内戦での実戦経験が豊富なストームクローク軍は練度に勝る。ウルフリックは自ら陣頭に立ち、シャウトを駆使してシロディール兵の度肝を抜くなどして、初め帝国軍を圧倒していた。だが彼らの背後に、薄気味悪いローブを着た吸血鬼とアンデッドの軍団を見つけた帝国軍将兵は、この戦いが通常の戦争とは違うことをすぐに理解する。彼らの敗北は帝国の敗北ではなく、人類の、いや定命の者の敗北を意味するかもしれないと。
「スカイリムはノルドのものだ!」
「ショールからの慈悲だ!」
「イスミールにかけて、絶対に生きては帰さない」
そんな叫び声が各地で上がり、ノルド兵達は凄まじい勢いで帝国軍を攻め立てる。一方で皇帝自らが指揮を執る帝国軍の士気も非常に高く、すぐに混乱から回復し迎撃態勢を整えた。だが血が流れる度、吸血鬼達が死者を蘇生させて戦列に加える。兵力差は徐々に致命的になりつつあった。
テュリウス指揮下の西軍は旧帝国軍将兵で構成されていたため、同士討ちを命じるポテマとデルフィンにはあまり忠実ではなく、ホンリッヒ湖周辺で未だ睨みあいを続けていた。一応ファルダーズトゥースを攻略し前線司令部としていたが、ここは元々山賊に占拠されていた砦であり、帝国軍との衝突は未だ行われていない。
ポテマは戦いの様子を、遥か山の上から観察していた。グリーンウォール砦はスカイリムでも有数の巨大な要塞で、戦況は一進一退。テュリウスの兵は本気で戦う気がない。となればもはや自分が出るしかないとポテマは決断する。
『Od Ah Ving!!』
ポテマのシャウトがスカイリムの美しい空を震わせる。巨大なドラゴンが舞い降りてポテマの眼前に傅いた。ハイフロスガーの空には数えきれないほどのドラゴンが飛び回っており、その中の何匹かがオダハヴィーングと共に着地する。
「ドヴァーキン、行くのか」
「ええ、帝国に私達の力を思い知らせるのよ」
「よかろう。我に乗るがいいドヴァーキン。再びケイザールの空へと舞い戻ろう」
帝国軍の兵には、スカイリムで起きた一連の騒動が周知されていた。アルドゥインの帰還とドラゴンの襲撃についてである。しかし、それはあくまでも伝え聞いたもの。実際にドラゴンが現れ、しかも何十匹ものドラゴンが隊列を組み、統率された戦力となって襲撃してくるなど、予想もつかなかった。ポテマはホンリッヒ湖を滑るように飛び、西部の帝国軍陣地を空から奇襲した。
『Yol Toor Shul!!』
強烈なファイアブレスが何十本も! 天から地へと降り注ぐ。帝国兵には弓を番えるものなどいない。将軍も魔術師も、シロディール兵は皆初めて見るドラゴン、しかもその大軍に恐れをなし、戦わずして壊走してしまう。一部ファルクリースから合流した兵もいたが、彼らにしてもこのようにドラゴンが編隊行動をするなど予想外のことであり、ドラゴンボーンなき今対抗する手段などないとばかりに逃げ出してしまう。壊走する帝国軍に向かって、デルフィンが突撃命令を下す。今度は逆らえるものなどいなかった。こんな光景を見せつけられて抵抗しようとするものがいるだろうか!
リフテンに向けて撤退しようとする帝国軍に対し、メイビン・ブラックブライアは衛兵に門を閉じるよう命じた。それからメイビンはポテマ宛に、皇帝を引きずり出し殺すチャンスを作ってやった……などと白々しい手紙を出したのだ。帝国軍の残党はゴールデン・グロウ農園に追い詰められてしまう。
「陛下、もはやこれまでです。ポテマに降伏を申し入れましょう」
泣き言を言う将軍の首が飛んだ。皇帝が命じたのではない。護衛の兵が問答無用で将軍の首を切り落としたのだ。
「何のつもりだ!」
糾弾する別の護衛の首を、スカイリムでは珍しい曲刀が切り裂いた。ナジルとシセロは帝国軍の奥深くに潜入し、どさくさに紛れて皇帝の元へとたどり着いたのである。その光景を前にしても、タイタスは落ち着き払っており、運命を受け入れるかのように粗末な玉座に座った。
「どうやら、今回は本物のようだな」
「やった! やった! 遂に皇帝を殺せるよ。夜母の願いを果たせるんだ」
「余と私には運命の日がある。しかし暗殺を企てた人物は、背信行為で罰せられねばならん。依頼人であるその人物を始末して欲しい。余の依頼、引き受けてくれるか?」
「生憎我々闇の一党は、もはや夜母の声なしに人を殺すわけにはいかないんだ。すまないな、タイタス」
皇帝タイタス・ミード2世の魂は、その肉体を離れエセリウスへと送られた。これをもって帝国軍は完全に崩壊。特使はテュリウス将軍経由でポテマに降伏を申し入れた。フォール・フォレストの戦いはポテマ軍の鮮やかな勝利に終わり、スカイリムはごく一部を除いてポテマに支配されたのである。