ある日、秘書艦として働くエンタープライズと指揮官の元に赤城が訪れる。どうやら自分に秘書艦をやらせて欲しいそうだ。仕方なく、二人は午後の秘書鑑を赤城に任せることにする。その夜、エンタープライズは赤城に廊下で出会い、衝撃の事実を耳にする。

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皆さん、ご無沙汰しております。ヤンデレ少女専属小説家のバンバババルタリアンと申します。前回の、エイジャックスとクリーブランドの作品はいかがでしたでしょうか? ヤンデレアズレン初期作品は、比較的マニアックなヤンデレがたくさん盛り込まれていたかと思います。これからお見せする新作品は、基本的なヤンデレをお見せしたいと思います。
今回ヤンデレ化する少女はエンプラっ。ハンサムなマスクと、均整のとれた体。まだ着せ替えが一つしかなくて結婚するにも作者のお財布がしんどいこの少女は、私のヤンデレテクニックに耐える事が出来るでしょうか?それでは、ご覧下さい。


エンタープライズはしきかんのおよめさん。

男は普通の海軍将校であった。

 

 

これといって非なる力だったり、天賦の才を持ち合わせてる訳でもなかった。

 

 

しかし、彼は人に好かれる才能を持っていた。

 

 

教師や上司はもちろん、異性すらも引きつけ周りから信頼を得ることが得意な人間だった。

 

 

これは彼の「平等な優しさ」と少し不器用なところから生まれる「愛くるしさ」が理由である。

 

 

持っていて絶対に損をしないであろう才能。

 

 

社会において、どんなものよりも重宝され羨ましがられるモノ…人々は普通、そう思うであろう。

 

 

しかし、彼の世界ではそれこそが奇妙にも悲劇を生む一因となってしまったのだ…

 

……………

 

 

 

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

………

 

 

 

 

男は普段通り、執務室で書類や敵地に関するデータの整理を行っていた。

 

今は、朝の10時。今日はいつもよりも遅く作業が始まったようだ。

 

 

「エンタープライズ。この資料とこのデータを後でユニオン宿舎に持って行ってくれ。」

 

「あぁ、直ぐに持っていこう。指揮官はこの後何を行うつもりだ?」

 

 

彼女の名はエンタープライズ。男がまだ新米の指揮官だった頃に始めてやってきた、正規空母である。その力は文句なしであり、多くの修羅場をくぐり抜けてきた実力の持ち主である。

 

 

「今日は以前編成したロイヤル艦隊の調整を演習で行おうと思うんだ。エンタープライズ達はいつも通り特別海域を廻ってもらうつもりだ。」

 

「わかった。じゃあ書類を届けに行くとするか。」

 

 

彼女もまた前世の記憶を持つ艦船であり、大戦中多くの活躍をした船である。

 

現在この泊地にいる艦船たちも彼女のことをよく知っているそうだ。

 

ほとんどの彼女に対するイメージは最強、最高の幸運の持ち主、英雄などプラスの評価がとても多い。

 

しかし…中には彼女のことをよく思わないモノも僅かにいる…

 

 

「あぁ、よろしく頼むよ。」

 

「あ、そういえば、指揮官のことをもっと知りたいという娘も多くてな…

できればなんだが我が陣営の宿舎にも顔を出してもらえないかな?」

 

「うーん、今度ゆっくり時間が取れたらにするよ…ちょっと危ない匂いが…」

 

「ふふっ…そうか、無理な誘いを言って悪かったな。」

 

 

そう言うと彼女は席を立ち、廊下へつながる執務室のドアノブに手をかけた。

 

ガチャと扉を開けるとそこには…

 

 

 

 

 

不敵な笑みを浮かべ、指揮官に熱い視線を向ける赤黒の着物姿の女性が立っていた。

 

 

重桜の一航戦、赤城。

 

 

彼女もまたエンタープライズをよく思わない女性であった。

 

「指揮官さまぁ♡今日も私!赤城が!指揮官様のために執務をお手伝いさせて…

 

 

エ、エンタープライズ…」

 

「あ、赤城…どうしてここに…」

 

 

二人の間に不穏な空気が漂う。男はこの空気を和ますために口を開いた。

 

 

「あ、赤城かぁ…今はエンタープライズが手伝ってくれてるから大丈夫だぞ…そ、そうだ!午後の執務はお前が秘書艦になってくれ!それでいいか?」

 

「むぅ…指揮官様にそう言われるなら…わかりましたわ…でも指揮官様!♡私はいつでも永続秘書艦のお誘いを受け付けておりますわ♡いや、むしろ私の方から……うふふふふふ♡」

 

赤城は自分の頬を撫でながら不敵な笑みを続ける。

 

「…なら午後は休みとするか…」

 

 

そう言い、エンタープライズは執務室を後にした。

 

彼女の目の奥が少し暗くなった気がした。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

その日の夜、補給を終えたエンタープライズは指揮官へ明日のスケジュールの確認のために廊下を渡って執務室に向かっていた。

 

すると、奥からコツコツとこちらの方に誰かが歩いてくる音が聞こえた。

 

ーーその正体は赤城だった。

 

面と向かい合った二人はお互い立ち止まった。

 

「…何をしている?お前の担当時間は終わったはずだぞ?」

 

「あらぁ…なんだか気分が高揚してて、廊下をつい徘徊してしまいましたわ…うふふふ…」

 

 

普段は指揮官の前以外では見せることがない、赤城の不敵な笑みを見て気味が悪くなった。

 

 

「なら、さっさと自室に戻れ…そろそろ風呂の時間になるぞ。」

「わかりましたわ…」

 

二人は再び歩き出した。

 

お互いがすれ違おうとした瞬間、エンタープライズの耳元にとても信じがたい言葉が囁かれた。

 

 

 

 

 

「…指揮官様の純潔…とても美味でしたわぁ…♡」

 

 

「‼︎‼︎?」

 

驚き振り返ると、すでに赤城はいなくなっていた。

 

彼女の心は混乱状態に陥った。

 

 

そ、そんな…まさかそんなはずは…

 

いや、ありえない…あいつがそんな簡単に手を出せるほど指揮官は甘く…

 

奴に虚言癖はあったか…?

 

そんな…

 

嘘に決まってる!

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

 

 

 

 

 

彼女は急いで執務室に向かい、扉を勢いよく開けた。

 

執務室には服装の乱れた男が顔を赤くし、少し汗ばんだ状態でソファに横たわっていた。

 

 

「…指揮官…」

 

「はぁ…はぁ…エンター…プライズ…?」

 

「どうして……あの女に心を許したんだ…」

 

「な、ど、どうしてお前が知っているんだ!?赤城はさっき…」

 

「どうしてだ!」バンッ!

 

赤城は壁に拳を叩きつける。

 

目の奥はさらに暗く、濁ってきた。

 

 

「ご、誤解だ!あれは決して僕からじゃない!赤城が無理やり…どうしてもと、言うことを聞かないから仕方なくなんだ…僕が心を許したわけじゃ…」

 

「…ふざけるな。」

 

エンタープライズは男に近づき、喉元を強く掴んだ。

 

 

「ガハッ…!エンター…プラ…イズ…な…にを…?」

 

「私は…あなたの正しき行動と美しい心、精神に惹かれ…あなたと第二の生を共にするつもりだった…そして、あなたに心すら奪われた…だから…この戦いを終わらせてあなたの指し示す明るい未来を築くつもりだったんだ…」

 

「わかっ…てるっ…オエッ!だから…きみ…を…秘書官に…」

 

「…これが何か知ってるはずだ…」

 

 

そう言い、彼女が男に見せたのは…

 

 

 

 

 

 

 

 

美しい指輪をつけた薬指だった。

 

 

「…!」

 

「私は…1年前、これをもらって…本当に嬉しかったんだ。魅力的な娘が沢山いるこの泊地の中で、私を一人選んでくれたことを…」

 

「あ、当たり前だろ…君は…僕が一番…信頼する、パートナー…なん…だから…。」

 

 

「フッ…なら、どうして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうして私にキスすらしてくれないのだ?

 

 

そう言うと彼女は男の首を絞める手の力をより一層強くした。

 

 

「ガハッ…まっ…待ってくれ…」

 

「私はたしかに…口調だったり、態度が男勝りなところがあるかもしれない…だけど、心はただの乙女なんだぞ…いつか私の初めてを奪ってくれる…そう待っていたんだ…全く、指揮官は随分と奥手な人間だと思っていた自分が馬鹿らしいなぁ…」

 

「わ、わかった!正直に話す!だから離してくれ!」

 

首を絞める力が少し弱くなった。

 

「はぁ…はぁ…俺は…君たちを平等に部下だと思い…そして大事なパートナーだと思っている…お前に指輪を捧げたのは…最も信頼でき、この泊地の誇りであるからだ…だが、それ以上の密接な関係は、ほかの娘たちの反感を買うはずだ…だから…手を出すことができなかったんだ…」

 

男は本当のことを言っていた。彼の主張の中に嘘は一つもなく、その行動は混じりけもない平等の優しさの精神からであった。

 

だが…

 

 

「…嘘だ…」

 

「…え?」

 

「私を…単に女と見てなかったんだろ…?なら、どうして赤城には手を出せて私には出せないんだ…?

…色気がないから?可愛げがないから?お淑やかさ?私は何もかもが足りないからなんだろ?なぁ、そうなんだろ!?」

 

エンタープライズは華々しい戦果と裏腹に、建造当時にしては平均的且つ特徴のない空母だった。

 

そして現世の彼女もそれと似たようなコンプレックスを持ってる。

 

サラトガのような元気さ、

 

ヨークタウンのようなお淑やかさ、

 

セントルイスのような色気のような特徴の一つすら持っていない凡人だと彼女の中で勝手に決めつけてしまっていたのだ。

 

そして彼女は戦って戦争の終結こそを使命と気質により、赤城のような思いを露わにする積極性を発揮することができなかった。

 

あるのは強さと幸運。

 

それだけでは、恋というのは成就しないものである…

 

まして、「平等」を大事にする男相手なら尚更である…

 

 

「そんなことはない…あれは単に、彼女の士気の向上のためであって…誰にも言わないと言う約束の元、仕方なく行っただけで…それに、お前にも…良いところがたくさんあるはずだ!」

 

「じゃあ言ってみてくれよ!!私の特徴、私の好きなところ!指揮官は、私のような戦闘以外に価値のない艦船など道具程度にしか思ってないのだろう⁉︎指輪をくれたのも、ただの戦力の増強だけじゃないのか!?」

 

「……」

 

男は危機的状況でも決して取り乱すことのない、彼女の必死の嘆きを見て言葉が出てこなかった。

 

「ははは…結局…言えないじゃないか…言えないんだ!そうだな!言えないに決まってるよなぁ……

 

 

やだぁ…

 

私は指揮官の妻なんだ…

 

道具なんかじゃない!そんなことは!絶対にいやだぁぁぁぁ!」

 

 

バトルスターを大戦中、最も多く獲得した彼女すら末路はただのスクラップ。

 

『道具』という扱いは彼女の心を深く突き刺すモノであった。

 

 

「お、落ち着け!エンタープライズ!とりあえず手を離して…」

 

 

男が彼女をなだめようと試みる。しかし、時は既に遅かった。

 

 

 

 

彼女は指揮官の左足を掴み、持っていた弓矢で思いっきり貫いた。

 

 

うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!

 

 

男の左足にかつてない痛みが走る。

 

 

「こ、これ.艦載機を飛ばすための弓矢じゃ…ねぇか…!」

 

「わたし…きめたぞ…ふふふ…♪

 

しきかんがわたしのことをみてくれないなら…

 

わたししかみれないようにすればいいだろ?

 

だから、もうどっかにいってほかのむすめをみちゃうあしはいらない♪」

 

ブチュ

 

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

左足に次いで右足も貫かれる。

 

弓矢は足の筋肉を貫通し、ソファにまで届いて固定された状態になっている。

 

「しきかん…これからは…わたしのいいところ、すきなところたくさんみつけてね?

 

 

しきかんといっしょにずっといるから。ね?」

 

「そんな…あっ、うわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

今度は両手の関節部分に弓矢をねじ込まれる

 

身動きも取れないまま、血液だけがどんどん傷口から垂れてくる。

 

 

「どうして…どうしてこんなことするんだ…なぁ、

 

 

エンタープライズ!!」

 

 

その言葉を聞き、

 

彼女はこう言い放った。

 

 

「ふふふ…だって…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしはあなたのつまだから。

 

 

 

 

 

 

 

愛とはエゴがなければ成立しないもの…

 

これは…平等な愛がもたらした悲劇の物語…

 

 

 

 




最近知ったんですけど映画の「永遠のゼロ」のラストシーンで特攻を受けた空母ってエンタープライズがモデルと言われてるんですね。にわかなんで知識が浅かったんですけど、本当にドラマのある艦船なんだなぁって思いました。
今回はAT-10教徒さんのリクエストによりエンタープライズのヤンデレを書きました!すごい難しかった笑笑
このような感じでリクエストはいつでも受け付けますので感想お待ちしております!


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