「アズラは言っているわ。あなたが吸血鬼である限り、予言の言葉を授ける資格はないと」
「そもそも私はモラグ・バルの信徒ですのよ。アズラがあなたに何をおっしゃろうが、関係ありませんわ」
セラーナとアラネアの睨み合いはもう数十分に及び、同じようなセリフの応酬が何百回と続いていた。アラネアはセラーナに会ったはいいが、彼女が人間に戻らねば一切の協力をするなとアズラから厳命されていたのである。
「アズラの予言を聞きたいのならば、まずモーサルへ行きファリオンという男に会いなさい」
「ですから私は、アズラの信徒ではなくてよ」
「殺せ! ドラゴンを殺すのよ!」
リディアの叫び声がドーンガード砦に響き渡った。
『Zun Haal Viik!!』
リディアはドーンブレイカーをその場に落とす。ドラゴンはその剣を踏みつけるようにして空から砦の屋上に着地する。
「ブルニク・ブロン……私は戦いに来たのではない。ティンバークしに来たのだ」
「このドラゴン、何を言っているの?」
「ふむ……ドヴァーキンのブロドはドヴァーの言葉を話せないのであったな。私は話をしに来たのだ」
「ちょっと待って、あなた見覚えがあるわね。もしかしてグレイビアードの所にいたドラゴン?」
「いかにも。私はパーサーナックス。ドヴァーキンの友だ」
そしてパーサーナックスはドーンブレイカーから足を放しリディアに聖剣を取るように促した。騒ぎを駆けつけてドーンガード部隊が次々と屋上に上がってきたが、リディアは剣を納めて彼らにもクロスボウを納めるように言った。
「それで、ポテマの友人が私達に何の様かしら」
「ポテマ……そう、ポテマが問題なのだ。あれはドヴァーキンであってドヴァーキンではない。我らと共に声の道に進むことを誓ったドヴァーキンは……どこかへ去ってしまった」
ドラゴン特有の地面を揺るがしそうな低い声でパーサーナックスは語り掛ける。
「オダハヴィーング、ヌーミネックス、ヴュルスリョル……ポテマの強大なスゥームに従うドヴァーは多いが……必ずしも全ドヴァーがそうではない。力への服従を望まず、声の道に従う者達もまだ残っている」
「つまりあなた方は我々ドーンガードに味方をする、そう言いたいのですね」
ドーンガードの部隊を掻き分け、高そうなローブを纏った一人のノルドの女性、メイビン・ブラック・ブライアがずかずかと歩み出てきた。
「うむ……そういうことだが、お前は私を信用するのか?」
「私は誰も信用などしません。ですが利用できるものは何でも利用します。あなたがポテマを倒したいと言うなら結構。私の指揮下に入りなさい」
「あなたはここの指揮官じゃない」
リディアがそう言ったが、メイビンに睨み付けられて引き下がった。
「あの薄汚い死霊術師に、自分がただの死体であることを思い知らせてやる必要があります。そのためには不本意ですが例の予言とやらを聞く必要があるでしょう。リディア、セラーナを縛り付けてでも人間に戻してきなさい。それが嫌なら、あの信心深いダンマーの口をどうにかして割らせなさい! さあ、早く行きなさい。ここから人類の反撃が始まるのです!」
メイビンの迫力に、歴戦のノルドであるリディアもすくみ上り、小走りで砦の中へ戻っていく。ドーンガード達もそれぞれ配置に戻り、屋上にはメイビンとパーサーナックスだけが残された。
「皇帝メイビン・ブラック・ブライア、耳に心地よい響きだとは思いませんか?」
それからメイビンはほとんど聞こえないくらいの小声で囁いた。
「ドログ ・バーロ ゙ク・フェイン……」
こうしてドーンガードに、パーサーナックスと彼に従うドラゴン達が味方することになった。