俺の隣に涼花が座り、お互いに作業をしていた。
「この設定はどう思いますか?」
血の繋がらない兄とのラブコメのようだ。う~ん、俺と関係を持った下りも書くようだ。いいのか?
「こんなにさらけ出して、大丈夫なのか?」
「う~ん、そうなんですけど…この方がインパクトはありますよね?」
「有ると思う。涼花が良いなら、俺は何にも言わないよ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
そう言いながら、俺に抱きつく涼花。唇を重ね合い、舌が入って来た。初めての経験である。恐る恐るであるが、涼花の舌を自分の舌で確かめる。薄く柔らかい…あぁ、生理現象が起きてきた。それに気づいた涼花が、手の平で俺の股間を…
「お兄ちゃんの正直な反応、好きです」
唇が離れ、そう言われた。
「さてと、この気持ちを文字にしようかな」
嬉しそうに文字に変換していく涼花。
俺も自分の作品を打たないと…兄とウザい弟の話。兄が大好きな弟。だけど、どこから見ても、誰が見ても、ボーイッシュな女の子である。兄が好きすぎて、弟だと思い込んでいる妹の巻き起こすラブコメである。
「これは、誰がモデルなんですか?」
涼花が興味深そうに訊いてきた。
「誰ってことは無いよ。弟物って、斬新だろ?」
「確かに義理の妹物って多いですよね。私のコレもそうだろうし」
涼花のソレは義理の妹では無い。血が繋がっていない妹枠である。
「和泉先生の新作も義理の妹物ですよね。チェリーボム先生もそうだったかな」
「まぁ、ラノベで定番に近いかな」
コンコン!
ドアがノックをされた。応対に出ると、涼花の兄だった。
「涼花は、コチラですか?」
「えぇ、ここで仕事をしていますよ」
「涼花、何をしているんだよ!」
「お兄ちゃん…いえ、兄さんは炎竜焔大先生と乳繰り合えばいいじゃないですか」
「涼花さん…どうしたの?」
この兄は狼狽えると、妹をさん呼びするらしい。
「どうしたのって?なんで、あの女に対して、ガードが甘いんですか?」
涼花は女王が嫌いなようだ。俺も関わりたく無い。
「アイツ、押しが強くて…」
既に、女王の尻に敷かれているようだ。
「兄さん、しっかりしてくださいね。私のゴーストって、自覚が足りないんじゃ無いですか?」
「すまない、不甲斐ない兄で…」
打たれ弱そうだな。これでは、バレるのは時間の問題か?
「用が終わったら、あの炎竜焔大先生の元へ戻ってください。怪しまれますから」
「あぁ、そうだな…ユースケ先生、妹を、涼花を頼みます」
肩を落として、トボトボと部屋を出て行く、涼花の兄。
「お兄ちゃん…私の事を、お願いしますね」
って、笑顔で俺を見る涼花。何をお願いするんだ?って、顔が近いんですが…
---霞詩子---
う~ん…ユースケ先生の担当編集者の許可を得て、Wピース先生が、『腿太郎』をエロ同人誌向けのマンガにしていた。これは…クオリティーが高い。エリをアシスタントにして、次々に描き上げているし。
「う~ん、こうなっているのか…」
男性経験のないエリが、唸っているし。
「これが成功すれば、『帰還』もマンガ化したいです」
って、深夜5分枠のアニメ化を目指しているようだ。
「霞先生の経験話も訊きたいですねぇ~」
って…ぶっちゃけ、経験はない。あるように匂わせているだけである。コイツ、経験が豊富なのか?なんか、負けた気分になるわ。
私よりもデカい胸…白人系の血でも入っているのか?
「え?ここまで描き上げたんですか?」
ユースケ先生と涼花ちゃんがやって来た。
「えぇ、面白い本は製作が早いですよ」
う~ん、あの兄妹、似ていないなぁ。どっちかと言うと、永遠野先生に似ている涼花ちゃん。
「なぁ、涼花ちゃんの兄って、本当にユースケ先生なのか?」
疑問を口にした私。
「えっ?違いますよ。私は…永遠野の妹です」
「なんで、ユースケ先生を兄だと言っているんだ?」
「好きだから…」
真っ赤になって俯いた涼花ちゃん。好きなら、兄でなく、彼にするのでは?
「血の繋がらない兄妹に憧れていると言うか…」
モジモジしだした涼花ちゃん。
「ユースケ先生の好みって、涼花ちゃんなのか?」
「えっ!俺の好みですか?HALですけど…」
HAL先生が好みなのか?スレンダー系の少女がいいのか。まぁ、涼花もストライクゾーンなのか?
「大丈夫ですから、お兄ちゃんは死守しますからね。でへっ」
あぁ、ラノベ好きが集まると、こういう人間関係になるのか?巻き込まれたく無いような、巻き込んで欲しいような関係である。
「私なんか、どうだ?」
試しに訊いてみた。
「霞先生ですか…姉に似ている感じがするので、ダメかも…」
ユースケ先生の姉妹感を聞いた。自宅住まいの頃は、姉によるパワハラ、セクハラのテロ攻撃を受けていたようで、お姉さん枠はダメらしい。
「信じられますか?血の繋がった弟に、告白して、押し倒して、関係を持つって…」
彼は、ラノベっていうより、ハードコア系の生活をしていたようだ。ラノベに救いを求めたのか?そうか、彼の恐怖心を払拭すれば…
「お兄ちゃん、私が付いています。怖がらないでも大丈夫ですよ」
彼を涼花が優しく抱き締めている。ラノベ的な展開だな。これをネタに貰うかな?そして、取材をすると言って、近づくのも手であるかな。
「じゃ、自宅には住んでいないのか?」
まず、家を訊き出す。
「えぇ、今は伊月先生の自宅に下宿しています」
「伊月…あの妹物の大家である羽島伊月先生か?」
「はい…」
羽島伊月先生と言えば、妹に産ませた卵で、卵焼きを作らせるなど、非現実的な妹物が得意な作家である。
「Oh!妹の脱いだパンティを絞って、ジュースにしてオリ主に飲ませた、あの人ですねぇ~」
Wピース先生も読んでいるのか。あれは、スゴい発想であった。
「懇意にしているのか?」
「まぁ、俺のアニキみたいな存在です。よく一緒に食事したり、相談したりしています」
羽島先生に師事しているのか。
「是非、紹介してください」
Wピース先生が喰い付いた。こいつも伊月先生ファンか?
「帰ったら訊いてみますね。そんなに伊月先生のマンションは広くないから」
ユースケ先生に興味を持ってしまった。彼の交友関係はネタになりそうだと、私の勘が疼いていた。彼の半生も興味があるし。彼自身にも…
---氷室 舞---
祐は作品に手を付けない。書いている姿を見たいのに…
「ねぇ、祐!仕事はしないでいいの?」
「え?いや、まだ思案段階だからね」
って、企画書すら書いていないし。怪しい。
「ねぇ、祐。本当にあなたが永遠野誓なの?」
「えっ?疑うのであれば、部屋から出て行ってくれ。不愉快だ!」
あっ、マズい。怒らしてしまった。抱きついて、私の色香で惑わしてみる。
「何をしているんだよ。離れてくれ!ただでさえ、涼花に乳繰り合っていると思われているんだぞ!」
えっ!そんな風に思われているのか…では…
「おい!ここで脱ぐなよ~」
「乳繰り合いましょうよ。ねぇ、祐…」
下着姿で祐に抱きついた。
「えっ!ちょっと…」
この合宿中に、祐をオトしてやる。そして、永遠野の秘密を教えて貰うんだ。
---相沢祐介---
『どうだ、合宿は?』
伊月さんに連絡をしてみた。
「まぁ、色々な人がいるって実感です」
『もっと、知り合いを増やせよ、少年』
「なかなか難しいです。あぁ、アヘ顔Wピース先生と霞詩子先生が、伊月さんに会いたいそうですよ」
『そうなのか?じゃ、次回の食事会に誘ってくれ』
「わかりました。で、伊月さんはどうですか?」
『没の山だよ。担当編集が妹の良さを、分かってくれないんだよ』
「俺の方は、弟物が通りました」
『弟物?新作か?いいなぁ、ユースケは』
作品のアイデアについて、感想を貰ったり、アドバイスを受けたりして、通話を終えた。
「今の人が伊月先生?」
ベッドに横たわっていた涼花に訊かれた。PCでテレビ電話モードで会話していたので、伊月さんの顔がモニタに映っていたのだ。
「そうだよ。俺のアニキのような存在だよ」
「お兄ちゃんのお兄ちゃん?」
「そうなるかな」
ベッドから起きたした涼花が、シャワールームに消えた。俺は企画書と睨めっこである。弟の性格をどうするかだ。う~ん…閃いたことを、書き込んでいく。また、清書して提出だな。
「お兄ちゃん…大好きだよ」
背中に涼花が抱きついていた。胸の感触が、柔らかくて気持ち良すぎるんですけど…
「涼花…俺も好きだよ」
「大好きではないの?」
うっ!俺の耳に吐息を吹きかけ、耳タブをハムハムしだした。背筋にゾクゾク感が走り抜けて行く。どこで、テクニックを学んでいるんだ?
「俺でいいのか?」
「うん…お兄ちゃんのしたいようにして欲しい」
「じゃ、まず、下着を付けて…形が悪くなるらしいぞ」
「えっ!本当に?」
下着を付きに行ったようだ。
「涼花、成長が安定するまで、ノーブラはダメだよ」
「わかりました。ありがとう、お兄ちゃん。私の身体を心配してくれて」
ブラをした涼花の胸の感触が、俺の背中に…
「押し当てすぎてもダメらしいよ」
「むむむっ、そうなんだ。うん、気をつけるよ」
永遠野先生はいいなぁ。こんなにも素直で、かわいい妹と同居しているとは…
◇
毎日、午前中はビーチに出ている女性陣と永遠野先生、和泉先生。俺は外に出ずに、部屋で企画書とにらめっこである。
「ビーチには行かないのか?」
ムラマサ先生が部屋に入って来た。
「うん…アウトドアは苦手なんだよ」
「どんな企画にしたんだ?」
俺の前に座り、企画書に目を通すムラマサ先生。俺の目には、中学生とは思えないスタイルが映り込んできた。脳内保存しておこう。涼花より1つ下だっけ?立派な乳房である。肩が凝らないのだろうか?
「うん?どうしたんだ?」
「素朴な疑問です。肩は凝らないんですか?」
「うん?あっ…」
耳まで真っ赤に染めて、俯いてしまったムラマサ先生。
「すみません」
ムラマサ先生に背中を向けた。これ以上見ると失礼になりそうだから。
「あ…あのな…私がこんな恰好で来たのだ。君は悪くないよ。素朴な疑問だろうな。男性にとっては。あぁ、胸が大きいと肩は凝りやすいそうだぞ」
「教えてくださり、ありがとうございます」
「ウィンウィンで行こう。君がわからないことは、私が教える。だから、私のわからないことは、君が教えてくれ」
「いいですよ。そこにタオルがありますので、羽織ってください」
「ありがとう…」
振り返ると、タオルに手を出さずに、俺と向き合うように座っているムラマサ先生がいた。
「君は思っているより、良い奴だな」
褒めて貰えたようだ。
「で、お話は?」
「私の作品はどう思う?」
「この前のですか?あれって、公開ラブレターですよね?」
この前の作品は、和泉先生に向けた公開ラブレターだった。
「やはり、そう見えたか」
見えてなかったのかな?
「でな…」
和泉先生からのお返事を訊けばいいのかな?
「相手から返事はもらった。ダメだった…」
「え?こんなにかわいいのに?振られたんですか…」
「あっ、あぁ…」
恥ずかしそうに俯いてるムラマサ先生。
「私って、かわいいか?」
テーブルに手を付いて、前のめりになるムラマサ先生。胸の谷間が眩しい。
「かわいいですよ。俺の妹だと、嬉しかったかもです」
「えっ!」
耳が再度朱く染まっていく。
「たぶん和泉先生は、もっとかわいい子を、狙っているんじゃないですか?」
「あぁ、そうなんだよ。その子には、勝てる気はしない」
「諦められない場合は、相手を蹴落とすか、遠くから見守るかですよ」
「そう思うか?」
「えぇ…そう思います。でも、蹴落とすのは、ムラマサ先生には似合いません。威風堂々と、何事も無かったように、迫るのが良いかと思いますよ」
「なるほど、そういう考え方もあるのか…でだ…私も…ユースケ先生を兄と思っても頼ってもいいか?」
「かまいませんよ。俺で良ければ」
「ありがとう、兄さん」
恥ずかしそうに俺を見るムラマサ先生。かわいいのになぁ。また、血の繋がらない妹が出来たようだ…
◇
ランチの後は、それぞれ創作活動をしている。午前中に書き上げたプロットを、涼花、ムラマサ先生、遥に見せている。
「どうかな?」
「弟物って…これ、変化球だよね?」
遥の言う通り、変化球である。性別は女である弟であるから。
「名前は宇佐美で、あだ名はウザミンなのか…」
ムラマサ先生が頷いている。良いってことかな?
「で、誰をモデルにしているんですか?」
って、涼花。モデルかぁ~。
「モデルがいないんだよ」
って、俺達4人の無意識な視線は一人の人物に集まっていた。あの炎竜焔先生である。
「まぁ、ボーイッシュって言えば、そうだよね」
「ウザさは、この中で群を抜いているし」
「甘えキャラよりに改変は必要だよね」
概ね、モデルは決定だな。
「そうなると、兄のモデルは、涼花の兄か?」
「そうなるね、お兄ちゃん」
永遠野先生の妹の許可は下りた。
「次はエピソードを考えればいいのか?」
「いや、妹が弟になった経緯もいるわよ」
遥の言うことに、頷く二人。経緯か…
「そうだな。兄が、弟が欲しかったとぼやいていて…」
「うん、有り得るよ」
って、涼花。じゃ、採用だな。