泥棒一家の器用貧乏   作:星乃 望夢

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スランプから抜け出せてはいませんが。複製人間がせっかく放送されたので書き上げました。モンキー・パンチ先生の訃報に驚き以外にはありません。


子犬と銭形参戦

 

 マモーに首輪をされたおれは鳥籠の様な牢に入れられて宙づりになっていた。

 

 正直言って今はお手上げだ。銃もないし、鍵を開けようにもそう言った道具も全部取り上げられている。

 

 趣味の悪い首輪のお陰で寝付けないし、まいったもんだと思っていると、ルパンが大柄の男に担がれてやって来た。

 

「ルパン…っ」

 

 天井から別の牢が現れて、その中に放り投げられるルパン。そして牢は天井に登って来る。

 

「おいルパン! ルパンってばっ」

 

 呼びかけても返事はなく、ぐっすりと眠っている。確か不二子にクスリを盛られて眠った所を攫われるはずだった。でも時間的にそれは不可能だろう。ついさっきまで不二子はおれと一緒に居たのだから。

 

 とにかくルパンが無事そうならそれで構わない。どうにかして脱出するんだろうし。その時にご同伴に預かろう。

 

 そのまま待ち続けて夜中の零時を回った頃。

 

「ぅぅぅ、がおーーーっ! ぎゃおぎゃおっぎゃおーっ、にゃーお、がうぅぅぅっっ」

 

 急にルパンが騒ぎ始めた。見張りの男が慌てて起きると、騒いでいたのがウソの様に静かになったルパン。

 

 なにがあったのか調べる為に、ルパンの入れられている牢が下がって行く。

 

 そして中を確認する為に、見張りの男が鍵を開けて牢の中に入ってルパンの頬を叩いたりするものの、無反応なルパンに気のせいかと思ったのだろう。背中を向けて出て行こうとする見張りの男の背後に音もなくピタリと着いて行くルパン。そして鍵を閉める時に振り向けば、そこにはルパンが居ない。どこへ行ったと探す前にルパンは見張りの男の尻を蹴って牢の中に無理やり入れると、鍵を掛けてしまう。

 

「にょほほほほ。最も原始的な手に引っかかりやがって」

 

「ルパーンっ」

 

 笑ってるルパンに声を掛ける。

 

「あれま子犬ちゃん。そんなとこで何してんの?」

 

「みりゃわかるだろ! 捕まってるんだから助けてよっ」

 

「ほーん。まぁ、そりゃ大変だわなぁ」

 

 壁際にあるボタンをルパンが押すと、おれの入る牢が下に降りてくる。

 

「んで? 不二子の居場所はわかってんのか?」

 

「取り敢えずって所だけど」

 

 なにしろこの場所の全容をおれはまだ把握できていない。首輪をされてる上に、常時見張り付き。此処に来たのもつい数時間前だ。

 

 不二子が今どこに居るのかはわからないが、何処へ来るのかはわかっている。島の中央にある塔だ。

 

 此処からは少し離れている。とは言っても見張りに見つからなければルパンなら楽勝で辿り着けるだろう。

 

「お前にしちゃあ随分弱気じゃねぇか。いったい何があったんだ?」

 

「んなこたぁあとで説明出来るから早くここから出してよ! 脱け出したのバレるよ?」

 

 見張りの男が騒いでいる。騒ぎを聞きつけられるのも時間の問題だ。

 

「んま、しゃあねぇか。取り敢えずここを出ましょ」

 

 ルパンが鍵を開けてくれたことで牢の外に出る。

 

「それで? ルパンともあろうものがどうやってとっ捕まったんだ?」

 

 部屋を出ながら話題を振る。このマモーの島に居る間にルパンに何が起こったのかを知る為だった。

 

「なぁに。チョイっとな」

 

「あ、教える気ないな」

 

「まぁ、それは置いておいて、不二子ちゃんの居場所を突き止めにゃあね」

 

「ま、それもそうだけどさ」

 

 ルパンの返事で聞き出すことを断念し、取り敢えず不二子の居場所を探す為に島の中央に見える塔に向かう事にする。

 

 ただ気になる事があった。何故かルパンから壁の様な物を感じるのだ。傍から見ていればそんな事は無いように思えるだろう普通の会話に聞こえるだろう。だが、どうにもいつもと違うのだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ノワールがなにかをメシに仕込んでいたのはわかっていたものの、不二子ちゃんがヤバいというのなら見えている罠でも敢えて引っ掛かってやるのが俺さまってわけよ。

 

 だからそんなことをまるで無かった様に普段通りのノワールを前にして違和感を覚えた。

 

 ボロボロだったノワールと、今隣に居るノワール。

 

 両者の違いは隣のノワールが俺たちが何時も傍に置いている子犬ちゃんだって事だ。

 

 あのボロボロだったノワールも確かにノワールだ。

 

 ガンマンである時の言葉使いをしている時の。だが、それがある意味演技をしている姿なのを知ってる。普段のアイツは、俺たちの前だけでは普通の子供の様に砕けた言葉使いをする。

 

 もちろんそれだけじゃない。ただ、言葉で言い表せない部分で今隣に居るノワールが本物で、あのボロボロだったノワールが偽物だと直感が告げてくる。

 

 まぁ、天下のルパン三世さまが偽物に騙されてとっ捕まったなんて言えるわけがない。子供の夢は奪わないのが俺さまのポリシーだしな。

 

 にしても。処刑された本物らしい俺に加えて、本物としか思えなかったノワールの偽物。

 

 いったい何がどうなっちまってるのかわからねぇことばっかりだ。

 

「おわっ。なにす――」

 

「しーッ」

 

 いきなりネクタイを掴まれて物影に引っ張られて抗議しようとすると、唇に人指し指を当てられて口を紡がされる。

 

 そして親指を向けながらなにかを指し示すノワール。見ればその先には俺を見張っていた頭の悪そうな大男が辺りを見回しながら歩いていた。

 

 檻から出されたにしては俺たちを探して慌てている様子がない。まるで警備員の様に異常がないか見回っている様にしか見えない。

 

「あ、やべっ」

 

「へ?」

 

 物陰に隠れて様子を見ていたところに、立てかけてあったスコップにぶつかってしまい、そのままスコップは倒れ、静かすぎる周囲にけたたましい物音を立てる。当然こっちも隠れていたのがバレる。

 

「ちょ、何してんの!?」

 

「しゃーねぇだろ! うわぁっ!?」

 

 ノワールに言い返して目の前を通り過ぎた棍棒を避ける。

 

 そのまま見張りの男との鬼ごっこが始まった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 見張りの男に見つかって始まった鬼ごっこ。とにかく逃げるのを優先したことでノワールはルパンとははぐれてしまう。

 

 それはまだ良い。なかよしこよしで逃げ回っても目立ってしまう。ルパンの逃げ足の速さは語るまでもない。自分も逃走術は次元から叩き込まれているからひとりでならどうとでもなる。

 

 しかしどうにも落ち着かない。取り敢えず不二子を探すのは決まりだとして、他に方針が思いつかない。

 

 ルパンを追ってやって来るだろう次元と五エ門と合流するのも手である。なにしろ今の自分は武器を持っていない。

 

 となれば、移動先は船着き場か。まさか飛行機なんて目立つもので来るわけがないだろう。

 

 善は急げ。少なくとも夜が明ければこの島には米軍による空爆が始まるはずだ。確かそうだったはずだ。

 

 その辺りのハッキリとした記憶がないのは辛いところだ。ハッキリ覚えてるのはクライマックスの辺りだからなぁ。いや、この島が爆撃を受けることを覚えているだけでも良しとしよう。

 

 監視カメラを気にしながら一路船着き場を目指して行動を開始する。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 ノワールと離れ離れに逃げ回ったあと、不二子の依頼人であるマモーと出会う。いったいなにを考えているのかわからないとっちゃん坊やから賢者の石を取り返す為に行動を始める。盗んだ品物を取られたままじゃ、ルパンの名が廃るってもんさ。

 

 ナポレオンやちょび髭伍長が生きているわけがない。その謎を調べるために心臓部に忍び込めば案の定中は機械仕掛け。つまりあの遺人たちの謎も何かあるはずだ。

 

 そこで見つけた瓶詰めの赤ん坊を見つければそのトリックもわかってきた。ただ問題はマモーがなにをしようとしているのかが見えてこない。

 

「ルパン!」

 

「よう。不二子の居場所は見つかったか?」

 

「ああ。だが不二子は向こう側の人間だぞ? 助け出してどうする」

 

 現れて、俺の問いにそう答えたノワール。声も身体つきも本人そのものだ。疑って掛からないと偽物と見極めるのは難しい。

 

「冷てぇなぁ。お前さんだって普段は不二子ちゃんに甘やかしてもらってるのによぉ」

 

「それとこれとは話が別だろう」

 

 やれやれといった様子で肩を竦めるノワール。まるで次元みたいな仕草だ。ただ、俺の知ってるノワールがする仕草じゃないのは確かだ。

 

 なんだかんだでノワールは不二子ちゃんとも仲が良いから、危ないときは助けに向かうヤツだからだ。自分が気を許すのはパッパだけだぁってカッコつけてても不二子ちゃんに弱いのは俺とおんなじなんだからあのワンちゃんめ。

 

 だからってわけじゃないが。目の前のノワールは偽物なんだが、ただの偽物じゃないんだろう。そう思えるのは、あの遺人たちや瓶詰めの赤ん坊を見たからだろう。

 

 少しずつ謎が解けてきた。

 

「なぁ、ノワール」

 

「ん? なんだよルパン」

 

「…いや、なんでもねぇよ。取り敢えずだ。取られた物は取り返さにゃあな」

 

「賢者の石か?」

 

「ま、それだけじゃねぇけどもな」

 

 賢者の石もそうだし、不二子ちゃんにしてもそうだし。でもそれだけじゃない。俺からルパン三世という物を盗ろうとしたんだ。落とし前はきっちり着けねぇとな。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 海岸に出て船着き場を探して歩いていく中で出会いたくない背中を見付けてしまった。

 

「んげっ。とっつぁん」

 

「ん? ああっ、貴様ノワール! ここで会ったが百年目! 素直にお縄につけ!!」

 

「そいつは聞けねぇぜとっつぁん!」

 

 とっつぁんに見つかったのは想定外だ。ともかく早くとっつぁんから逃げないとならない。 

 

「おのれ逃がすか! そぉれぃっ」

 

 とっつぁんが掛け声と一緒に何かを投げる音が耳に届いた。

 

「うわっ!?」

 

 そして右足首に何かが引っ掛かって踏み出そうとした足がもつれて転んでしまう。見てみればものの見事に手錠が足首に引っ掛かっていた。

 

「げぇっはっはっは!! さぁ、ルパンたちはどこだ。素直に吐いた方が身のためだぞ」

 

「とっつぁん、それ思いっきり悪役のセリフだぜ? しかもおれ一応未成年なのにいきなり輪っぱは不味いと思うんだけど?」

 

 まぁ、それでどうにかなるのなら最初から輪っぱは飛んでこないだろう。というか、さすがとっつぁん。輪っぱ投げさせたら天下一品のデカだけある。

 

「じゃかしい! お前さんだって国際手配されてる立派な極悪人なんだよ。それより次元と五エ門が来てるんだ。ルパンだってこの島に居るんだろ?」

 

「まぁ、居るには居るけど。悪いことは言わないからさとっつぁん。逃げた方がいいよ?」

 

 確か爆撃に巻き込まれてボロボロになるはずだと思い出す。

 

「時間を稼ごうたってそうはいかんぞ」

 

「親切心で言ってるのになぁ」

 

 後ろ手に輪っぱを嵌められて、その輪っぱはロープで繋がっている。右足の輪っぱもそのままで2本のロープがとっつぁんの手の内だ。

 

 さすがにとっつぁんの見てる前で逃げるのは無理だ。となると、どうにかして五エ門と合流して手錠と首輪を外して貰わなければならない。

 

「それよりさとっつぁん。ここが何処だか知ってる?」

 

「んなもん知らんわい。ルパンあるところにこの銭形アリ! たとえお前たちが何処で悪さをしてようが俺には関係ないわ」

 

「じゃあ面白いことを教えとくよ。ここは世界一の億万長者、ハワード・ロックウッドの島さ」

 

「なぁるほど。いかにもお前たちが食いつきそうな獲物がありそうだな」

 

「タンマタンマ。結論は早いぜとっつぁん」

 

「なに?」

 

 結論を出そうとするとっつぁんを宥め、続きを話す。

 

「おれたちがここに居るのは盗みに来たわけじゃない。そもそも本当のワルはハワード・ロックウッドだ。今回の中国、ルーマニア、エジプトの仕事は不二子を経由してハワード・ロックウッドが出したものだ。ヤツはソ連の書記長とアメリカ大統領相手に、生物学・細胞学のありとあらゆる成果と共にルパンが盗んだ品物を要求した。要求が果たされない場合、核攻撃するという脅しを掛けてな」

 

「な、なにを言い出すかと思えば。そんなデタラメで騙そうたってそうはいかんぞ!」

 

 核攻撃という言葉を聞いて動揺するとっつぁん。それでもさすがにスケールがぶっ飛び過ぎていて信じられないのは仕方がない。

 

「ハワード・ロックウッドがホークの件に絡んでるかもしれないとしてもか?」

 

「なんだと?」

 

 とっつぁんの気配が変わった。

 

「ハワード・ロックウッドは世を忍ぶ仮の名前で、本当の名前はマモーって言うんだが、マモーはコピー人間製造法を使ってルパンのコピーを作り出した。そのコピーはとっつぁんの知っての通り処刑された」

 

「待て待て待て。ルパンのコピーだと? 確かにあの死体はルパンだった。そいつは断言できる」

 

「だからさ。ルパンそっくりの偽物じゃない。ルパンそのものを複製したもう一人のルパンだったのさ。だからとっつぁんも本物だと思うし、鑑定士も本物だと判断するしかないのさ」

 

 クローンという言葉さえ近年知られ始めたばかりだ。本物なのに本物じゃないという概念を説明するのは難しい。

 

「ともかく。その技術があれば死んだ人間も甦らせる事も可能だってことさ」

 

「死んだ人間……。ホークの事か?」

 

「確証はないけどな。ともかく相手は自分の思い通りにならなけりゃ核ミサイルで攻撃するなんていうヤバいヤツだってのは理解してくれ。その上で取り引きしないかとっつぁん」

 

「なに? 取り引きだと?」

 

「核ミサイルで世界を核の炎に包もうなんてヤバいヤツを捕まえる方が優先順位が上だってのはわかるだろ? だからこの件が片付くまで一時休戦ってのはどう?」

 

「ふん。今の情報を喋った代わりに見逃せって事か?」

 

「邪魔をしないでくれるだけで良いかなぁなんて」

 

 とっつぁんの行動力は未知数だからね。出来れば邪魔をされない方がいい。ていうかそれだけで良い。

 

「ぐぅぅぅぬぬぬ。確かにお前の言葉通りならそれも已む無しだが。証拠がないだろ証拠が」

 

 とはいえ相手の危険度は理解してくれたようだ。こちらの言葉を考慮するくらいだ。

 

「まぁまぁ。取り敢えず証拠は探すっきゃないでしょ」

 

 さすがに現状でとっつぁんを納得させられる証拠はない。核ミサイルにしたってコロンビアの遺跡の方だ。だがそれでもクローンに関する情報くらいはあるはずだ。不二子に絶滅した蝶をクローニングして見せた事からもその手の技術研究所がここにあるのは確実だ。

 

 早くしないと米軍の空爆も始まる。

 

「時間もないから早くした方が良いよとっつぁん」

 

「ぐむむむむ。仕方がない。しかし盗人の手助けはせんぞ。事が済み次第必ずお前たちを逮捕するぞ」

 

「上出来だ。世界が滅んじゃ盗みも鬼ごっこも出来やしないからな」

 

 強力な助っ人を得た。とっつぁんが居るルパン一家は負ける気がしないね。

 

「て、ちょっと。手錠外してよとっつぁん」

 

「ルパンと同じで油断もスキもないからな。証拠が見つかるまで手錠はそのままだ」

 

「そりゃないぜとっつぁ~ん」

 

 取り敢えず何処かで隙を見て手錠を外す事から考えよう。

 

 

 

 

to be continued…

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