ARMORED CORE 4 / Answer とある傭兵の記録   作:さかき(ヒロタカリュウ)

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 国家解体戦争より数年前。
 コジマ粒子の発見とエネルギー利用法の確立により、資源不足が叫ばれたかの時代、各国の研究者や科学者の間では、コジマの研究が盛んに行われていた。

 時を同じくして、AMS技術の研究を進めていたトルコ共和国のイェルネフェルト教授。彼はコジマ研究プラントが存在する上海へと向かう。


幕間Ⅰ "Project ARETHA"

『こちら──ザ──研究所。至急応援求む。現在、試作兵器が暴走──ザザ──いる! 至急ACの応援求む。繰り返す、こちら──』

 

 

 

 その時代、世界は混迷を極めていた。

 深刻なエネルギー不足、食糧危機、飢餓、国家は統治能力を失い、テロリズムが横行。扇動家が世を動かし、世界は少しずつ、破滅へと歩みを進めていた。

 

 

 ──辺り一面に漂うのは、強烈な死の匂い。

 

 陸上を闊歩する巨大人型兵器、アーマード・コア。かの最強の巨人が作り上げたいくつもの鉄塊が街を舐めように形作り、瓦礫と区別がつかないほどに散らばっていた。

 

 名もない少年はただ、瓦礫でできた物陰に潜みながら、そのおぞましい光景を眺めているしかなかった。

 

 ──マズルフラッシュが閃く。

 黒いACの銃器から咆哮が上がり、白い閃光のごとき一閃は、真っ直ぐに別のACを捉え、瞬く間に新たな鉄屑が積み上がってゆく。

 巨人の銃器から着脱したマガジンが落下して真下にあった廃車を押しつぶし、機体を浮かべるプラズマジェットの爆風が周辺の信号機や街路樹をこれでもかとなぎ倒していった。

 

 ──そんな光景を、ずっと見ていた。

 

 

 

「こんなところで、何をやっている」

 

 

 少年がそのくぐもった声を聞いたのは、街の破壊が始まってしばらく経過した頃のことだ。

 長い間、彼は呆然としていた。

 全身が熱を帯びて身動き一つ取れない中、彼の目の前には、気が付けば全身に強化外骨格の特殊スーツを着込んだ男が佇んでいた。

 

「……?」

 

 焔に包まれた中で、男だけが異彩を放っている。

 答えぬ彼に、彼はこう続けた。

 

「あれが、憎いか?」

 

 遥か彼方で戦闘を続けている巨人を指差しながら、彼はそう溢す。

 

 少年には知る由も無い話であるが、今現在街を破壊しているAC──漆黒の塗装がなされている──は、今現在最上位のランク保持者である、とある伝説のレイヴンのそれだ。

 

「あいつが、街を……」

 

 それ以降、声が出なくなる。尋常では無い熱風で喉がやられたらしい。掠れ声を続けた青年は、やがて声を出すことを諦め、弾痕だらけの壁に背中で舐めるようにしてもたれながら崩れ落ちた。

 

 もう終わりだ。

 ここで死ぬのが自分の運命なのだろう。

 

 少年は、受け容れた。

 

 ただし。

 男は彼を見放さない。

 

「……貴様、死にたくないか?」

 

 ぎろりと。小さな眼球が、フルフェイスの男を見据える。

 

 その瞳は、腹の奥底で煮え滾るかのような、激しい憎悪に満ちていた。

 

「──いいだろう。私と来い」

 

 外骨格の剛腕が動く。くたばった少年の細腕を無理やり引き起こすと、男はそのまま小声で呟いた。

 

「こちら《B》。孤児を見つけた。回収して適性を確認する」

 

「──ああ。そうだ。二十分後、研究所へ帰投する」

 

 彼には理解できない言葉の応酬を終えた後、男はヘルメット越しにもう一度少年を見据えた。

 

「貴様、名は?」

 

 ふるふると声が出ない代わりに首を横に振った。

 少年に、名前と呼べるものはなかった。

 

「そうか。ならば貴様は、今より序列11位、ナンバー《J》だ」

 

 ジェイ、と掠れた声で呟いた後、少年の意識は途絶える。

 

 

 これは、ネクスト開発黎明期の記述。人類のおぞましい歴史の数々を塗り替え、ある日世界地図から消滅し、遂には闇に葬られた、彼らの物語。




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