ARMORED CORE 4 / Answer とある傭兵の記録   作:さかき(ヒロタカリュウ)

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SEED A HOSTILE EARTH

《エグザウィル、倒壊していきます》

 

 レイレナード本社『エグザウィル』。鳥を捕まえる落とし籠の罠にも似た建築物の支柱に、最後のグレネードが叩き込まれた。爆圧が鉄骨を破壊し、やがて巨大な傘が崩れ始める。

 

《作戦成功、レイレナード社、壊滅……》

 

 オーエンは空中からその様子を眺めていた。エグザウィルの崩壊を見届け、彼はそのまま作戦領域から離脱し、AMSのリンクレベルを戦闘モードから通常モードに切り替える。頭の中にこれでもかと流れていた情報の本流に栓がされ、やかましく鼓動していた心臓が徐々に落ち着きを取り戻す。ようやく一息をつくことができた。

 

《いつから、こんなことになったのかしら……》

 

 色々あった。いつどこで死んでいてもおかしくはなかった。ここまで生きながらえて来られたのは──ひとえに、執念だろうか。

 

《でも、これで全ておしまい。本当にお疲れ様。……帰還してください》

 

「……ああ」

 

 オーエンの視線の先に、ネクスト運搬用の大型ヘリが見えた。

 

 

 

『エミールから連絡があったわ。ジョシュアも、アクアビット壊滅に成功したみたい』

 

『これで、リンクス戦争も終わり……勝手な理由で、たくさんの人が亡くなって、汚染ばかりが広がって……』

 

『あなたがいなければ、まだ、続いていたかもしれない。……本当に、ご苦労様』

 

『帰ろう、アナトリアに』

 

 

 

 アナトリア到着と同時に、オーエンは五名の救護班によって医務室に搬送された。意識のない彼から対Gジェルにまみれたスーツを剥ぐと、出てきたのは汗だらけの痩せ細った姿だった。AMS負荷によりオーエンの体は限界を迎えていたのだ。今後暫く安静にしなければ、限界を迎えた脳がどうなってしまうかわからない、とまで言われた。

 

「……」

 

 フィオナは黙ってそれを見つめている。彼を追い込んだのは彼女で、エミールで、そしてアナトリアだ。オーエンは、彼女たちのために死ぬことに、なんの躊躇もしていなかった。

 

「…………うん」

 

 

 

 オーエンが医務室に運び込まれてから三日が経った。未だに意識は回復しない。作戦の後は、だいたいいつもこうだ。最長では一週間、目を覚まさないこともあった。これが最後だと、何度も覚悟した。それでもフィオナはパイプ椅子に座って、彼の左手を握りながら辛抱強く待った。

 

「オーエンのおかげで、アナトリアの経済も随分回復したの。それでね、昨日エミールが、お祝いの小さいパーティをやろう、って言ってくれたの」

 

「……ごめんなさい。あなたを追い込んだのは、私たちなのに。お祝いだなんて、言う資格ないよね」

 

「目が覚めたら、温かいご飯を用意するから」

 

 

 危篤状態、と言われた。点滴と人工呼吸器でかろうじて命が繋がれているものの、回復は見込めないのだという。

 

 その時だった。

 

 アナトリア中に警報が走った。

 

 

 ***

 

 

『アナトリアに接近中の、所属不明機体を確認』

 

 つんざく不快な警報で、オーエンは目を覚ました。

 フィオナの声が館内に響いている。

 

『あれは……何故あの機体が? オーバードブースト、速い!』

 

『──来てはダメ!何かおかしいわ! ……ザ─ザザ』

 

 ドン、と清潔な医務室を照らしていた照明が一斉に落ちた。けたたましいサイレンとともに赤く光っていた警報ランプも沈黙し、しばらくした後にパチン、と緑の非常灯が点灯した。

 

 局所的な停電ではない。アナトリアが何者かに襲撃されている。

 

「ぅ……ぁ……」

 

 掠れ声で呻きながら、オーエンはベッドから起き上がる。点滴をしていたチューブを強引に引きちぎった。体を支えようとしたが機械の右手はこれっぽっちも反応を返さず、そのままバランスが崩れて床に倒れ落ちてしまう。

 

「く、そ……!」

 

 時間の感覚が曖昧だった。首裏のAMSジャックに意識を集中するが、義手は沈黙していた。やはり、右手はどうにも動かないらしい。

 彼は脇のボタンに触れて機械義手を取り外すと、それをフルスイングで扉に叩きつけて破り、這い蹲るようにして地下のACSISに急いだ。

 

 

 

 非常灯だけの暗がりの中で、オーエンは時間をかけて影よりも黒い巨人に辿り着く。

 

 最後の任務を終えたにもかかわらず、《ノワール》の名を与えられたネクストは整備された状態だった。恐らく何があってもいいようにエミールあたりが手を回していたのだろう。結果的に、その選択は正解だった。

 

 

 

 パイロットスーツをなんとか着込み、洗浄室を抜け、コクピットに滑り込む。考えるまでもなく左手が勝手に起動シークエンスを入力した。シートにもたれると、首裏のAMS受信機と機体とが接続される。

 

 ドクンと心臓が跳ねるのがわかった。オーエンと繋がった瞬間、文字通り《ノワール》には命が宿る。コジマ反応炉の稼働とともにジェネレータが起動し、人工筋肉たるACSに莫大なエネルギーが循環されてゆく。

 

 闇の中で金色のアイセンサーがぼんやりと閃いた。AMSを通じて網膜投影されたハンガー内部がオーエンの視界に映った。

 程なくして、どしんという爆発が遠くから聞こえてきた。

 あまり猶予はない。

 

「……行くぞ」

 

 誰にでもなく、オーエンは呟く。生身の状態では要介護老人じみているが、ネクストと繋がっているときだけは別だ。意識ははっきりとし、ぼやけていた視界は急速にクリアになる。手足は筋肉の衰えた生身の肉体よりもよっぽど柔軟に動いてくれる。

 

 どうせもう使うことはないだろう。ハンガーの非常用ゲートを開くボタンを叩き割り、強制的に上部ハッチを解放させると、オーエンはそのままフルスロットルで上昇した。

 

 

 

 

『遅かったな……』

 

 渋い男の声が、通信回線を介してオーエンの脳髄に叩き込まれる。

 

「──、」

 

 よく、知っている声だ。

 声の主人に気付き、オーエンは僅かに瞑目する。

 ──ジョシュア・オブライエン。

 

『……言葉は不要か……』

 

 セピア色の燃ゆるアナトリアの中心に、白亜の巨大なネクストが見えた。

 

 奴が。

 どうして。

 

 疑問は尽きない。

 だが、そんな疑問を浮かべている暇など、ただの一秒もなかった。

 

「──ッ!?」

 

 オーエンは思わず右へクイックブーストを吹かした。僅かに遅れて白い閃光が迸り、地面を照らしながらノワールの真横を駆け抜けていった。PAに掠めてごっそりとコジマ粒子が吹き飛び、オーエンは戦慄する。

 

「コジマライフル……か」

 

 異形のネクストは一見アリーヤ・タイプに見えたが、違う。全高がイメージと合わない。ネクストのゆうに1.5倍相当の巨体だ。どちらかといえば、少し前に戦ったレイレナードの無人ネクストに近しい。その両腕にはそれぞれこれまた巨大な兵器が吊るされており、今しがた発射されたコジマライフルは左腕部のそれだった。

 

「もう片方は……ガトリングガン!」

 

 認識した刹那、被照準警告がIRSとAMSを経由してオーエンの脳髄に叩き込まれる。ノワールの両脚、サラーフの脚部フレームが信じられないエネルギーを蓄えて真横へ跳躍し、寸毫の差で無数の鉄の雨が横薙に通過した。

 

 無数の点、どころではない。

 面としての、圧倒的な驟雨(しゅうう)

 

 見えただけで、五本のガトリングガンが束ねられている。破壊性を追求した頭の悪い兵器に歯噛みしながら、オーエンも反撃に入る。

 

 両腕のライフルを起動し、発射──そうして、オーエンは再び戦慄することとなる。

 

 消えた。

 

 ドヒャァ、と爆発にも似た音を轟かせながら、白亜の巨人の体躯が眼前から消失した。100Gを超える加速のようにも見えた。

 100メートルにも及ぶ巨大な炎の尾を引くクイック・ブーストはさながら瞬間移動だ。オーエンは夢中でクイック・ターンを決めて再照準し射撃するが、今度はぶ厚いプライマルアーマーに阻まれて無効化される。

 

「チッ……!」

 

 巨人が左腕を構えた。オーエンは咄嗟にバックブースト、グレネードを起動して真下に発射。燃ゆる大地が爆ぜ、舞い上がる土の粉塵はカーテンのような盾となる。超圧縮されたコジマ粒子がレールガンの如く射出され、砂塵に直撃し全てが薙ぎ払われた。

 

 消えてゆく。

 アナトリア高原の大地が一瞬で蒸発した。

 

 そして、コジマライフルの余波によって、ノワールのプライマルアーマーもまた消失する。整波装置が獣の咆哮のような異音を上げながらコジマを出力するが間に合わない。今、ガトリングガンの追撃を受けたらひとたまりもないだろう。

 

 オーエンはサイドクイックから前方へクイックし一気に接敵。あらぬ方向へガトリングを構える巨人の懐に潜り込んだ。

 

「うおおおおッ!!」

 

 獰猛な叫びを上げながら、オーエンは左手のライフルをぶん投げた。白亜のネクストがガトリングを構えるが僅かに遅い。巨大な砲弾となったそれはプライマルアーマーを食い破りながらがきゃりと装甲を軋ませて直撃し、一瞬だけ巨体のバランスが崩れる。

 

 その隙を逃さずグレネードを発射、大爆発を起こす機体に更にクイックブーストで肉薄し、格納していたレーザーブレードを発振して一気に振り抜く。

 

 その直前。

 

「──ッ」

 

 巨人の周囲に無色の状態で成形されていたコジマ粒子が眩く発光し、一気に中心へと凝縮されていくのが見えた。オーエンは身の毛のよだつようなプレッシャーを感じ取ると、咄嗟に大地を蹴り真横へ跳ぶ。その瞬間、巨人を中心として大爆発が起きた。

 

「がッ──、なん、だ……!?」

 

 それは後の世にアサルトアーマーとして広まる、プライマルアーマーを圧縮・コジマ爆発させることによる全方位攻撃であった。

 わずかに回復していたノワールのPAがたまらず吹き飛び、攻性転移したコジマ粒子がノワールの装甲を頭からつま先まで舐めるように駆け抜けた。

 

 そしてそれを受けて、ノワールが沈黙する。

 

 がくんと揺れるとコクピットが暗転し、網膜投影されていた視界も途切れてしまった。

 

「システム、ダウン……?」

 

 ──今のでAPが尽きたのか。

 網膜投影されていた視界が遮断され、闇に沈んだコクピット内が眼に映る。

 ズシリと右腕が重く感じた。AMSを強制解除されたことで、機械義手に通っているはずの擬似神経が死んだらしい。対Gジェルの中を力なく漂う右手に目をやり、オーエンは再び首筋のAMSに意識を集中する。

 

 ──まだだ。

 

 装甲耐久値は基準オーバー。思考回路は焼き付いたかのように鈍く、これ以上酷使すれば脳がどうなるかもわからない。

 

 だが。

 

 ここで諦めたら、アナトリアは。フィオナはどうなる。

 

 

 ──決断した。

 AMSを再起動。

 失敗。

 再アクセス。AMSを再起動。

 失敗。

 

「……まだ、やれるだろ。お前なら……!」

 

 AMSを再起動。

 成功。

 

「かッ──ぁ、」

 

 どくん、と心臓が一際脈打った。

 オーエンの中から、得体の知れない何かがごっそりと持っていかれたかのような錯覚があった。

 

 鼻先が気持ち悪い。唇に垂れて鉄の味がする。バチンと音がしたかと思えば、直後には左の耳からあらゆる音が消えた。対Gジェルに満たされたコクピットの左半分が、真っ赤に染まって見えなくなった。その全てを歯を食いしばりながら耐え凌ぎ、半分しか見えない闇の虚空を睨む。

 

 ──だからどうした。

 

「そうだ──くれてやるから、力をよこせ……!」

 

 ネクストの心臓たるコジマ・ジェネレータが静かに命を吹き戻す。各ラインにエネルギーが再供給される。数万ものアクチュエータで構成された四肢の人工筋肉に、再び力が蓄積されてゆく。

 

『──許しは請わん。恨めよ……俺も、すぐそちらに行く』

 

 そして、回復した通信機から、そんな言葉が飛び込んできた。

 

 オーエンは知らずうちに嗤っていた。

 

「俺は、まだ……ッ!」

 

 血眼になったオーエンの眼球に、光学化された景色が急速に広がってゆく。闇に沈んでいた網膜上の仮想視界、その右半分に炎の世界が再投影され、眼前には緑の粒子弾が今まさに迫っていた。

 

 クイックブーストでは間に合わない。

 

 ──左手を捨てよう。

 自然とそういう感想が浮かんだ。左側を前にするように身を捻り、衝撃を受けるとほぼ同時に左肩から最後のクイック・ブーストを噴射。コジマキャノンによって散布の始まっていたコジマ粒子が吹き飛ばされ、直撃した左腕部が即座に溶解した。グレネードキャノンをデッドウェイトと判断し即座にパージ。

 

 身軽になったノワールが翻り、獣のように跳躍して巨人へ襲いかかる。残った右手のマーヴを照準するが、すぐさまガトリングガンによる追撃があった。

 

「──ッ」

 

 残った右肩からクイックブーストを噴射。左への回避しか使えないが気にしない。右脚を軸にサテライト軌道のように照準を続け、巨人の左腕部関節部を照準する。

 

 ──あれを、超えるには。

 

 オーエンはAMSにかけられたウェイトを躊躇なく二つ(ほど)いた。第二リミッター解放(リミテッド・ハーフ)。封印されていたアリーヤの副腕が立ち上がり、がしゃりとマーヴの銃底を固定する。

 口内に広がる鉄の味を噛み締めながら、オーエンは息を止めた。

 

 ──発射。

 破裂音がプライマルアーマーに弾かれる。銃弾がPAの密度によってぐにゃりと歪んで消滅する。

 

「ッ……!」

 

 オーエンは寸分違わぬ位置に再発射する。この位置、この角度。この位置関係。二射目の銃弾は、一発目の弾丸軌道を再生するように突き進み、穴の空いたプライマルアーマーの「隙間」を正確に通過する。

 

 ──直撃。

 

 バガン!!と金属が軋み、マーヴの一撃をもってしてフレームが露出した白亜のネクストの左腕部を両断していた。破損した関節部であれだけの質量を抱えることはできない。火花を散らしながら超重量の腕部とコジマライフルが一気に欠落する。転がり落ちるそれを見やりながら、オーエンは再跳躍してフェイントをかけた。

 

 ──左腕をやった。これでイーヴン。

 

 だがまだ安心はできない。右腕部に吊るされた五連装ガトリングガンの常軌を逸した破壊力は健在だ。さっきの爆発攻撃をもう一度やってこないとも限らない。

 

 前へ、左へ、左腕部を丸ごと失った状況下で、白亜のプロトネクストの周囲を飛び回るノワール。ふと、巨人が右腕を振り上げる、その予備動作が、視えた。

 

 ──ここだ。

 ──《ノワール》。我が半身よ。最後の仕上げを行う。

 投げかける言葉に意味はない。AMSとIRSを通じて、互いの中枢たる脳はリアルタイムで繋がっている。だからこれは、自らへの宣言だった。

 

 ──行くぞ。

 

 オーエンはノワールに備えられた最後の軛すら取り除く。AMSにコマンド。全システム禁制解除。あらゆる負荷を受け入れ、リンクスの脳にかけられた全てのリミッターを外す。がちゃりとアリーヤ・アームの肘部が再展開し、その副腕が格納兵装のレーザーブレードを携えながら起動した。

 

 右手で二つの武器を同時に扱う。それがどれだけ負荷のかかる離れ業であるのかは、もはやいうまでもあるまい。

 

「────、」

 

 思考が加速してゆく。

 それはAMSによって脳のリミッターが解放されていることの証左だった。他人が一を考える間に十を考え、他人が十を考える間に百を考える。四段階あるうちの最終深度(アンリミテッド)。オーエンの前には、その扉が見えていた。時間が無限にも引き伸ばされているような感覚。高速で交錯する二機の最中で、彼は全てを()()()()()捉えていた。

 

 途端に、莫大な情報がAMSを伝ってオーエンに雪崩(なだ)れ込む。普段はAMSでカットしている、リンクスを保護するためのあらゆる情報が彼の脳を蝕んでゆく。

 それがAMS適正の差だった。必要な情報と不必要な情報の取捨選択のスピードの差。いま、オーエンは何倍もの適正を必要とするレベルまで深く深く繋がっていた。

 

 コンマ秒の一挙手一投足がわかる。その気になれば、今のオーエンは迫り来る砲弾のディティールを静止画のコマ送りのように視認することだってできた。何万通りもの対策が脳内で高速演算されてゆく。ほんのわずかにゆっくりと動いている相手の挙動、その情報の蓄積が、やがて正しい一つの対戦術論を構築してゆく。

 一撃で最適解を導き出せてしまうが故に、彼らはイレギュラーな存在とされたのだ。

 

 つまり。

 それこそが。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 束ねられた五本のガトリング、それぞれの銃身が回転を始めるのが見えた。その時点で、彼の加速した思考は未来予知のごとく弾道計算を完了している。

 ショットガンにも似た究極の破壊は、一秒と経たずプライマルアーマーを食い破り機体を屠るだろう。

 オーエンは死を直感しながら演算した弾道(イメージ)をIRSに呑ませる。コンマ一秒とかからない。全身の整波装置の微細制御。被弾箇所を()()意識を集中。コジマの還流装甲が前方で収束し緑に輝きながら、来たる鋼鉄の弾雨に立ち向かった。

 

 覚悟はできたか。

 目の前の脅威は理解したか。

 

 ──いける。

 

 発動(ダイヴ)

 AMS、完全解放(アンリミテッド)

 

 

 時が停滞する。

 一秒の密度が何倍にも増幅してゆく。

 オーエンは未だかつて、誰も到達したことがないAMSの境地へと没入した。

 

 

 

 ───重低音の唸りを上げながら発射されたガトリングガン273発のうち48発がプライマルアーマーの外周を通り過ぎ81発が回避予測先を潰すための牽制で残る144発が直撃を狙う弾道でそのうち必殺となる29発目から54発目までを整波装置の制御で完璧に防御し《プライマルアーマー維持不可能》致命の弾幕をくぐり抜けた先の72発目から96発目までを副腕のレーザーブレードで両断し《右腕部装甲破損》発振器が熱量で自壊するほどの出力を絞って続く102発目から135発目までを返す刀で叩き落とし《レーザーブレード耐久限■突破》するりと伸びる龍のアギトにも似た砲身を持つマーヴを振り回し139発目と143発目に弾丸をぶつけることで相殺し《AMS危険状態》赤みがかった視界の半分がついに完全に黒く染■り《表面装甲剥離》ダイレクト・リンクされた機械義手がひとりでに発熱■始める《ACS損害発生》気にするものか《FCSに問■発生》ここで決める《警告》ぼろぼろのマーヴに最後のマガジンが交換される《右腕部機能低下》右腕の悲鳴を無視して照準し《サブアー■機能停止》白銀の装甲を睨み■け発射す◾️《危険》撃て撃て■て撃て《危険》巨人のPA表面がみるみるほつれ始める《■険》バガンとノワ■ルの胸部装甲を貫通したガトリ■グの砲弾がコクピッ■に到達し対Gジェル■揺らした《危険》構うも■か《危険危険》ここで必■《危■■険危険》止める!!《AMSに問題■■》

 

 バチンと火花が散ってシステムがダウンした。

 オーエンの仮想視界が闇に沈み、貫かれたコアからはかろうじて燃えるアナトリアの生の情景と白亜のネクストが見えていた。

 かまわない。むしろ視界は開けているといっていい。

 ほぼ融合に近いAMSリンクの残滓は、オーエンの右手を文字通りノワールの右手たらしめている。

 あとは引き金を引くだけだ。

 

 セピア色に染まった視界。破壊されたコア前面から直接白亜の巨人を照準する。

 見えないはずの鋼鉄の彼方で、男が笑ったような気がした。

 機械の右手がトリガーを絞る。握られたライフルの龍の口から最後の一発が放たれた。風穴の空いたプライマルアーマーを寸分違わず通過すると、胸部の曲面装甲を滑って昆虫のような赤目の複眼を持つ頭部を貫き、そのまま最奥のオーバード・ブースターにまで到達する。

 

 

 それで終わりだった。

 

 

『終わり、か。がはッ……。──これで、いい』

 

 背面で爆発を起こしながら、白亜の巨人が停止する。見れば見るほど異形な姿は悪魔にさえ見えた。ノワールも全身に穴を開け火花を散らし、コアの下部から対Gジェルを漏らしながら崩れ落ちるようにして膝をついた。もう一歩も動けない。そもそも、AMSは最後の最後で切断されている。

 

 汗が溢れ出し、オーエンの視界がぐらりと揺らぐ。意識が遠のいていく。

 

 ──じゃあな、ジョシュア。すぐに、俺もそっちに行く。

 

 巨人の爆発とともに、光が消える。何も見えなくなる。思考が途切れるその直前、オーエンは守り抜いた彼女の声を聞いた。

 

 

『ねえ、聞こえる? ……ありがとう』

 

 

 参ったな。

 

 まだ、死にたくない。

 

 

 ***

 

 

「彼女は、あの男を連れて、アナトリアを去った」

 

 白い髭を生やした老人は、言った。

 片眼鏡をかけたその老人の言葉に、対面する白衣を着た小人のような初老の男がようやくメモ帳に走らせるペンを止めた。

 

「私には、彼らを止める権利も、言葉もなかった」

 

「……これ以上はやめておこう。それは、私の語るべき物語ではない」

 

 

「……そうかい。それが、彼らの全てか」

 

 白衣の男が呟き、白髪の老人は首肯する。

 

「……これだけの金を積んで、彼らについて調べ……あなたは、これからどうするつもりだ? ──アブ・マーシュ。いや、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 白衣の男はメモにペンを走らせたまま、さして興味もなさげに答えた。

 

「その答えが知りたければ、契約のうちに入れとくべきだったかもネ。ボクは彼らの情報を手に入れる。君は余生をクレイドルで過ごすことができる。ウン、実に良い取引だ」

 

「……でも、そうだね。一つだけ」

 

「──ボクは、ジョシュアの仇を取りたい。ああ、安心してくれ。何も《彼》を殺そうっていうンじゃあ、ない。そこは理解しているとも。ボクはボクなりのやり方で、企業の連中を後悔させてやるつもりなのサ」

 

 パイプ椅子から立ち上がり、メモ帳を乱雑に鞄に押し込むと、アブと呼ばれた白衣の男は部屋から出てゆく。

 

『終わったのか?』

 

 外からはくぐもった女の声が聞こえた。護衛か何かだろうか。……食えない男だ。

 

「──ああ、ジュリアス。長かったけど、これでようやく、ボクもスタートラインに立てそうだ」

 

 

 

>>To be the "NEXT".

 

 

〔戦績〕

Irregular No. アマジーグ / バルバロイ

Irregular No. スス / アシュートミニア

 

No.01 ベルリオーズ / シュープリス

No.02 サーダナ / アートマン

No.03 アンジェ / オルレア

No.05 メアリー・シェリー / プロメシュース

No.09 サー・マウロスク / ラムダ

No.10 メノ・ルー / プリミティブライト

No.12 ザンニ / ラフカット

No.14 シェリング / クリティーク

No.15 アンシール / レッドキャップ

No.19 フランシスカ / ヘリックスI

No.20 ユージン / ヘリックスII

No.21 P.ダム / ヒラエリス

No.40 ジョシュア・オブライエン / ホワイト・グリント

 

***

 

ネクスト《ノワール》

 

HEAD:HD-HOGIRE

CORE:SALAF-CORE

ARMS:03-AALIYAH/A

LEGS:SALAF-LEGS

 

F.C.S:INBLUE

MB:MB107-POLARIS/CB-JUDTH

SB:AB-HOGIRE/AB-HOLOFERNES

BB:LB-HOGIRE

OB:03-AALIYAH/O

GENERATOR:GAN01-SS-G

 

ARM WEAPON R:04-MARVE

ARM WEAPON L:03-MOTORCOBRA/MR-100R/MR-102R

 

SHOULDER WEAPON:-

 

BACK WEAPON R:OGOTO

BACK WEAPON L:RDF-O200

 

HANGER WEAPON R:EB-O600/-

HANGER WEAPON L:EB-O600/-

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