連日に渡る姉による自爆テロ攻撃で、寝不足状態である。その為か、通学時の電車の揺れが揺り篭のように感じ…あぁ~今日も、乗り過ごしてしまったぁぁぁぁ~!
そんな俺に救いの手が差し伸べられた。伊月さんが、自宅にある伊月さんの部屋を貸してくれるという。要するに、ちっひーの家に下宿して良いってことだ。
「遠いなら、近くに住めばいい。ちょうど、俺の部屋が空いているし、ちっひーと同じクラスだろ?」
って…ちっひーの両親のOKが出て、俺の母と話し合った結果、羽島家への下宿が決まった。これから毎日、ちっひーと通うので、遅刻も欠席も減りそうである。
姉さん達が学校へ行っている時間帯に、引っ越しをした。事前にバレると、引っ越し計画が、テロ攻撃でポシャりそうだからだ。着替えと、仕事道具と、ラノベの本を数冊という少ない荷物だったので、スーツケース2つにバックパックだけで、引っ越し作業が完了した。。
---相沢桜---
学校から帰ると、祐介がいなくなっていた。母へ連絡すると、祐介が引っ越ししたそうだ。どういうことだ。帰宅した母に、詰め寄る私と妹。
「これがベストな選択よ。いい?桜…お前、大胆過ぎるだろ?祐介が困惑していたのに、追い込むって、お前は何を考えているの?」
えっ!引っ越し理由って、私のせい?ベッドに押し倒した件は、やりすぎと反省はしていたのだが。
「毎晩、悶悶として寝られないそうだよ。まったく…ただでさえ、遠距離通学のダメージがあるのに、お前は何をしているの?」
家庭内恋愛解禁を機に、距離を縮めようと思っただけである。祐介のことを考えず、自分の欲望、愛情のままに行動したまでである。
「姉さん、いきなり、アレは無いわよ」
って、梅が冷たい視線を送ってくるし。どの行為かな?ディープキス?ノーブラでのハグ?あれこれアプローチしたので、何が悪かったのか、分からない。
「だから、学校の近くへの下宿を許可しました」
下宿?一人暮らし?女の連れ込み自由?それは、危険でしょう!
「一人暮らしなんか、祐介には無理よ!」
「へ?一人暮らし?そんなことはさせないわ。知り合いの家に、空き部屋があるそうで、そこに住まわして貰うことになったのよ」
知り合いの家?誰の知り合いだ?
「で、祐介の新しい住所は?」
「教えられないわよ。でねぇ、桜!遠征は禁止よ!祐介をこれ以上、追い込むなよ!」
えぇぇぇぇ~!私が悪いの?
---相沢祐介---
姉によるパワハラなセクハラ行為は、妄想という形で文字に変換してある。なんで、いきなり方向転換したんだ?って、実の弟に告白って、有り得ないだろうに。姉の行動に困惑する俺。これは、何の虐めなんだろうか?
実の弟を、悶悶とさせて、何が面白いのだ?義弟であれば、ラノベで有りがちな展開であるけど、俺は血の繋がった弟なんだよ。まぁ、もう姉の虐めに晒される心配はない。羽島家の人達は、俺に優しかった。あぁ、和むな~。こう考えると、俺の自宅は針のむしろ状態だったなぁ。
引っ越した伊月さんの部屋は家具付きで、伊月さんの私物も残っていた。主に、フィギュア人形であるけど。そう言えば、伊月さんのマンションにも多数あったな。伊月さんの本棚に、家から持って来たラノベ本を並べて収納した。
「どう?慣れたかな?」
少しずつ、部屋の片付けをしている俺に、ちっひーが訊いてきた。
「学校が近いって、いいよね」
俺の感想を聞きながら、ちっひーがベッドに座り、モジモジしている。それは斬新で、かわいい姿である。
「ちっひーのお陰で、クラスにも溶け込めたし、ありがとうな、ちっひー」
「うん…」
モジモジして、俺を見つめているちっひー。制服を脱ぎ、私服を着ていると、男の子に見える彼女。それはそれで、禁断の同性愛に発展しても、おかしくないシチュエーションである。
「祐介君が傍にいてくれて、ボクも嬉しいよ」
押し倒したくなる衝動。だけど、ここは彼女の家であり、見た目が男の子であり、色々な理性のブレーキが、俺を押し留める。今夜、文字にして発散するかな。
◇
新しい生活に慣れてきた頃、担当編集者からメールが届いた。内容は、ラノベ異種武道会のお知らせで、各社の若手、高校生以下の作家がエントリーで、締め切り厳守で、100ページ以下で、読み切り作品を提出とある。審査方法は、ラノベ振興会の発行する雑誌に同時掲載し、読者投票で順位を決定するそうだ。
高校生以下の作家さんって、そんなにいるのかな?エントリーリストも送られていた。
俺、チェリーボム先生、HAL先生、那由多先生、千寿ムラマサ先生、山田エルフ先生、和泉マサムネ先生、永遠野誓先生、炎竜焔先生、霞詩子先生…
えぇぇぇぇ~!こんなにいるのか…千寿ムラマサ先生は累計1600万部超えの大物だぞ。それなのに高校生以下なのか?『恋するメトロノーム』の霞先生も、ラノベ界では重鎮では無いのか?
『棄権は?』と、担当編集に返信した俺。
空かさず、『許さん!』と返信が戻って来た。納期は1ヶ月半…読み切りかぁ…題材をどうするかな。姉妹物はダメだろうな。そうなると…ちっひーをモデルにして…妄想が浮かばない。どうしよう。
---相沢桜---
ラノベ異種武道会…上位に入れば、祐介と会えるかもしれない。問題は、読み切りである点だ。祐介でしか妄想出来ないんだけど…血の繋がらない弟物でいくか。祐介に真実がバレたら、バレたで都合も良いし。
設定を書き出し、案を煮詰めていく。
「お姉ちゃん、これって、イラストレーター部門もあるよ~」
って、梅。梅に届いたメールには、エロマンガ先生、アヘ顔Wピース先生、柏木 エリ先生に並んで、ブラザーコーンの名前があった。
猛者クラスのエロ系イラストレーターを相手に、梅では勝ち目はない。ここは、私達姉妹の正念場かもしれない。
「ねぇ、祐介から生原稿は?」
「まだ、来ないよ。そこまで早書きでは無いし」
まぁ、今日来て、今日は無理か…あぁ、祐介に会いたい…
---相沢祐介---
あぁ、まるで、浮かばない。納期までに出さないと、『不戦敗作者』という二つ名が1年間進呈されるらしい。まずい…どうしよう…
「祐介、詰んだか?」
って春斗さん。ここは伊月先生のマンション。ちっひーが料理をする日なので、買い物を同伴して、今先輩達に揉まれているところである。
「妹物で勝負するんだ、祐介!」
力説する伊月さん。でも、妹愛はそんなに無い俺。どうするよ。那由多さんは、いつも通り、伊月さんにじゃれついているし。
「まぁ、千寿ムラマサが高校生以下って、驚きだな」
って、伊月さん。俺も同感です。高校生以下で、どうやって累計1600万部売れるんだ?
「へぇ~、霞先生も出るのねぇ~」
って、みゃーさん。『恋するメトロノーム』の大ファンらしい。
「はい、枝豆ですよ~」
って、ちっひーがテンコ盛りの枝豆を持って来た。それをツマミにビールを飲む、大人達。
「那由多さんはどう攻めるんですか?」
「うん?いつも通りだよ。問題は100ページって言う、制限かな」
那由多さんは長編が多いから、そこが難敵らしい。
「祐介は、どう攻めるの?」
「何も浮かんでません。担当編集に棄権は有り得ないって言われて、パニクっています」
実の母親である担当編集者の意向は、絶対である。逆らえば、姉妹に俺の正体をバラすと脅されているし。
「好きな子とか、いないの?」
「いないです。見た目だけなら、実の姉ですけど…性格に難が有るし、俺のこと、大嫌いだし…」
「他の女性で妄想するしかないわね。例えば、みゃーさんとかは?」
那由多さんが、みゃーさんを推してきた。
「私?」
みゃーさんが俺に視線を向けてきた。お姉さんキャラである。大人の手ほどきを受けたい。そっち系の妄想にするかな?
「どんな妄想したのかな?」
興味津々の目を俺に向けてきたみゃーさん。
「みゃーさんの手ほどきで、大人の男になるとか…」
「私、ビッチじゃないわよ~」
「ですよね~」
みゃーさんの目付きが恐い。妄想するなと言っているようだ。かといって那由多さんでは、妄想できないし。機嫌を損ねられると、相談が出来なくなる可能性がある。
後、身近で妄想しても大丈夫な女性は…いないか…はぁ~。
◇
帰り道…ちっひーが俺の腕に抱きついて来た。微かな乳房の感触…だけど生理現象を誘発はするが、俺の琴線に触れない。伊月さんの妹で、妄想なんか出来ない。伊月さんは俺のアニキ分である。そうなると、ちっひーは俺の妹もしくは弟になると思うから。
「ねぇ、ボクじゃダメ?」
「ダメじゃないけど…ちっひーで妄想なんか出来ないよ」
ちっひーが伊月さんの前で弟として振る舞う経緯を知った今、俺はちっひーで妄想はしちゃいけないと思う。それ以前に、前述の通り、伊月さんは俺のアニキ分であるから、その妹で妄想なんか、失礼であるし、やっちゃダメである。そこまで俺は、腐っていないと思いたい。
「祐介君ならいいよ…」
俺の腕に頬を擦り寄せているちっひー…だけど…
「ちっひーの家を追い出されると、俺…行き場が無いんだよ」
今更家には戻りたくない。あんな針のむしろの家なんか、いやだぁぁぁ~!
「あぁ、そうか。ボクの両親かぁ。そうだね、過剰反応すると、追い出しちゃうか…」
ちっひーを弟として、伊月さんに認識させたちっひーの両親。それは、伊月さんの性癖に過剰反応した結果だと、ちっひーが教えてくれた。本当は伊月さんが大好きなちっひー。同じソース顔の俺は代役かな?う~ん…
「誰か、いない?妄想出来そうな女性って…面識が無い方がいいんだけど…」
「う~ん…先輩とかでもいい?」
「遠くから観察出来ればいいんだよ」
ちっひーも校内で物色してくれるそうだ。
◇
モデルが探しが難航して、すでに納期は、2週間も過ぎてしまった。残り1ヶ月である。書く時間は最低1週間は必要だから、そろそろ、妄想相手を見つけないと、マズい予感である。
下宿へ戻る際に、色々と歩き回り、モデルを探す毎日。漸く、努力は報われ、女神に出逢えた気がする。街で目が合った女性。彼女は颯爽と俺に近づいてきた。近づくにつれて、その正体を知った俺。なんで、ここにいるんだ、こいつが…
「見つけた…」
俺の目の前に立つ女性。姉と同じ制服である。って、ことは学校帰りなのか?
「なんで、黙って、引っ越しするのよ~」
俺に抱きついてきた円城寺遥…胸の感触が気持ちいい…ちっひーよりも大きいし、柔らかい…生理現象がムクつき始めている。
「通いキレないから…」
「転校した学校の周辺を探して…やっと見つけたよ」
俺の頬に自分の頬を重ねる遥。固まる俺。なんで、俺を探していたんだ?ある種の恐怖感を感じ、生理現象は萎えていく。
「ねぇ、連絡先を交換して。メールでいいから、繋がりが欲しいの」
耳元で囁く遥。彼女の吐息…生温く、気持ちが良い。
「あぁ…わかった」
スマホを取りだし、メアドを交換した。
「なんで、俺なんだ?お前なら、もっと良い男が寄ってくるだろ?」
あのクラスでのマドンナ。いや、あの学年でのマドンナ的な存在である。
「小学校の時…虐められていた私を助けてくれた」
そんなことあったっけ?小学校の時かぁ。あぁ、有ったなぁ。そんなことが…
「あの時から、君は私のヒーローなんだよ」
「ソース顔のヒーローはいないと思う」
「見た目は関係無いんだよ、祐介君」
「遥…」
彼女の肩に両手を添えて、俺から引きはがし、遥の顔を見た。遥の全身を脳内保存していく。胸の膨らみ、腰の括れ…などなど。
「私は祐介君の味方になりたい。世界の全員が敵になっても…」
大げさである。俺は世界の敵にはならない。寧ろ、スルーされるだけだと思う。いや、姉に殺される方が先か?
「また、逢ってね」
俺の唇に柔らかい物が触れ…遥は振り返り、スキップして帰って行った。えっ?俺なんかでいいのか?
部屋に戻り、妄想を暴走させていく。円城寺遥で妄想していく。色々なシチュエーションを思い浮かべ、最適なシチュエーションを選び出し、ストーリーを組み立てていく。
---相沢桜---
梅の元に、祐介の生原稿が届いたそうだ。梅の部屋に向かい、生原稿とご対面した。これは…久しぶりに逢った幼なじみと…このヒロインの容姿…これって、円城寺遥か??
「なんで、私では無いの?」
「姉さんで妄想だと、読み切りにならないからでしょ」
って、梅。なるほど…姉妹物は、シリーズ化しているからか。
「それよりも、姉さんは大丈夫なの?」
「大丈夫…生原稿を見たから」
私は愛する弟物一筋で勝負を賭けるわ。例えば、幼なじみと再会した弟。彼女も見て心が揺れる弟。だけど、姉の愛の力で、弟を奪還するとか…自分の部屋に戻り、妄想を文字へと変換していく。
---円城寺遥---
やっと、見つけた。祐介君…再会の喜びで、ファーストキスをしてしまった。想い出すだけで、耳が熱い。う~ん、舌を入れれば良かったかな?この想いを、描き出していく。祐介君は誰にも渡したくないから。
今回は高校生以下でのバトルだそうで、担当さんの話では、イラストレーターがいつもと違うそうである。私のいつものイラストレーターは年齢制限でアウトらしく、ブラザーコーンというイラストレーターが担当してくれるそうだ。ブラザーコーンと言えば、ユースケ先生と同じイラストレーターである。なんか、嬉しいな。祐介君の隣に立てた気がするから。