セラーナとリディアの姿はドーンガード砦にあった。イスランは吸血鬼の王女とポテマの元私兵という危険なコンビを歓迎しなかったが、押し問答の末受け入れることに決めた。砦にはステンダールの番人やポテマから逃げてきた帝国軍、ストームクローク将兵が集結し、クロスボウの量産体制が整えられ籠城戦の準備が整えつつあった。威力偵察を行った吸血鬼の将軍の部隊は本格的な組織的抵抗を受け壊滅してしまう。この緒戦の敗北にポテマは激怒し総攻撃を決定。それに先んじて、現地の首長メイビン・ブラック・ブライアにドーンガード砦を包囲するよう命令が下された。
だがポテマはブラックブライア蜂蜜酒とホニングブリュー蜂蜜酒を飲み比べた際、ブラックブライア蜂蜜酒をドブ水と言い切り、潰すよう命令していた。しかもメイビンの目の前で。
勅令が下った時、メイビンはポテマに反逆しシロディールに救援を求めた。事態を重く見た時の皇帝タイタス・ミード2世は自ら軍を率い、ジェラール山脈を越えて帝国軍本隊をリフトに進駐させた。まだ総攻撃の動員中だったポテマは、ヴィットリア=ヴィキを人質に取り撤退するようにタイタスを脅迫する。一方メイビンは配下のリフテン衛兵に命じアスゲール・スノー・ショッドを拘束させ、ヴィキに『皇帝が撤退したら恋人を殺す』と脅し自殺を迫っていた。メイビンとギルドマスター(ポテマのこと)の間で揺れるブリニョルフに命じて盗賊ギルドとドーンガードと連携させ、アストリッドには黒き聖餐を行ってポテマ暗殺を依頼した。だがアストリッドは、タイタス=ミード2世暗殺の計画を遂行中であった。ポテマは聞こえし者でもあったからだ。
ソリチュードは厳戒態勢にあったが、ブルーパレスに子供が一人忍び込んだところで大きな騒ぎにはならない。それが幻惑魔法のスペシャリストである吸血鬼とあればなおさらだ。バベットはポテマの寝室に赴き、眠っているポテマの頬を突こうとして、ポテマが目を開いた。
「私を殺しに来たのかしら、バベット。それとも、私の"声"を聴きに来たの?」
「アストリッドは、あなたがまだ聞こえし者なのかどうかを確認したがっているわ。あなたは……いえポテマ。夜母の声はまだ聞こえる?」
「私を誰だと思っているの。タムリエルに私より死体の声を聞くのが上手い人間はいないわ」
「私は一般論を聞きたい訳じゃないのよ。あなたが本当に夜母とまだお話が出来るなら、私達は任務を忠実に遂行するわ。でももうあなたが聞こえし者じゃないなら……」
かつて聞こえし者により磨き上げられたデイドラのダガーが、ポテマの首元に静かに突きつけられていた。いかなポテマとはいえ、首を刎ねられては命はないだろう。しかしポテマは不敵な笑みを浮かべ、プロの暗殺者であるバベットをすくみ上らせる。
「"沈黙の死す時、闇は昇る"。これが私の答えよ、バベット」
帝国軍の軽装鎧に身を包んだレッドガードの老人と元道化師を引き連れ、バベットはリフテンに潜り込んだ。シセロは最近の帝国事情に精通していたが、だからといって彼一人で行かせることはアストリッドにはできず、監視役としてナジルとバベットを付けたのだ。一行は聞こえし者の自宅であるハニーサイドの裏口から街に入った。私兵のイオナはドーンガード砦に向かっており不在だったから、何の苦労もなく潜入できた。
リフテンのミストヴェイル砦は現在タイタス・ミード2世の居城となっており、メイビンは自宅へと追い出されていた。バベットは付近にあるオナーホール孤児院の子供達のかくれんぼに紛れ、砦へと潜入する。帝都からやってきた兵士達は無垢な子供達の遊びにまで口を出すほど切迫しておらず、バベットを見逃してしまった。
事はなった。実にあっさりと。バベットのダガーは皇帝の心臓に深々と突き刺さり、吸血鬼の少女は闇に消える。だがもちろん、皇帝の暗殺を警戒していない程、帝国軍は愚かではなかったのである。
ポテマはリフテン攻略を目指し、ウィンドヘルム方面とヘルゲン方面の2隊に分かれ軍を派遣した。北軍をウルフリックとハルコン、西軍をテュリウスとデルフィンが率いることとなった。ポテマ自身はハイフロスガーに本陣を構え、世界のノドにはドラゴンの大群が控えていた。
ペニトゥス・オクラトゥスが厳重に警護していた本物のタイタス=ミード2世は、ゴールデン・グロウ農園で指揮を執っていた。皇帝はリフテンでの市街戦を回避することを令し、帝国軍をリフト全域に配備。グリーンウォール砦を封鎖してホンリッヒ湖周辺では地形を利用した野戦築城を行わせた。
翌朝、ウルフリックの指揮するストームクローク本隊が、吸血鬼の督戦隊を背にグリーンウォール砦を急襲したことで戦端は開かれた。ここに、ポテマ=セプティム朝とミード朝との最初の衝突、フォール・フォレストの戦いが勃発したのである。