学校を休み始めて1週間後、学校へ登校した。教室に入っても、誰も俺を見ようとしていない。完全無視の方針らしい。まぁ、いいか。
教室に入ってきた担任も、俺はいないものとして、扱うようで、俺の方を見ようともしない。まぁ、穏便に…卒業出来ればいいかな。転入試験だけは避けたいから。
翌日、俺はクラス替えされた。隔離クラス行きだそうだ。まぁ、いいや。隔離クラス、生徒は個室に入り、クラスメイトとの接触も出来ないようだ。問題を起こさない為の対処だろうな。授業は、個室に設置されているタブレットで行うようで、教師も接触しないようだ。
家に帰り、母には報告する。隔離学級の実態についてだ。母は俺に潜入取材をするように言ってきた。母の働く出版社の系列新聞、系列テレビ局で、問題提起をするらしい。転入試験免除の上、バイト料も貰えるので、俺的にはまったく問題は無いし。
「お前、隔離学級にされ、嬉しそうだな」
って、母。
「あぁ、他人の目を気にしないでいいから」
嬉しいというか、楽ではある。授業中に妄想しても、怒られないし。
◇
週末、意外な訪問者が来た。応対に出ると、俺の憧れのマドンナである円城寺遥だった。こいつ、なんで来たんだ?
「ねぇ、学校を辞めたの?」
俺の部屋に連れ込むと、開口一番にそう言われた。
「辞めていないよ。毎日通っている。クラス替えで、隔離学級にいるよ」
驚いた顔の遥。
コンコン!
ドアがノックされ、飲み物をお盆に載せて、姉が部屋に入って来た。テーブルの上に飲み物を3つ置き、姉もテーブル席に座った。姉の姿を見て、遥が怯えている。姉って、スケバン系なのか?それだと…妄想が加速する。プールしておこう。
「祐介に客とは珍しいわね。それも女の子って…」
姉が遥を睨んでいる。
「姉さん…円城寺がビビっているんだが…」
つい、口を挟んだ俺。
「あら、そう?産まれつき、こういう目付きなのよ」
そんな訳無いだろうに。
「あの…隔離学級にクラス替えされたのって、私のせい?」
「それは違う。学校が俺を飼い殺しにしたいだけだ。だから、お前は気にするな」
慣れると隔離学級は天国のような場所である。妄想し放題で、バイト代まで貰えるし。
「それならいいけど…」
うん?姉の視線が本棚にロックオンしているようだ。
「姉さん、ラノベに興味あるの?」
「え?!まぁ…ねぇ」
「読みたい本、持っていっていいよ。但し、返してね」
「わかったわ」
本棚の前に移動した姉が、ラノベ本を物色して、何冊か手にした。
「祐介君は、本が好きなの?」
遥に訊かれた。
「ライトノベルってジャンルの本が好きだよ」
「そうなんだ」
遥も本棚の前に立ち。物色している。興味あるのか?遥は俺の作品を手に取り、
「これ、借りてもいい?」
「あぁ、返してくれるなら」
「ありがとう」
にっこりと笑顔を返して来た。
遥が帰り、本棚をチェックすると、姉はHALという作者の本も持っていったようだ。この作者の作品は、片思いの男子を遠くで見ているだけ、という少女の甘酸っぱい、ムズムズ感が満載されている。
さてと、妄想するかな。円城寺で妄想もいいかもしれない。姉の前でプレイを見せつけるとか…
---相沢桜---
祐介を異性として認識して以来、初めて祐介の部屋に入った。所謂オタク部屋みたいだ。本棚にはラノベ本だけが入っていて、所々にフィギュアが飾られていた。本棚には私の作品が大切に収まっていたし。
まぁ、私の部屋も似た感じである。ラノベ作家だし…そう考えた時に、祐介と母の会話がフィードバックしてきた。
『この先、専業でいいかな?』
って…まさか、祐介も同業者なのか?ふと、本棚に目をやると、ユースケという作者のラノベが私を引き寄せていた。手に取り、読書し始めた、
こ、こ、これって…思い当たる場面が多々ある。まさか…一気に既刊全巻を読み進めていく。ゆ、ゆ、祐介…こんな風に思っていたのね。
オリ主は姉と入浴し、シャワーを浴びながら愛し合い…耳が熱くなっていく。そのシーンの登場人物を、自分と祐介に置き換えてしまったから。
たぶん、ユースケは祐介なのだろう。母に確認のメッセージを入れた。
『祐介には内緒にしてね。ビンゴよ』
って返信が戻って来た。うっ…こんな赤裸々な妄想を、発表していたの。マズい、今まで以上に祐介の顔を見られない気がする。
って、言うか。母は知っていたんだよね。私と祐介の担当編集者だし。家庭に仕事を持ち込まない敏腕編集者。全然、素振りを見せない母に驚愕した。
---円城寺遥---
祐介君の部屋の本棚…ラノベの本がたくさんあった。その中に、私の作品も収納してくれていた。なんか嬉しい。それだけの事なのに。
ベッドに座り、借りて来た本を読んでいく。祐介君と似た名前の作者の本だ。読み進めていくと、ある疑惑が生じていく。これって、祐介君じゃないの?
主人公が過去を振り返るシーン。それは、私と祐介君の間に起きたことに似ていたから。初恋の少女を虐めから救い出した翌日、主人公が代わりに虐められる様になった下り…まさか、あれが原因で虐められるようになったの?
借りて来た本を読破すると、確信に変わった。主人公の姉の容姿は、祐介君のお姉さんに似ているし、主人公の初恋の人の容姿は私に似ていたのだ。
知らず知らずの内に、祐介君と同じ道を歩んでいたようだ。なんか、嬉しい。私の初恋の相手…祐介君だったし。そして、今も遠くから…って、祐介君の初恋の人って、私なの?それは、相思相愛ってことかな?心臓がバクバク音を立てている。告白しようかな…
それなのに、忖度って何?私と祐介君の間を斬り裂くなんて…だけど、それに対して文句は言えない私。そんなことをすれば、次のクラス内虐めのターゲットになるからだ。ゴメンね、祐介君…クラスのマドンナというポジションにいたい訳では無い。虐めの対象はイヤだから。小学校の時、私は虐められていた。祐介君だけが、その虐めに参加せず、私を護ってくれた。そのせいかもしれない。祐介君が虐めの対象になってしまったのは…
取り巻く環境が変わるまで、遠くから見ているだけがいいかな。祐介君のお姉さん、とても恐いし…
---相沢祐介---
スケバンである姉をいたぶり、奉仕をさせ、その後に愛し合う。今日もだいぶ書けた。姉様々だよ。まったく。
コンコン!
ドアがノックされ、その姉が入って来た。
「これ!借りた本、返すよ」
「どうだった?」
「悪く無い内容だな。他のもいいか?」
「あぁ、いいよ」
姉は本棚の前に立ち、ラノベ本を物色している。横から見る姉は、胸の輪郭が見えるようだ。脳内保存をしておくか。半袖の袖口から、見えそうで見えない姉のブラに包まれた胸。透視能力があったらいいな。
「なぁ、この作家の本はどうなんだ?」
姉が手にしたのは、チェリーボム先生の本であった。
「ブラコンの姉が、弟であれこれ妄想する話だよ。姉さん的には有り得ないような話だよ」
「そうか」
本棚に手にした本を戻した。ブラコンの姉、姉さんでは気持ちが分からないだろうな。その後、数冊の本を手に取り、部屋を出て行った。
◇
翌日、出版社で打ち合わせ。家でも出来るのだけど、姉妹には内緒であるので、大掛かりな打ち合わせは、出版社の母の部屋で行っている。
「次巻の展開は、こんな感じにしようかと思っています」
母に企画書を手渡した。それに目を通す母。
「いいんじゃないか。この路線で」
じゃ、これで書き進めれば良いのか。
「後、潜入捜査の方は?」
隔離学級についてのレポートを手渡した。
「なるほど…参考になるな。お前を弾き出した、あの学校に天誅を撃ち込んでやる」
母の顔が悪人顔になっているし。
「これで、何か喰って帰れ」
って、食堂で使える食券をくれた。なので、打ち合わせが終わった後、関係者以外立ち入り禁止の食堂へと向かった。ここは編集者、作者などが利用している食堂である。俺はここの生姜焼き定食が、大好きである。今日も懲りずに、生姜焼き定食だ。
「おぉ、ユースケじゃないか」
顔を上げると、妹物の大家である羽島伊月先生がいた。俺にとって、アニキ分である。伊月先生の日常では有り得ない妄シーンは好きである。妹が産んだ卵で、卵焼きを作って貰い、それをアーンして食べさせて貰う下りなど…
「伊月さん、お久しぶりです」
「あぁ、お前の作品を読んでいると、姉も有りかなって、気になっていくよ」
って、誉め言葉を貰った。
「これから、どうだ?うちで食事しないか?ちっひーが食事を作ってくれるんだよ」
ちっひーとは伊月さんの弟の千尋君のことである。伊月さんは漢ってイメージであるが、千尋君は見た目、中性的なイメージで、料理や家事をそつなく熟し、家事がまるでダメな伊月さんの面倒をみている、兄想いの弟さんだ。ブラコンな弟…妹で無くて、伊月さんは残念がっているけど。
「たまには行こうかな」
生姜焼き定食を平らげて、伊月先生の家へ向かった。
◇
食事会には、いつものメンバーがいる。伊月先生ラブの可児那由多先生、伊月先生と同期デビューした不破春斗先生、後、伊月先生の彼女である白川京さんだ。
「累計100万部?」
「どうにか」
デビュー3年目で、累計100万部に到達できた俺。
「山田エルフ先生に、もう少しで届くか?」
山田エルフ先生は、開始15行目で、ヒロインを全裸にした猛者である。まだ、俺の妄想はそこまでの域に達してはいない。
「あの破壊力には、勝てる気しませんよ」
「あれ、反則だよな。ラノベでなく、官能小説だもんな」
って、不破先生。頷く俺と伊月先生。きっと、エロフ好きなおっさんが、書いているのかもしれない。
「まぁ、目標は千寿ムラマサ先生かな」
シリーズ累計1000万部超えの熟練作家である千寿先生。
「でも、アニメ化されないで、100万部達成はスゴいよ」
って、みゃーさんこと白川京さん。
「不破先生と伊月先生はアニメ化していますよね。アニメ化なぁ」
アニメにしたらイメージが壊れそうである。文字から妄想してこそ、良いのだと思うのだけど。
「最近のオススメは?」
春斗さんに訊かれた。
「永遠野誓とかはどうですか?伊月さんとは逆で、兄が好きで好きで堪らない、妹視点の物語ですよ」
「それは興味あるなぁ」
って、伊月さん。
◇
食事会が終わり、ちっひーと共に駅へと向かう。伊月先生は自宅から出て、アパート暮らしなのだけど、ちっひーは自宅に住んでいるのだった。ちっひーは不思議な存在である。中性的なイメージで、女の子と言われれば、そうですかと受け入れてしまいそうな姿である。器量もいいし…
「うん?どうしたの祐介君」
俺のタダならない視線を感じ、戸惑っているちっひー。俺はそんなちっひーに抱きついた。
「え!」
俺の行動に驚いたのか、ちっひーは棒立ちである。彼を優しく抱き締める。胸が気持ちいいん。柔らかくて…へ?
まさか…確認の為に股間を弄った。
「あっ!ダメだよ…こんな路上で…」
無い…有るべき物が無い…なんでだ?!
◇
喫茶店にちっひーといる。真っ赤な顔で俯いているちっひー。
「すまない…」
そんなちっひーに頭を下げる俺。初めての経験で腰が抜けたちっひー。喫茶店で休憩中である。
「祐介君は嫌いじゃ無いから、問題はないよ。だけど、ボクが女の子って兄さんに内緒にして欲しいんだよ」
ちっひーが言うには、再婚相手の連れ子同士で、伊月先生とは血は繋がっていないそうだ。で、再婚に当たり、伊月先生の異常な程の妹への愛に、恐怖を抱いた両親が、ちっひーの性別を偽って、伊月先生へ伝えたらしい。
「ねぇ、ボクでいいの?」
ちっひーの絶頂始めは貰ったが、交わった訳では無いんだけど…場の雰囲気で頷いた俺。
「嬉しいよ。誰もボクを抱き締めようとしてくれなかったから」
ちっひー的には、ハグ始めの相手が俺なのか?
終電も近くなってきたので、腰の抜けたちっひーをおぶい、家まで送り届けた。自分の家に帰り着くと、0時を回っていた。誰も起こさないように、静かに玄関を入り、自分の部屋へ向かうと、
「何か、遭ったの?」
姉さんがパジャマ姿で現れた。うっ!谷間が見える…乳首は見えないが…
「知り合いが腰を抜かして…送り届けてきただけだよ」
あぁ、姉さんからシャンプー臭がする。それだけで、妄想してしまう。
「そう」
そう言い残すと、自分の部屋へと戻っていく姉。俺も自分の部屋に戻り、この妄想を文字へと変換していった。
---相沢桜---
祐介が午前様って…有り得ない。誰と会っていたのよ!
『バイト先の先輩の家で食事する』
って、メッセージが届いていた。夕食はいらないってことだと理解している。バイト先って、なんだ?思い浮かぶのは、作家仲間ってことだよな。食事って手料理かな?そうなると相手は女性である。歳上の女性の作家で浮かぶのは、私であるが、私が相手では無い。そうなると誰だ?
女性の作家の場合、年齢は公表していない。ラノベ作家の場合、性別も公表していないし。う~ん、容疑者が捜査線に浮上しないわ。困ったなぁ。
相手は腰を抜かしたと言っていた。相手を送り届けたって言っていた。そこから推理する。そうなると、その女性の家で食事では無いのか。他の女性の家で食事会をして…その後…まさか、祐介の初めてを…
妄想を文字に置き換えて、怒りを鎮めていく私…