世界で一番●●な君へ   作:もっち~!

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貼られたレッテル

人生2度目の高校退学処分を受けた。転校しても、ネット拡散という方法で、虐めが続いていた。退学理由が女子トイレ覗きの常習犯、女子更衣室に隠しカメラを設置しての撮影、アイドル、マドンナ的の女子生徒へのストーカー行為など、身に覚えの無い罪を犯した者として、実名で晒されていた。

 

その件が転校先の学校の父母会で問題になり、罪を隠しての越境転入とされ、父母会の総意として、俺の排除を学校へ求めたそうだ。俺は、教育委員会の指示に従って、転校しただけなのに…

 

「すまない。また、お前を護れなかった」

 

母が落胆している。

 

「しょうがないよ、俺の人相が悪いんだろ」

 

こればかりは、どうにもならない。俺を産んだ母を責める訳にもいかないし。そして、また引っ越しをすることになった。ちっひーの家に迷惑を掛けてしまいそうだから。

 

「なんで?祐介君は悪くないのに?」

 

「一度貼られたレッテルは剥がれないんだよ。ちっひー、ごめんな」

 

涙ぐみ、俺に抱きつくちっひー。俺は家に縁がないのだろうか?

 

再度、母が新しい部屋を用意してくれていた。引っ越し荷物を、スーツケース2つとバックパックに詰め、持てない荷物は宅配便で手配をして、羽島家を後にした。

 

住所を頼りにして、新天地へと向かう。高校は通信制の高校にしてくれた母。通いの学校では、また同じ事が繰り返される可能性が高いからだ。

 

今度の部屋は、母の仕事場に近いらしい。メモを見ながら、目的地を探すが、わからない。彷徨うこと2時間…アパートらしき建物が見付からない。どうしてだ?

 

途方に暮れた俺の目に、一人の女性の姿が飛び込んで来た。黒髪をなびかせて、颯爽と立ち尽くす女性。その姿は、片思いの君である円城寺遥に似ていたのだ。違いは、彼女の方が大人びていて、胸が大きいことか?

 

「すみません…ここへ行きたいんですが…案内してもらえますか?」

 

いきなり声を掛けた為、驚く彼女。

 

「えっ!ここ?これって…ここへ、何しに行くの?」

 

見せた住所に驚いている彼女。あれ?書き間違えたのかな。

 

「そこに住む事になったんです」

 

「住む?住み込みのバイト?」

 

「いえ、下宿ですよ」

 

品定めをするような視線で、俺を見る彼女。

 

「そうなんだ。あのさぁ、私も一緒に住んでいいかな?家出中なのよ」

 

家出と言うには、身軽過ぎる。手荷物が無いし…どう見ても彼女は訳有りのようだ。まぁ、俺も訳有りだし、訳有り仲間かな。

 

「かまいませんが…俺、相沢祐介です」

 

「祐介君?私は桜島麻衣よ。よろしくね」

 

「はい。で、ここって、どこですか?」

 

麻衣に連れて行かれた場所は、高そうなホテルだった。あぁ、ここの前は何度も行き来したなぁ。アパートだと思っていたから。

 

フロントで名前を告げると、30代くらいの男性が奥から出て来た。

 

「私は佐田悟です。君のお母様には、大変お世話になったので、恩返しが出来て嬉しいよ」

 

と、俺を俺の部屋へと案内してくれた。部屋の鍵として、カードキーを手渡され、居住区専用のエレベーターに乗り、俺の部屋に着いた。

 

「ここを使ってください」

 

って、ドアを開けると、向こう側は壁で無く、全面窓だった。夜景が綺麗そうだ。お風呂はジャグジー付きでサウナもある。洗濯機スペースには乾燥室もある。至れり尽くせりな部屋である。

 

「こんな広い部屋をいいんですか?」

 

「あぁ、住む人がいないと、部屋が傷むんだよ。だから、気にしないで使ってくれてかまわないよ。あと、ホテル内の支払は、カードキーで出来るから、ドンドン使ってくれて構わないからね」

 

麻衣は部屋を見回し、絶句状態である。

 

 

 

---佐田悟---

 

祐介君を兄夫婦が住むはずだった部屋へと案内した。しかし、彼の女性の引きはスゴいなぁ。同伴していたのは、人気若手女優の桜島麻衣だったし。昨日までの報告には、無かった名前だから、今日知り合ったのだろうな。人望は問題が無いようだ。潔さも良いし、彼の成長が楽しみである。

 

 

 

---相沢祐介---

 

悟さんが退出した後、部屋を一通り見て回ると俺の部屋があった。通信制高校の教材と授業内容が書かれた説明書と、タブレットが置かれていた。

 

「麻衣さん、ここが俺の部屋みたいだから、好きな部屋を使ってください」

 

「う、うん…祐介君って何者?超一流ホテルのロイヤルスィートに住むって…」

 

「俺ですか?通信制高校に通う高校生ですよ」

 

「そうなの?」

 

麻衣さんに、俺に起こった事を話した。

 

「そんな酷い虐めにあったんだ…」

 

「しょうがないですよ、俺は人相が悪い犯罪者顔らしいから」

 

「そんなことは無いわよ」

 

そして、麻衣さんの話を訊いた。はぁい?って感じの話であった。麻衣さんは女優で、今朝ロケを終えて帰ろうとしたら、マネージャーさんの目に映らなくなったそうで、あの場所に放置されたそうだ。目に映らないだけでなく、スマホでの連絡も出来なくなっていたそうだ。

 

「私…透明人間になった気分なの。通行する人達に、声を掛けても、誰も気づかないんだもの。途方に暮れていたそこに、祐介が声を掛けてきて、驚いたのよ」

 

透明人間?どうせなら、服だけ透明になってくれれば良いのに。

 

「だから、手荷物が無かったんですね」

 

「うん…身に着けていた財布と家の鍵しか無いの…」

 

そう言えば、悟さんにも見えていなかった感じだな。麻衣さんのことを訊かれなかったし。

 

「じゃ、麻衣さんの当面の着替えを取りに行きましょうよ」

 

「一緒に来てくれる?一人だと不安で…」

 

「了解です」

 

 

確かに見えていないようだ。通行人が麻衣さんへ突進してくる。その度に、俺が麻衣さんの前に立ち、人の波を避ける防波堤になっていた。

 

電車でも麻衣さんを抱き締め、周囲を警戒する。

 

「祐介…役得だな!」

 

えぇ、役得です。生理現象でムクムクしていますから。

 

「でも…ありがとう…」

 

「いえ、役得でチャラですよ」

 

ドン!

 

「痛い!」

 

麻衣さんに足を踏まれた。セクハラはダメですよね。

 

 

麻衣さんのマンションに無事に着いた。

 

「ちょっと、シャワーを浴びるから…覗くなよ!」

 

「覗きません。妄想はしますけど」

 

「妄想…う~ん、まぁ、しょうが無いか」

 

着替えを持って、シャワールームの更衣室に消えた麻衣さん。そして、シャワーの音…麻衣さんの姿で、遥の妄想をする俺。う~ん、股間がパンパンだよ。

 

ゴン!

 

俺の妄想タイムをブレイクする、脳天から激痛。目の前には星が見える。

 

「覗く素振りくらいしても、いいんじゃないの?こんないい女が、シャワーを浴びているんだから」

 

覗くなって言ったのに、理不尽である。頭を押さえる俺。

 

「もう…しょうが無いなぁ。こんなにパンパンって、どんだけ妄想したのよ」

 

って、全裸の麻衣さんが俺に抱き付き、唇を重ねて来た。遥より唇は固めである。そのまま、麻衣さんのベッドへ連行され…

 

 

麻衣さんの荷物を箱に詰めて、宅配業者に宅配を依頼した。業者さんの目に麻衣さんは見えてないようだったので、俺が応対をした。荷物を持ってだと、麻衣さんを護れないからだ。

 

「じゃ、帰ろう」

 

「うん…」

 

二人で、麻衣さんのマンションから立ち去り、俺の部屋へと戻った。

 

「ねぇ、祐介と同じ部屋でもいいかな?」

 

「構わないけど、俺は寝るのが遅めだよ」

 

「エロ画像でも見て、抜いて寝るのかな?」

 

俺の背中に抱きつく麻衣さん。胸の感触がサイコーです。

 

「違うって。仕事をするんだよ」

 

「仕事って?」

 

俺の本を手渡した。

 

「ソレだよ」

 

「ラノベ?作者はユースケ…へ?祐介君って、ラノベの作者なの?」

 

驚いている麻衣。頷く俺。

 

「まさか、今日の事をネタにするのかな?」

 

グニュ…俺の頬を抓る麻衣さん。

 

「お望みなら…」

 

「ダメ!ダメだから…初めての想い出なんだからね。書いちゃダメよ!大切にしたんだよ」

 

透明人間化記念か?

 

「麻衣さんのお望み通りにしますよ。それに、俺の今書いている本は、ウザい弟物ですから」

 

タブレットに、校正作業を終えて戻って来た原稿データを転送して、麻衣さんに手渡した。

 

「これって…まだ印刷前のデータ?」

 

「今、印刷に回っています。発売は来月の予定です」

 

「サイン本が欲しいなぁ」

 

「いいですよ。差し上げますよ」

 

 

麻衣さんとの生活に慣れた頃、伊月さんから連絡を貰った。

 

『たまにはちっひーの食事はどうかな?霞詩子とアヘ顔先生を呼んでもいいぞ』

 

って。

 

「麻衣はどうする?」

 

「祐介と一緒に行く。一人だと心細いし」

 

最近は、お互いに敬称略で呼び合っている。麻衣の透明人間化は、進行しているようだ。外食に行くと、俺の分の水しか出ない上、一人席を案内されてしまう。なので、テーブル席に案内してくれる、朝のモーニングビュッフェ以外の食事は、ルームサービスにしていた。

 

「問題は、伊月さん達に、見えるかだな」

 

「そうね」

 

予め、状況を伊月さんへ知らせた。

 

『桜島麻衣?あぁ、そんな女優がいたな。透明人間化か…都市伝説の思春期症候群かもな』

 

って、返信を貰った。都市伝説?ネットで調べて見ると、忘れられた存在になると、存在そのものがあやうくなる現象だと言う。俺が麻衣を認識できるのは、麻衣の女優としての存在自体を知らなかったかららしい。俺は麻衣が女優って認識が無く、遥に似ているって印象だった為、忘れる以前に、知らなかったことが幸いしたようだ。

 

「そうなると、五分五分かな?」

 

「那由多さんもたぶん大丈夫だと思う。テレビ見ないし。そもそも、遥として認識させるのも手か?遥は俺の初恋の君で、麻衣に似ているんだよ」

 

「うん?祐介の初恋の君?私に似ているの?」

 

遥の画像データを見せた。

 

「あっ!本当だわ、私に似ているんだ…」

 

一応、遥に事情を話し、偽遥の了承を得た。

 

 

 

---円城寺遥---

 

祐介君が私に似た人と同棲しているという。う~ん…高校卒業するまでは、容認しようかな。傍にいられないしなぁ。

 

そもそも、私はまだ告白をしていない。いや、祐介くんから告白はされたが、まだまだ片思いでいたいからと、返事をした。

 

現状、祐介君は私に片思いをし、私は祐介君に片思いをしているのだ。片思いの気持ちを大切にしたいから。

 

そこへ閃きが舞い降りた。見た目はソックリで、全然の別人の二人と付き合う男の子のお話だ。メモにプロットを書き込んでいく。これは、有りかな。ソックリな二人は、お互いの存在を知らないことにして…この男子が悪者になりそうな。う~ん、モデルが祐介君だけに、ちょっと複雑だなぁ。

 

どうするかな…

 

 

 

---相沢祐介---

 

麻衣と共に、伊月さんの部屋の最寄り駅へと向かった。そこで、ちっひー、詩羽さん、Wピース先生と待ち合わせをしていた。このうちの何人が麻衣を認識できるんだ?麻衣は不安からか、俺の腕を抱き締めていた。

 

「麻衣…大丈夫か?」

 

麻衣が俺の唇に自分の唇を重ね、自分の存在を確認してきた。

 

「行こうか」

 

改札を抜けると、ちっひーと詩羽さんがいた。

 

「Wピース先生は?」

 

「あぁ、先に行くって…」

 

相変わらず、マイペースだな。

 

「初めまして、羽島千尋と申します」

 

ちっひーには、麻衣が見えているようだ。

 

「桜島麻衣です。よろしくね」

 

「え?誰かいるの?」

 

詩羽さんには見えないようだ。彼女の耳元で、事情を囁いた。

 

「え!これが都市伝説の…マジか…」

 

「見えない?」

 

「ごめんなさい。見えないわ」

 

『気にしないでください』

 

「麻衣が、気にしないでくださいって」

 

「気にするわよ。祐介との関係とか…話のネタになりそうだし…」

 

商売熱心だな、詩羽さんは。で、買い物をしながら、伊月さんの部屋へと向かった。

 

「そうだ。詩羽さん。遥にそっくりな麻衣って女性を想像してみてください」

 

「うん?それで見える様になる…えっ、マジかぁ…見えたわ…先程は失礼をしまいした。霞ヶ丘詩羽です」

 

「遥さんそっくりの麻衣です。よろしくお願いします」

 

作戦は成功だった。女優としての桜島麻衣が、見え無いのであれば、俺と同じ認識になれば、見えるはずだと思ったのだ。俺は麻衣を初めて見たとき、遥にそっくりと認識したのだから。

 

「この作戦の欠点は、円城寺遥を知らない者には、通用しないってことだ。まぁ、作家仲間であれば、遥は知っているから、問題は無いと思うけど」

 

「ありがとう…祐介…」

 

「いいって、麻衣。問題は伊月さん、春斗さん、みゃーさんだな」

 

そして、伊月さんの部屋に着いた。結果、桜島麻衣として、三名とも認識できず。伊月さんは、悪化したようだ。で、遥のそっくりさんとしては、伊月さん、みゃーさんは認識出来た。

 

「そうなると、桜島麻衣を調べて、そういう存在だと、認識すると存在を感知出来無くなる訳だな」

 

そういう存在とは…伊月さんが忘れる原因になったことがあった。ネットで『桜島麻衣死亡説』があったと言う。

 

「死んだ存在だから、見えちゃダメって、本能レベルで影響しているようだ」

 

「それって、祐介君が犯罪者みたいな書き込みがあったのと同じかな?」

 

って、ちっひー。

 

「可能性はあるな。実際には祐介は何もしていないのに、高校退学2回っていう、筋金入りの悪ってことになっているしなぁ」

 

って、伊月さんが安楽椅子探偵に見えるような推理だ。

 

「1回貼られたレッテルは剥がれないの?」

 

ちっひーが伊月さんに訊いた。

 

「ネットでの拡散の場合、火消しは無理だ」

 

俺もそう思う。

 

「そんな…祐介君も麻衣さんも、何も悪いことをしていないのに…」

 

「世の中の仕組みってそんなものだ。匿名なのを良いことに、無いことを書いて、相手を窮地に追い詰めて楽しむヤツがいても、取り締まりは難しい。祐介の方は存在が残っているから、反撃は出来るが、麻衣さんの方は存在が無いに等しいから、反撃すら出来ない。訴訟や被害届けの提出もダメだろうな」

 

「救えないのですか?」

 

俺が伊月さんに訊いた。

 

「お前が支えてやれよ、祐介。お前なら、麻衣さんの苦しみがわかるはずだ。お前も、嵌められて、転校と引っ越しを余儀なくしている訳だからな」

 

そうなるのか…麻衣の手を握り絞めた俺。

 

「ありがとう…祐介…」

 

「さて、ちっひーの食事を満喫しようぜ!」

 

って、伊月さんの声で、食事会がスタートした。

 

 

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