あばよー、とっつぁーん!」

 

 とっつぁんにお決まりの決め台詞を添えて、その場から走り去る。

 

 路地裏を幾つか抜けて行けばもう追って来れないだろう。

 

 だが影の中からこちらにマグナムを向けてくるヤツが居た。

 

「また後ろからか? ガンマンなら正々堂々正面から来たらどうだ?」

 

「……とっつぁんが言ってたろ? 西部劇はとっくの昔に終わってるってな」

 

「男のロマンが解らねぇとは。悲しいやつだな」

 

「……ロマンで命をなくしてちゃ世話がねぇな」

 

「確かに。命はごめんだな」

 

 マグナムのハンマーを起こす音が聞こえる。

 

 その場でしゃがむと、頭のすぐ後ろで銃声が響いた。髪の毛が何本か持っていかれる。

 

 その場で振り向き、右手でマグナムを抜く。

 

「ゲームオーバーだ」

 

 銃声と共に仰け反る身体。目の前を飛び散る赤い液体。背中に感じる地面の感覚。

 

「ノワールっ」

 

 そして、不二子の声が聞こえた。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 撃たれて倒れるノワール。それを見届けるノワールが、銃を腰にしまってこちらを見る。

 

「偽物は片付けた。いくぞ不二子」

 

「ま、待って。あなたが本物なの?」

 

「偽物に負ける本物が居るか?」

 

「そ、そうよね。それもそうよね」

 

 それでも、地面に倒れている方のノワールは、さっきまで話していた方のノワールで、あの子は何時ものアタシが知っているノワールだった。

 

「でもノワール。行くってどこへ行くのかしら?」

 

「抱き着くな暑苦しい」

 

「あ…っ」

 

 前を歩くノワールの腕を抱いて、身体を寄せてみた。でもノワールはアタシの腕を振りほどいた。

 

 ノワールはむっつりスケベな所もあるから、アタシが抱き着けば腕に当たる胸の感触を楽しんでいるのを知っている。

 

「もうっ。待ってよ!」

 

「っ、そういうのはルパンとしてろ!」

 

 首筋を撫でてあげればあの子ならイチコロなのに、ノワールは嫌そうに逃げた。

 

 姿も声もノワールなのに、この子はノワールじゃない。

 

 振り向いて地面に倒れている方のノワールを見る。

 

 頭から血を流して倒れているノワール。胸も動いていない。そのノワールが本物のノワールなのかもしれない。

 

「きゃっ。フ、フリンチ!?」

 

「じゃ。あとは頼むぜ」

 

「ま、待ってノワールっ」

 

 ノワールを呼び止めようとする。でもノワールはそのまま去っていってしまう。

 

 アタシはフリンチに腕を掴まれて別のところへと連れていかれた。

 

 そこはアタシがマモーから与えられている屋敷だった。

 

「お帰り不二子。とはいえ、賢者の石は手に入れられなかった様だね」

 

 アタシを出迎えたのはマモーだった。アタシに永遠の命を与えてくれると言ったマモー。でもアタシの中でノワールの言った言葉が浮かび上がっては消えていく。

 

 魂は永遠に生きられるとは限らない。自分が自分でなくなっても永遠を手に入れるのか。

 

 あの子の言葉がアタシに疑問を抱かせる。

 

「ねぇ、マモー。本当に永遠の若さが手に入るの?」

 

「ああ。君の永遠は既に約束されているよ」

 

 アタシの言葉にマモーは直ぐに答えた。

 

「それってどんな方法なの?」

 

「君が知る必要のないことさ。さて、もうひと働きしてもらおうか、不二子」

 

「マモー…」

 

 ルパンを騙して連れてくる。ルパンに永遠の命を与えてくれる約束でマモーの求める物を盗んできて貰ったのだもの。その為にルパンのもとに行くのは良いのだけれども、どうしてもマモーを信じきれない自分が居る。

 

「テロメアの問題も解決出来ていないのによく永遠の命なんて言えたもんだな」

 

「ノワール…?」

 

「……彼をここに招待した覚えはないのだかね」

 

 ドアを開けて入って来たのは間違いなくノワールだった。額に布を当てて包帯を着けては居たけれど。

 

「まさか君の方だとはね。しかしキミは先程撃たれて死んだのではないかな?」

 

「残念だったな。トリックだよ」

 

 そう言ってノワールは指で摘まんだカプセルを潰すと血糊が吹き出た。もしかして死んだフリだったの?

 

「チョイと掠めはしたがな」

 

「成る程。だがせっかく生きていたのだ。その命を無駄にすることもあるまい」

 

「まぁ、命は大切にしたいがな。アンタに訊きたいことがあったのさ。とっちゃん坊や」

 

「……良かろう。何を訊きたいのかね?」

 

「クローンを作っても、魂の転写。自意識の移し替えは出来るのか? もちろん、アンタみたいに脳みそを瓶詰めにしないで、だ」

 

「それになんの意味があると言うのかね?」

 

 マモーが、ノワールの質問に対して答えずに質問を返した。それを見たノワールは口許に笑みを浮かべた。

 

「確かにアンタは一万年前に宇宙からの電波を受信して、クローン技術を生み出したとんでもない人間だろう。だが頭打ちした寿命に恐くなって不老不死を求めるただの人間だ。神さまなんて立派なものじゃないってことさ。神さまに寿命なんてないからな」

 

「……キミは何を知っている」

 

「おれは知っている事しか知らないただの人間さ。ただ、クローンが知らない事を知ってる。アンタの知らない事を知ってる。アンタは予言者を自称してたな。なら2001年9月11日に何が起こるか知ってるか?」

 

「言葉遊びも大概にしたらどうかな? そうやって不二子を誑かそうというのだろう?」

 

「誑かしてるのはどっちだ。不老不死が実現できないから、不老不死がある宇宙の文明を探して宇宙旅行をしようなんてロマンチスト過ぎるだろ。アンドロメダにでも行って機械の身体でも貰ってくる気か?」

 

「私を侮辱するのも大概にしたまえ。そしてキミは知ってはいけないことも知っている様だね」

 

「今回のヤマはあまり長引かせても面白くなさそうだからな。ネタバレは重視していくぜ?」

 

 そう言ってノワールが私の方を見る。

 

「不二子。このとっちゃん坊やが約束した永遠の命はな。アンタが考えてる様な永遠の命じゃない。詐欺みたいなもんだ」

 

「……どういうことなの?」

 

「耳を傾ける必要はないよ不二子。所詮は子供の戯れ言に過ぎないのだからね」

 

「だったらクローンにどうやって自意識を移すのか是非とも教えて欲しい所だ。そのクローンにしたって130代で見切りをつけて止めたんだ。不老不死を宇宙に求めるロマンチストの答えを聞かせて貰おうか?」

 

 マモーは答えられない。そう確信してノワールは笑っている。マモーは苦虫を潰したかの様に顔を歪めている。

 

 その笑みはノワールが相手より自分の方が情報で優勢に立っている時に浮かべたりする顔だった。この子は時としてルパンやアタシよりも先んじて情報を得る事がある。その時に見せる勝ち誇った顔。

 

「不二子。さっき見たもうひとりのおれはマモーの作ったクローン人間だ。髪の毛でもなんでも良い。人間の遺伝子に手を加えて出来るそっくりさん。それを使ってこのとっちゃん坊やは好きな時に峰不二子を気紛れに作っては楽しめるって寸法だ」

 

「じゃあ……」

 

「今いる不二子のままで永遠は手に入らない。手に入れるのなら、肉体という器を捨てて脳みそになって瓶詰めにして保存して脳波で複製した肉体を、老いちゃ取っ替え、老いちゃ取っ替えする方法はあるけれど、それが永遠の命なんて言えるか?」

 

「マモー…!」

 

「……残念だが、彼の言う通りだ。だが、不死の世界に行けば君もその肉体を捨てずに済むのだよ」

 

 そのマモーの答えに、アタシの足は自然とノワールの方に向かった。

 

「不二子…! 何故だ。永遠の命が欲しくないのか?」

 

「夢物語を話してるとっちゃん坊やとは行きたくないってことだろ」

 

「不二子。戻って来るんだ。今ならまだ間に合う。キミも、あと数日で滅びる世界に居たくはないだろう?」

 

「え?」

 

「私は預言しよう。あと数日でこの世界は滅びる。だが私に認められたものだけは生きる権利が与えられるのだよ」

 

「コロンビアの遺跡の地下に隠してある核ミサイルで、世界を吹き飛ばすだけだろ? そんなんでよく上から目線で世界が滅びるなんて言えたもんだ。滅びるんじゃなくて、滅ぼすんだろ?」

 

「どちらも同じことだ。キミは思った以上に口の汚い人間の様だ」

 

「クローン作っておれを知れたと思ったら大間違いだ。そんなのおれの人生の1/5程度しか知れてねぇよ」

 

「ならば、君を捕らえてその残りの人生とやらを見させて貰おうか」

 

 そう言って懐から銃を出したマモー。でも直ぐに腰からマグナムを抜いたノワールが、マモーの銃を撃ち落とした。

 

「ぐぅっ」

 

「素人がガンマンにサシで勝てるわけねぇだろ」

 

 マグナムを腰に納めたノワールは振り向いてドアを開けて、一度立ち止まった。

 

「コロンビアで首洗って待ってろ。ルパン一家総出で相手してやる」

 

 そう言い残して、ノワールは歩き出す。

 

「不二子…っ。私から離れてはならない。永遠の命が欲しくないのか…?」

 

「……さようなら、マモー」

 

 永遠の若さは欲しい。

 

 でも、アタシはノワールの方を信じる事にした。何故ならあの子は一度もアタシに嘘を言ったことはないから。そして、普段はガンマンなのに言葉で攻勢に出るあの子の言葉はいつも真実だったから。

 

「ひゃっ!? 何すんの!?」

 

「うん。ちゃんと本物ね」

 

「何言ってんのか。わうんっ!? ちょ、あうんっ、やめ、止めてってっ」

 

 ノワールの背中に抱き着きながら首筋を撫でてあげればいつも通りにかわいい反応を返してくれる。止めてって言うけど振り解かない。嫌よ嫌よも好きのうち。この子Mだし子犬だから本当にいじくり甲斐があって好き。

 

「良いじゃない。減るもんじゃないし」

 

「減る! カッコよく締めた余韻が減る!」

 

「フフ。そうね。カッコ良かったわよ。子犬ちゃん」

 

「うひゃっ。な、なんでみ、みみ、耳ぃ!?」

 

「ウフフ。もうっ。おませさんなんだから♡」

 

 耳にキスをすると、ノワールは耳まで真っ赤にして縮こまってしまった。ホントにかわいい子犬ちゃんなんだから。

 

「ん…っ。…お願いだから少し離れて。銃が抜けない」

 

「仕方ないわね。帰ったら、つづきをしましょ♪」

 

「うぅ……」

 

 腰のマグナムを抜いて弾を入れ換えるノワールから離れる。

 

 もう少し遊びたかったけど仕方がない。でも助けに来てくれたのは嬉しかったから、落ち着いたらオトナのお礼をシてあげましょうか。

 

 

 

 

to be continued…


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