『第2次レッドダイヤモンド戦争』   作:長命寺桜

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第14話 リーチの戦い

 連合軍はマルカルス方面へと進軍したのち軍を二分し、マルカルスへの突入部隊と、ソリチュードからの援軍を迎え撃つ部隊を配置した。マルカルス突入部隊をイスランとオンドルマールが率い、ハーフィンガル戦線をリディアとバルグルーフが率いることとなった。

 マルカルスはドワーフの都市を利用した難攻不落の大要塞。厳密にいえばヌチュアンド・ゼルという都市の一部を利用した城塞都市だ。正門はフォースウォーン部隊に加え、アンデッドの軍隊が厳重に守っており、正面からの突撃は無謀を極める。アンデッドの中には、ヌチュアンド・ゼルに住んでいたと思われるファルメルの姿も混じっていた。

 この部隊を率いるのは野獣のボルクルというマダナック腹心の部下で、暴力沙汰を得意中の得意とするドヴァーキンさえも一目置く凶悪犯の一人である。現在はマルカルスの従士であり、マダナックの副官でもある。

 かつてマルカルスに住んでいたオンドルマールは、来たるべき第2次大戦のためにこの難攻不落の都市に対する攻略計画を練っていた。その作戦はフォースウォーンを使って内部から瓦解させるというものだが、現在フォースウォーンは敵に回り、市民の大半は虐殺され、アンデッドの戦列に加わっていた。

 そのうえ、スカイリムに存在する一般的な攻城兵器では、マルカルスの石壁を突破することは不可能であった。この絶望的な状況の中、連合軍に参加していたブレリナ・マリオンとジェイ・ザルゴという二人の学生が、ウィンターホールド大学のアークメイジ居住区からあるものを持ち出し、オンドルマールに渡した。マグナスの杖―――先の所有者はかのネレヴァリンだともいわれるそれは、射程無制限の長距離ビーム砲を放つ、いわば戦略兵器である。アーティファクトを手にしたオンドルマールとサルモール司法高官の部隊は、連合軍の先鋒としてマルカルス正門の正面に向かう。

「じきにノルドは全員サルモールの奴隷になる……」

 そう言ってオンドルマールは、マグナスの目をマルカルスの正門に向ける。

「見せてやろう。魔術を極めし者の力をッ!!」

 この世の終わりのような音がした。杖から迸った破壊の光が、マルカルスの正門を真っ直ぐに貫き、大爆発を起こす。ドワーフ合金製のドアが真っ赤に炎上し、爆発と共に吹き飛んだ。門の上部に立っていたボルクルはその衝撃でマルカルスの街までふっ飛ばされる。

「私の持つ力を、理解すらできまい。サルモール、前進!!」

 オンドルマールの突撃命令と共に、エルフと人間の連合軍がマルカルス市街地へ突入する。

 

 マルカルス市街戦が始まった頃、ハーフィンガル戦線では既に戦端が開かれていた。空を両軍のドラゴンが舞い、スゥームが飛び交い、吸血鬼と魔術師は互いに魔法を撃ちあい、何千何万の矢が降り注ぎ、その中を前線部隊が衝突する、まさに今大戦最大の野戦が繰り広げられていた。

 リディア率いる最精鋭部隊は前線を突破して街道を突き進んでいた。彼らの目的はただ一つ、ポテマの部下で最大の不死戦力を率いるヴォルキハルの王、ハルコン卿の抹殺である。

「スカイリムはノルドのものよ!!」

「ソブンガルデが待ってるわよ!!」

「死がお待ちかねよ!」

 リディア、ジョディス、イオナを先頭に、アムレン、イリレス、ラッヤ、カルジョ、ムジョル、ウズガルド、ボルガク、アルギス、カルダー、ベルランド、ステンヴァール、デルキーサス、ジェネッサ、虐殺者エリク、さらにはアエラ、ファルカス、ヴィルカスといった同胞団のメンバーやアヴルスタイン・グレイ・メーン、イドラフ・バトル・ボーンなど、あらゆる人種の、あらゆる宗教を持つ、スカイリム最強クラスの戦士達が集結し、死体の群れを強引に突破してゆく。セラーナとアラネア、ファリオン、ファラルダ、マーキュリオ、オンマンド、エランドゥル、イリアなどの魔術師勢も後に続く。セラーナが構えているのはアールエルの弓――星霜の書が予言した、狼の女王を殺すための武器だ。

 進めば進むほど敵の防御は厚くなるが、リディアとジョディスのドーンブレイカーで強引に前線をこじ開け、戦線の奥深くへと突き進んでいく。吸血鬼を一人仕留めれば、アンデッドは灰になって消える。だからリディアとジョディスは最優先で吸血鬼を殺し、戦士達は前進を続ける。

「ホワイトランのためにッ!!」

 吸血鬼長ヴォルキハル――将校クラスの吸血鬼が眩い爆発と共に四散する。灰は灰に、土は土に戻り、一行の行く手を塞ぐものはもはや何もない。黒い太陽を背に、宙に浮かぶおぞましい怪物―――吸血鬼の王、ハルコンの元へたどり着いたのだ。オースユルフ、ヴィンガルモ、フーラ・ブラッドマウスといった強力な吸血鬼達と共に、ガーゴイルの大軍が一行を待ち構えていた。

 そんな中、セラーナは数千年に及ぶ因縁に決着を着けるべく、ハルコンと対峙するために隊列の先頭へと歩み出た。

「愛しいセラーナよ。今でもペットを連れ歩くのを好むのだな」

 リディアとジョディスに守られたセラーナに向かって、ハルコンは昔を懐かしむように言った。

「わたし達がここにいる理由はお分かりですわね」

「お前はアーリエルの弓を手にし、この世を闇で覆った……予言は成就したのだ。なのになぜ抗う? セラーナ……その目は……!!」

 ハルコンは気づく。セラーナの透き通るような青い目に。

「失望したぞ、セラーナ。私がお前に与えたもののすべてを投げ捨てたというのか……いったい何のために!」

「お父様はわたし達の家庭を壊してしまいましたのよ。それに他の吸血鬼も大勢殺しましたわ。あやふやな予言なんかのために。それに飽き足らず、ポテマに従い世界を支配しようとするおつもりですのね。その結果がこれですのよ。お母様の危惧した通りですわ」

「母親を殺してきたのだな。その上その罪を私に押し付けるつもりか?」

「お母様は自ら犠牲になることを選んだのですわ。吸血鬼に生き残るチャンスを与えるために」

「まあよい、私を裏切った娘とこうして口をきくのも疲れてきた。モラグ・バルを称えつつ娘の血をすするとしよう!!」

 それが父と娘の決別の合図になった。ハルコンは周囲にコウモリをばら撒き、一行の目をくらませると一瞬のうちにセラーナの懐に飛び込む。

「勝てると思ったら大間違いよ!」

 だがリディアの剣がその手を阻んだ。ハルコンの持つアカヴィリ刀とドーンブレイカーが火花を散らす。

「これで息の根を止めてやる!!」

 ジョディスが側面からハルコンの首を刎ねようと剣を突き立てる。だがオースユルフの剣がハルコンの死を防いだ。

「俺の邪魔をしなければ両腕を引きちぎらないでおいてやる」

 吸血鬼になってもオースユルフは屈強なノルドだ。ジョディスはそのパワーに弾き飛ばされ、大地に転がった。止めを刺すべく剣を叩きつけるオースユルフ。ジョディスはとっさに白い盾を取り出して重い一撃を防いだ。だがオースユルフはジョディスに起き上がる隙を与えず、そのまま連続で剣を叩きつける。次第に盾が輝きを放ち出す。ドーンブレイカーと同じく、太陽のような眩しい輝きを。

「今日が最後の日よ、吸血鬼!!」

 ジョディスはパワーバッシュを放つ。ただの反撃ではない、今まで受けた力をすべて乗せた強烈な一撃―――アーリエルの盾の衝撃波だ。

「なにぃっ?!」

「この手で……殺してやるッ!!」

 ドーンブレイカーの切っ先がオースユルフの心臓を貫き、大爆発と共にその体を灰に帰す。吸血鬼の大将軍の命運は尽きた。

 リディアの重い一撃は、ハルコンの素早く、奇怪な動きを、それでも幾度かは捉え、その肉体の断片を切り裂いていた。草木は太陽のありがたみをえり好みしない―――メリディアの、太陽の一撃がハルコンの肉体を少しずつバラバラにしてゆく。

「うぉおおおおはあああ!」

 雄たけびをあげながらハルコンに留めの一撃を放つリディア。突如ハルコンの肉体が暗闇に包まれ、リディアの剣を弾き飛ばす。

「ドーンブレイカーが、効かない……?!」

 ハルコンの傷が見る見るうちに塞がってゆく。黒く不気味な光が、何か結界のようなものを形成し、ドーンブレイカーの攻撃を阻んでいた。

「骨から肉を引き千切ってくれる!!」

 リディアの体が宙を舞い、その首をハルコンの手が捉えた。リディアは喉を完全に閉められ、声にならないうめき声を零す。それに気づいたイオナがキーニングで切りかかるも――本来なら装備するだけで命を奪うほどの代物だが、このロルカーンの心臓を貫いた偉大なるカグレナックの祭器はすでに壊れているのだ。イオナもハルコンに捉えられ、リディアと同じように締め上げられた。

「セラーナ、今よ」

 アラネアがガーゴイルをチェインライトニングで弾き飛ばし言った。セラーナはアーリエルの弓を構え、特別な矢を番えた。光り輝くその矢の名は、太陽神のエルフの矢。スノーエルフの騎士司祭ギレボルが、アーリエルの力を込めた、神の矢である。

「今度はお父様が苦しむ番ですわ!」

 ドーンブレイカーでも破れなかった結界を、アーリエルの矢は易々と貫いた。矢はそのままの勢いでハルコンに吸い込まれる。防御は間に合わない。ハルコンの眉間に突き刺さり、その勢いのまま巨体を地面に押し倒した。

「そんな……セラーナ……実の父をお前は……」

「スカイリムは、ノルドのものですわ!!」

 リディアの落としたドーンブレイカーを拾い上げ、セラーナは父の心臓に剣を突き立てた。断末魔と共に爆発、四散する吸血鬼の王。その爆発は周囲の吸血鬼を何十体も巻き込み、さらには数百のアンデッドを爆破炎上させ、戦線に巨大な風穴を開けた。バルグルーフ以下連合軍は雄たけびをあげながら突撃を開始、吸血鬼の大部隊を完全に撃ち破った。

 こうしてリーチの戦いも、定命の者の勝利に終わった。マルカルス首長には、メイビンやドヴァーキンともつながりが深く、フォースウォーンでもノルドでもない、レッドガードのエンドンが就任することになった。マルカルスでは銀の鉱山が再開。ポテマに止められて大量に備蓄されていた銀を利用し、反乱軍はアンデッドに効果的な銀の剣を装備することになった。

 




× ソーンヴァー
○ マダナック

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