泥棒一家の器用貧乏   作:星乃 望夢

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これを書いている間、峰不二子という女を一気に見ました。また別の出逢い方をしてるルパンたちに痺れました。でも記憶の転写とかとっちゃん坊やも関わってんのかなぁって思いながら最後は見てました。


子犬とノワール

 

 カッコよく出てきたつもりでも、素直にマモーがこちらを見逃してくれる訳がなかった。

 

 無駄にだだっ広い廊下でバカスカ銃を撃ってくる警備の男たち。

 

「ここの警備何人くらい居るんだ?」

 

「4、5人だったはずだけど?」

 

「倍は居るぞちくしょう」

 

 部屋の入り口の影に隠れて銃撃から身を潜めているが、そう長くももたないだろう。

 

「仕方ない。一気に飛び込む。援護してくれ」

 

「本気? 蜂の巣になっちゃうわよ」

 

「どのみちこのままでも変わりゃしないんだ。だったら分が悪くても賭けるしかないだろ?」

 

 マグナムの弾をリロードする。スタングレネードを警察相手に使いきったのが悔やまれる。でもあのとっつぁん相手におれが逃げ切るには必要経費だから仕方がない。

 

 撃ち落とされたマグナムもパーツを交換しないと使えない。一挺のマグナムに命を預ける。

 

 だが次元はいつもそれで切り抜けて来ているのだから、自分も同じことをするだけだ。

 

 祈りを捧げる様にマグナムの銃身に額を当てる。

 

 集中力を高めて、神経を耳に傾ける。

 

「さて。ショータイムだ」

 

 銃撃の合間を縫うように部屋から転がり出て、こちらに向けてマシンガンを撃っていた男の武器の銃口を狙う。

 

 銃口を撃たれて、中の撃った弾とぶつかり銃身が弾け飛ぶ。

 

 銃口に入らずとも、銃身に当たれば手から弾け飛ぶ。

 

 四人を黙らせたところで、いつでもリロード出来るように予備のスピードローダーに意識を向けておく。

 

 6人を撃った所でリロードに入る。そこで当然こっちを狙ってくる警備の男を不二子が撃つ。

 

 銃撃の弾丸の嵐に身を晒すなんて普通の人間なら先ずやらないし、出来ない。

 

 それをやれる様になってる自分はやっぱりどこかおかしいのかもしれない。

 

 廊下をジグザグに跳びながら進み、狙いをつけさせないように動く。

 

「くわっ」

 

 目の前をサーベルの刃が過ぎ去っていく。咄嗟に首を引いたが、鼻先にサーベルの裂いた風を感じる程だった。

 

「フリンチ!?」

 

「ちっ。前髪が二センチ切れたぞ」

 

「ククク。ここからは逃がしゃしねぇ」

 

「そうかい。だがな、邪魔するなら容赦しねぇ」

 

 ハゲ頭というか、スキンヘッドな大男のフリンチが立ち塞がる。確かこいつは合金チョッキで身を守ってるハズだったか。

 

「ちっ。効きやしねぇか」

 

「な、なんでよ!?」

 

「フッ。レーザーでなきゃこの合金チョッキはビクともしねぇ」

 

 試しに胴体を撃ってみるが、やっぱり効果はなかった。それを無駄だとわからせるためか、上着のスーツを脱いで合金チョッキを誇るように見せるフリンチ。殺人OKならドタマぶち抜けるんだがなぁ。

 

「ああそうかい。でもな、足元がお留守だぜ!」

 

 だから足を撃ったんだが、弾丸が弾かれた音がした。

 

「合金プロテクターも同じ材質だ。さぁ、どうする?」

 

「ケッ。用意が良いこったな」

 

 足にも対策されてたなんて知らねぇよボケ。

 

 足を撃っても無意味なら肩か腕を撃つだけだ。

 

「ふんっ、はっ、とりゃっ」

 

「ねら、い、は、おお、ぶり、だか、らっ」

 

 避けられない事もないが、これじゃあ千日手に追い込まれる。

 

 大きく後ろにジャンプしながら、弾をとっておきの1発。徹甲弾に変える。

 

「今度のはただの弾じゃねぇぞ」

 

 狙いを定めるのはやつの膝関節だ。

 

「ぐおっ!? くっっ」

 

 流石に衝撃までは吸収するのは素の人体だろう。

 

 貫く事はやはり無理だったが、膝は痛める事に成功したらしい。

 

「今のうちだ不二子!」

 

「ええっ」

 

 不二子を連れて屋敷を出て、フィアットに乗り込む。

 

「ふぅ…。なんとかなったか」

 

 正直なんで生きてるんだろうと毎回思うが、そうでないと毎回死んでるから、切り抜けられればそれで良しと考える様にしている。それくらいには自分もルパン側の人間になれているんだと思いたい。

 

「これからどうするのよ」

 

「ルパンたちを拾ったら、マモーの本拠地に殴り込みさ」

 

「……ねぇ。ノワール」

 

「自分で蒔いた種だ。どのみちおれたち全員で掛からないと、今回のヤマは片付きそうにない」

 

「なら逃げましょうよ。あなたが良ければアタシ…」

 

 そういう不二子に一枚の紙を見せる。

 

「これは…」

 

「マモーの表向きの顔さ。ハワード・ロックウッド。世界の1/3の富を持つ、文字通りの億万長者だ。ここで逃げたら一生地下暮らしだってやっていけるかどうかだな」

 

「……ひどいわ。全部ウソだったのね」

 

「ウソってのは真実の中に紛れ込ませれば真に聞こえるもんだ。だがマモーが複製人間を作れるのは本当だ。そしておれたちと対峙していたアイツもコピーだ。オリジナルはコロンビアのとある遺跡の地下。しかもあと数日でやつはそこから全世界に向けて核ミサイルで攻撃を始める」

 

 おれが調べたハワード・ロックウッドの資料に目を通しながら、不二子はショックを受けている様子だった。

 

 本気で不老不死を信じてルパンを騙してまで動かしていたのだから仕方がないとは思う。おれを信じて着いてきてくれたとはいえ、こうして現実を突きつけられれば実感もまた変わることだろう。

 

「でも。核ミサイルで世界を攻撃をしようなんて人を止めるなんて。国に知らせた方が良いんじゃないかしら」

 

「少数精鋭の方が確実に早い。国とかのしがらみのないおれたちの方がね」

 

 マモーは不二子に執着していたし、おれのクローンを用意した程だからおれにもなにかしらの興味を抱いているはずだし、今回の接触で最大限の売り込みもした。

 

 だからコロンビアの遺跡に行くくらいまではおそらくもう一度接触する場を設けるはずだ。

 

 ルパンとマモーに因縁を持たせることは出来なさそうだが、それは仕方がない。マモーの方からおれに因縁を吹っ掛けて来たんだ。今回のヤマはある意味おれが清算しないとならないわけだが、ひとりじゃ手に余るからみんなに頭を下げて協力して貰わなくちゃならないわけだ。

 

 ルパンは良いかもしれない。でも次元パッパと五エ門先生がなぁ。今回の不二子にはご立腹だったから説得にはかなり骨が折れそうだ。

 

「でもルパンたちをどうやって見つけるの?」

 

「マモーと結託してルパンを連れて行こうとしてたんだろ? 大体の場所は知ってるんじゃないのか?」

 

 覚えている、と言うより思い出した所だと確か不二子を巡ってケンカになったハズだ。確かアジトも不二子にチクられてパーだったハズ。そこから確かケンカ別れしたような気がする。思い出せる事にも限界があるが、クライマックスは覚えているからどうにかなると思いたい。

 

 変なプライドに拘らずに撃てば良いんだろうが、男の約束だ。破るわけにもいかない。

 

 だから戦闘要員の次元と五エ門に来てもらえないとちょっと…、いやかなり困る。

 

 ルパンを追い掛ける為に何処を探せば良いのか知っているだろう不二子を見る。

 

「……アタシも知らないわ。これからマモーに聞くところだったんだもの」

 

「……しゃあない。とにかく探すしかないか」

 

 気まずいのはわかっているが、こんな状況を打開するにはルパンたちの助けが要る。

 

 パリで1度休息を挟む。こういうとき携帯のある時代が恋しくなる。

 

 ルパンのアジトが軒並み荒らされて使い物にならない中で、おれ個人で構えていた隠れ家は無事だった。

 

 ならクローンの持つ記憶は果たしてどこまでおれを再現しているのか気になる。

 

 咥えたタバコに火を着けながら地図とにらめっ子。

 

 アジトからいったいどこに向かったかだ。

 

 それを思い出せれば一番簡単だが、思い出せないんだから仕方がない。ただマモーから逃げるために選ぶとしたら大西洋に抜ける道を探す。大陸を行くより1度海を渡った方が追跡は難しくなるからだ。

 

 あと思い出したのは荒れた荒野の小屋だ。車も壊されてたハズだ。

 

 イヤらしい攻め方だ。逃げ道を潰してこっちを追い詰めようというのだから。

 

 不二子の件で不機嫌の上に精神的に追い詰められちゃカリカリしても仕方ないか。

 

 とはいえ怒ったってしょうがないんだからとも思う。

 

 不二子はそういう女なのを承知で付き合わないとならない。

 

 それもわかってるルパンも、今回はクローンの処刑があった所為か何処か普段とは違っていた。

 

 収拾を付けるこっちの身にもなれと心の中でマモーに悪態を吐く。

 

「ノワール…」

 

「うわっ。なんだよ不二子」

 

 イスに座って地図とにらめっ子していたおれに背中から寄り掛かってくる不二子。身長差もあって不二子の大きな胸が頭の上に乗っかっている。振り向けば二つのお山のチョモランマの谷に顔を埋めることになるだろう。

 

「せっかく落ち着けたんだもの。少し休憩にしましょ?」

 

「誰のお陰で頭捻ってると思ってるんだ」

 

 基本的に怒らない。怒っても仕方がないとしても、おれだって怒るときはある。

 

「こう見えてもショックだったりするんだよ? 不二子を騙したことないのに、こっちは騙されちゃってるんだから」

 

「そうね。そうよね。あなたは素直な子だからウソを言ったことはなかったわね」

 

 不二子はウソを言ったり騙したりやりたい放題。ルパンも時には不二子を利用するんでウソを言ったりして騙す事もある。そこはお互い様だ。

 

 だがおれはおれなりに、誠心誠意真心込めて不二子と付き合ってきたつもりだ。でも今回はちょっとオイタが過ぎてる。ルパンが損を見るのは仕方がない。それを承知で不二子の仕事を受けているのだから。

 

 不二子はルパンの事を好きなのだし、それは一向に構わないことだが、いったいこの煮え切らない気持ちはなんなんだろうか。何かが引っ掛かる。悔しさでも嫉妬でもない。いったいなんなのか。

 

「ウフ。拗ねちゃってるのね。かわいい」

 

「そんな子どもみたいな、ふやんっ!?」

 

 いきなり耳を舐められる。

 

「やっ、やだっ。せめてシャワー浴びさせて…っ、んんっ」

 

 耳の裏。汗をかいたら一番自分でもイヤな臭いがする場所を舐められた。変な臭いとかしていないか恥ずかしさが一気に思考を押し流してしまう。

 

「おぼこちゃんねぇ。気にしないわよ。アタシを助けるために精一杯頑張ってくれたオトコの子の味だもの」

 

「する…っ、気にす、ふぁっ、恥ずかしぃ…っ」

 

 帽子は取られ、ネクタイは緩み、シャツのボタンは外されて、インナーをたくしあげられて、不二子の細くて長い指が身体を這い回る。

 

「くっ、くすぐったい…っ、んっ」

 

「銃の扱いは一人前。でも女の子の扱いは赤ちゃん同然」

 

「ふあっ!?」

 

 首筋を這うぬめる感触。不二子の柔らかい唇と、熱い舌の感触。

 

「身体はこんなに素直なのに、心は奪えない。中々挑みがいがあるのよね。あなたは」

 

「そ、れはっ、んやっ、あ、そっちは…! や、やだぁ…っ」

 

 腕を掴まれて脇の下を舐めあげられる。

 

 恥ずかしさで顔から火を吹きそうだ。先にシャワーを浴びればよかった。

 

「先にシャワーを浴びればよかったって考えてるでしょ?」

 

「だ、だって…」

 

「確かに普通の女の子なら気にするかもね。でも時には女の子もありのまま相手を味わいたくなるの。それが命をとして助けてくれた王子さまが相手ならね」

 

「不二子…。んっ」

 

 唇を塞ぐ柔らかな感触。舌を絡め取られ、吸い出されて、嫐られる。上顎を舌先で舐められ、頭が痺れそうになる。

 

「っ!?」

 

「ひゃあ!?」

 

 不二子を床に押し倒して、腰からマグナムを抜く。

 

「いったいなに? 我慢出来なくなっちゃた?」

 

「だったらとっくの昔にチェリーは卒業しとるわ!」

 

 不二子を抱きながら身体を転がして、窓に向けてマグナムを撃つ。部屋の中で弾丸同士がぶつかり、窓を破って入ってきたのはおれ自身だった。

 

「よくここを嗅ぎ付けたな」

 

「おれなら居を構えるならここだという場所をしらみ潰しにした」

 

「お暇なことで」

 

 にしても絞り込みが早すぎる。

 

「本命は自分、か」

 

 マグナムを向けながら立ち上がって向かい合う。

 

「確かに頭を撃ったはずなんだがな」

 

「ルパンと一緒に居たならトリックのひとつやふたつ、朝飯前だろ? いや、確かまだ血糊で死んだフリはまだしてなかったか」

 

「……何が言いたい」

 

「別に。お前よりもおれはルパンを知ってる。それだけだ」

 

「なんのマネだ」

 

「ノ、ノワール?」

 

 マグナムを不二子に預けて、上着を脱ぐ。

 

「おれの命よりも大切な魂だ。預けておくよ」

 

 指の骨を解しながら、握りを確かめる。

 

「泥棒でも、ガンマンでもない。ひとりの男になった時。お前はどうなる。ノワールという存在でなくなった時。何が残る」

 

 足を肩幅程度に開いて、半身を傾けて己と対峙する。

 

「残るわけがない。何故ならお前はノワールとして生まれたからだ。でもおれには残る。まったく役に立たない、それでいて自分はちゃんと本物だって胸を張れる自分が居る。それがおれとお前の違いだ」

 

「……ご託並べは終わりか?」

 

 目の前にはマグナムを構える己自身。まったく、おれもルパンの事をとやかく言えないな。

 

「返してもらうぞ。ノワールという名前を。それはおれの人生だ」

 

「この世にノワールはふたりも要らねぇか。そいつは同意見だ!」

 

 マグナムの引き金を引くノワール。だがおれはそれを指を掛けた瞬間と銃口を見て射線を予測して避ける。

 

 手を伸ばし、ヤツの握るマグナムを掴む。シリンダーの熱さも構いやしない。

 

「なっ!? ぐあっ」

 

 マグナムを取り上げて顔面を思いっきり殴り飛ばす。

 

「自分のリズムだ。虚を突くくらい出来るようになったさ」

 

「くっ」

 

 取り上げたマグナムを不二子に投げて預ける。

 

「これで互いに丸裸だ。そして丁度マグナムは一挺ずつ。さらにはキレーなお姉さんの特典つきだ」

 

「あら。アタシをオマケにしようなんて。随分お高く出たじゃない」

 

「本物の証明と証人なんだから頼むよ不二子」

 

「仕方ないわね。でも負けないで。一から芸を仕込むのも大変なんだから」

 

「そいつは天の神さまに訊いてくれ」

 

 本物の自分を賭けて戦う。銃で負けた以上。これがスペシャルラストチャンスだ。

 

 

 

 

to be continued… 

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