『第2次レッドダイヤモンド戦争』   作:長命寺桜

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第15話 ソリチュードの戦い

 第4期202年降霜の月、ついにポテマは第1次レッド・ダイヤモンド戦争と同じく、ソリチュード王国以外のすべての領地を失ってしまった。ドラゴンも敗退を続けるポテマを見限り、今では大半の個体がパーサーナックスに従うようになっていた。だが座して死を待つポテマではない。彼女は各地で後退しつつも、わずかな戦力をソリチュードに結集させ最後の決戦を挑もうとしていた。大規模なデイドラの召喚も確認されていた。ソリチュードは数百年の時を経て、再び死霊の街と化してしまったのだ。

 連合軍はハーフィンガルの大半を制圧し、いよいよポテマの籠城するソリチュードへの最終的な攻撃を準備していた。テュリウス将軍を最高指揮官とする連合軍は、ソリチュードを完全に包囲し、その時を静かに待っていた。

 ポテマは今では唯一のまともな部下であるシビル・ステントールと、アーティファクトによって召喚した高位のデイドラ、ドレモラ・ロード。さらには蘇らせたエレンウェンの死体と共に防衛計画を練っていた。エリシフもいるにはいたが、おぞましい死霊の街と化した故郷ソリチュードに絶望して自殺未遂を繰り返し、今ではドール城のダンジョンに縛り付けられていた。彼女は幼い息子を出産しており、彼女の強い意向で亡き夫トリグの名前からトリグ・セプティム2世という名を付けて育てていたのだが、それすら彼女をこの世に留める理由にはならなかった。現在トリグ2世はポテマの英才教育を受け1歳にしてスケルトンを操るという脅威の才能を見せており、ポテマはこの幼子すら戦列に加えようとしていた。

 このソリチュードの惨状にさすがのデルフィンも自分が間違っていることに気づいたらしく、ポテマの元を離れしれっと連合軍の作戦会議に参加していた。彼女はポテマに付き従っていた最後の人間の将軍なので、ポテマの近情について詳しく、それなりに連合軍に貢献することになった。会議の場にはデルフィンの他に、旧帝国軍の将軍達やスカイリムの諸公、リディアら私兵たち、セラーナとアラネアも参加している。またブランウルフの提案でこの場でムートが開かれ、バルグルーフがスカイリムの上級王に就任することが決まった。メイビンが同意したのは実に意外なことだが、彼女はスカイリム上級王どころか皇帝になる気でいるのだ。実際、メイビンはこの戦争において軍事的にはともかく政治的には1,2を争う指導的立場を発揮し、皇帝に最も近い立場にあると言えるだろう。次期タムリエル皇帝の座を掛けた政治レースは既に始まっていたのだ。

 リディアやセラーナは、預言の実現という最後の仕事を成し遂げるためにこの場に参加していた。すなわち狼の女王に引導を渡し、太陽を復活させる。そのためにソリチュード市民であるジョディスは、自分達が特殊部隊としてブルーパレスを急襲し、ポテマを抹殺する作戦を立てた。命を懸けて守ると誓った従士を殺さねばならない日がやってきたのである。

 熱狂的なタロスの司祭ヘイムスカーは、かつてポテマから帝国軍の最高司令官に任じられていたのだが、ポテマがタロス崇拝を禁じた時点で指揮下にあった部隊の大半と共にクーデターを起こし、インペリアル・シティーを制圧していた。最終的な決戦地となるスカイリムにも軍を派遣し、連合軍将兵の前で演説を行った。ポテマも偉大な演説家であることは歴史的にも知られていたが、このヘイムスカーがソリチュードの戦いを前にした大演説も、後世の歴史家は永遠に語り継ぐに違いない。その一部を引用しよう。

「タロスが昇華し八大神が九大伸になる前、タロスは我々と共に歩まれた、偉大なタロス、神としてではなく、人間として! しかし、あなたはかつて人間であった! そうだ! 人間としてあなたは言った”北の大地に生まれしストームクラウンのタロスの力を見るが良い、わが息が長き冬となる” ”私は今王位について呼吸し、私のものとなったこの大地を新たに作る。私はこれをレッド・レギオン、あなたのために行う、あなたを愛しているから”ああ、愛。愛! 人間としてさえ、タロスは我々を大事にしてくださった。彼が我々一人ひとりの中に、スカイリムの未来を見ていたから! タムリエルの未来を!」

 知る人がいれば、彼がホワイトランでいつも行っている演説であると気づいたはずであるが、彼が率いている帝国兵達にとっては実に新鮮で、白金協定以後に生まれた、タロスを奪われた若い兵士達を鼓舞するには十分であった。彼らは父祖が信じた神、タロスを再び取り戻すための戦いに加わることになったのだ。

 降霜の月30日、ソリチュードの戦いは始まった。テュリウスがこの日を攻撃開始の日に選んだのは戦術的理由ではなく、偶然でもない。30年前の"大戦"が始まった悲劇の日に、第2次レッド・ダイヤモンド戦争最後の戦いを始めることで、タムリエルにおいて帝国が再び威信を取り戻すことを期待してのことであった。

 ソリチュードは山と崖の上に築かれた城塞都市である。ポテマはその地形を利用して徹底的な遅滞戦術を行った。正門に至る道にはデイドラの軍隊が二重三重の防衛線を敷いて待ち構えており、周辺の山からゾンビの大軍が矢を放ち、スカイリム中からかき集めたドラウグル、しかもドラウグル・デス・オーバーロードをシャウトと共に突撃させたのだ。圧倒的な戦力的優位を誇る連合軍も、この地形ではその戦力差を生かすことは出来ず、出血を強要され、しかも出血はポテマの戦力が増えることを意味していた。

 黄昏の月に入ると、ポテマは攻勢にすら出て、連合軍は一時モーサルやドラゴン・ブリッジにまで後退するという失態を演じることになった。星霜の月、冬がやってきて戦線は再びソリチュードまで押し戻されたが、雪が降り始めたため南方の兵には流行り病が蔓延し戦線は膠着しはじめた。その間、タムリエル中の付呪師がスカイリムに集められ、兵士達の剣に「バニッシュ」の付呪を掛け続けた。

 ソリチュード攻城戦は第4期203年、恵雨の月に開始された。この時点での連合軍の対デイドラ戦闘力は、去年とは比較にならない程強化されていた。ポテマ軍のデイドラ召喚能力は無限にも思えたが、連合軍の剣はそれを上回る速度でオブリビオンに強制送還し続け、遂にはデイドラをソリチュードから一掃することに成功する。例によってオンドルマール率いるサルモールの魔術師部隊がソリチュード正門を破壊し、連合軍はようやくソリチュードへ突入した。

 死霊で埋め尽くされた街中で、建物どころか部屋の一つ一つを奪い合う壮絶な市街戦が展開された。ドール城が陥落したのは突入開始から1ヶ月後のことであった。テュリウス将軍は3年の時を経て、再び司令部をドール城に移したのである。ドヴァーキンの自宅であるプラウド・スパイヤー邸も死霊術師に占拠されていたため、ジョディスは自宅を半壊させなければならなかった。周辺を制圧したのち、リディア率いる特殊部隊のブルーパレスへの突入が行われたが、ポテマは既に逃亡した後であった。しかしシビル・ステントールは生け捕りにされ、ある意味でこの戦争の元凶でもあるアーケイの司祭、スティルはようやくシビルの魅了から解放されることとなった。突入から2ヶ月後、遂にソリチュードは解放され、連合軍はタムリエル全域を制圧することになった。

 

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