泥棒一家の器用貧乏   作:望夢

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ルパンと子犬

 

「次元大介…?」

 

「ああ。黒の帽子にコンバットマグナム。暗黒街で1、2を争う本物のガンマンだ」

 

 ガルベスの屋敷から追撃を撒いた俺は、商売敵だが憎めない奴であるブラッドの所に来ていた。

 

 ついでに夜にやりあったあの早撃ちガンマンの事をそれとなく口にしてみれば、ブラッドが口にしたのはそのガンマンの名前だった。

 

 まぁ。ガルベスの所で仕損じた情報まで出回ってるのは面白くなかったが。

 

「ガルベスの野郎が次元を雇ったとなりゃ。子犬の方も一緒ってわけか。こりゃちと骨が折れそうな相手だな」

 

「子犬……?」

 

 あのガンマンと子犬。まるで接点がわからないが。子と聞いてふと思い起こされたのは、その次元と瓜二つの格好に、銀色のリボルバーの二挺拳銃を構えるガキの姿だった。

 

「数年前から次元が連れ回してるガキさ。銀色の二挺拳銃(シルヴァリオ・トゥーハンド)。次元の名に隠れちゃいるが、このガキも相当な腕らしい。噂じゃ去年麻薬の密売組織をひとりで潰したらしいぜ」

 

「へぇ~。おっかねぇガキも居たもんだ」

 

 あの時。偶々月の光が反射してあのガキの銃を撃ち落とせたが。そういった端々の未熟さはあっても早撃ちの腕と持っている雰囲気は親とそう変わらない感じだった。あんな恐いガンマンふたりも相手にしたかないが。子犬はまだ勝機がある。というか、子犬はおそらく殺しができねぇ。でなかったら足や肩なんかわざわざ狙わずに胴体を狙えば良いはずなのにそれをしなかった。

 

 その辺、親は実に容赦がないから逆に避けるだけならなんとかなった。子犬には一発噛まれた。

 

 こっちのワルサーの弾を撃って弾いて、そのまま間髪入れずにワルサーを直接撃ってきやがった。

 

 逃げるのに銃を壊されたら堪らなかったから避けたが。その弾が僅かに肩を掠めていった。

 

 何れにしろ。恐い番犬を拵えたもんだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇ 

 

 

 

「ルパン三世……か」

 

「フランスの大怪盗アルセーヌ・ルパンの三代目。欧州圏じゃそこそこ名のある泥棒だけど、ここ何年かはアメリカ大陸を中心に仕事してるらしい。まぁ、欲しいお宝があれば西へ東へ現れる文字通りの神出鬼没の大泥棒だよ」

 

 一夜明けてガルベスの屋敷でルパンに関するプロフィールをパッパに聞かせる。まぁ、昨日調べたまだ程度の浅い自己紹介みたいなプロフィールだけど。

 

「すばしっこい奴だが銃なら此方が上だ。次は逃がしゃしねぇよ」

 

「燃えてるね」

 

「そりゃオメーもだろ?」

 

「まぁね」

 

 おれのマグナムは銃身に少し傷を負った程度で使うのには問題ないものの、パーツを発注して取り替えることになった。良い射撃をするには良い銃と腕があってこそだ。それがパッパの教えだから泣く泣くフレームを交換することになった。

 

 まだ数年しか銃を握っちゃいない、尻の青いガキではあるが。おれにもガンマンのプライドなんていうものがあったらしい。いや。このマグナムが特別だからだろう。

 

 撃たれた理由はわかった。月の光を不用意にマグナムで反射させた自分の落ち度だ。

 

 だからその授業料のお礼参りをするだけだ。

 

 とはいえルパンはパッパの獲物なので、自分に出来るのはルパンについて調べることだ。

 

「正面から撃ち合いに乗るかはわからないよ? 此方の早撃ちの腕は昨日で知られてる」

 

「それでもチャンスを待つさ。狩りと同じだ」

 

「オーライ。ルパンの得物はワルサーP38。特定で組んでる奴は今のところは居ないみたいだね」

 

「1対1か…」

 

「そこは2対1じゃないの?」

 

「いくらお前でも邪魔すれば怒るぞ?」

 

「はいはい」

 

 釘を指す、様な感じではないものの一応伝えたぞとその帽子に隠れた顔は言っている。

 

 話が終わってどちらともなく立ち上がる。

 

 早撃ちのガンマンなら、言葉は要らない。

 

「早い者勝ち」

 

「恨みっこなし」

 

 そう言って、引き抜いたマグナムの銃底をかち合って、ガルベスの屋敷を出る。

 

 うん。ちょっとパッパがカッコいい。こんなカッコいい事をパッパとしちゃって良いのだろうか? 今日か明日おれ撃たれたりしないよね?

 

 そんな事を考えつつ、街を歩く。行く宛はないがこういうときの探し物をするなら人に聞くのが一番だ。

 

「どうしてここで曲がる」

 

「ダディこそ」

 

「ダディも止めろ」

 

「じゃあ……ダロン?」

 

「先ずその発想から外れる気はないのか?」

 

 ちなみにダロンとはフランス語でオヤジという意味だ。

 

「でも保護者でしょ? それとも師匠(マスター)って呼んでみる?」

 

「なんか背筋がムズムズするから止めろ」

 

「ワガママだなぁ…」

 

 とか喋りながら大通りから1本逸れると、左右の道を銃を握ったチンピラに塞がれた。なんかこのパターン最近多いんだけど。

 

「次元大介だな。悪く思うなよ? アンタを殺りゃ暗黒街での名も上がる」

 

「ラッキーだぜ。子犬連れとはよ」

 

「び、ビビって声も出ねぇのか?」

 

 誰が子犬じゃ。あとビビってるのはそっちだ。

 

 しっかし。こりゃまたバカが釣れてしまった。きっとこのニューヨークに来たばかりのチンピラだろう。

 

 自分だけならまだしも、次元に手を出そうなんていうバカはご近所には居ない。なによりガルベス一家のボディーガードになったことも噂で広がっている。下手を打てばニューヨークマフィアを敵に回すことになって、ニューヨーク湾にコンクリート詰めにされて沈められても文句も言えない様な愚行だったりする。

 

「退きなチンピラ。俺たちゃ今機嫌が悪いんだ」

 

 さっきまでのパッパとは違う。ガンマン次元大介が表に出てきている。

 

 ガードマンとして最低限の仕事はしている次元だが。ルパンを仕損じた事をシェイドにああだこうだ言われたのが気に食わないんだろう。更にガンマンの自分が狙った相手を仕損じた事もあって。ガンマン次元の不機嫌度は推して計るべし。

 

「やろぉぉぉっっ」

 

「わっ、ちょっ」

 

 チンピラが吠えた瞬間に身体を押してくるパッパにつられて自分の身体も動く。

 

 背中合わせになって響いた銃声は6発。

 

 右に居たふたりのチンピラの銃を撃ち落とし、そのままぐるりと反対側の、左に居たチンピラの髪の毛を吹き飛ばした。

 

 次元は左に居たチンピラの銃を撃ち落とし、右に居たふたりのチンピラの髪の毛を吹き飛ばした。

 

 マグナムの銃声しかしていない一瞬の事だった。

 

「いきなり動かないでよ。ビックリするでしょ」

 

「はん! 的が動いた方が練習になるだろ?」

 

「まったく…」

 

 此方が利き手じゃない左手じゃないと銃が撃てない事を忘れてないかと思いつつ、そのまま背中を離して歩き始める。

 

 自分は左、パッパは右だ。

 

 探すのはルパンというより、青のACコブラだ。そんなスポーツカーをスラム街で転がせば目立つ。

 

 何回か絡まれながらもスラム街を歩く。中には子供のグループなんかとも接触する。

 

 大人に聞くよりも子供の方が色んな情報を知っている。生きるために必死な子供はそれこそ食べ物を求めてあちこち出歩くからだ。

 

 情報料を渡して、突き止めたアパートに入る。裏の非常階段の下に青のACコブラも見つけている。

 

 確か一番右の部屋だったか。

 

 記憶違いじゃなければそうだったはずだ。

 

 なにぶん何年も経つ上にしょっちゅう見てたルパンはカリオストロとファーストコンタクトだが、それでもファーストコンタクトを最後に見たのは15年くらい前だ。

 

「本当に、ルパンの世界なんだな」

 

 それでもスラム街での生活や、鉄火場でマグナムを撃っていればこの世界での人生を現実として受け止めるのには充分だった。

 

 痛いのが嫌だから弾に当たらない様に立ち回ってはいるものの、それも何時まで続くか。直撃は避けているものの、掠めた傷なんかは何ヵ所も負っている。

 

 去年の麻薬の密売組織を潰した仕事の時は死ぬかと思ったけど。

 

 だから今も痛む右手首を気にしながらも、大きなケガがないように祈ってドアをノックする。

 

「こんにちはー」

 

「はいはいどなた~?」

 

 少し高めの声を作って、そんな間の抜ける挨拶をして、応えて貰えるとは思わなかった。

 

「お前は……」

 

「こんにちは。ルパン三世さん?」

 

 帽子のつばを左手の人指し指で持ち上げながら、ルパンに直接顔を見える様にする。

 

「ヒュー♪ こらまたかわいらしいワンちゃんだこと」

 

「褒め言葉として受け取っておくぜ」

 

 男に可愛いと言われても嬉しかないが、争いに来たわけじゃない。

 

「それで? ガルベスの所の番犬が俺になんの用だ?」

 

「命を貰いに来た、って言ったら?」

 

「よせやい。その気なら、もう抜いてるだろう?」

 

 そう言いながらルパンはドアを開け放ってくれた。部屋に入ってもOKってことだろうか。

 

 部屋に入ってベッドに腰掛ける。

 

「用向きはひとつ。ひとつ賭けをしないかって事さ」

 

「賭け?」

 

「クラム・オブ・ヘルメス。あれはおれも気になってる物でさ」

 

「おやおや。そんな事を俺に言っちゃって良いのかなぁ?」

 

「ガルベスと契約してるのはパッパだからね。おれはオマケってワケ」

 

 だからガルベス一家に義理立てする謂れはない。なにより疎まれてるし。あまりやり過ぎたらパッパに迷惑が行くから表立ってあれこれする気はないが。

 

「本当はマグナムの礼がしたいんだが、獲物を取るとパッパが怒るからな。だからおれはおれなりにこの鬱憤を晴らすことにしたってわけだ」

 

「それで? その賭けに俺が乗るメリットは?」

 

「チップは命。当たればクラム・オブ・ヘルメスの鍵の在処ならどうかな?」

 

「……知ってるのか?」

 

 ルパンの声がシリアス寄りのトーンに変わった。第一関門はクリアした様だ。

 

「クラム・オブ・ヘルメスを開けるには、それ専用の鍵が要る。それがないと何をやっても中身は拝めない。鍵が必要な事を知っていても、在処まではまだなんだろう?」

 

 伸るか反るか。ルパンの返答を待つ。

 

「お前の要望は?」

 

「……次元がアンタに勝ったら、クラム・オブ・ヘルメスの中身の巻物を見せて欲しい。アンタが次元に勝ったら、鍵の在処を教える。それでどうだ?」

 

「なるほど。だが、俺が自分で鍵の在処を見つければ、賭けをする意味もなくなるな」

 

「ま、その時はその時さ」

 

 そう言ってベッドから立ち上がって部屋のドアに手を掛ける。

 

 だが背中にルパンが銃口を向けている気配を察して止まる。

 

「アジトの場所を知られちまったからな。このままおさらばバイバイはちぃ~っと難しいわなぁ」

 

「良く言うよ。スラムにスポーツカーで乗り入れて、どうぞ見つけてくださいって釣糸垂らしてたクセに」

 

 本命は次元を釣りたかったんだろう。それにおれが乗っかったまでだ。

 

「利き腕じゃなくても、この体勢から0.3秒で撃ち返せるんだぜ?」

 

 本当は0.5秒程だけどハッタリを噛ましておく。実際に殺りあったら今度は明るい室内だ。この距離ならどっちも弾を外し様がないだろう。

 

「……止めだ止めだ。こちとら徹夜で眠いんだ。とっとと帰んな」

 

「おれがガルベスにチクるとは考えないのか?」

 

「その気なら今ごろ団体客がご到着だ。それに、そういうつまらねぇ事をするタマには見えねぇんだよな。お前も、次元もな」

 

「そりゃ光栄だ。また会おうぜ」

 

 ルパンの部屋から出て。アパートの非常階段側を降りる。

 

「っ、ふ、ふふ、ははははっ」

 

 ルパンとの語らいを終えて、込み上げてきた興奮が口を突いて漏れる。

 

 ルパンが伸るか反るかはどっちでも良かったし、銃なら次元が負けるはずがない。賭けにもならない賭けだ。

 

 それでもクラム・オブ・ヘルメスの中身の巻物は気になるのは確かだった。アレ以外だと黄金の龍の置物をなんかしなくちゃならなかったはずだ。昔は燃えよ斬鉄剣も見てたはずなんだがね。

 

 マルボロを咥えて火を点ける。

 

「やっぱりパーラメント買おうかなぁ」

 

 遊びのあとのタバコは旨い。パッパの余りを貰った赤マルだけど、やっぱり吸い慣れているタバコの方が旨い。

 

「今夜か…」

 

 ルパンと次元が二度目の邂逅を果たすのだろう。

 

「おれが居てもどうにかなるワケじゃないだろうけどね」

 

 これでちょっとはルパンも真面目に次元と勝負してくれるだろうか。

 

 そう考えながらスラム街をあとにした。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「まったく。とんでもねぇガキだぜ」

 

 確かに釣れればラッキー程度に糸は垂らしていたが。俺の予想だとガルベスの連中が真っ先に釣れる候補で、次元が釣れれば大当たりの気分だったんだがまさかのダークホースのご登場とはね。

 

 明るい所で見た面はとてもコンバットマグナムをブッ放す様なガキには見えなかった。ハリウッドの子役が衣装を着て現れたっていう方がお似合いだ。

 

 それを身体から香る火薬と血の匂いが、それなりに鉄火場に身を浸している事を語っていた。

 

 パッパの為に敵を焚き付けに来る度胸があるガキがこの世に居るか普通。

 

 だが。鍵の在処の話は本当だろう。ガキでも裏社会の人間だ。ガセネタ程怨みを買う物はない。

 

 ガキに突き止められて、天下の大泥棒のルパン三世様に突き止められないはずがねぇってんだよ。

 

「パッパ、パッパねぇ…」

 

 親想いの良い子犬じゃねぇか。

 

「ふっ、わ~ぁっ。さて、寝るか」

 

 なんか子犬が子犬じゃねぇって吠えてそうだが気のせいだろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「くしゅっ」

 

 急にくしゃみが出た。どこがで自分の事を子犬だと言われた気がする。なんで子犬なんだかねぇ。パッパにリード引いて子供を散歩させる趣味はないと思うけど。

 

「今夜は帰ってくる気配はないだろうしなぁ」

 

 久し振りにハンバーガーでも食べるのも良いかな。ジャンクフードって時々唐突に食べたくなる。

 

「ひとり、か……」

 

 子供の身はこういう時には不便だ。大人でも夜遊びはしたことないけど、バーで酒を引っかけに行けないのだからやっぱり不便だ。

 

「このッ、離せっ。離せよッ!」

 

 ……言葉は粗暴だが、女の声が耳に入った。

 

 聞こえた先は路地裏だ。そこで頭はRー18禁的な事を妄想するが。スラム街じゃ残念ながら妄想じゃ終わらない。

 

「やれやれ…」

 

 耳に聞こえたものは仕方がない。見て見ぬふりしても気になってぐっすり眠れないだろう。

 

 夕方で影の増えてきた路地裏。まだ多い人通りの喧騒で気づかれ難い場所だろうが。運が悪かった。おれの耳がその声を拾ってしまったからだ。

 

 黒人の男数人がアジア系の女の子を囲っているらしい。

 

「お楽しみになるところ悪いが、通行の邪魔だ。とっとと失せな」

 

「んだとっ? やんのかテメェ!」

 

「男が寄って集って女の子を嬲って、情けねぇな」

 

 良く見ればまだまだ幼い女の子だった。背格好なら自分と同じくらいだろうか。

 

「ガキじゃねぇか。死にたくなかったら失せな!」

 

 そう言いながら男のひとりが銃を向けてくる。

 

「ひとつ良いことを教えてやろうか」

 

 ルパンと話せて気分がノッた余韻の所為か、おれはとある台詞を口にしていた。

 

「ああん!? 頭沸いてるのかテメェ?」

 

「ピストル抜いたからには命賭けろよ?」

 

「は?」

 

「そいつは脅しの道具じゃねぇって、言ったんだ」

 

 言い切りと同時にマグナムを抜いて男の銃を撃ち落とす。

 

「テメェこのガキ!」

 

 別の男が銃を抜いて構える間に撃ち落とす。

 

「クソッ、なんなんだテメェは!?」

 

「屑に名乗る名はねぇよ」

 

 マグナムを構えたまま言い放てば、男のひとりの視線がおれのマグナムとおれ自身を見つめていた。

 

「ぎ、銀のリボルバーに黒スーツと帽子のガキ……。て、テメェ、銀色の二挺拳銃か(シルヴァリオ・トゥーハンド)!?」

 

「へぇ…。わかってるなら話が早い。ケツに新しい穴を拵えたくなかったら失せな。3度目はねぇぜ?」

 

「二挺拳銃かなんだか知らねぇが、ガキが調子に乗るんじゃねぇ!!」

 

 そう言いながら、まだおれの名を知らないらしい男が突っ込んでくる。此方側はまだ開拓してないから仕方ないのかな?

 

 体格差は倍以上だろうが、アホかコイツ。こっちは銃を持っているのに体当たりをしようとして来る。

 

「死ねえええっっ」

 

「よっこい、せいっ!!」

 

 突き出された腕を取って背負い投げる。

 

 結構な勢いが乗っていたから投げ易かった。

 

「ごっ、ぐべっ」

 

 受け身も取れずに顔面から地面にキスするハメになった黒人の大男。護身術もパッパから習っているが、柔道は前世からの引き継ぎものだ。

 

「ちょ、ま、待てよ! 下手なことすりゃコイツの命はねぇぞ!!」

 

 女の子に刃物を突き付けて人質を取る男。怯えからか手に持つナイフは震えている。

 

 人質になった女の子も泣きそうだ。目元に大粒の涙を浮かべている。

 

「言っておくがな。おれはここを通りたいだけだし、その娘とはなんら関係ねぇ。だがな…」

 

 右腕を台座代わりにして、マグナムを構える。撃鉄を起こしてあとは引き金を引くだけだ。

 

「お前がその娘をかっ切る前に、おれはお前の頭をポップコーンみたいに弾けさせられるんだぜ?」

 

 それはハッタリじゃない。出来る自信がある。

 

 沈黙だけが流れた。マグナムで狙われている男たちは滝汗を流している。こっちはまったく動じない。

 

 ……なんか弱いものイジメしてるみたいでシラけそうだ。

 

 そんな男たちの顔が不自然にニヤついた。

 

「危ない後ろ!!」

 

 女の子が叫ぶが、気配駄々漏れで近づけばモロバレだ。

 

 台座にしていた右腕を素早く下げてもう一挺のマグナムを抜いて、後ろから襲おうとした黒人の大男の顎に突きつける。

 

「生憎おれは二挺拳銃(トゥーハンド)だぜ? 動けば容赦なく頭が吹き飛ぶと思いな」

 

 まだ普通に手首は痛いが、ハードボイルドなら女の前で痩せ我慢のひとつくらいは頑張ろう。

 

「く、クソッ、覚えとけよォ!!」

 

 そんな捨てセリフを吐いて男たちは蜘蛛の子を散らす様に逃げていった。

 

 マグナムを納めて女の子に歩み寄る。

 

 汚れていても服らしかった服は破かれ、未成熟ながら膨らみを見せる胸を晒して――って、何見てるんだおれは。

 

 ジャケットの上着を脱いで、肩に掛けてやる。

 

「保証はないが。なにもしないって言葉が信じられるなら、付いてくるか?」

 

 その言葉に女の子はコクリと頷いた。

 

 

 

 

to be continued… 

 

  


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