---相沢祐介---
涼花の問題…伊集院さんが、涼花の両親と話し合いをして、今後を決めてくれた。涼花が出て行くと言うまで、俺の部屋で共同生活をする。梅のお世話係というバイトをして貰い、家賃はチャラにし、来年度から、俺や麻衣と同じ通信制の高校へ入学し、高校卒業だけはすることになったようだ。
「ありがとうございます、お兄ちゃん」
って、抱きつく涼花。負けじと抱きつく梅。役得感が満載である。で、来年度から、やはり高校生の花ちゃんも、ここで共同生活するそうだ。同じ通信制の高校へ入学してだ。
「兄さん…お世話になります」
って、三つ指着いて頭を下げて来た。梅は負けずと三つ指を着いたのだが、何故かでん繰り返しをして、頭を横に傾けながら、遊んでいるみたいだ。
そして、ディナーショーの当日になった。緊張する麻衣の肩を揉んであげる。
「ありがとう、祐介…」
ディナーショーには涼花も、特別ゲストとして参加するそうだ。親にバレるとマズいから、実の兄にゴースト作者になって貰っていたが、もうバレても問題がなくなった為、永遠野誓先生として参加するそうだ。
「お兄ちゃん…どんな服にすれば良いのかな?」
「中学生らしく制服でいいんじゃないか?下手に着飾るとチャラく見えるし」
「そうか…うん、お兄ちゃんに訊いて良かった」
って、麻衣さんは女優らしくドレスらしい。
「祐介の産みの母親の為のドレスだって」
なんか嬉しそうな麻衣さん。
で、花ちゃんと俺は、梅の面倒を見るので、不参加である。遥は片思いの気持ちを書きたいから、一人きりのイブを迎えるそうだ。
「相変わらず、遥はおかしいなぁ」
って、ドレス姿の詩羽さん。俺の部屋は着替えルーム化していた。
「あと1時間かぁ…」
麻衣さんが時計を気にしだした。
「平常心だよ、麻衣」
「そうだよね、祐介…でも、緊張するわ。ワンテイクでの長回し撮影前みたいに…しかも、台本は無いし」
トークショウだもの、台本は無い。司会の人が話を振るらしいけど。
---羽島伊月---
ドレスコード…う~ん…背広の上下にネクタイ、男の身だしなみであるから、持っているが…
ちっひーのドレス姿…俺とみゃーが固まっている。
「ちっひーって、女の子だったの?」
「あぁ…」
「兄さん、どうかな?ドレスなんか、着慣れないから…」
かわいいと思うけど…どう接すればいいんだ?祐介から、ちっひーの分の招待券を貰った時は、何も気にしなかったのだが…アイツ、ちっひーの女の子デビューを狙っていたのか?
「祐介君がプレゼントしてくれたんだよ」
嬉しそうなちっひー。アイツ…ちっひーを意識してしまう俺。みゃーは固まったままである。それだけの衝撃的な姿であった。
---相沢祐介---
そして、開演…俺の部屋に静寂が訪れた。花ちゃん、俺、梅だけの広い部屋。さて、パーティーの準備をするかな。テーブルに白いテーブルクロスを広げる。花ちゃんと梅が、クリスマスツリーの飾り付けをしていく。料理を運び込んでもらって、予め用意しておいた保温庫へ収納していく。
呼び鈴が鳴り、応対しに行くと、紗霧ちゃんがいた。
「兄さんは…ショーを見てくるそうです…」
恥ずかしそうに俯く紗霧ちゃん。
「あっ!紗霧師匠!」
梅が紗霧ちゃんにタックルをする。精神年齢は下だが、体格は遥か上の梅。紗霧ちゃんが押し倒されている。
「梅!」
「あっ!ごめんなさい。嬉しくて…」
目に涙を一杯溜め込む梅。
「私も嬉しいよ。身構えたんだけど、今日も押し倒されちゃった」
笑顔の紗霧ちゃん。部屋へ入って貰う。
「すごい~」
窓に走り寄り、夜景を見始めた。
「紗霧、手伝ってくれ」
って、花ちゃん。
「うん。梅ちゃん、飾り付けをしよ~」
「はぁ~い、師匠」
飾り付けも終わり、梅を紗霧ちゃん達にまかせ、執筆活動に戻った。たまには短編にするかな。三人の妖精の話とか…
◇
リビングが騒がしくなってきた。終わったのかな?リビングに出ると、麻衣達が戻って来ていた。
「祐介君…ありがとう…」
麻衣が抱きついて来た。だけど、俺の視線の先にはドレス姿のちっひーの姿が…伊月さんの目が恐い。サプライズプレゼントが裏目に出たのか?
「おい!祐介…」
俺に近づいて来た伊月さん。
「麻衣…お前…」
麻衣がやらかしたのか?
「婚約発表してあげたの」
って、嬉しそうな麻衣。あっ!まさか伊月さんと…
「兄さん…ありがとう、祐介君」
妹物の大家、義妹と婚約…ネットが荒れていそうだ。
「なんてことを…」
凹んでいる伊月さん。腕にちっひーが抱きついている。自然が一番だよな。
「祐介…お前の婚約発表は俺がしてやる!」
って、復活したり凹んだりを繰り返す伊月さん。花ちゃん達が、保温庫から料理を出している。冷蔵庫からは飲み物をだ。
「そういや、涼花は、正体をバラしたのか?」
「はい、お兄ちゃん」
肩の荷が下ろせたような表情の涼花。
---永見 祐---
寝耳に水な事態…涼花がカミングアウト発言をしたようだ。
「私が永遠野誓です。ペンネームを奪われて、新作が出せないでいました。この度、出版社を移籍し、新作が出せるようになりました」
って、涼花の映像と共に、発言している動画が、ネットで流れていた。
「祐…どういうこと?」
舞が驚いた表情で固まっていた。
「二人で永遠野誓では無いの?」
俺もそう思っていたんだけど…って、言うか…相沢貞治氏と桜島麻衣さんとのトークショウだって?大物作家と今をときめく若手女優と…聞いていないぞ!
涼花のスマホへ連絡をするが、現在使われていないって…どういうことだ?混乱する俺。
「ねぇ、祐!どういうことよ!」
って、言われても…玄関で音がした。涼花か?玄関に向かうと、俺を睨む両親の姿があった。
---相沢祐介---
朝、目覚めるとテーブルで寝ていた。ごちそうを食べて、寝てしまったようだ。隣で梅が寝ている。逆サイドには涼花がいる。二人共疲れていたもんなぁ。起きて、シャワーを浴びに行くと、麻衣がいた。
「おはよう、祐介」
「おはよう…」
二人でジェットバスで、身体を暖める。暖まると、脱衣所で水気を取り、愛の語らいをし、着衣をした。
「あれ?着信がある。誰だ?あっ!」
着信相手を見て固まる麻衣。
「どうしたんだ?」
「えぇっと…義理の妹から…昨夜のイベントは効果あったみたい。彼女も私が見えなかったから…」
家族にも見えなかったのか…
「どうしたの?…これから?…もう、あそこには住んでいないわ。失踪した落ち目の女優だったから…連絡?何度もしたわよ。無視したのは、のどか!あなたの方よ」
ピリピリした表情の麻衣。後から抱きつく。俺の頬に自分の頬を重ねて来た麻衣。
「嘘じゃないわよ…今日?ちょっと待ってね。ねぇ、祐介…妹がここに来たいって。いい?」
「麻衣の妹だろ?会わないと」
「ありがとう…祐介…わかったわ、あなた一人で来なさい。事務所は移籍したから…なんで?だって、引退扱いだったからよ」
プンプンした表情で通話を切った麻衣。
「なんだって、言うんだ?」
「昨夜、ネットで私のトークショウの記事を見て、何をしているのって、怒っていたのよ。今まで、存在すら忘れていたのに…」
それはプンプンするな。
「じゃ、存在が復活したんだな、麻衣」
「祐介のおかげたよ。一生、傍にいるからね。アンタの骨を拾うのは、私の重要任務だし」
任務?
「絶対に祐介よりも1週間長く生きてやる。骨を拾う役目は誰にも譲らないよ」
俺の唇に自分の唇を重ねて来た麻衣…
---豊浜 のどか---
なんで、今までお姉ちゃんのことを、忘れていたのだろうか。スマホの着信履歴に、お姉ちゃんの名前が並んでいた。見落とすことが無い分量だし…
皆に忘れられ、引退させられ、死んだことにされたお姉ちゃん。それが、イブの奇跡で、生存確認されたのだった。大物作家の相沢貞治氏、今売り出し中の若手作家である永遠野誓と三人での奇跡のトークショウだったそうだ。相沢貞治氏も永遠野誓も公に姿を出すのは初めてだったらしい。そんな二人に混じってお姉ちゃんが…
お姉ちゃんに言われた場所に急いだ。昨夜のイベントのあったホテルにいるそうだ。新居の場所を訊かないとなぁ。って、隣に彼氏みたいのがいたようだ。確認していたし。悪い虫だったら、退治しないと…私の大切なお姉ちゃんなんだから…
ホテルのラウンジに着き、お姉ちゃんに連絡をすると、迎えに来てくれた。
「彼氏とホテル?」
「まぁ、そうなるけど…」
「お姉ちゃん、なんで男とホテル?」
歩きながら質問をする。
「ホテルって言っても、宿泊じゃないのよ、のどか」
宿泊では無い?休憩かな?そんなにお尻の軽いお姉ちゃんでは無かったはずだ。エレベーターに乗り込み、上に向かう。エレベーターを降りると、目の前のドアをカードキーで開けて入っていく。ここって…後に付いて、部屋に入る。目の前には大パノラマが展開していた。全面窓…スゴい。ここって、最高級スィートじゃ無いのか?
「妹の豊浜のどかよ、祐介」
「相沢祐介です」
ソース顔の冴えなそうな男が、お姉ちゃんの隣にいる。
「お姉ちゃんを、返しなさいよ!どうせ、金持ちのボンボンなんでしょ!」
パチーン!
えっ…姉に頬を叩かれた。
「私の恩人を悪く言うのであれば、のどかとは縁を切る」
なんで?
「お姉ちゃん…何でよ~!」
「彼は、身を投げようとした私を救ってくれたの。誰からも女優の桜島麻衣と認識されず、途方に暮れていた私を、彼は助けてくれた。寄り添ってくれた。そして、スポットライトの前に、再び立たせてくれた恩人なの。その彼を悪く言うのであれば、縁を切るわ」
姉を支えてくれていたのか…私でさえ、忘れていた姉を…
「麻衣、部屋で二人で話せ。梅が固まっている」
「あぁ、ゴメン。梅ちゃん、ごめんね」
唖然としている少女を抱き締めて、頭を撫でてリラックスさせている姉。私にはビンタして、その差は何?
「のどか、こっちへ来なさい」
姉の冷たい視線…促されるように、姉と共に部屋へと入った。
---永見祐---
両親に絞られた。涼花が両親に告白をして、家を出たそうだ。
「実の妹に何をしているんだ?彼女がいるのに、妹に手を出すって、どういうことだ?」
舞が怯えた視線を俺に送って来ている。
「涼花ちゃんに手を出したの?なんで?私には手を出さないのに…」
舞の言葉で、更に激高する両親。涼花は家を出て、信頼出来る処にいるそうだ。
「まったく、お前と来たら…」
何も言い返せない。魔が差しただけなのに…
「涼花は今後、メイドをしながら小説を書くそうだよ。涼花の雇い主は、通信制の高校へ通わせてくれるそうだ」
メイド…妄想が広がる言葉だ。雇い主に調教されるのか?俺の妹が…
「涼花はどこにいるんだ?連れ戻しにいかないと」
「お前!涼花に今後、近づくな!その彼女と一緒になりなさい!」
えっ?舞と?舞を見ると首を横に振っているのだが…
---相沢祐介---
梅が俺に寄りかかって、お昼寝をしている。目の前では、涼花が新作を書いている。花ちゃんは俺に寄りかかって、ぼぉ~っとしている。三人三様である。
カチャ!
麻衣とその妹が、話が着いたのか、部屋から出て来た。
「先程はごめんなさい」
俺に頭を下げて来た、麻衣の妹。
「いいよ。あぁいうのは、慣れているから」
「妹の豊浜のどかだ。父の再婚相手の連れ子だよ」
って、麻衣さん。
「梅ちゃん、寝ちゃったのか?」
「昨日、ハリキリすぎたようだ。紗霧ちゃんが来ただろ?だから、余計に」
梅のお絵かきの師匠である紗霧ちゃん。
「花ちゃんも気を使いすぎたようだ。悪いけど、もう少し、このままでいる」
「わかったわ。祐介、珈琲は飲むでしょ?」
「頼む」
「兄さん…」
「なんだ、花ちゃん」
花ちゃんの頭に頬を重ねた。
「兄さんが兄さんであって良かった」
「なんだ、それは?」
「深い意味は無い。さてと、私も書くかな。バトル物では無い新作をだ」
花ちゃんも、兄妹物に走るらしい。
「あの…」
のどかに声を掛けられた。
「どうした?」
「たまに来てもいいですか?」
「麻衣は売れっ子女優だから、たまに居ないけど」
「かまいません。姉が惹かれた訳が分かった気がします」
どんな訳だ?モテない選手権の優勝者の俺だぞ。
「のどか、私の留守中、頼む。祐介が卑屈になっている時は、壊れそうな時だから」
俺、壊れそうなのか?梅がいるんだ、壊れる訳にはいかない。
「はい、お姉ちゃん」
姉と妹の良い関係。梅と姉ちゃんも、あぁだったら、良かったのに…