世界で一番●●な君へ   作:もっち~!

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珍客

---相沢祐介---

 

また、ラノベ武道会が開催らしい。納期は2週間の早書きバトルだと言う。花ちゃんと涼花は、参加しないようだ。2週間はキツいだろう。

 

今日は新年会である。俺の部屋を開放して、皆でわいわいしている。

 

「俺もパスだな。2週間は無理だ」

 

って、伊月さん。春斗さんもパスらしい。いや、春斗さんは新年会もパスして、Wピース先生とハワイらしい。

 

「私は参加よ!マサムネ、ユースケ、掛かって来なさい!」

 

って、エルフ先生。

 

俺とマサムネ先生も参加である。

 

「没原稿バトルの予感…」

 

「同じく…」

 

読み切りを書く時間が無い、俺とマサムネ先生。過去に書いた没原稿から、出す予定である。

 

「おい!祐介、婚約はまだしないのかっ!」

 

って、伊月さん。婚約発表リベンジに、燃えているようだ。

 

「相手がいませんよ」

 

いるにはいるんだが…遥がなぁ…麻衣も忙しくなってきているし。

 

「う~ん、で、本命はどっちだ?」

 

「見た目が同じですからね。難しいです」

 

違いは性格と胸の大きさ程度だ。

 

「マジに、双子かと思いましたよ」

 

って、麻衣の義妹ののどか。

 

「遥は止めておけ、片思いラブの気持ちが知りたいから、片思いのままがいいって、イカレているぞ」

 

って、詩羽さん。そうなんだが…

 

「どっちにしても、麻衣は売れっ子女優だし、当分先ですよ」

 

「妹枠組だったら、誰がいいんですか?」

 

って、ちっひー。伊月さんと婚約発表したことで、垢抜けてきたようで、ゴシップネタに喰い付くようになっていた。

 

「う~ん、一番歳上の花ちゃんかな。涼花と梅は妹だし」

 

「私ですか…」

 

真っ赤な顔で恥ずかしそうに俯いている。かわいいと思う。同じことを言っても涼花と梅はそうはならないし。

 

 

新年会が終わり、皆が帰っていった後、

 

「兄さん…いや、祐介さん…」

 

「どうしたんだ、花ちゃん」

 

「いえ…なんでも無いですよ」

 

何時ものように、彼女の頭を抱き締めたあげると、ピクッと身体が震えたような。

 

「うん?どうしたんだ?」

 

「いえ…ちょっと、意識してしまって…なんか舞い上がってしまって。おかしいなぁ」

 

俺は花ちゃんを俺の部屋へ招き入れた。

 

 

気が晴れたのか、花ちゃんが眠っている。お姫様抱っこをして、彼女の部屋のベッドへと寝かしつけた。

 

新作の短編でも書くかな。少し背伸びをしてみた女の子のお話とか。0時を回った頃、

 

「信じられない…」

 

と怒りの声を上げて、部屋から出て来た涼花。

 

「どうしたんだ?」

 

「兄が永遠野誓として、ラノベ武道会に殴り込みを掛けるみたいなんです」

 

ネットを見ると炎上していた。『本物は俺だ』って名乗り出て、涼花を偽物呼ばわりし、挙げ句に名誉毀損で訴えると書かれていた。

 

「明日、顧問弁護士の先生に連絡をしてみる。だから、相手にはするな」

 

「うん…お兄ちゃん…」

 

俺の腕に抱きつき、泣き始めた涼花。悔しいんだろうな。だけど、涼花の本物性は揺らがないと思うんんだけど…

 

「そもそも…涼花の兄って、デビューしているのか?」

 

「えっ!あぁ、…してませんね」

 

泣き止んだ涼花。少し笑みが見える。俺の言いたいことをが、分かったようだ。

 

「勇気有るなぁ。デビュー前なのに、プロでも参加を悩む、ラノベ武道会に参加とは」

 

俺とマサムネ先生は早書きの上、没には慣れている方なので、ダメージが少ないけど、普通の作家だとエルフ先生辺りしか応募しないと思う。納期が少なすぎるのだ。

 

その上、プロ作家では無いと、ある手順を知らないはずである。

 

「あぁ…そうか。デビュー前だから、担当さんへ原稿の送り方を知らないのか」

 

原稿を送るアドレスは決まっている。連絡用のスマホに、PCで作成した作品をメールでなんか送信出来ない。それは、PCのメールにしても同様である。

 

出版社にもよるが、作家ごとに原稿転送用サーバーのアドレスが有り、そこに転送しないと、出版社での作業、印刷や校正などのシステムとヤリトリが難しいらしい。

 

が、デビュー前の作家が送るとしたら、普段連絡に使っているメアドしか知らないはずである。実際、涼花の兄は担当さんとスマホでの連絡はしたことがあるが、原稿を送ったことは無いと聞いたことがある。

 

「大目玉食らうかな?」

 

「どうだろうな。もしかすると、一般応募用のアドレスかもしれないなぁ」

 

一般参加も出来るので、一般向けの送信先アドレスが、ネットに掲示されているし。

 

 

 

---永見祐---

 

書き上がった。渾身の自信作である。よし、送信しよう。担当さんのメアドに送信した。これで良いはずだ。

 

しばらくすると、担当さんから返信が来た。

 

『これは何?あなたは本物?』

 

って…なんでだ?

 

『永遠野誓です。ラノベ武道会用の原稿です』

 

と返信した。

 

『なんで、このアドレスに送るの?』

 

えっ?このアドレスで無いのか?原稿送信用のアドレスは違うのか…マズい。そうだ、舞に聞くか。同じ出版社だし。

 

『妹さんに訊いていないの?作家ごとにアドレスが違うのよ』

 

って…マズいだろう。それは…涼花に連絡を取る術が無い。おぉ!ラノベ武道会のページに投稿用のアドレスが有るじゃ無いか。ここに投稿だな。

 

 

結果発表…無い…俺の作品が無い…どうしてだ?あっ!

 

『一般応募として、永遠野誓先生のペンネームで、作品が投稿されていましたが、偽物と判断して、没にしました』

 

って…読んでも貰えなかったのか…渾身の自信作なのに…

 

優勝はユースケ先生だった。アイツ、これで2連勝かよ~!

 

 

 

---相沢祐介---

 

はぁい?、優勝していた。あれ?なんでだ?

 

「没ネタだったのに…なんで?」

 

タイトルを見て…固まる俺。

 

「しまった。新作の短編を送信していた…」

 

「ご愁傷様」

 

って、麻衣が笑顔で珈琲を淹れてくれている。

 

「お兄ちゃんって、ドジな時って有るよね~」

 

って、涼花。

 

「うっ!兄さん…これって…」

 

顔を真っ赤にしている花ちゃん。

 

「あれあれ?ムラマサ先生がモデルなんですか?」

 

のどかが花ちゃんをツンツンしている。

 

「こ、こ、こ、これは…ダメです!一生の不覚かもしれない」

 

たわいのないことしか書いていないのだが、花ちゃんの脳裏には、他人に自慢したくない想い出がリピートしているようだ。顔と耳が茹で上がり、涙目だし…

 

「そうだ!涼花ちゃん。永遠野誓のアニメの歌を唄う事になったんだよ」

 

想い出したように、のどかが涼花に報告している。のどかはアイドルグループの一員として歌やダンスをしているそうだ。グループ名は…あっ、忘れた。

 

「のどかさんのグループが歌ってくれるんですか。嬉しいです」

 

永遠野誓のペンネームは涼花が勝ち取った。なぜならば、涼花が続編を刊行したからだ。そもそも、涼花を泣かした偽永遠野先生では、妹の気持ちは描けないであろう。いや、俺だって書ける自信が無いものな。

 

「作画は柏木先生だし、後は声優さんが、誰になるかだね」

 

涼花が麻衣を見ている。

 

「私?かわいい妹の声は無理かな」

 

「お兄ちゃんが、主人公の声をやって欲しいなぁ」

 

って、麻衣がダメになり、今度は俺に無茶振りをしている。

 

「無理無理…マイクに向かって話せないし」

 

自称引きこもりの俺には無理である。録音スタジオに行けないし。

 

フロントから内線電話が掛かってきた。噂をすれば、柏木エリ先生が来たようだ。入室の許可を出した。暫くすると、部屋の呼び鈴が鳴り、麻衣が応対すると、エリさんと知らない少女がいた。

 

「今日は、アニメで主人公である妹役の声担当の水無月 桜ちゃんを、連れて来ました」

 

と自慢げなエリさん。

 

「初めまして、水無月 桜です。って、永遠野先生は、ホテル住まいなんですか?」

 

「違います。お兄ちゃんの部屋に居候ですよ」

 

速効で否定する涼花。

 

「永遠野先生のお兄様がホテル住まいなんですか?」

 

桜が部屋を見回している。そして、俺と目が合い、近づいて来た。

 

「永遠野先生のお兄様ですか?」

 

「実際の兄では無いですけど…」

 

「はぁい?どんな関係ですか?まさか、ハーレム王とか…」

 

まぁ、俺以外全員が女性だから、ハーレム属性かもしれないが…

 

「あなた、失礼ね!彼はそんなチンケな存在では無いわよ」

 

って、麻衣が、何かのヒロインぽく乱入してきた。

 

「って、桜島麻衣さんですよね…わぁ~い。大ファンなんです。サインをください」

 

「プライベート空間で、サインはしません」

 

女性同士のバトルもアリかな。メモしておこう。アイデアは身近に転がっている物だ。って、言うか…桜って言葉を聞く度に、梅が固まって、周囲を見回している。まずいなぁ。

 

「花ちゃん、頼みがある。梅を部屋に入れてくれるかな」

 

「あっ!そういうことか。わかった。梅ちゃんおいで!」

 

花ちゃんは事態を素早く理解してくれた。やはり、頼りになる妹枠は花ちゃんだな。

 

「うん…」

 

花ちゃんに抱きつくようにして、梅が部屋に入っていった。

 

「なんで、あの子、私を怖がっているの?」

 

桜が不思議そうに訊いて来た。

 

「アイツの実の姉は桜って言ってね、その姉に虐められて、心を壊してしまったんだよ」

 

「詳しいわねぇ」

 

「俺の新しい母親の連れ子だよ」

 

「義理の妹さん…」

 

「そういうことだ。で、何しに来たんだ?」

 

声優の桜に訊いた。だけど、俺の質問をスルーし、

 

「柏木先生、あのエラそうなハーレム王は誰ですか?」

 

って…ハーレム王が確定か?

 

「この部屋のオーナーのユースケ先生よ」

 

訳知り顔のエリさん。まぁ、大体の事情は知っているはずだ。

 

「ユースケ先生って、あのラノベ武道会を2連勝している?」

 

「そうよ。顔を売っておきなさい。あぁ、彼女になるのは無理だからね」

 

「彼女?いなそうに見えるけど…」

 

ぇぇ、どうせ、ソース顔ですから…

 

「あら?私の彼氏になんて失礼ない事を言うのかな?」

 

って、不機嫌そうに言う麻衣。売れっ子女優って、彼氏がいちゃマズい立場で無いのか?

 

「えっ!麻衣さんの彼氏が、ユースケ先生?!大スクープですねぇ~」

 

「あぁ、桜ちゃん、バラしたら、敵が多くなるわよ。今後仕事が出来なくなったりしてね」

 

エリさんが脅すような小悪魔チックな笑顔になっている。

 

「彼に、そんな権力あるんですか?」

 

「考えてもみなさい。原作者が、声優に水無月桜だけは使わないでくれって、呟けばいいのよ。永遠野先生のお兄さん枠のユースケ先生を敵にすると、どうなるかしらねぇ」

 

って、脅すように言うエリさん。なるほど、そういう脅し方も有るのか。

 

「そ、そ、それは…恐いです。そんなことしないでください…あっ!どかちゃんだぁ~」

 

この桜って子は、話題の切り替えが上手いのか?それとも、注意力散漫なのか?どかちゃんとは、「のどか」だから、「どかちゃん」が愛称らしい。

 

「私の義理の兄になるかもしれないんだから、秘密保持で、お願いね」

 

「義理の兄?えっ!マジで、桜島麻衣さんと付き合っているの…」

 

まぁ、モテない王が若手売れっ子女優の彼氏って、有り得ない設定ではあるけど…のどかが麻衣の妹って、有名のようだ。

 

「まぁ、この顔だし。お姉ちゃん以外に、物好きはいないかな」

 

って、のどか。

 

「そんなこと無いわよ。HAL先生がライバルかな」

 

って、苦笑いしている麻衣。確かに、遥はライバルになるのだろうな。一卵性双生児って言っても信じるのでは無いだろうか?

 

そして、そんな話していると、その遥がやって来た。固まる桜とのどか。

 

「麻衣さんって、一卵性双生児なんですか…」

 

って、驚いている。

 

「違います。私は円城寺遥って言います」

 

速効で、否定する遥。

 

「久しぶりに、祐介君に逢いたくなって、来ちゃった」

 

って、この強心臓は、どこから生えたのだろうか?麻衣がいるのに、甘えるように言い寄ってきた。

 

「片思いシンドロームは治ったのか?」

 

「病気じゃないのよ。治る治らないの話では無いから。あぁ、でもね、だいぶ片思いの心境が分かってきたわ」

 

桜と遥以外、皆苦笑い状態である。桜は固まっているし。

 

「ねぇねぇ、見分け方はあるの?」

 

のどかが小声で訊いて来た。麻衣大好き人間の、のどかでも、見分けが付かないらしい。

 

「胸が大きい方が麻衣だよ。問題はそこ以外、見た目で見分けが付かないことだ」

 

「う~ん…似すぎているってレベルで無くて、そっくりよね…これは強敵だわな」

 

義姉のライバル宣言の意味がわかったらしい、のどか。だが、問題は似ている事ではなく、遥の恋愛感だと思うんだけど…

 

「題材的には面白そうなのよね。彼女とソックリな彼女との間で揺れる彼氏の物語とか…」

 

エリさんが、俺にそう言って来た。

 

「当事者として、笑えない話ですよ」

 

胸以外に、香りも違うのだが、そんなことは言え無いよな。俺は、その辺りで判断しているのだが。

 

「まぁ、当事者だとそうかもね。HAL先生の恋愛感だけでも、お話になりそうだし」

 

エリさんの発言に、我関せずの遥。

 

「ねぇ、祐介君」

 

麻衣の目の前で俺の腕に抱き付き、俺の肩に頬を重ねて来た。

 

「うぅぅぅぅ…」

 

麻衣が唸っている。お怒りのようだが、遥は動じずに、遥の世界にいるようだ。

 

「スゴい…お姉ちゃんの目の前で…何、あの強心臓は…」

 

のどかが本当に驚いている。

 

「祐介くん…一人で何を想っていたの?」

 

一人で?麻衣がいるのに、そう訊くのか?

 

「ごほん!」

 

麻衣が咳払いするも、麻衣のことを、気にしていないようだ。

 

「ねぇ、祐介君の部屋で語り合いたい」

 

って…誰か、助けて下さい。麻衣の睨むような視線が、遥から俺に移動してきた。俺が悪いのか?

 

「遥…俺、一人で無いから…麻衣もいるし、梅もいる、花ちゃんと涼花もいるからさぁ」

 

「そうか…ねぇ、祐介君も一人暮らししようよ!」

 

はぁい?なんだ、その提案は?

 

「やはり、祐介君も片思いの気持ちを、大切にして欲しいの」

 

「はぁ~」

 

麻衣が大きく溜息を吐き、ソファーに腰を下ろした。遥の世界に割り込めないと、悟ったようだ。

 

「うわぁ~、強心臓だな…」

 

のどかが、驚き続けている。

 

「スゴい…これが片思いの語り部のHAL先生なんだ」

 

って、桜が感動しているし。遥の病気?暴走?は、この先どうなるんだ?

 

 

 

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